日々の保育を振り返り職員や地域へ共有する、「自己評価」を行っている保育園が増えています。保育士の成長に繋がる取り組みですが、何を書けばいいのか悩む方もいらっしゃるでしょう。今回は、自己評価のポイント解説と例文をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

保育士の自己評価はなぜ必要?

保育士の自己評価とは、保育の実践を振り返り評価することをいいます。自分の強みや課題を見つめ直し、よりよい保育を行うために活用されている仕組みです。

2008年に厚生労働省が策定した「保育所保育指針」においても、自己評価の内容が明示されております。その後、具体的な取り組み方や保育での活かし方をまとめた「保育所における自己評価ガイドライン」が発表され、現在では導入する保育施設が増えています。

出典:厚生労働省「保育所保育指針」「保育所における自己評価ガイドライン

自己評価の目的

子どもの理解を深める

保育への手ごたえを感じ、やりがいを高める

反省点と良かった点をすみ分け、自己の成長につなげる

自己評価をすることで、子どもに適した関わり方や環境を用意できているか客観的に評価できます。また、職員同士で共有することで、協力体制も取りやすくなるでしょう。

結果として、子どもに対してより高い質の保育が提供できるようになります。

保育士の自己評価の書き方は?

自己評価をするにあたって、「目標設定」が重要となります。自分の強みや課題を洗い出すために、あいまいな内容ではなく具体的な目標設定が必要です。

自己評価の流れ

自己評価の流れ【保育士人材バンク】

参考:厚生労働省「保育所における自己評価ガイドライン

自己評価の流れは、「目標設定」→「実践」→「振り返り」→「改善・向上」です。

まずは具体的な目標を立て、実践しながら子どもの様子や成長を記録に残します。

振り返りの際は、設定した目標と実際の様子を照らし合わせ、改善すべきことや充実していくことを見出して次に繋げていくことが大切です。

自己評価での気付きは今後の課題とし、保育の向上と子どもへの理解を深めます。

自己評価のための振り返りポイント

基本的な観点についてはガイドラインで示されており、ポイントは以下の3つです。

・子どもへの理解・実践に関すること
・保護者対応や地域との連携に関すること
・職員同士や保育運営に関すること

具体的な内容を詳しくお伝えします。

自己評価で子どもに関することはどう書く?

子どもに関する主な自己評価ポイントは次の通りです。

  • 子どもの一人ひとりの人格を尊重しているか
  • 子どもの育ち、個性、生活の状況などを理解しているか
  • 保育に適した環境(人・物・場)を用意できているか
  • 関わり(援助・行動・言葉・位置・タイミング・配慮など)は適切か
  • 計画や記録にもとづいて実践ができているか

自己評価で保護者対応はどう書く?

保護者対応や地域に関する主な自己評価ポイントは次の通りです。

  • 家庭の状況に配慮した個別的な支援ができているか
  • 家庭と保育の情報を共有できているか
  • 保護者のニーズや意向を把握できているか
  • 不適切な養育が疑われる家庭へどんな支援をしているか
  • 地域の多様な人々と交流、連携ができているか

自己評価で職員連携をどう書く?

職員連携に関する主な自己評価ポイントは次の通りです。

  • 保育理念や目標が共有できているか
  • 健康で安全に過ごせる環境を用意できているか
  • 職員が学び合う姿勢や機会が用意されているか
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【役職別】保育士の自己評価記入ポイント

【役職別】保育士の自己評価記入ポイント【保育士人材バンク】

ここでは、役職ごとにどんな視点で目標と振り返りを行うのか、自己評価のポイントを解説します。

一般保育士の自己評価記入ポイント

新卒から保育士歴3年ほどの保育士は、社会人としての基本的な振る舞いや、周囲から学ぶことへの意欲が求められます。どんな目標を立てていいか悩む方は、お手本になりそうな先輩保育士を観察し、自分がどんな保育士になりたいのか考えてみましょう。

また、目標や振り返りができたら、積極的に先輩保育士や主任・園長先生に確認しましょう。

職務分野別リーダーの自己評価記入ポイント

約3年以上の現場経験を持ち、都道府県単位で行われているキャリアアップ研修を修了した保育士は職務別リーダーとなります。受講した職務分野に関わる視点で目標を立ててみるのもおすすめです。

また、そもそも園や法人が職務分野別リーダーに何を求めているかを確認することも大切ですね。

専門リーダーの自己評価記入ポイント

専門リーダーは、一般保育士や専門分野別リーダー以上の知識と経験を持ち、保育現場でも責任ある仕事を任される機会が増えている立場です。

子どもだけではなく、園や周りの職員にどのような貢献ができたかを振り返るよい機会だと考えましょう。

副主任の自己評価記入ポイント

副主任保育士になる保育士には、主任の補佐やサポートをはじめ、後輩の指導や育成も求められます。もちろん、個人としてのスキルアップも必要です。保護者から頼られる機会も増えるため、コミュニケーション力も必要になっていくでしょう。

園長や主任の考え方や園の方針を上手く他の人に伝えることができたかなどの情報を伝える場面を振り返ることも大切ですね。

主任の自己評価記入ポイント

主任以上の役職になると、個人としての振り返りだけでなく、保育園全体をよりよくする視点が必要になります。キャリアアップを目指す方は、内部や外部の関係者との連携、トラブルに対する冷静な判断力の向上がポイントになるでしょう。

参考:「保育士の主任になるには?主な役割や仕事内容、年収・給料、メリット・デメリット、向いている人は?

園長の自己評価記入ポイント

園長は保育士一人ひとりの自己評価を踏まえ、保育士が互いに学び合う環境か、子どもにとって安全に過ごせる場を提供できているかなどを考えます。保育士から挙がってきた改善点を次に向けてどう活かすのかが大切です。

参考:「保育園の園長とは?園長になるには?年収や仕事内容、役割、資格要件、年齢、自己評価の仕方は?

【担当別】保育士の自己評価記入例

【担当別】保育士の自己評価記入例【保育士人材バンク】

ここからは、自己評価の記入例を担当クラス別にご紹介します。

フリー担当の自己評価記入例

フリー担当とは、特定のクラスに配属されるのではなく、人手の必要な状況に合わせて臨機応変に動く保育士のことです。すべての年齢の子どもと関わるオールラウンダーとして、対応力とサポート力の高さが求められます。

<目標例>
  • 各クラスの子どもに安心感を持って貰うよう一人ひとりの子どもと信頼関係を築く。
  • クラス担当が次に何をしたいのか気にかけ、必要に応じて確認しながら準備をする。
<自己評価例>
  • 慣れない保育士からの関わりでも不安にならないように、目を見て笑顔で話しかけることを意識した。その結果どのクラスに入っても子どもが安心して生活でき、スムーズな保育をすることができた。
  • クラス担任に相談せず、次の活動準備をしてしまったことがあった。子どもの成長に合わせ活動を変えたいタイミングであったようで、必要のない準備になってしまった。担任に声を掛けて認識を合わせることや、自分から週案を確認して目線を合わせることが必要だった。

0歳担当の自己評価記入例

月齢による個人差が大きい0歳児保育には、子ども一人ひとり異なる保育が必要です。また、身近な大人と愛着関係が育まれる大切な時期であるため、日頃のスキンシップがどうであったか記入するとよいでしょう。

<目標例>
  • 子どもが園で安心して過ごせるように、ふれあい遊びや言葉がけを積極的に行う。
  • 保護者が不安にならないよう、子どもの園生活の様子をよく共有する。
  • ケガや事故を防ぐため、床や棚にものが置きっぱなしにならないようにして、常に保育室内が整理整頓されている状態にする。
<自己評価例>
  • ふれあい遊びや言葉がけを積極的に行い、子どもたちが安心して保育生活を楽しむ様子が増えた。
  • 子どもの様子を保護者へ積極的に共有し、園を安心して利用頂けるようになった。また保護者が安心することで、子どもも情緒が安定し登園するようになった。
  • 1日に1回整理整頓の時間をつくり、保育環境の整備ができるようになった。行政監査の際にも保育環境が整備されている旨の評価を頂いた。

1歳担当の自己評価記入例

1歳児クラスは、歩き出す子どもが増えて活動範囲が広がります。大人の言葉も少しずつ理解できるようになっていくでしょう。子どもの興味関心に応じてさまざまな経験ができるよう保育士も関わっていく必要があります。1歳児の特性を踏まえながら保育者がどんな関わりを持っていきたいかを記入していくとよいでしょう。

<目標例>
  • 四季ごとに五感を刺激する遊びを取り入れ、身体や情緒の発達を楽しみながら行なえるようにする。
  • 保育者が明確な言葉の使い方やリアクションをすることで、子どもの言語発達を促したり、言葉の意味を学ぶきっかけをつくったりする。
<自己評価例>
  • 太鼓遊び、プールや落ち葉遊びなど、園内外で全身を使う遊びを積極的に取り入れたことで、子どもが保育園の行事や活動に期待感を持って参加することができるようになった。また、体力がつき外で遊ぶ時間を伸ばすことができた。
  • 保育者が日常的に、明確な言葉使いやリアクションをすることを意識していたため、子どもが大人の言葉や行動(表情)を真似する場面が増えた。また、手遊びや歌の時間を多く取り入れたことで、子どもが自分から歌う場面を多く見ることができた。

2歳担当の自己評価記入例

「イヤイヤ期」とも呼ばれる2歳児は、関わり方に難しさを感じることも増えます。本人のやりたい意志を受け入れつつ、必要に応じてお手伝いをすることが大切です。子どもの様子を捉えながら、その子にとってどのような関わりが最適であったかを振り返れるようにしましょう。

<目標例>
  • スプーンやフォークの使い方や「〇〇おいしいね」などの声掛けを行い、食事のおいしさや大切さを伝えていき、子どもが食べ物への興味関心を広げられるようにする。
  • 子どもが言葉で伝えきれない思いを代弁し、表現を引き出していく。
  • 園外活動の際は、子どもたちが視界から外れないよう保育士を配置する。
<自己評価例>
  • 子どもが自分で食べたい気持ちを尊重するため、食べる様子を見守った。また、食具の使い方を伝える中で上手に使えた時は積極的に褒めるなど、子ども自身が食への興味を広げられるように行動した。
  • 「〇〇したかったの?」「〇〇は嫌だったんだね」と子どもの気持ちを代弁し、やりたい気持ちを汲むことができ、子どもが自分の気持ちを言葉で伝えられるようになった。
  • 園外活動では保育士同士で声を掛け合い、見守る子どもの人数や場所を連絡し、大きな怪我や事故を0件とすることができた。

3歳担当の自己評価記入例

運動能力が発達し、基本的な動作ができるようになります。食事や衣服の着脱、排せつなど、大人のサポートを必要としながらも身辺自立が進む時期です。サポートをした内容を振り返り、保育や子どもの理解を深めていきましょう。

<目標例>
  • 日常的な生活習慣を身に着けることができるように、生活リズムが確立できる一日の流れを作成、実行する。
  • 子どもが主体的に各活動に参加できるよう、声掛けや遊びを展開していく。
<自己評価例>
  • 今年のクラスの子ども達に合わせた一日の流れや活動を検討し実行をした。子どもが一日の流れを覚えて、各活動の準備が自分でできるようになった。
  • 遊びの環境を、保育者が決めるのではなく、子どもが決める時間を作ったことで、主体的に考え行動する場面が増えた。

4歳担当の自己評価記入例

4歳児は語彙力が増え、相手の気持ちを想像したり思いやったりと社会性も芽生える時期です。主体性が高まり、物事にチャレンジする様子が増えていくでしょう。保育者が準備した活動や環境が子どもの成長にどのように影響したのかを記入すると良いかもしれません。

<目標例>
  • 子どもが協同的に生活できる環境をつくる。
  • ルールのある遊びなどを取り入れて、子ども達だけで遊びが成立するように促す。
<自己評価例>
  • 保育者がすぐに答えを伝えるのではなく、「次は何をしたほうがいいかな」などと「何を考えるべきか」の声掛けをすることで、子ども達が話し合って自分で活動を進める機会が増えた。
  • ルールのある遊びを積極的に取り入れたことで、その面白さを子ども自ら体験することができ、自分たちで遊びの提案をすることができるようになった。

5歳担当の自己評価記入例

5歳児になると基本的な生活習慣が身に付き、自分の気持ちや状況を言葉で説明できるようになります。あえて保育者が介入せず、見守ることも必要になっていくでしょう。就学を見据え、社会性が育まれていくような取り組みを行います。小学校の接続の観点を見据えた目標とその振り返りの視点を持つとよいでしょう。

<目標例>
  • 一日の保育時間を子ども達が自分で気づいて生活できるように見守り、最低限の声掛けで各活動が進められるようにする。
  • 小学校との接続を意識して、生活習慣や各活動を取り入れる。また、各小学校との連携を行い、要録などを滞りなく作成する。
<自己評価例>
  • 期の前半は、保育者が声をかける回数が多くあったが、意図的に数を少なくし、子どもが気づけるタイミングを待つことで、後期は子どもが自分で気づき生活ができるようになった。
  • 各小学校の教諭と連携をとり、要録を滞りなく送付した。主任より何度か要録の書き方について指摘をいただいた場面があったので、次回作成時には同じ指摘を頂かないようにする。

自己評価の活用法

自己評価の活用法【保育士人材バンク】

自己評価は、保育の質を高めるほかにどのようなメリットがあるのでしょうか。保育士自身の活用法をお伝えします。

自分の強みを知るよい機会

自己評価をするにあたって、自分を客観的に振り返る機会が増えます。自己評価でわかった自分の強みは、その後のキャリアや転職活動でも活かせるでしょう。

参考:「保育士の転職活動のベストタイミング(時期)は?働きながらの転職はバレる?スケジュールや求人のピーク

また、弱みだった点も自己評価で反省点を客観的に見つめ直し、改善していくことで強みへと変化する可能性があります。「こんなことを頑張ってきた」という経験が積み重なるほど、保育士としての自信ややりがいが高まるでしょう。

自分の価値観を見つめ直す機会

自己評価をしていると、自分保育の中でこういったことを大切にしていたんだな」と客観的に自分の保育観を知ることがあります。

また、自己評価には決まった形式がないため、保育園によっては自己評価の内容に園の方針が色濃く影響していることもあります。

そのような中で、園の方針と自分の保育観が「もしかしたら合っていないのかも……」と思うことがあるかもしれません。

保育士がやりがいを持って働くためには、保育園の方針や価値観が自分と合っているかどうかがとても大切です。どうしても合わないと感じたら、転職活動も視野に入れてみましょう。

保育士のやりがいについては、別途以下の内容でも記載しております。気になる方は、是非チェックしてみてください!

>>保育士がやりがいを感じることは?魅力や楽しさ、喜び、保育士になって良かったこと、大変なこと

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保育士の自己評価まとめ

保育士が自己評価を行い、保育の振り返りや改善を行うと、子どもに提供する保育の質や保育士としてのが高まります。

それだけでなく、自分自身の強みや弱み、保育への思いを具体的な言葉で示すことができるようになるため、保育士自身もスキルアップやキャリアプランを考えるよい機会になるでしょう。

振り返りを行う中で、自分の思い描く保育やキャリアプランに不安を感じたときは、先輩保育士や主任園長先生に相談してみてはいかがでしょうか。

もしかしたら、先輩たちも同じ不安を感じていた頃があるかもしれず、アドバイスをもらえることもあるでしょう。

それでも、どうしても解決できない場合は、思い切って転職を考えるのも一つの手です。

自己評価を通して、具体的になった自分の強みを活かすことができるかもしれません。

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