保育士の処遇改善手当で給料が上がると聞き「今どうなっているの?」「今後、どうなるの?」と、気になっている方も多いと思います。

この記事では、2025年度(令和7年)の処遇改善加算一本化を含め最新の保育士処遇改善手当に関する情報をご紹介します。

目次

【保育士の処遇改善手当】この記事でわかること

保育士の処遇改善手当とは、保育士の給料が上がるために国や自治体から出される補助金のことです。

実際に現場で働く保育士の方は、「現状、どれくらいの手当が出ているのか?」「今後、処遇改善手当がどのようになっていくのか?」気になっていると思います。

国から出る保育士の処遇改善手当は、正式には「保育士処遇改善加算」といい、内閣府主導で、認可保育園を中心に実施されています。

要件を満たしている場合、国から各保育園へ補助金が振り込まれ、そのぶん保育士の給料もアップしているはずです。通常、給料明細には、「処遇改善手当」として補助金分が基本給とは別に明記されます。

ただし、処遇改善手当は保育士ではなく保育園に振り込まれる仕組みとなっており、分配方法は園によっても異なります。数年前には、補助金を分配していない保育園があったことも問題になりました。

保育士自身で、処遇改善手当について正しく理解し、必要額をもらえているかを自身でも確認することが大切です。

そこで、本記事では、保育士の処遇改善手当について金額や概要を紹介し、もらえる人・もらえない人を条件別にわかりやすくご紹介します。また、昨今では処遇改善加算1~3を一本化する動きもあり、こちらも合わせてご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。

保育士の処遇改善手当とは?

保育士の処遇改善手当とは、主に2013年から内閣府(国)が実施している「処遇改善加算」の制度によって支給される補助金のことを指します。

保育士は他の職種と比べて給料水準が低いとされ、条件の悪さから慢性的な保育士不足が続いていることから、保育士の給料アップのための取り組みとして、処遇改善加算制度がスタートしました。

保育士の年収推移をみてみると、保育士の処遇改善加算制度がスタートした2013年(平成25年)から、毎年、保育士の給料が上がり続けていることがわかります。

保育士の年収推移【保育士人材バンク】
保育士の年収推移【保育士人材バンク】

引用サイト:厚生労働省 保育士の現状と主な取組

ただ、保育士の年収は処遇改善手当により年々アップしてきてはいますが、国税庁の令和元年度の調査では日本の給与所得者の平均年収は「436万円」

現状でも保育士の年収は、日本の平均より61万円ほど低くなっています。

日本の平均年収参考サイト:国税庁「令和元年分 民間給与実態統計調査」
保育士年収参考サイト:e-Stat_政府統計の総合窓口:令和2年賃金構造基本統計調査

2017年(平成29年)には新制度「技術・経験に応じた処遇改善」が追加、また2025年度では処遇改善加算の制度が一本化されるなど、保育士の処遇改善は見直しが続いており、今後も給料アップへの取り組みは続くと予想されます。

保育士の処遇改善手当ての概要【保育士人材バンク】
保育士の処遇改善手当の概要【保育士人材バンク】

以下に、処遇改善手当の概要をご紹介します。

処遇改善手当の概要を簡単に説明すると、保育園施設の対象は可保育園のみとなっています。

処遇改善手当を受け取るためには、保育園側が行政へ事前に申請の手続きをしておく必要があります。

基本的に、国からの補助金は園にまとめて振り込まれ、園側が該当の保育士や職員へ処遇改善手当を分配していきます。

処遇改善手当は基本給とは別に支給されるため、給料明細には「処遇改善手当〇〇円」のように明記されます。

よって、給料明細をみることで、「自分が今どれだけの処遇改善手当を受け取っているか?」を確認できます。

同じ保育士として働いていても、認可外保育園やその他の保育施設は補助の“対象外”となります。

処遇改善手当でもらえる金額は?

3つの処遇改善制度と保育士がもらえる金額 【保育士人材バンク】
3つの処遇改善制度と保育士がもらえる金額 【保育士人材バンク】

以前の処遇改善手当は、「旧加算Ⅰ(2種類)・旧加算Ⅱ・旧加算Ⅲ」の4つの種類がありましたが、2025年度からは新たに3つの「区分」として制度が変更されました。

金額面で言えば、制度の仕組みは変わりましたが、現状保育士の方々に入る金額が少なくなるような改正ではありませんでした。

処遇改善加算の種類と金額
  • 「処遇改善加算区分1」:職員の平均勤続年数に応じて園に補助金が入る仕組みで、約月額12,000円~最大38,000円(2~12%)給料がアップします。(旧加算1)
  • 「処遇改善加算区分2」:2022年2月~ 期間限定の賃金引き上げで、月額9,000円が給料に上乗せされていた制度がここに入りました。(旧加算1と3)
  • 「処遇改善加算区分3」副主任保育士や専門リーダーといった役割職に就いて、月額5,000円~40,000円ほど給料がアップします(旧加算2)

保育士の処遇改善手当の金額は、処遇改善加算区分1約12,000円~最大38,000円(収入の2~12%)処遇改善加算区分2約9,000円(収入の3%程度)約5,000円~40,000円ほど、処遇改善加算区分3約5,000円~40,000円ほどです。

【重要】処遇改善手当:各区分の詳細解説

2025年度(令和7年度)から、これまでの「処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」は廃止され、新たに「区分①~③」の3つに整理されました。

制度の複雑さを解消し、園ごとに柔軟でわかりやすい運用ができるようにするための見直しです。

それぞれの区分には、目的と対象が明確に定められており、「すべての職員の底上げ」「役職・経験に応じた改善」「専門性の向上支援」といった3つの柱で構成されています。

それぞれの仕組みについて詳しく解説します。

【区分①(基礎分)】(全職員の処遇を底上げする基本加算)

処遇改善加算区分1とは?【保育士人材バンク】
処遇改善加算区分1とは?【保育士人材バンク】

区分①(基礎分)は、すべての職員を対象にした「ベースアップ」のための加算です。

園全体の平均経験年数などを基準に国が補助額を算出し、園の職員全体の給与水準を底上げすることを目的としています。

平均勤続年数に応じて、おおむね2~12%の加算率が設定されており、経験豊富な職員が多い園ほど加算額が大きくなる仕組みです。

いわば「すべての保育士さんが共通して恩恵を受けられる部分」であり、毎月の基本給や手当に反映されることで安定した処遇改善につながります。

【区分②(賃金改善分)】(役職や経験に応じて賃金アップを行う加算)

処遇改善加算区分2とは?【保育士人材バンク】
処遇改善加算区分2とは?【保育士人材バンク】

区分②(賃金改善分)は、職務内容や責任の大きさ、経験年数などに応じて個々の賃金を引き上げるための加算です。

主任保育士や副主任、リーダー職などの中堅~ベテラン層を中心に対象とし、旧制度の加算Ⅰ・Ⅱで行っていた賃金改善の要素を引き継いでいます。

加算額の目安としては、主任やリーダー職への月額9千円~7パーセントの上乗せが想定されており、園が職員の役割やスキルを考慮して柔軟に配分できるようになりました。

これにより、「頑張りが正当に評価される給与体系」を実現しやすくなっています。

【区分③(質の向上)】(スキルアップ・研修修了を評価する加算)

処遇改善加算区分3とは?【保育士人材バンク】
処遇改善加算区分3とは?【保育士人材バンク】

区分③(質の向上分)は、職員のスキルアップや専門性の向上を支援するための加算です。

キャリアアップ研修の修了者や、園内でリーダー的な役割を担う職員などが対象となります。

これまで義務づけられていた「リーダーへ4万円支給」のルールは廃止され、園の判断で柔軟に配分可能となりました。

ただし、1人あたりの上限は月4万円とされています。

また、この区分③は区分②(賃金改善分)とあわせて運用される仕組みで、2つの合計額のうち少なくとも半分以上を基本給や毎月支払われる手当に充てることが定められています。

これにより、一時金だけでなく毎月の給与として安定的に反映される仕組みへと改善されました。

参考:子ども家庭庁「処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化資料8について」「令和7年度以降の処遇改善等加算について」

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【変更点】処遇改善手当「一本化」:4つの変更ポイント

2025年度(令和7年度)から、保育士さんの給与に直結する制度が大きく変わりました。

これまで3つに分かれていた「処遇改善手当」が、ついに1本化されて新スタートしています。 

制度が複雑すぎて、「どれが自分に当たるのか分からない・・・」という声が多かった従来の仕組み。それをもっと分かりやすく、公平にするための見直しです。

ポイント①:「4つの加算」が「3つの区分」に変更され一本の制度に

処遇改善制度の変化と金額(例)【保育士人材バンク】
処遇改善制度の変化と金額(例)【保育士人材バンク】

旧制度では、目的ごとに3つの加算がありました。

  • 加算Ⅰ①: 経験やキャリアに応じた給与アップ
  • 加算Ⅰ② :平均年数による給与加算
  • 加算Ⅱ  : 副主任・リーダーなどへの役職手当
  • 加算Ⅲ  : 全職員のベースアップ

2025年4月からはこの4つの加算制度を3つに区分され「処遇改善手当」として一本に統合をしました。

申請や配分ルールも整理され、園側の事務負担も大幅に軽くなりました。

制度が1本化されたことで、「どんな理由でどのくらい上がるのか」が、職員にも見えやすくなっています。

ポイント②:新しい手当の全体像

新しい処遇改善手当は、次のように3つの区分で構成されています。

区分内容対象のイメージ
区分1(基礎分)全職員の基本的な昇給・賃金改善常勤・非常勤問わず保育従事者全員
区分2(賃金改善分)経験・職責に応じた上乗せ主任・副主任・リーダーなど
区分3(質の向上分)研修修了やスキルアップを評価キャリアアップ研修修了者など

この全体像の見直しによって、「どんな職員が」「どんな理由で」「どのくらい給与が上がるのか」がこれまでよりも明確になります。

また、加算の使い道や支給方法(基本給への反映や手当の付与など)も、園が状況に応じて選べるようにするなど、柔軟で透明性の高い仕組みが整えられました。

ポイント③:なぜ制度が変わるの?国が目指す3つの目的

今回の制度見直しには、「制度を分かりやすくして、より長く安心して働ける環境をつくる」という国の狙いがあります。

おもな目的は次の3つです。

分かりやすく公平な制度にするため

これまでの加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは、それぞれルールが違い複雑でした。そのため、国や自治体によって運用の差が生まれていたのです。

一本化することで仕組みを整理し、どの園でも同じ基準で活用できるようにします。

長く働ける職場をつくるため

今回の見直しでは、経験年数やキャリアアップ研修の修了など、頑張りや成長がしっかり評価されるようになります。

単発の支援ではなく、将来を見据えて安定的に賃金が上がる仕組みを目指しています。

手続きを簡単にして現場の負担を減らすため

これまで園や自治体で異なっていた報告書や確認方法を統一し、事務作業の負担を減らして運用しやすくする工夫がされています。

園が書類対応に追われるのではなく、保育の質向上に力を注げるようにすることが狙いです。

ポイント④:給与はどう変わる?

今回の「一本化」で、もっとも注目されているのが給与への反映です。制度の見直しによって、より安定的に処遇改善を実感できる仕組みになります。

毎月の給与として反映しやすくなった

新しい制度では、処遇改善の加算額のうち半分以上を、基本給や毎月支払われる手当に充てることが義務づけられました。

これは「一時的な支援」ではなく、勤続的な賃金改善を実感できるようにするための大きな見直しです。

これまでのように賞与や一時金として支給されるだけでなく、月々の給与に上乗せされるケースが増えるため、安定して収入アップを感じられるようになります。

さらに、基本給に反映されることで、将来的な昇給や賞与の計算にも影響されるため、長く働くほど処遇の改善が積み重なる仕組みへと変わっていきます。

園の裁量で柔軟に手当が設定できるようになった

これまでの制度では、手当の種類や支給対象が細かく決められており、園が独自に工夫して配分するのが難しい面がありました。

一本化後は、リーダー職や主任、キャリアアップ研修の修了者など、職員の役割や経験、努力に応じて園が自由に手当を設定できる仕組みに変わります。

たとえば、チームをまとめるリーダーへの責任手当や、専門性を高めた保育士へのスキル手当など、それぞれの“がんばり”を正当に評価できるようになります。

この見直しにより、園ごとに柔軟な運用が可能になり、意欲をもって長く働ける職場づくりにもつながることが期待されています。

参考:子ども家庭庁「処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化資料8について」「令和7年度以降の処遇改善等加算について

処遇改善手当がもらえる対象者や条件は?

処遇改善手当は種類が3つに分かれるため、種類によって対象者や条件もいくつか異なります

以下は、処遇改善加算区分1・2・3の「要件一覧表です。

処遇改善加算区分1(勤務年数で給料アップ)処遇改善加算区分2(2022年からの手当)約3年以上の保育士経験があり、資格のキャリアアップ研修を修了し、役職に任命された職員(人数制限あり)。
金額非常に勤を含む全職員(パート・派遣保育士や事務員や給食調理員なども対象)月9,000円アップ■職務分野別リーダー:月最大5,000円アップ
■専門リーダー:月最大40,000円アップ
■副主任保育士:月最大40,000円アップ
対象非常勤を含む全職員(パート・派遣保育士や事務員や給食調理員なども対象)非常に勤を含む全職員(パート・派遣保育士や事務員や給食調理員なども対象)資格のキャリアアップ研修を修了し、役職に任命された職員など(人数制限あり)。
期間2013年~継続中2022年2月~継続中認可外(無認可)保育園(児保育室、内部保育室、一時保育、児童発達支援事業所など)
対象の施設認可保育園(公立保育園、私立保育園、小規模保育事業、企業主導型保育事業など)認可保育園(公立保育園、私立保育園、小規模保育事業、企業主導型保育事業など)認可保育園(公立保育園、私立保育園、小規模保育事業、企業主導型保育事業など)
対象外の施設認可外(無認可)保育園(病児保育室、院内保育室、一時保育園、児童発達支援事業所など)認可外(無認可)保育園(病児保育室、院内保育室、一時保育園、児童発達支援事業所など)認可外(無認可)保育園(児保育室、内部保育室、一時保育、児童発達支援事業所など)
  • 対象の施設
    認可保育園(公立保育園、私立保育園、小規模保育事業、企業主導型保育事業など)
  • 対象外の施設
    認可外(無認可)保育園(病児保育室、院内保育室、一時保育園、児童発達支援事業所など)

参考サイト:こども家庭庁 施設型給付費等に係る処遇改善等加算について

共通するのは、制度を利用するための条件が「認可保育園」である必要があるということです。

そのうえで、処遇改善加算の種類によってパートOKや正規職員のみなど、条件が分かれます。

少しわかりにくいかと思いますので、以下に、職種や職形態ごとに受けられる処遇改善加算の種類や金額などをご紹介します。

処遇改善手当の対象①【パート・派遣の保育士】

認可保育園でパートや派遣、臨時職員として働く保育士の場合、一部処遇改善加算の対象となります。

処遇改善加算区分1の場合、計算方法は少し複雑のため省略しますが、職員1人あたりが受け取る金額は、主施設の平均勤続年数に応じて月額12,000円~月額38,000円の範囲で支給されます。

ただし、支給金額や分配方法は園に一任されているため、実際にいくらもらえるかは保育園の配分によって異なります。

時給に加えて処遇改善手当として毎月もらえるケースが一般的ですが、賞与(ボーナス)や一時金として給料とは別に支給するケースもあります。

処遇改善手当の対象②【私立保育園で働く保育士】

私立保育園でも、認可保育園であればすべての処遇改善加算が対象となります。

ただし、保育園が受給申請を行なっていることが条件となります。

獲得金額は処遇改善加算区分1が月額12,000円~月額38,000円処遇改善加算区分3の役割職に就けば、月5,000円~40,000円ほどが加算されます

ただし、支給額や配分方法は園に一任されているため、実際にいくらもらえるかは園の配分によって異なります。

処遇改善手当の対象③【公立保育園で働く公務員保育士】

公立保育園は認可保育園となるため、すべての処遇改善加算が対象となります。

ただし、保育園が受賞申請を行っていることが条件となります。

私立保育園と同じく金額は処遇改善加算区分1が月額12,000円~月額38,000円処遇改善加算区分3の役割職に就けば、月5,000円~40,000円ほどが加算されます

処遇改善手当の対象④【新卒(1年目)の保育士】

新卒であっても、認可保育園勤務であればすべての処遇改善加算の対象となります。

処遇改善加算区分1は個人ごとの勤続年数ではなく、「全体の平均勤続年数」に応じて手当率(金額)が決定するため、新卒でも構いません12,000円~月額38,000円の範囲で処遇改善手当を受け取ることができます。

ただし、補助金の配分は園が決定するため、保育園によってもらえる金額にはバラつきがあります。

処遇改善手当の対象【保育園園長】

認可保育園の園長も、処遇改善加算区分1の対象です。

なお、処遇改善加算区分2(役職による給料アップ)の仕組みで、リーダー職に割り当てられる報酬40,000円の手当額については、保育園の判断で他の職員へ配分することも可能となっておりますが、このとき園長は配分の対象から除かれます

処遇改善手当の対象主任保育士】

保育園で主任保育士の役職についている場合、処遇改善加算区分1は対象となります、認可された処遇改善加算区分2の役職手当は特にありません

ただし、主任保育士は本来主任手当を立てる役職のため、保育園から主任手当として30,000円~50,000円ほどが上乗せされるのが一般的です

処遇改善手当の対象産休中・育休中の保育士】

産休中や育休中の職員は、産前の給料に基づき国から産休手当や育休手当が支給されますが、処遇改善手当をもらえるかどうかは保育園により異なります

処遇改善手当区分1は、保育園に所属する全職員の平均勤続年数から支給額が算出されるため、産休中や育休中であっても人数には含まれます

ただし、まとめて入った補助金をどのように職員へ配分するかは園によって決められるため、園によってはもらえないケースも多いようです

また、扶養の有無は条件には影響しません。

処遇改善手当の対象認可外保育園で働く保育士】

処遇改善加算は認可保育園を対象とした制度のため、認可外保育園で働く保育士はもらうことができません

例):民間の保育園、病児保育室、一時保育園、病院独自の院内保育室など

処遇改善手当の対象企業主導型保育園・小規模保育事業所で働く保育士

企業主導型保育や小規模保育事業は認可保育園の一種として認められているため、処遇改善加算の対象となります。

処遇改善手当の対象児童発達支援事業所・放課後等デイサービスで働く保育士

児童発達支援事業所や放課後等デイサービスは認可保育園ではないため、保育士として働いていても処遇改善手当は対象外となります。

処遇改善手当の支給対象外(受け取れない人)

以下に該当する方は、保育士であっても処遇改善手当をもらえません

保育士【処遇改善手当の対象者】
  1. 勤め先が「認可保育園」ではない
  2. 認可保育園だが、園が申請を出していない

まず、認可保育園以外の保育施設で働く場合は、保育士であっても処遇改善手当はもらえません

また、園が自治体へ申請の手続きをしていない場合も、処遇改善手当はもらうことはできません

さらに、保育園へまとめて支給された補助金をどう職員へ分配するかは園が決められる点も、処遇改善手当をもらえるかもらえないかに影響します。

例えば、産休中や育休中に処遇改善手当を分配するかどうかは、保育園によってバラつきがあるようです。

分配方法は園によってさまざまで、若手で給料の安い職員への分配を多くする園もあれば、経験年数や、時間外勤務などの貢献度を重視する園もあります。

自身の処遇改善手当を確認しましょう

処遇改善加算の制度は2013年から始まりましたが、2020年には園への補助金の多くが保育士の給与反映に使われていないという調査結果が発覚し、問題になりました

処遇改善手当の補助金は保育園に直接振り向けるため、中には保育士に渡って、園で横領していたケースもあったようです。

このような経緯があり、現在では処遇改善手当を取得している事業者は、補助金を配分の改善に使用した事実を、報告書として各都道府県へ提出することが義務付けられています

報告書提出を怠ったり、不適切な使い方をした場合には、処遇改善手当は停止となる場合があります。

参考サイト:内閣府 令和2年度における処遇改善等手当の運用の改善

保育園によって補助金の配分の仕方もいろいろあります

保育士は自分が本来どれくらいの処遇改善手当を受け取る可能性があるのか​​を把握しておく必要があるでしょう

給料明細には手当として処遇改善分が認定されているはずですので、確認し、割り当てられていないようであれば園に確認してみましょう。

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各自治体でも保育士の処遇改善の取り組みを実施

国による「人件費10.7%改善」や処遇改善等加算の一本化にくわえ、東京都や近隣自治体でも、保育士の定着と人材確保を目的とした独自の支援制度が広がっています。

給与上乗せや家賃補助、奨学金返済支援など、地域ごとに特色ある取り組みが行われており、働く場所によって待遇やサポート内容に違いが見られます。

自治体の処遇改善手当①【東京都】

東京都では、国の処遇改善手当にくわえて、独自の上乗せ補助制度を実施しています。

  • 保育従事職員等処遇改善事業 : 国の加算にくわえて、都独自で月額約9,000円相当の賃金改善を補助。
  • キャリアアップ補助事業 : 研修修了者やリーダー職を対象に、月額4万円(上限)を支給する加算を継続。
  • 宿舎借り上げ支援 : 事業者が保育士の宿舎を借り上げた場合、家賃月額82,000円を上限に助成。

参考:東京都

自治体の処遇改善手当②【東京都江戸川区】

  • 月額最大5万円相当を上乗せ(都のキャリアアップ4万円+区独自1万円)
  • 常勤保育士には勤続5年ごとに10万円の報奨金を支給。

参考:東京都江戸川区

自治体の処遇改善手当③【東京都大田区(大田区保育士応援手当)】

  • 応援手当 : 常勤で勤務年数5年未満の職員に、月1万円を6ヶ月分(計6万円)を支給。前期・後期の期末にそれぞれ支給される。
  • 一時金 : 区内での勤務年数が10年・15年・20年・・・と節目を迎えた翌年度に、10万円の一時金を支給(2025年度から実施)

参考:東京都大田区

自治体の処遇改善手当④【東京都千代田区】

  • 処遇改善事業実施加算 : 区内の保育施設で働く常勤保育職員に月額3万円を加算。国の処遇改善に上乗せする形で支給。
  • 奨学金返済支援 : 区内の保育施設勤務期間中の返済を年24万円(最長10年=最大240万円)まで補助。

参考:東京都千代田区

自治体の処遇改善手当⑤【千葉県船橋市(ふなばし手当)】

  • 私立保育園等で働く保育士に月4万5,100円+賞与上乗せ9万7,560円(年2回合計)。年換算63万8,760円相当。
  • 常勤保育士に対して、月額上限69,000円、合計年額上限828,000円の家賃補助あり。

参考:千葉県船橋市

自治体の処遇改善手当⑥【千葉県浦安市】

  • 勤続年数に応じて月最大6万円の給与上乗せ。初任者でも4万3,000円を加算。賞与も上乗せあり。
  • 家賃補助として月額最大8万円支給。
  • 就職準備金の貸付として最大20万円貸付。(返済免除条件あり)

参考:千葉県浦安市

自治体の処遇改善手当⑦【千葉県松戸市(松戸手当)】

  • 正規保育士へ毎月4.5万円~7.8万円を市が上乗せ(年間54万円~93.6万円)
  • 家賃補助制度 : 年間36万円、宿舎借り上げ支援制度 : 年間76.8万円
  • 就職準備金貸付 : 最大10万円貸付(返済免除条件あり)

参考:千葉県松戸市

自治体の処遇改善手当⑧【千葉県流山市】

  • 処遇改善の上乗せ : 正規月4.3万円、非正規(条件あり)月2万円。
  • 宿舎借り上げ : 基準6.7万円を上限に、事業者負担分の¾を補助(実費との少ない方に乗率)。
  • 就職準備金貸付制度 : 最大20万円貸付(返済免除条件あり)

参考:千葉県流山市

自治体の処遇改善手当⑨【千葉県市川市】

  • いちかわ手当 : 市川市独自の手当てを月額最大10万円支給。
  • 家賃補助 : 月最大7万5,000円。
  • 新生活準備金 : 最大10万円(就職後1年継続で免除)。

参考:千葉県市川市

自治体の処遇改善手当⑩【埼玉県さいたま市】

  • 給与上乗せ補助 : 常勤保育士1人あたり月1万500円を支給。
  • 期末手当補助 : 常勤保育士1人あたり年6万7,500円を加算。
  • さいたま保育士応援手当 : 経験年数11年目までの常勤保育士に年2万1,000円を上乗せ支給。
  • 家賃補助 : 月最大7万2,000円。

参考:埼玉県さいたま市

保育士の処遇改善手当の今後

保育士の処遇改善手当は色々な仕組みで評価されているので、一本化が行われ、今より見やすく、有用な制度になる可能性があります。

また、同資料には、「処遇改善」の制度がはじまった2013年(平成25年)以降、3つの手当を暫定的に+23%の給与改善と記載されております。

とりあえずですが、保育士等の給料が上がりやすい社会になっているのではないでしょうか。

保育士の処遇改善加算に関する制度は、1人ひとりの給料に直接する制度でもありますので、状況を注視してみていきたいですね。

【深掘り解説】「人件費10.7%」の詳細と今後の期待

2024年11月22日に子こども政策担当大臣から、

保育士等処遇改善の為、人件費を過去最大の10.7%引き上げをする旨の記者会見がありました。

記者インタビューの中で、「保育士に確実に行き、効果が実感できなければ意味がありません」ともご発言されていましたね。

ここでは「人件費10.7%」のことについて深掘りをしていきます。

参考:こども家庭庁 三原大臣記者会見(令和6年11月22日)

そもそも、どんな発表だったのか?

2024年(令和6年)11月22日、子ども家庭庁の三原じゅん子大臣は、「人件費10.7%改善」という歴史的な発表を行いました。

これは、国が保育園などに支給する“人件費の基準額(公定価格)”を10.7%引き上げ、その分を園が職員の給料アップに充てられるようにしたものです。

「10.7%」と聞くと、“みんなの給料が一気に上がるの?”と思うかもしれません。

しかし、実際には国が園に支払う人件費(お給料のもとになるお金)を増やす仕組みであり、保育士1人ひとりの給与を直接引き上げる制度ではありません。

そのため、園の経営状況や賃金の配分ルールによって、反映のされ方に差が出るのが実情です。

こうした差をできるだけ減らし、改善を現場に確実に届けるため、国は自治体への指導・監督を強化する方針もあわせて示しました。

国がここまで踏み込んだ背景には、「保育士の給与が全産業平均を下回っている」という現実があります。だからこそ国をあげて保育士の待遇改善に本格的に取り組み始めたのです。

参考:子ども家庭庁「三原大臣記者会見(令和6年11月22日)

給与への具体的な影響は?

今回の「10.7%改善」は、制度上は園が職員の給与を上げやすくするための仕組みですが、実際にはどれくらいの金額が反映されるのでしょうか?

実際の反映額は園ごとに異なりますが、「人件費10.7%改善」は、保育士1人あたりで年間どの程度の人件費(お給料のもとになるお金)が増えるのかをイメージすると分かりやすいです。

【10.7%改善による人件費の増加イメージ】

  • 職員10名の園 : 400万円×10名×10.7%=約428万円の増額
  • 職員20名の園 : 400万円×20名×10.7%=約856万円の増額
  • 職員40名の園 : 400万円×40名×10.7%=約1,712万円の増額

つまり、園全体としては数百万円~1,000万円以上の財源が増える規模の改善となります。

そのうえで、園が基本給や手当の引き上げ、一時金支給などを行う仕組みです。

制度の運用が始まった2025年度以降、現場からは「まだ十分に反映されていない」、「支給時期が分からない」といった声も上がりました。

こうした状況を受けて、子ども家庭庁の三原じゅん子大臣は令和7年4月1日の記者会見で、自治体を通じて迅速かつ確実に一時金等で支給するよう要請したことを明らかにしています。

つまり、国としても“発表して終わり”ではなく、実際に給与改善が現場で実感できるようにする段階へと移っているのです。

参考:子ども家庭庁「三原大臣記者会見(令和7年4月1日)」「令和7年度以降の処遇改善等加算について

この賃上げは、いつの給与からが対象?

今回の「人件費10.7%改善」は、2025年度(令和7年度)からの給与に反映される仕組みです。

国が定める「公定価格(運営費)」の人件費部分が、2025年4月分から引き上げられ、それに基づき各園に支給される運営費も増額されています。

ただし、実際に保育士の給与へ反映されるタイミングは園によって異なります。

基本給や手当の見直しに時間を要する園もあるため、初期は一時金(ボーナスや臨時支給)として支払われるケースも少なくありません。

さらに、今回の改善は令和6年4月まで遡って適用されることも明らかにしています。

子ども家庭庁の三原じゅん子大臣は、令和7年4月の記者会見で、「昨年度実施した10.7%の処遇改善は、令和6年4月まで遡っているものであり、令和6年度に保育園に勤務し、3月末に退職した職員も対象になり得る」と説明しました。

つまり、この賃上げは2025年4月以降の給与から反映が始まるだけでなく、過去の勤務分にさかのぼって一時金等で支給される場合もあるということです。

国は自治体を通じて、迅速かつ確実に職員へ支給が行き渡るよう要請しており、今後は各園が継続的に基本給へ反映させていくことが期待されています。

参考:子ども家庭庁「三原大臣記者会見(令和7年4月1日)

処遇改善手当は今後ももらえる?

処遇改善加算区分3である、9,000円アップは2022年2月~期間限定の処置ではありましたが、処遇改善手当2として支給されることになりました。

2013年から継続して実施されている「処遇改善加算制度」については継続的な仕組みのため、今後も制度が継続する限り、要件が合致していれば受け取り続けることができます。

保育士の給料アップには転職という選択肢も

国の取り組みによる処遇改善手当は、申請を出している認可保育園であれば受け取ることができます

ただし、まとめて振り込まれた補助金をどのような割合で職員へ振り分けるかは、それぞれの園によって異なります

また、転職をしようとする際には保育士の処遇改善のために独自の給料上乗せや家賃補助を実施している自治体を選ぶことで、より好条件で働けるようになります。

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