求人票には、職場選びに必要な情報が詰まっています。しかし、載っている情報が多く、どれが大事な情報なのかぱっと見て判断するのは難しいですよね。耳慣れない用語に困っている方もいるのではないでしょうか。
今回は、求人票に記載されている情報の解説と見るべきポイントをお伝えします。手当や休日、社会保険など各項目を一度おさらいし、おさらいしましょう。
求人票とは?
求人票とは、企業が社員を採用するときに、自社の求人情報を記載する書類のことです。労働内容や雇用条件などが一度に確認できるため、求職者にとっては応募する企業を決める重要な情報源となります。
求人票に記載されている主な項目は、以下の通りです。
・労働条件 | 就業場所、就業時間、休憩時間、休日、時間外労働 |
・雇用形態・契約期間 | 無期雇用、有期雇用、パート |
・賃金 | 月給、時給、日給、昇給制度 |
・加入保険 | 健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険 |
また、業界に特化した求人サイトや転職サービスの場合は、上記の項目のほかにその分野ならではの情報が記載されているケースがあります。たとえば保育士業界なら、「借り上げ社宅制度」や「キャリアアップ研修」について記載している場合も多いでしょう。
就職活動においてとても大事な役割を持っている求人票ですが、とくに注目してほしいのは次の4つです。
・給料
・休暇、休日
・福利厚生
・保険
ここからは、求人票の見方と保育士の転職でチェックしておくべき情報を解説します。
【求人票】給料の見方とポイント
給料を表す言葉には「月給」「基本給」「手取り」「年収」など、さまざまな種類がありますが、どれも意味が異なります。給料面は生活に大きな影響があるため、しっかりとおさえておきましょう。まずはじめに、月収のポイントです。
・月収=「基本給」+「固定手当」+「変動手当」
手当には、毎月支払われるものと、月によってもらえる金額が変わる手当があります。
固定手当 | 役職手当、住宅手当、資格手当、家族手当など |
変動手当 | 通勤手当、時間外手当、深夜労働手当など |
基本給に固定手当と変動手当を足したものが月収です。また、額面ともいいます。
ポイント①月収と基本給の違い
月収のうち、固定手当や変動手当を省いたものが基本給です。
月給の大部分を占めており、年齢や勤続年数、仕事内容、本人の能力などをもとに基本給が決まります。従業員本人に確認なく下げることはできず、一定期間固定された金額が支払われます。
また、時間外手当やボーナス・賞与など一部の手当は基本給をもとに計算されることも多いため、基本給や月給・月収に応じて、ボーナスや賞与があがる仕組みになっているかは予めきちんとチェックしておきましょう。
ポイント②月収と手取りの違い
毎月の給料は、月給がそのまま支払われるのではなく、社会保険料や税金などが差し引かれています。手取りとは、その名のとおり「実際に手にするお金」のことです。
手取り=「月収(額面)」-(「社会保険料」+「税金」)
社会保険には雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金、介護保険があり、税金には住民税や所得税があります。保険料や税額は前年度の収入や住んでいる地域によって異なるため、月収から差し引かれる金額は人それぞれです。一般的に手取りは、「月収(額面)の75~85%程度」だといわれています。
ポイント③月収と年収の違い
年収とは、1月〜12月の月収をすべて合わせた金額のことです。社会保険や税金が引かれていない総収入をさすため、実際にもらえる金額とは異なります。
ポイント④含み残業
含み残業とは、予想される時間外手当をあらかじめ「固定手当」として月収に含める制度のことです。「みなし残業」と呼ばれることも多く、求人票では賃金や労働時間とともに「月〇時間の残業を含む」などと記載されています。
含み残業は、保育士の収入が一定数上がるメリットがあるものの、一定の残業時間と比例して残業代がもらえないというデメリットも抱えています。
「多少の残業があるなら、含み残業で時間外手当が保障されているほうが良い」という方もいれば、「そもそも残業がない職場が良い」という方まで人それぞれでしょう。
含み残業を導入している場合、求人票に記載されていますので、気になる方は入職前に具体的な条件を必ず確認しておきましょう。
【求人票】休日・休暇の見方とポイント
次のチェックポイントは、休日や休暇の見方です。休日に関する用語にも似たような言い回しが多いため、よく混同されています。働いてから「そんなつもりじゃなかった」と気付くことのないように、違いをしっかり把握しておきましょう。
ポイント①休日や休暇の種類は?
同じような意味で使われている「休日」と「休暇」ですが、異なる定義が定められている別の言葉です。休日と休暇には大まかに次の違いがあります。
・休日:労働の義務がない日
・休暇:本来は労働義務があるものの、会社が労働を免除した日
それぞれ詳しく見てみましょう。
ポイント②休日の解説
労働基準法では、休日を以下のように定義しています。
使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。 |
上記は「週休制の原則」と呼ばれていますが、例外として「4週間を通じ4日以上の休日」でもよいとされています。会社はこのルールの範囲内で休日をいつにするのか自由に定められるのです。ただし、労働時間は1週間に40時間まで、かつ1日8時間以内に納めなくてはいけません。このルールに則った休日を「法定休日」といいます。
法定休日のほかに、会社は就業規則などで独自の休日「所定休日」を定めることもできます。法定休日の基準を満たしていれば所定休日を定める必要はありませんが、多くの企業で導入されている休日です。
ポイント③休暇の解説
一方、休暇は会社によって労働義務を免除された日のことです。休暇も法律によって義務付けられている「法定休暇」と会社の制度によって与えられる「法定外休暇」に分けることができます。
<法定休暇>
法定休暇は年次有給休暇をのぞき、休暇は認められますが給料の支払いは義務付けられていません。それぞれの休暇に給料がもらえるのかどうかは、あらかじめ職場に確認しておきましょう。
年次有給休暇 | 雇用されてから6ヶ月以上継続勤務をしている人が対象の休暇制度。所定休日とは別に取得でき、通常の労働日と同じように賃金が発生する。 |
産前産後休業 | 出産を予定している従業員が予定日の6週間前(多児は14週間前)から取得できる休業制度。また、産後8週までは産後休業を取得できる。 |
育児休業 | 1歳までの子ども(一定の条件を満たしている場合は最長2歳)を養育するために取得できる休業制度。 |
生理休暇 | 生理にともなう症状が原因で労働が困難な場合に、半日もしくは時間ごとに取得できる休暇。 |
子の看護休暇 | 従業員の子どもが病気やケガをしたときに取得できる休暇のこと。病気だけでなく、予防接種や健康診断なども含まれる。対象の子どもが |
介護休業・介護休暇 | 従業員が要介護状態の家族の世話や介護をする場合に取得できる制度。介護休暇はおもに短期の場合、介護休業は長期の休みを取得する場合に取得する。 |
<法定外休暇>
法定外休暇は会社が独自に定めるため、取得できる条件や日数、賃金などは会社によって異なります。代表的なものは以下の休暇です。
慶弔休暇 | 慶事(祝い事)や弔辞(お悔やみ事)があった場合に取得できる休暇のこと。会社によっては「特別休暇」とも呼ばれる。 |
夏季休暇・冬期休暇 | 夏は主にお盆の時期、冬は年末年始の時期に定められた休暇のこと。 |
リフレッシュ休暇 | 心身のリフレッシュのために設けた休暇で、毎年取得できる会社から5年目、10年目の節目でまとまった休暇が取得できるものまで制度内容は会社によってさまざま。 |
ポイント④完全週休2日制と週休2日制の違いは?
休日の種類では「完全週休2日制」と「週休2日制」についても混乱される方が多いようです。それぞれ詳しくみてみましょう。
- 完全週休2日制
「完全」という名前の通り、休日が毎週2日あるのが完全週休2日制です。
ほとんどの保育園では週6日子どもを受け入れているため、土日連続で休日を確保するのは難しいでしょう。完全週休2日制の場合は、「子どもが登園しない日曜日と平日のどこかで1日休み」というパターンを交代しながら取得しているのが一般的です。
土日連続で取得できれば、外出の予定が立てやすく体もしっかり休めることができるでしょう。平日に1日休みを取る場合も、人で混み合う土日を避けて活動できるよさがあります。
- 週休2日制
週休2日制とは、週2回の休みが月に1回以上ある制度のことです。どこかの週で2回休みがあれば、そのほかの週は休みが1回ずつでも問題ありません。
週休2日制の場合、ひと月あたりの休みの数や曜日などでさまざまな記載方法があります。たとえば、「週休2日制(日、第1・第3土曜日)」とあれば、毎週日曜日と第1土曜日、第3土曜日が休みです。
【求人票】福利厚生のポイント
求人票を確認する際は、どんな福利厚生があるのかチェックしておくことをおすすめします。
そもそも福利厚生とは、給与や手当、賞与などに加え、健康や生活を向上させるために提供する報酬サービスのことです。従業員のために積極的に導入している会社も多く、独自の取り組みで働きやすさを向上させています。一見、給与面が少なく見えても、福利厚生で結果的に良い条件となっているケースもあるため、しっかり目を通しましょう。
まずは、福利厚生にどのような種類があるのかをおさらいします。
<どんな福利厚生があるの?>
- 退職金制度
- 結婚、出産祝い金
- 短時間勤務制度
- 人間ドック費用補助
- 社内託児所
- 資格取得支援
- 飲食店や宿泊施設の費用補助
- 財形貯蓄制度
<保育業界でよくある福利厚生>
- 給食費無料、補助
- 借り上げ社宅制度
- エプロン、被服費支給
さまざまな福利厚生のなかでも、収入面に大きな影響のある「退職金制度」「給食費無料・補助」「借り上げ社宅制度」「被服費支給」についてもう少し深掘りして解説します。
ポイント①退職金制度
退職金制度とは、一定の期間以上働いた従業員が退職する際に、勤続年数や在職中の業績に応じて退職金を支給する制度のことです。退職金の計算方法や支給される勤続年数などは、各企業によって異なります。
退職金制度は義務ではありませんが、多くの企業が導入しています。
退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合 | |
全体の企業 | 74.9% |
医療・福祉業界 | 75.5% |
参考)「令和5年就労条件総合調査」
退職金制度は、勤続年数を重ねるほどもらえる金額も増えるため、仕事へのモチベーションや将来への安心感に繋がります。
ポイント②給食費無料・補助
多くの保育園では、保育士も子どもたちと一緒に給食を食べています。この場合、給食費は給与から天引きされるのが一般的です。栄養バランスが考えられている給食を食べられるのは健康的ですが、積み重なっていく毎日の出費が気になっている方も多いのではないでしょうか。
保育園のなかには、「給食無料」や「給食費の一部補助」の福利厚生を導入し、保育士の金銭的な負担を抑えている保育園もあります。月々数千円の出費でも、長く働き続けるほど大きな支援となるでしょう。
ポイント③借り上げ社宅制度
借り上げ社宅制度とは、雇う保育士のために事業所が借り上げた住居に対し、補助金が支給される制度です。特定の自治体に設置されている保育施設で、園側から申請されている場合に利用できます。
住宅に関する支援といえば「家賃補助」が挙げられますが、借り上げ社宅制度の補助額は最大82,000円と補助金額が大きい点が特徴です。
ただし、保育士個人に直接支給されるのではなく、園が補助金を受け取り保育士へ家賃補助を行っています。補助内容は自治体の判断に委ねられているため、同じ家賃の物件に住んでいても実際の補助金額はさまざまです。
借り上げ社宅制度の対象になるには、いくつもの条件をクリアする必要があります。しかし、住居費を大きくコストカットできるため、生活費を抑えたい方は要チェックです。
ポイント④エプロン・被服費支給
エプロンは、保育士の必需品ともいえるアイテムですが、衛生面や見た目に気をつかうとなると定期的に買い替えが必要です。そのほかにも、Tシャツや上着、帽子に靴など、保育士が用意しなくてはいけない衣類はたくさんあります。
出費がかさみやすい保育士の衣類を支援するため、エプロンを支給したり、被服費として支給する保育園もあるようです。
【求人票】加入保険とは
求人票に記載されている「加入保険」とは、企業がどのような保険や制度に加入しているのかがわかる項目です。「雇用保険」「労災保険」「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」の5つはまとめて「社会保険」と呼ばれており、加入しておくと病気やケガ、失業などのリスクに備えられます。
求人票でよく目にする「社会保険完備」とは、このうち働くうえで重要な「雇用保険」「労災保険」「健康保険」「厚生年金保険」の4つに加入できる企業ということです。それぞれの保険についてもう少し詳しく見てみましょう。
雇用保険
雇用保険とは、労働者の失業の際に、生活と求職活動を安定させるための制度です。従業員が1人以上いれば加入が義務付けられています。
雇用保険ときくと、求職中の手当である「失業保険」をイメージする方が多いのではないでしょうか。そのほかにも多くの種類があります。
求職者給付 | 退職や定年、解雇などで失業した際に支給される手当。・基本手当(失業手当)・傷病手当 |
就職促進給付 | 再就職を目指す方や、再就職後に長く働けるように支給される手当。・再就職手当・広域求職活動費・就業促進定着手当 |
教育訓練給付 | 資格取得やスキルアップのために受けた講座の受講費用が一部支給される。失業者のほかに、労働者にも支給可能。・一般教育訓練給付金・専門教育訓練給付金 |
雇用継続給付 | 介護や育児で休業する際や、高齢者の就業を促すための給付。・育児休業給付・高年齢雇用継続基本給付金 |
失業中にもらえる失業保険を始め、再就職が決まると支給される再就職手当、また雇用中でも支給される教育訓練給付金など、さまざまな制度が利用出来るのが特徴です。なお、雇用保険の保険料は、企業と労働者どちらも負担しています。
労災保険
労災保険とは正式名称を「労働者災害補償保険」といい、業務のケガやそれが起因の病気、通勤中の事故が起きた際に、治療費や休業中に必要な保障を受けられる保険のことです。パートやアルバイトなど雇用形態に関係なく支給されます。
遺族(補償)給付 | 亡くなられた場合、一時金もしくは年金が遺族に支払われる |
療養(補償)給付 | 受診する際の治療費が無料になる |
休業(補償)給付 | 仕事にいけない日は給料の8割が支払われる |
障害(補償)給付 | 万が一障害が残ってしまったら、一時金もしくは年金が支払われる |
介護(補償)給付 | 介護を受ける場合、その費用が支払われる |
原則として、1人以上の労働者を使用する会社は加入が義務付けられており、保険料を支払うのは企業側です。
健康保険
健康保険とは、病気やケガの治療を受ける経済的負担を、互いに支え合う医療保険制度の1つです。成人の医療費の場合、健康保険に加入することで自己負担を3割に抑えることができます。
医療保険制度の種類は、全部で3つあります。会社などに勤めている人が加入する「被保険者保険」、フリーランスの方などが加入する「国民健康保険」、75歳以上が全員対象になる「後期高齢者医療保険制度」です。
一般的な会社員が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合、保険料は労働者と企業で半分ずつ負担しています。病気やケガで診察や治療を受ける以外にも、以下のケースで申請できます。
高額医療費 | 同月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合に、一定以上の金額が後で払い戻される。 |
傷病手当金・出産手当金 | 病気や出産で仕事を休み、給与がもらえない場合、給付金が支給される。 |
出産育児一時金 | 被保険者もしくは被扶養者の出産時に給付金が支給される。 |
厚生年金
厚生年金とは、国民年金(基礎年金)に上乗せする形で加入する年金制度です。法人、もしくは常時5人以上の従業員を雇う事業所は加入が義務付けられています。企業が保険料の半分を担うため、労働者は保険料の負担を抑えながら将来の年金を増やせるのがメリットです。
ただし、公立の保育園や認定こども園で働く保育士は公務員扱いとなるため、厚生年金は加入できません。代わりに共済組合に加入することになるでしょう。
【保育士】求人票の見方まとめ
求職や転職を成功させるには、月給や手当、休暇制度、福利厚生などさまざまな視点で確認する必要があります。求人票は転職に必要な情報がまとめられているので、大事な情報を見落とさず、どのような条件なのかをしっかりチェックしましょう。今回解説した内容をぜひご活用ください。
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