保育士として一度離職した人が、再び就職する際に受けられる可能性がある「再就職手当」。経済的な支援となる制度ですが、受給にはいくつかの条件や注意点があります。
この記事では、保育士が再就職手当を受け取るための基本的な条件や申請時のポイントをわかりやすく解説します。
保育士の再就職手当とは
再就職手当とは、失業保険を受給している人が早期に再就職した際に支給される制度のひとつです。
保育士として再び働く意思を持ち、一定の要件を満たすことで就職後に手当を受け取ることができます。
再就職を前向きに進める人を後押しするための制度であり、保育士として復職を考えている方にとっても心強い支援策です。
再就職手当を受ける条件

再就職手当を受け取るには、いくつかの条件を満たす必要があります。
条件を満たしていない場合は支給されないこともあるため、事前にしっかり確認しておきましょう!
ハローワークでの手続きが済んでいること
再就職手当を受けるには、まずハローワークで「求職申し込み」をおこない、雇用保険の受給資格の決定を受けていることが前提となります。
この手続きが完了していなければ、失業給付も再就職手当も受け取ることができません。
また、就職先が決まる前にハローワークに「求職活動中」として登録されている状態であることが必要です。
すでに内定が出たあとや就職が決まってから求職申し込みをしても、制度の対象外となってしまうため注意が必要です。
再就職手当の申請を視野に入れている場合は、なるべく早めにハローワークに相談し、必要な手続きを済ませておくことが大切です。
失業保険の所定給付日数が3分の1以上残っていること
再就職手当を受けるためには、失業保険(基本手当)の所定給付日数のうち、3分の1以上が残っていることが条件の1つです。
たとえば、所定給付日数が90日の場合は、再就職時点で30日以上残っていなければなりません。
この「残日数」は、実際に失業手当を受け取った日数ではなく、支給決定後に再就職が決まったタイミングで残っているかどうかで判断されます。
再就職が遅くなるほど残日数が減ってしまうため、早めに動き出すことが大切です。
正社員・フルタイムなど安定した雇用形態であること
再就職先が1年以上継続して雇用される見込みのある「安定した雇用」であることが、再就職手当の支給条件の1つです。
正社員だけでなく、契約社員やパートでも、一定の条件を満たしていれば対象になる可能性があります。
とくに重要なのは、再就職先で雇用保険に加入していること。
雇用保険の被保険者になるには、週20時間以上の勤務など、所定の要件を満たす必要がありますので、就職前に確認しておきましょう。
以前の勤務先に再就職していないこと
再就職手当は、「新しい事業所への就職」が前提となるため、離職前に勤めていた園や、同じ法人が運営する系列の保育園に再就職した場合は、支給対象外となることがあります。
たとえ勤務地や園名が違ったとしても、運営元が同一である場合は「同じ事業主への再雇用」とみなされる可能性があるため注意が必要です。
判断が難しい場合は、事前にハローワークへ確認しましょう。
就職日前から3年間以上前に受け取っていないこと
再就職手当は、同じ失業に対して原則1回のみ支給される制度ですが、過去に受け取ったことがあっても、そこから3年以上が経過し、改めて雇用保険の受給資格を得ていれば再び受給が可能です。
ただし、受給の可否は個別の状況によって異なるため、事前にハローワークで確認することをおすすめします。
もらえる金額の計算方法
再就職手当の金額は、「失業保険があと何日分残っていたか」×「1日あたりにもらえる金額」×「支給率(60%または70%)」で計算されます。
【計算式】
再就職手当の支給額 = 基本手当日額 × 残日数 × 支給率(60%または70%)
【支給率について】
支給率は、就職がどれだけ早かったかによって変わります。
- 失業保険の3分の2以上が残っている状態で就職した場合⇒70%支給
- 3分の1以上~3分の2未満が残っている状態で就職した場合⇒60%支給
つまり、早く就職するほど多くもらえる仕組みです。
具体例でイメージしよう!
再就職手当の仕組みは少し複雑に見えますが、例を見ればイメージしやすくなります。
ここでは、基本手当日額が「6,000円」の場合を例にして、2パターンの支給額を計算してみましょう。
パターン①30日分を残して再就職(支給率60%)
- 所定給付日数:90日
- 再就職時に残っていた日数:30日
- 支給率:60%
6,000円 × 30日 × 60% = 108,000円
パターン②60日分を残して再就職(支給率70%)
- 所定給付日数:90日
- 再就職時に残っていた日数:60日
- 支給率:70%
6,000円 × 60日 × 70% = 252,000円
実際の「基本手当日額」は、前職の給与や年齢によって異なります。また、支給額は状況によって前後することがあるため、具体的な金額はハローワークで試算してもらうのが安心です。


受給の方法
再就職手当を受け取るには、就職が決まったあとに自分で申請する必要があります。申請しないと自動的には支給されないため注意しましょう。
ここでは、申請から受給までの具体的な流れをステップごとにご紹介します。
①就職が決まったら、まずハローワークに報告する
再就職が決まったら、できるだけ早くハローワークに連絡しましょう。
申請には「就職日」や「雇用条件」などの情報が必要となるため、内定が出た時点で相談しておくとスムーズです。
報告をせずに勤務を開始してしまうと、受給の対象外になる場合もあるため注意が必要です。
②必要書類を準備して申請する
ハローワークで案内された後、以下のような書類をそろえて申請します。
- 再就職手当支給申請書(ハローワークから交付されます)
- 雇用保険受給資格者証
- 就職先の事業主による採用証明書
- 失業認定申告書
- 本人確認書類(免許証・マイナンバーカードなど)
- 本人名義の通帳またはキャッシュカードの写し(振込先確認用)
これらの書類をまとめて、就職後1ヶ月以内を目安にハローワークへ提出します。
③ハローワークで審査後、口座に振り込まれる
申請後、ハローワークで内容の審査がおこなわれます。
条件を満たしていれば、通常1~2ヵ月程度で再就職手当が指定の銀行口座に振り込まれます。
ただし、書類に不備があったり、確認に時間がかかると、支給が遅れる可能性もあるため、余裕をもって対応しましょう!
再就職手当の注意ポイント
再就職手当は、条件を満たしていても手続きの不備やタイミングのズレによって受け取れなくなることがあります。
ここでは、よくある申請ミスや、もらい損ねを防ぐための注意点をわかりやすくご紹介します。
よくある申請ミスとその対策
再就職手当の申請でとくに多いのが、以下のようなミスです。
- 勤務時間が週20時間未満だった
⇒雇用保険に加入できない働き方だと、手当の対象外になります。
- 雇用期間が1年未満だった
⇒1年以上の継続雇用が見込まれていないと、支給条件を満たしません。
- 同じ法人の保育園に再就職した
⇒園が違っても運営法人が同じ場合、再就職手当は支給されない可能性があります。
再就職手当をもらい損ねないために
申請書類を提出しただけでは、必ず手当がもらえるとは限りません。
実際に受給するには、タイミングや書類の不備にも最新の注意を払う必要があります。
以下の点に気をつけましょう。
- 必要書類を早めにそろえる
- ハローワークの指示をよく確認し、不明な点はその場で質問する
- 申請の〆切を見逃さないように、日付の管理をしておく
制度を知っていても、「うっかり忘れた」「少し遅れた」で支給対象外になることもあります。再就職手当をしっかり受け取るには、早め早めの行動と情報の確認が大切です。
実際に振り込まれるまでには時間がかかる
再就職手当は、申請すればすぐに支給されるわけではありません。
申請後はハローワークによる内容確認や審査がおこなわれるため、実際に振り込まれるまでには通常1~2ヵ月程度かかります。
また、提出書類に不備があったり、追加確認が必要な場合はさらに時間がかかることもあります。
そのため、「就職したからすぐにもらえる」と思って家計をあてにしてしまうと、思わぬタイムラグで困ることも。
再就職手当はあくまで後から振り込まれる支援制度であることを理解し、スケジュールに余裕をもって準備しておきましょう!
再就職先の探し方

再就職手当の対象になるには、一定の条件を満たした就職先を見つける必要があります。
雇用保険に加入できる勤務条件や、1年以上の継続雇用が見込まれる職場など、自分の希望と制度要件を両方クリアできる求人を探すことが大切です。
ハローワークや保育求人サイトを活用するのはもちろん、保育士専門の転職支援サービスを活用するのも1つの方法です。
保育士人材バンクでは、保育士の再就職に関する知識や求人情報が豊富で、担当者が希望に沿った園のご紹介や、再就職手当の条件に関する相談にも対応しています。
また、履歴書や職務経歴書の添削、採用面接の対策もおこなっているので、転職活動が初めての方や、「1人では不安・・・」という方でも、安心して進められます。
「保育士としてブランクがあるけどもう一度働きたい」「制度を活用して無理なく復帰したい」という方は、まずは情報収集からでもお気軽にご相談いただけます!


保育士の再就職手当まとめ
保育士の再就職手当は、早期に就職することで受け取れる心強い経済的サポート制度です。
ただし、支給を受けるには複数の条件をクリアしハローワークでの手続きや申請のタイミングにも注意が必要です。
とくに、保育園選びや雇用形態によって支給の可否が変わることもあるため、転職活動を始める前にしっかりと制度を理解しておくことが大切です。
「制度をうまく活用しながら、自分に合った職場を見つけたい」という方は、保育士専門の転職支援サービスを活用するのもおすすめです。
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参考:厚生労働省「離職されたみなさまへ」
参考:厚生労働省「再就職手当について」