「発達支援のお仕事が気になる」「専門的な知識を得たい」と思っていても、必要な資格や働ける職場の種類が分からない、という方も多いのではないでしょうか。今回は資格取得や福祉の分野で働きたい方に向けて、おすすめの資格や働き方をご紹介します。
発達支援に必要な資格はある?
実は発達支援の現場では、必ずしも国家資格が必要というわけではありません。
たとえば放課後等デイサービス(放デイ)や児童発達支援、福祉施設などでは、国家資格を持っていない方でも、一定の研修や任用資格をクリアしていれば働けるケースも多くみられます。
ただし、資格に意味がないかというと、そうではありません。国家資格である保育士や教員免許、公認心理師などを持っていれば、配置基準を満たす人材として採用されやすくなったり、キャリアアップにつながったりするメリットがあるからです。
また、発達支援に関する民間資格や、受講によって就職・転職に役立つ研修制度なども増えています。就職に資格が必須じゃなくても、履歴書に資格として記載されていれば、どんなスキルや経験があるかが伝わりやすくなるでしょう。なにより、資格を取るために学んだことは、その後の仕事でとても役に立つはずです。
資格取得が職種を決めるヒントになる
発達支援に関する職種はとても多様化しているため、職場によって仕事内容や求められるスキルもさまざまです。働いてみると「思っていたのと違った」なんてこともめずらしくありません。
実は「どんな仕事が向いているか分からない」という方にこそ、資格取得が大きな意味をもちます。資格を取るまでの過程で専門的な知識が身につき、自分に合うかどうかイメージしやすくなるからです。
発達支援の仕事が気になる場合は、まずは関連する資格取得を目指してみて、自分の進みたい道を確認するのも選択肢のひとつといえるでしょう。
発達支援に関わる資格7選
発達支援の仕事に関する資格を「国家資格」「任用資格」「民間資格」の3つに分けて、代表的な7つをご紹介します。
国家資格
国家資格とは、国の法律で定められた資格のことで、養成校での課程修了や試験の合格が必要です。
保育士

厚生労働省が定める国家資格で、保育所・児童福祉施設・放課後等デイサービスなど、幅広い福祉の現場で求められています。発達支援の現場で働くことを目指している方も、まずは保育士資格を足がかりに経験を積むケースも多いです。加配職員や児童指導員の要件を満たす場合もあります。
公認心理師
公認心理師は2017年から施行された国家資格で、専門知識と技術で心理的な問題を抱えている人に支援する職業です。医療・教育・福祉など幅広い分野で活躍していますが、子どもの発達支援の分野でみると、おもに児童発達支援や放課後等デイサービスなどで活躍しています。指定大学や大学院での履修や実務経験など、取得するにはややハードルが高い資格です。しかし、発達障がいのある子どもの特性を深く理解し、保護者の支援にも活かせる専門性の高さが強みとなります。
任用資格
任用資格とは、試験ではなく学歴やほかの資格などの条件を満たすと「資格あり」とみなされるものです。
児童指導員任用資格
児童指導員は、子どもの心身の健康と成長を支援するための職業です。放課後等デイサービスや児童養護施設などをはじめ、児童福祉施設では児童指導員の配置基準が設けられている施設があります。任用資格であるため、児童指導員を配置している事業所に勤めている場合に資格の効力が生まれます。
任用資格自体に試験などはありませんが、発達支援の場で児童指導員は大切な役割を担っています。大学で福祉・心理・教育のいずれかを専攻していた場合や、一定の実務経験、教員免許や国家資格保有者など、児童指導員任用資格を得る要件を知っておくと、その後のキャリアアップにも役立つでしょう。
>>児童指導員とは?任用資格の取得方法や平均年収、働ける施設もご紹介
民間資格
民間資格とは、民間の団体や企業、NPO法人などが独自に認定している資格です。
児童発達支援士
発達支援の基本知識や対応方法を学べる資格です。また、発達障がいだけでなく、子どもの発達や子育てに関する知識を得たい方にも向いています。民間資格ながら知名度が高く、合格率も高めなため、初めて発達障がいや支援のことを学ぶ方でも無理なく取り組めるのが特徴です。
発達障害児支援士
発達障害児支援士は、児童発達支援士よりもより応用的で専門的な知識を学べる資格です。療育方針の立て方、保護者対応、関係機関との連携など、現場で求められる視点を養えます。具体的なアプローチ方法や療育の知識を身に付けられるため、キャリアアップを目指す方にもおすすめです。
子ども発達障害支援アドバイザー
子ども発達障害支援アドバイザーとは、子どもの発達や障がいの特性を理解し、一人ひとりに合わせた配慮や支援方法が学べる民間資格です。保育の現場で感じる「関わり方が難しい子ども」が感じていることや困りごとに対して適切なアプローチができるようになり、子どもや保護者に寄り添える存在になります。
自閉症スペクトラム支援士
自閉症についての専門性を高めたい場合は、「自閉症スペクトラム支援士」の取得を目指すのも選択肢のひとつです。「STANDARD」「ADVANCED」「EXPERT」の3段階に分かれており、自閉症のある子どもへの支援技術を段階的に深められます。資格取得の要件や難易度は高めですが、専門性を高めたい人、療育分野のプロとしてキャリアを築いていきたい方に向いています。
発達支援の資格が活かせる職場
発達支援に関する資格を持っていると、保育や福祉の分野で広く活躍できます。資格を活かせる主な就職先は以下のとおりです。
児童発達支援・放課後等デイサービス
発達支援の資格がもっとも活かされる職場の一つが、「児童発達支援事業所」や「放課後等デイサービス」です。どちらも障がいや発達の遅れがある子どもを支援する施設ですが、対象年齢や支援の内容に違いがあります。
<主な違い>
対象年齢 | 支援内容 | |
児童発達支援 | 0歳~6歳までの未就学児 | 日常生活の基本的な動作やコミュニケーション力など、言葉・遊びを通じて将来の集団生活や就学に向けたサポートを行います。 |
放課後等デイサービス | 小学生から高校生までの就学児 | 学校が終わった後や長期休みに通い、学習支援や社会性のトレーニングなどを通して、子どもたちの成長を支援します。 |
どちらの施設も、保育士や児童指導員任用資格を持つ職員のほか、作業療法士や言語聴覚士などの専門職がチームを組んで働いています。発達支援に関する資格を持っていれば、特性への理解があることが伝わりやすく、実際の業務でも大きな強みとなります。
保育園・幼稚園
乳児・幼児が集団生活をおくる保育園や幼稚園の現場でも、発達に関する知識やスキルがとても役立ちます。子どもの様子から「どんなサポートが必要か」を判断でき、保護者の相談役としても重要なポジションを担えるようになるでしょう。
支援が必要な子どもへのサポートや声掛けのスキルは、障がいの有無に関係なくどんな子どもとの間でも役立つ機会が多いです。保育士資格と幼稚園教諭のほかに、発達支援に関する資格を持っておくことで、さらなるスキルアップとなります。支援が必要な子どもが増えている今、保育現場では幅広いスキルを持つ保育者が求められています。
知的障がい児の福祉型入所施設・医療型入所施設
重度の発達障がいや身体障がいを併せ持つ子どもたちが入所する福祉施設や病院では、より専門的な支援スキルが求められています。
施設によって入所する子どもの様子や支援の範囲はさまざまです。大きく分けると、日常生活や知識・技能の習得をサポートする「福祉型障がい児入所施設」と、医療や看護の提供を兼ね備えている「医療型障がい児入所施設」に分けられています。また、知的障がい児施設で働くには、「児童指導員任用資格」が必要となるケースが多いです。
※知的障がい児入所施設の詳しい記事はこちら
居宅訪問型児童発達支援
居宅訪問型児童発達支援とは、子どもの特性や家庭の事情により、施設ではなく家庭内での支援が求められているケースに対応するサービスです。
主に18歳までの子どもで、重度の障がいで外出が困難であること、強い行動障がいがあり集団生活が難しいなど、いくつかの条件に当てはまる場合に対象となります。
通常の発達支援と比べてより専門的な支援が必要になる場合が多く、家庭との連携が欠かせません。少人数、もしくは一人で支援にあたることもめずらしくないため、高いスキルが求められますが、そのぶんやりがいも大きいでしょう。
保育士や児童指導員の資格も持ち、さらに障がい児施設での経験を積み重ねていけば「訪問支援員」の資格取得への道も開かれます。
相談支援
自治体の発達相談や家庭支援センターには、「相談支援専門員」という職種が存在します。障がい児やその家族からの相談を受け、必要な支援内容や利用するサービスを決めたり、個別計画を作成したりするのが主な業務です。
相手の悩みや要望をしっかりとヒアリングし、関係機関と連携しながら支援を行っていくには、高い専門知識とコミュニケーション力が必要になるでしょう。
障がいを持つ方と家族を地域で支えていくための要となる存在です。働くために必須となる資格はありませんが、発達支援に関する資格があれば、転職時に知識やスキルを示しやすくなります。


自分に合った職場の探し方

発達支援の現場では、それぞれ求められる支援の内容や働き方が異なります。次でお伝えする職場探しのポイントをぜひ意識してみてください。
自分が目指す支援スタイルや条件を洗い出す
多種多様な発達支援の仕事のなかから自分に合った職場を探すなら、まず「自分はどんな支援をしたいのか」を考えてみましょう。身体的な介助を伴う重度障がい児の支援か、発達にばらつきのある子どもへの関わりか、保護者とどの程度関わっていきたいのかなど、自分の希望や得意なことを整理してみてください。
賃金や勤務時間、福利厚生などについてもあらかじめ洗い出しておくこともおすすめします。仕事のやりがいだけでなく、働きやすい職場環境であることも長く働き続ける大切なコツです。「これだけはゆずれない」というポイントを挙げておくと、求人を探すときに絞りやすくなります。
働き方や仕事内容の違いをよく確認する
施設によって、支援の方針や職場の様子は大きく異なります。たとえば、大きな施設では職員もチームで連携を取りながら動いているケースが多く、研修制度やキャリアアップにも期待が持てます。一方、小規模な施設では、一人ひとりにじっくりと寄り添った支援ができるのがメリットといえるでしょう。
そのほか、支援対象となる子どもの年齢も重要です。未就学児、小学生、高校生、または成人支援まで行っているのかなど、対象によって支援方法も職場の雰囲気も大きく変わります。
見学や職場体験など、自分の目で見て確かめる
可能であれば、就職・転職の前に見学や職場体験をしてみるのがおすすめです。実際の現場の雰囲気やスタッフの対応、子どもとの関わり方を肌で感じることで、「自分に合うかどうか」が判断しやすくなります。
また、求人票に書かれていない部分(残業の有無、チームの雰囲気、休憩の取りやすさなど)こそ、実際の働きやすさに直結するため、見学や面談で直接確認できると安心です。気になることや不安は事前に解消してから応募に進みましょう。
求人サイトやハローワークを活用する
発達支援に関わる職場の求人は、ハローワークや福祉系の求人サイトに掲載されています。勤務地や勤務時間、資格条件などを絞って検索することで、自分に合う求人を効率よく探すことができるでしょう。
福祉系の合同説明会などでは、複数の事業所の採用担当と話す機会を持つことができ、求人票からでは得られない情報を聞けることがあります。情報収集の場として活用すると便利です。
転職エージェントを活用する
「資格を取ったけれど、どんな職場が合うか不安…」という方には、保育や福祉分野に詳しい転職エージェントを活用するのも一つの手です。
保育や福祉に特化している「保育士人材バンク」では、専門のキャリアアドバイザーが希望条件を丁寧に聞き取ります。希望する働き方や条件とマッチした職場を紹介してくれるため、自分に合った職場と出会えるのも魅力です。
また、履歴書の添削や面接アドバイスなど、転職に不慣れな方へのサポートも充実しています。「転職するか未定だけど、とりあえず相談してみたい」という方も、ぜひお気軽にご利用ください!
まとめ
発達支援に関わる資格は、国家資格から研修修了証、民間資格までさまざまです。
どの資格を選ぶかによって、活躍できる職場や支援の内容も変わってきます。まずは自分の興味や将来像に合わせて、必要な資格や経験を考えてみましょう。
「保育士人材バンク」では、資格や経験を活かせる職場探しをサポートしています。自分に合った職場を見つけたい方は、ぜひ一度相談してみてください。