「保育士の配置基準」は、子どもたちの安全と保育の質を守るための重要なルールであり、保育士の働きやすさに直結する数値です。 長らく「時代に合っていない」と言われてきましたが、2024年度(令和6年度)に約76年ぶりの見直しが行われ、さらに2025年度(令和7年度)からは「1歳児」の配置改善に向けた新たな動きが始まっています。

この記事では、これから保育現場がどう変わるのか、最新の配置基準(新基準)の内容や、年齢別・施設別の詳細、そして自分の園が基準を満たしているかの計算方法まで、詳しく解説します。

目次

2025年度(R7)から「1歳児」の配置基準が改善へ

2024年度に3・4・5歳児の基準が見直されましたが、続く2025年度(令和7年度)からは、「1歳児」の配置改善に焦点が当てられています。

法律上の最低基準(6:1)自体が変わるわけではありませんが、「より手厚い人員配置(5:1)を行った園には、国が追加費用(加算)を出す」という制度が新設されます。

1歳児配置加算で「5:1」が可能に

これまでの基準では、保育士1人につき1歳児6人を保育する(6:1)のがルールでした。 しかし、歩き始めで目が離せない1歳児を6人も見るのは現場の負担が大きく、事故のリスクも懸念されます。

今回の施策により、要件を満たして加算を取得する園では、保育士1人につき1歳児5人(5:1)という、ゆとりある配置が可能になります。

「加算」がつくことのメリットは?

この「配置改善加算」を取得している園で働くことには、保育士にとって大きなメリットがあります。

  1. 一人ひとりに丁寧に関われる
    • 保育士1人あたりの子どもの人数が減ることで、個々の発達に合わせたきめ細やかな保育がしやすくなります。
  2. 業務負担と心理的ストレスの軽減
    • 書き物などの物理的な負担が減り、心に余裕を持って子どもたちと接することができます。
  3. ICT導入などで働きやすい環境に
    • この加算を受ける要件の一つに「ICTシステムの活用」などが盛り込まれる予定です。つまり、「1歳児配置改善を行っている園は業務効率化が進んでいる園」である可能性が高いと言えます。

これから転職を考える際は、「1歳児の配置を5:1にしているか(加算を取っているか)」を確認することが、働きやすい職場を見極める新しい基準になるでしょう。

【振り返り】2024年度に行われた3・4・5歳児の基準見直し

2024年度(令和6年度)には、約76年ぶりに「3歳児」「4・5歳児」の配置基準が抜本的に見直されました。 これは経過措置(猶予期間)を経て、すべての認可保育園で順次適用されていく「新基準」です。

変更点①:4・5歳児「30人→25人」へ

これまで保育士1人で30人の子どもを見ていた基準が、25人に引き下げられました。 就学前の大切な時期に、より細やかな指導や見守りができるようになります。これにより、クラス運営の余裕が生まれ、小学校連携などに必要な記録業務の時間も確保しやすくなると期待されています。

変更点②:3歳児「20人→15人」へ

3歳児クラスの基準も、20人から15人に引き下げられました。 身の回りの自立が進む一方で、まだまだ手厚いサポートが必要な3歳児に対し、より安全な保育環境が整います。

2024年度に行われた保育士の配置基準見直し【保育士人材バンク】

参考サイト:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和二十三年厚生省令第六十三号)
参考サイト:こども未来戦略方針(令和5年6月13日)
参考サイト:子ども家庭庁 大臣等会見

そもそも保育士の配置基準とは?

そもそも保育士の配置基準とは?【保育士人材バンク】
そもそも保育士の配置基準とは?【保育士人材バンク】

「保育士の配置基準」とは、保育士1人が担当できる子どもの最大人数(または、子ども何人につき保育士が1人必要か)を定めた法律上のルールのことです。

国の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」にも記載がある通り、認可保育園をはじめとする保育施設は、この基準を守らなければ運営することができません。

保育士の配置基準はいつ決まった?

保育士の配置基準は、子どもの安全と保育の質を担保するために、1948年、国によって設けられました

厚生労働省の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第(三十三条)」に国としての最低基準が定められており、さらに各自治体で独自の基準が設けられています。

保育士の配置基準が定められている法律は?

保育士の配置基準は国が決め、厚生労働省の管轄で法律として定められています

保育士の配置基準の準拠法は、「児童福祉法」です。

参考サイト:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準

保育士の配置基準が見直される理由

これまで、保育士の配置基準に無理があることは保育の現場から多数訴えられてきました。

多くの保育園は国による補助金で運営されるため、現状の配置基準・補助金では子どもを安全に保育できるだけの人員を確保することができず、また保育士不足により現場は疲弊していました。

実際に、5歳児では保育士1人で30人の子どもをみることが難しいとし、独自に保育士を追加配置している園も少なくありません。

こうした保育現場の声や、保育士不足の問題、不適切保育の事件などをうけ、今回の配置基準見直しに至ったと考えられます。

【年齢別】の保育士の配置基準

ここでは、年齢ごとの具体的な配置基準(人数)を解説します。 こちらは国の定める最低基準です。自治体によっては独自の上乗せ基準がある場合があります。

【年齢別】の保育士の配置基準【保育士人材バンク】

※ここでは、認可保育園の基準でご紹介しますが、保育園にはさまざまな種別があり、施設ごとに配置基準が異なります。施設ごとの保育士の配置基準は次章でご紹介しています

0歳児の基準:【3人】(3:1)

保育士1人につき、子ども3人まで
最も手厚い配置が必要な年齢です。授乳、オムツ替え、睡眠のチェックなど、生命に関わるケアが中心となるため、常に大人の目が必要ですね。

1歳児の基準:【6人】(6:1)

保育士1人につき、子ども6人まで
これまでは「6:1」でしたが、前述の通り2025年度からは「5:1(子ども5人に保育士1人)」にする園への加算措置が始まります。今後は5:1で運営する園が増えてることが期待されます。

2歳児の基準:【6人】(6:1)

保育士1人につき、子ども6人まで
イヤイヤ期と重なり、自己主張が強くなる時期です。1歳児と同じく手厚い配置が求められますが、現時点では基準変更の動きはありません。

3歳児の基準:【15人】(15:1)

保育士1人につき、子ども15人まで
2024年度に「20人」から「15人」へ改善されました。活動範囲が広がり、友だちとのトラブルも増える時期であるため、より細やかな見守りが必要とされています。

4歳児・5歳児の基準:【25人】(25:1)

保育士1人につき、子ども25人まで
2024年度に「30人」から「25人」へ改善されました。就学に向けた準備や、集団活動が増える時期です。一人ひとりの個性を伸ばすため、配置人数にゆとりが持たされました。

【施設別】保育士の配置基準の違い

次に、施設の種類別に保育士の配置基準をご紹介します。

保育施設の種類によっても、配置基準のルールは少し異なります。自分が働く施設、あるいは希望する施設の基準を確認しておきましょう。

認可保育園

認可保育園の配置基準は、以下のとおりです。

保育士の配置基準①【認可保育園】【保育士人材バンク】

幼保連携型認定こども園

幼保連携型認可こども園も、基本的には国の配置基準と同じです。

その他、保育教諭の配置などが独自の基準として設定されています。

保育士の配置基準②【幼保連携型認定こども園】【保育士人材バンク】

※満3歳以上の子どもに幼児教育を行う時間は、クラスを作ることおよび専任の保育教諭を置くことが必要

認可外保育施設

認可外保育施設とは、国からの補助金を受け取っておらず、利用者からの保育料で運営される施設です。

※認可を受けるためには、保育園の面積・設備・職員数など、国の基準を満たす必要があります。認可外保育園には、国の基準を満たしていないものや、独自のサービス・保育を提供したいためにあえて認可をとらないものがあります

保育士の配置基準③【認可外保育施設】【保育士人材バンク】

※保育時間が11時間以内の場合は、認可保育園と同じ(上記)配置基準
※保育時間が11時間以上の場合は、保育中の子どもが1名の場合を除き、常時2名以上の配置が必要
※保育者の3分の1以上が、保育士または看護師資格を持っていることが必要

小規模保育事業

2015年から国に認められた認可保育所のひとつで、地域密着型の小規模保育園です。

受け入れられる年齢は「0~2歳」と制限があり、定員数も6名~19名までとなっています。

さらに、定員によって、人数が多い順にA型・B型・C型に分類され、保育士の配置基準もそれぞれ異なります。

小規模保育事業A型(定員6名~19名)の保育士配置基準

事業所内保育所や小規模保育所の配置基準【保育士人材バンク】

※保育士資格を全員所持していることが必要
※保育所の配置基準(上記表)プラス1名が必要

小規模保育事業B型(定員6名~19名)の保育士配置基準

事業所内保育所や小規模保育所の配置基準【保育士人材バンク】

※保育士資格を半数所持していることが必要
※保育所の配置基準(上記表)プラス1名が必要
※看護師・准看護師・保健師を、保育士とみなす特例あり

小規模保育事業C型(定員6名~10名)の保育士配置基準

※子ども3名に対して保育士1名が必要(補助者がいる場合は、5名に対して2名)

※資格は家庭的保育者所持であれば可

家庭的保育事業

家庭的保育事業とは、主に自宅で子どもを受け入れる事業のことで、「保育ママ」などと呼ばれます。

受け入れは0歳から2歳まで、定員数は5名以下となっています。

家庭的保育事業の配置基準【保育士人材バンク】

事業所内保育事業

事業所内保育事業とは、主として企業で従業員の子どもを預かる保育施設です。

受け入れは0歳から2歳までとなっています。

事業所内保育所や小規模保育所の配置基準【保育士人材バンク】

※20名以上の場合、上記に加え1名以上の保育士の配置が必要

居宅訪問型

居宅訪問型とは、ベビーシッターや保育士が自宅へ訪問し、1対1で保育を行なう事業です。

対象は0歳から2歳までとなっています。

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保育士の配置基準を満たしていないとどうなる?

保育士の配置基準を満たさない場合、法令違反となり、保育園の運営ができなくなります

認可保育園では、年に一度、配置基準を満たしているかどうかの立ち入り調査が行なわれます。

その際に基準を満たしていない場合、以下のような段階を経て「改善指導」「閉鎖命令」へと進んでいきます。

※自治体によって基準や段階は異なる場合もあります。

保育士の配置基準を満たしていない「段階①」【指導監査】

認可保育園では、数年に1度、行政の監査が義務付けられています。

配置基準を満たしていないと指摘を受けると、「指導監査(特別監査)」が実施されます。

指摘を受けた場合は、改善計画書などを作成し提出する必要があります。

保育士の配置基準を満たしていない「段階②」【改善勧告】

監査後、1か月に文面での「改善指導」がなされます。

保育士の配置基準を満たしていない「段階③」【認可の取り消し/事業の停止命令】

意図的や長期にわたり改善されない場合などは、認可の取り消しなどペナルティが発生する場合があります。

配置基準は見直しや緩和がされてきている

保育士の配置基準は、1948年に制定されてから76年間変わらずにきていました。

ただ、これまでにも見直しや緩和はされてきています。

2016年には、「保育所等における保育士配置に係る特例」によって、待機児童問題の解消のため、一時的に保育士の配置基準が緩和されました。

緩和の内容は、以下のような内容でした。

配置基準の緩和
  • 朝夕などの子どもが少ない時間には、保育士2名が必要だったところを1人に緩和
  • 幼稚園教諭や小学校教諭等の免許を持っている方を保育士としてカウントできる
  • 保育士2人のうち1人は研修を受けた子育て支援員でも代替可能など

2024年度(令和6年)の見直しでも、まだまだ現場の状況が改善されたとは言えないため、今後も見直しが続くと思われます。

保育士の配置基準の計算方法

保育士の配置基準の計算とは、保育園に必要な保育士の数を求めるものです。

保育士の配置人数を計算するときは、自治体で独自に基準を設けている場合、自治体の基準を参考にして、特に基準が設けられていない場合は国の基準を参考にしましょう。

計算は、以下の手順で行なわれます。

保育士の配置基準の計算方法①【年齢ごとに在園児の数を書き出す】

まず、0歳から5歳まで、現在、保育園に在園している子どもの人数を書き出します

認可保育園の在園児数の例

年齢在園児の人数
0歳児5人
1歳児15人
2歳児15人
3歳児25人
4歳児30人
5歳児30人

保育士の配置基準の計算方法②【在園児の数を配置基準で割る】

次に、年齢ごとに、在園児の数を配置基準の数で割り、合計を出します

以下の例だと、和が10.72になり、四捨五入して11人、この園には保育士の配置が必要ということになります。また、厳密な計算方法は自治体によっても違いがあり所属する地域の計算方法を確認することが大切です。

年齢在園児配置基準計算
0歳児5人3人5人÷3=1.66
1歳児15人6人15人÷6=2.5
2歳児15人6人15人÷6=2.5
3歳児25人15人25人÷15=1.66
4歳児30人25人30人÷25=1.2
5歳児30人25人30人÷25=1.2
園に必要な保育士の数11人(10.72)

※2024年度(令和6年度)からの配置基準で計算しています
※本情報は各年齢別に計算をして、小数点第2位は切り捨てで計算しています
※切り捨て方法など厳密な計算方法は各自治体などに確認をしてください

保育士の配置基準がおかしいのは本当?海外や世界はどうなの?

日本では保育士の配置基準がおかしいと長年いわれてきました。

設定された配置基準では子どもに十分に目が行き届かず、安全性に問題が生じたり、保育士の負担が大きすぎたりしたためです。

そもそも海外では、保育を教育に一元化する動きが主流で、保育から教育へと変わりつつあります。

OECD(経済協力開発機構)のデータによると、3歳以上の保育で保育士1人あたりがみる子どもの人数は18人なのに対し、保育所だと3歳児20人、4~5歳児30人と最多でした(参加19か国中)。

海外と比べても、かなり保育士の負担が多いことがわかります。

参考サイト:OECD国際幼児教育・保育従事者調査 (TALIS Starting Strong)

配置基準はきつい?実際の保育士の不満

国が定めた保育士の配置基準(2023年度までの基準)では、明らかにきついという声が保育現場からも上がっています

4歳児・5歳児30人を、保育士1人で安全に見ることができるかというと、不可能に近い現実があります。

働く保育士は、背中にも目がないと無理だと言います。

実際、安全面から独自に人員を増やしている園も少なくありません

加えて、保育士の仕事は子どもの見守りだけではありません。

子ども30人を見守りながら、事務仕事や保育準備なども行なっている現状があります。

そうしたなか、保育士のサービス残業、労働環境、低賃金の問題が保育士不足の現実を生んでいるといえます。

現在の配置基準に不満がある場合の対処法

こうした保育士の現実を目のあたりにし、改善に取り組む園や自治体も少なくありません。

独自に保育士の負担が減るような配置基準を設定したり、給料面で待遇を改善しようとしたりする自治体もあります。

保育士は「どの自治体、どの園で働くか?」をよく考えてから就職や転職をすることで、今より働きやすくなる可能性はあるでしょう。

自治体や園が現在の配置基準をそのままにして、人員配置を決定している場合、働く保育士は不満を持ってしまっても仕方がない現実があります。

もし、現在の働き方や園の人員配置に不満がある場合は、転職を考えることもひとつの選択肢といえるでしょう。

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保育士の配置基準のまとめ

保育士の配置基準のまとめ【保育士人材バンク】
保育士の配置基準のまとめ【保育士人材バンク】

2024年度(令和6年度)から、保育士の配置基準が見直され、保育士1人あたりがみる子どもの人数が少しだけ軽減されました。

保育士の処遇改善は年々進められており、今後はさらに保育業界は働きやすい環境になっていくと考えられます。

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