保育士の処遇改善手当で給料が上がると聞き、「今どうなっているの?」「今後、どうなるの?」と、気になっている方も多いと思います。
この記事では、2024年度(令和6年)最新の保育士の処遇改善手当に関する情報をご紹介します。
目次
この記事でわかること【保育士の処遇改善手当て】
保育士の処遇改善手当てとは、保育士の給料アップのために国や自治体から出される補助金のことです。
実際に現場で働く保育士の方は、「現状、どれくらいの手当が出ているのか?」「今後、処遇改善手当てがどのようになっていくのか?」気になっていると思います。
国から出る保育士の処遇改善手当ては、正式には「保育士処遇改善加算」といい、2013年から内閣府主導で、認可保育園を対象に実施されています。
要件を満たしている場合、国から各保育園へ補助金が振り込まれ、そのぶん保育士の給料もアップしているはずです。通常、給料明細には、「処遇改善手当」として補助金分が基本給とは別に明記されます。
ただし、処遇改善手当ては保育士ではなく保育園に振り込まれる仕組みとなっており、分配方法は園によっても異なります。数年前には、補助金を分配していない保育園があったことも問題になりました。
保育士は、処遇改善手当てについて正しく理解し、必要額をもらえているかを自身でも確認することが大切です。
そこで、本記事では、保育士の処遇改善手当てについて金額や概要を紹介し、もらえる人・もらえない人を条件別にわかりやすくご紹介します。また、昨今では処遇改善加算1~3を一本化する動きもあり、こちらも合わせてご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
保育士の【処遇改善手当て】とは?
保育士の処遇改善手当てとは、主に2013年から内閣府(国)が実施している「処遇改善加算」の制度によって支給される補助金のことを指します※。
※自治体独自の処遇改善によって手当てが上乗せされるケースもあります。本ページの9章参照
保育士は他の職種と比べて給料が低く、条件の悪さから慢性的な保育士不足が続いていることから、保育士の給料アップのための取り組みとして、処遇改善加算制度がスタートしました。
保育士の年収推移をみてみると、保育士の処遇改善加算制度がスタートした2013年(平成25年)から、毎年、保育士の給料が上がり続けていることがわかります。
引用サイト:厚生労働省 保育士の現状と主な取組
ただ、保育士の年収は処遇改善手当てにより年々アップしてきてはいますが、国税庁の令和元年度の調査では日本の給与所得者の平均年収は「436万円」。
現状でも保育士の年収は、日本の平均より61万円ほど低くなっています。
日本の平均年収参考サイト:国税庁「令和元年分 民間給与実態統計調査」
保育士年収参考サイト:e-Stat_政府統計の総合窓口:令和2年賃金構造基本統計調査
平成29年には新制度「技術・経験に応じた処遇改善」が追加されるなど、保育士の処遇改善は見直しが続いており、今後も給料アップへの取り組みは続くと予想されます。
以下に、処遇改善手当ての概要をご紹介します。
処遇改善手当ての概要を簡単に説明すると、まず、対象は認可保育園のみとなっています。
処遇改善手当てを受け取るためには、保育園側が事前に申請の手続きをしておく必要があります。
国からの補助金は園にまとめて振り込まれ、園側が該当の保育士や職員へ処遇改善手当てを分配していきます。
処遇改善手当ては基本給とは別に支給されるため、給料明細には「処遇改善手当て〇〇円」のように明記されます。
よって、給料明細をみることで、「自分が今どれだけの処遇改善手当てを受け取っているか?」を確認できます。
同じ保育士として働いていても、民間の認可外保育園やその他の保育施設は補助の“対象外”となります。
※認可保育園とは……自治体の認可を受け、自治体からの補助金で運営されている保育園のこと(公立と私立がある)
処遇改善手当てでもらえる【金額】は?
処遇改善加算には現状、「Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」の3つの種類があり、それぞれ要件を満たした場合に補助金が支給されます。
- 「処遇改善加算Ⅰ」:職員の平均勤続年数に応じて園に補助金が入る仕組みで、月額12,000円~最大38,000円(2~12%)給料がアップします
- 「処遇改善加算Ⅱ」:副主任保育士や専門リーダーといった役職に就くことで、月額5,000円~40,000円ほど給料がアップします
- 「処遇改善加算Ⅲ」:2022年2月~ 期間限定の賃上げで、月額9,000円が給料に上乗せされる制度ができました
保育士の処遇改善手当の金額は、処遇改善加算Ⅰで月額12,000円~最大38,000円(収入の2~12%)、処遇改善加算Ⅱで月額5,000円~40,000円ほど、処遇改善加算Ⅲで月額9,000円(収入の3%程度)です。
現在、全国的に保育士不足が続いており、今後も保育士の安定確保のため、賃上げへの取り組みは続いていくと考えられています。
処遇改善手当てはどのようにもらえる?支給日は?
処遇改善手当ては、申請を出している保育園に、国から職員分がまとめて振り込まれます。
そこから保育園が各職員へ振り分けていくかたちとなっています。
処遇改善手当ての支給日は、多くの保育園が「給料日」と一緒にしているようです。
そのほか、保育園によっては「賞与(ボーナス)の際にまとめて支給される」ケースや、「一時金として給料とは別に支給する」ケースもあります。
月いくらもらえるかは人により、最終的には保育園が決定します。
給料明細には、基本給とは別に「処遇改善手当て」として記載されるケースが多くなっています。
処遇改善手当ての期間は?いつからいつまでもらえる?
処遇改善手当てというと、岸田総理の「保育士の給料を月9,000円アップする」という施策が話題になったため、そちらをイメージする方が多いかもしれません。
この9,000円アップの施策は2022年2月~期間限定の施策ではありましたが、のちに処遇改善加算Ⅲとして公定価格の加算として支給されることにありました。
内閣府発表のリーフレットによると、「今回の補助事業の実施期間は令和4年2月から9月までですが、令和4年10月以降も、公定価格の見直しにより、収入を3%程度(月額9,000円)引き上げる措置を継続します」と明記されています。
公定価格とは認可保育園の運営費となる費用のことで、公定価格をベースアップすることで「保育士の給料の3%アップを維持する」ということのようです。
引用サイト:内閣府リーフレット「令和4年2月から教育・保育の現場で働く方々の収入の引上げに必要な費用を補助します」
参考サイト:こども家庭庁 子育て支援事業者の方向け情報
なお、2013年から継続して実施されている「処遇改善加算Ⅰ(勤続年数に応じて給料アップ)」「処遇改善加算Ⅱ(役職に就くことで給料アップ)」については、継続的な制度のため、今後ももらい続けることができます。
処遇改善手当ての対象者や条件は?
処遇改善加算は種類が3つ(現行受けられるのはⅠ・Ⅱ)に分かれるため、種類によって対象者や条件も若干異なります。
以下は、処遇改善加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの「要件一覧表」です。
処遇改善加算Ⅰ(勤務年数で給料アップ) | 処遇改善加算Ⅱ(役職で給料アップ) | 処遇改善加算Ⅲ(2022年~期間限定、終了日未定) | |
金額 | 施設の平均勤続年数に応じて月額12,000円~最大38,000円(給料の2~12%) | ■職務分野別リーダー:月最大5,000円アップ ■専門リーダー:月最大40,000円アップ ■副主任保育士:月最大40,000円アップ | 月9,000円アップ |
対象 | 非常勤を含む全職員(パート・派遣保育士や事務員や給食調理員なども対象) | 約3年以上の保育士経験があり、所定のキャリアアップ研修を修了し、役職に任命された職員(人数制限あり)。 | 非常勤を含む全職員(パート・派遣保育士や事務員や給食調理員なども対象) |
期間 | 2013年~継続中 | 2013年~継続中 | 2022年2月~終了日未定 |
対象の施設 | 認可保育園(公立保育園、私立保育園、小規模保育事業、企業主導型保育事業など) | 認可保育園(公立保育園、私立保育園、小規模保育事業、企業主導型保育事業など) | 認可保育園(公立保育園、私立保育園、小規模保育事業、企業主導型保育事業など) |
対象外の施設 | 認可外(無認可)保育園(病児保育室、院内保育室、一時保育園、児童発達支援事業所など) | 認可外(無認可)保育園(病児保育室、院内保育室、一時保育園、児童発達支援事業所など) | 認可外(無認可)保育園(病児保育室、院内保育室、一時保育園、児童発達支援事業所など) |
・対象の施設
認可保育園(公立保育園、私立保育園、小規模保育事業、企業主導型保育事業など)
・対象外の施設
認可外(無認可)保育園(病児保育室、院内保育室、一時保育園、児童発達支援事業所など)
参考サイト:こども家庭庁 施設型給付費等に係る処遇改善等加算について
共通するのは、制度を利用するための条件が、「認可保育園」である必要があるということです。
そのうえで、処遇改善加算の種類によって、パートOKや正規職員のみなど、条件が分かれます。
少しわかりにくいかと思いますので、以下に、職種や職形態ごとに受けられる処遇改善加算の種類や金額などをご紹介します。
処遇改善手当の対象①【パート・派遣の保育士】
認可保育園でパートや派遣、臨時職員として働く保育士の場合、処遇改善加算Ⅰの対象となります。
処遇改善加算Ⅰの計算方法は少し複雑なため省略しますが、職員1人あたりがもらえる金額は、主に施設の平均勤続年数に応じて月額12,000円~月額38,000円の範囲で支給されます。
ただし、支給金額や分配方法は園に一任されているため、実際にいくらもらえるかは保育園の配分によって異なります。
時給に加えて処遇改善手当てとして毎月もらえるケースが一般的ですが、賞与(ボーナス)や一時金として給料とは別に支給するケースもあります。
処遇改善手当の対象②【私立保育園で働く保育士】
私立保育園でも、認可保育園であればすべての処遇改善加算が対象となります。
ただし、保育園が受給申請を行なっていることが条件となります。
もらえる金額は処遇改善加算Ⅰが月額12,000円~月額38,000円、処遇改善加算Ⅱの所定の役職に就けば、月5,000円~40,000円ほどが加算されます。
ただし、支給金額や分配方法は園に一任されているため、実際にいくらもらえるかは園の配分によって異なります。
処遇改善手当の対象③【公立保育園で働く公務員保育士】
公立保育園は認可保育園となるため、すべての処遇改善加算が対象となります。
ただし、保育園が受給申請を行なっていることが条件となります。
もらえる金額は処遇改善加算Ⅰが月額12,000円~月額38,000円、処遇改善加算Ⅱの所定の役職に就けば、月5,000円~40,000円ほどが加算されます。
なお、処遇改善加算Ⅲの取り組みについては申請を行わなかった公立園も多かったようで、申請を行わなかった公立園については月額9,000円は加算されていません。
処遇改善手当の対象④【新卒(1年目)の保育士】
新卒であっても、認可保育園勤務であればすべての処遇改善加算の対象となります。
処遇改善加算Ⅰは個人ごとの勤続年数ではなく、「施設全体の平均勤続年数」に応じて加算率(金額)が決まるため、新卒であっても月額12,000円~月額38,000円の範囲で処遇改善手当てをもらうことができます。
ただし、補助金の配分は園が決定するため、保育園によってもらえる金額にはバラつきがあります。
処遇改善手当の対象⑤【保育園園長】
認可保育園の園長も、処遇改善加算Ⅰの対象です。
なお、処遇改善加算Ⅱ(役職による給料アップ)の仕組みで、リーダー職に加算される月額40,000円の加算額については、保育園の判断で他の職員へ分配することも可能となっていますが、このとき園長は分配の対象から除かれます。
参考サイト:こども家庭庁 技能・経験に応じた追加的な処遇改善(処遇改善等加算Ⅱ)に関するFAQ(よくある質問)
処遇改善手当の対象⑥【主任保育士】
認可保育園で主任保育士の役職についている場合、処遇改善加算Ⅰは対象となりますが、処遇改善加算Ⅱの役職手当は特にありません。
ただし、主任保育士はもともと主任手当がつく役職のため、保育園から主任手当として30,000円~50,000円ほどが上乗せされるのが一般的です。
保育園の園長同様、処遇改善加算Ⅱの分配対象外となります。
処遇改善手当の対象⑦【産休中・育休中の保育士】
産休中や育休中の職員は、産前の給料に基づき国から産休手当や育休手当が支給されますが、処遇改善手当をもらえるかどうかは保育園により異なります。
処遇改善手当Ⅰは、保育園に所属する全職員の平均勤続年数から加算額が算出されるため、産休中や育休中であっても人数には含まれます。
ただし、まとめて入った補助金をどのように職員へ分配するかは園によって決められるため、園によってはもらえないケースも多いようです。
また、扶養の有無は条件には影響しません。
処遇改善手当の対象⑧【認可外保育園で働く保育士】
処遇改善加算は認可保育園を対象とした制度のため、認可外保育園で働く保育士はもらうことができません。
例):民間の保育園、病児保育室、一時保育園、病院独自の院内保育室など
処遇改善手当の対象⑨【企業主導型保育園・小規模保育事業所で働く保育士】
企業主導型保育や小規模保育事業は認可保育園の一種として認められているため、処遇改善加算の対象となります。
処遇改善手当の対象⑩【児童発達支援事業所・放課後等デイサービスで働く保育士】
児童発達支援事業所や放課後等デイサービスは認可保育園ではないため、保育士として働いていても処遇改善手当ては対象外となります。
処遇改善手当ての支給対象外(もらえない人)
以下に該当する方は、保育士であっても処遇改善手当をもらえません。
まず、認可保育園以外の保育施設で働く場合は、保育士であっても処遇改善手当てはもらえません。
また、園が自治体へ申請の手続きをしていない場合も、処遇改善手当はもらうことはできません。
さらに、保育園へまとめて支給された補助金をどう職員へ分配するかは園が決められる点も、処遇改善手当てをもらえるかもらえないかに影響します。
例えば、産休中や育休中に処遇改善手当てを分配するかどうかは、保育園によってバラつきがあるようです。
分配方法は園によってさまざまで、若手で給料の安い職員への分配を多くする園もあれば、経験年数や、時間外勤務などの貢献度を重視する園もあります。
役職に応じて手当が支給される処遇改善加算Ⅱについても、副主任保育士などの役職に加算される40,000円の手当の1/2は、役職についた職員以外へ分配してもよいとされています(※ただし、このとき園長や主任保育士には分配できません)。
【処遇改善手当ての制度詳細】種類3つをわかりやすく解説
ここまで、処遇改善手当てがもらえる人ともらえない人と大まかな金額をご紹介しましたが、もらえる金額を具体的に算出するためには、処遇改善手当ての種類と仕組みを理解する必要があります。
少し複雑な内容にはなりますが、詳しく知りたいという方は、参考にしてみてください。
【処遇改善加算Ⅰ】(平均勤続年数に応じて園に補助金が入る制度)
処遇改善加算Ⅰは、認可保育園の全職員(1日6時間以上勤務する非常勤職員含む)の、平均勤続年数に応じて、国から保育園に補助金が入る制度です。
処遇改善手当て自体は非常勤含むすべての職員が対象となるため、短時間勤務のパート職員や、調理員や事務職員などの保育士以外の職員も、全職員が対象となります。
加算率は、以下の3つの項目から算出します。
3項目から算出した加算率から割り出した合計額が、補助金として園に振り込まれます(トータルで全職員の給料の8~19%が補助金として支給される)。
基礎分 | 職員の平均勤続年数(※)に応じて、給料の2~12%を加算。施設の平均勤続年数が高いほど加算率も高くなります。※平均勤続年数には、前職での保育・教育経験も合算されます。 |
賃金改善要件分 | 施設において賃金改善の取り組みが実施されていると認められた場合にプラスで加算されます。加算率は平均勤続年数により、11年未満で一律6%、11年以上で一律7 %となります。 |
キャリアパス要件分 | 施設において職員のキャリアアップの取り組みが実施されていない場合、賃金改善要件分から2%マイナスされます。 |
参考サイト:こども家庭庁 施設型給付費等に係る処遇改善等加算について
振り込まれた補助金は、職員の賃金改善に使うことだけはルールとして定められていますが、どのように振り分けるかは園それぞれが決めることができます。
振り分け方は、保育園の考えにより、給料が低い若年層に多く分配したり、経験年数を重視したりなどさまざまです。
補助金をどのように振り分け賃金改善に充てたかは、報告の義務があります。
【処遇改善加算Ⅱ】(所定の役職についた場合に補助金が入る制度)
処遇改善加算Ⅱは、新設された3つの役職に対して一定額の補助金が支給される制度です。
保育士には、これまで保育園の園長や主任保育士といった役職しかなく、キャリアによる給料アップの機会も少なかったことから、キャリアアップによる昇給の機会をつくるためにこの制度が導入されました。
役職により3~7年程度の勤続年数と所定の研修を終え、園からの発令で以下の役職につくことで、5,000円もしくは40,000円が補助金として加算されます。
職務分野別リーダー(若手リーダー) | 専門リーダー(中核リーダー) | 副主任保育士 | |
加算額 | 月5,000円アップ | 月最大40,000円アップ | 月最大40,000円アップ |
人数 | ※全体の概ね1/5人 | ※全体の概ね1/3人 (副主任と割合共有) | ※全体の概ね1/3人 (専門リーダーと割合共有) |
経験年数 | 概ね3年以上 | 概ね7年以上 | 概ね7年以上 |
研修 | 担当分野(15時間以上)の研修を修了 | 4分野以上(計60時間以上)の研修を修了 | マネジメント+3つ以上の研修を修了 |
※園長・主任保育士を除く保育士等を全体数とする
これらの役職は配置できる人数に決まりがあり、施設の規模に応じた人数※のみ役職につくことができます。
※職務分野別リーダー(5,000円加算の役職)は園長・主任保育士を除く職員の5分の1の人数まで。
専門リーダー・副主任保育士(40,000加算の役職)は3分の1まで。
保育園で役職につくためには、概算の経験年数を満たしたうえで、都道府県が実施する「キャリアアップ研修」において所定の分野を必要時間、受講する必要があります。
なお、個人の役職に加算される手当てではあるものの、振込みは保育園であり、必ずしも満額をもらえるわけでないため注意しましょう。
特に、40,000円の加算分については、賃金改善に使うことだけは決まりがあるものの、保育園の判断で1/2を他の職員へ配分することも可能となっています(園長・主任を除く)。
参考サイト:こども家庭庁 技能・経験に応じた追加的な処遇改善(処遇改善等加算Ⅱ)に関するFAQ(よくある質問)
参考サイト:こども家庭庁 技能・経験に応じた処遇改善等加算Ⅱの仕組み
【処遇改善加算Ⅲ】(2022年2月~ 9,000円上乗せ)
処遇改善加算Ⅲは、2022年2月~の保育士賃金改善のための施策です。
認可保育園等で働く全職員を対象とし、申請があった施設には毎月9,000円(収入の約3%)の賃金上乗せが実施されています。
内閣府は継続的な給料引き上げを行なっていくことを明言しており、令和5年度保育関係予算案にも処遇改善加算Ⅲの内容が盛り込まれていています。
今後も継続的に給料引き上げの仕組みを整備していくと予想されます。
参考サイト:こども家庭庁 保育士・幼稚園教諭等を対象とした処遇改善(令和4年2月~9月)について
参考サイト:こども家庭庁 令和4年2月から教育・保育の現場で働く方々の収入の引上げに必要な費用を補助します
参考サイト:令和5年度 保育関係予算案の概要
処遇改善手当てをもらえない?現状の問題点について
処遇改善加算の制度は2013年から始まりましたが、2020年には園への補助金の多くが保育士の賃金上乗せに使われていないという調査結果が発覚し、問題になりました。
処遇改善加算の補助金は保育園に直接振り込まれるため、なかには保育士に渡さず、園で横領していたケースもあったようです。
このような経緯があり、現在では処遇改善加算を取得している事業者は、補助金を賃金の改善に使用した事実を、報告書として各都道府県へ提出することが義務付けられています。
報告書の提出を怠ったり、不当な使い方をした場合には、処遇改善加算は停止となります。
参考サイト:内閣府 令和2年度における処遇改善等加算の運用の改善
とはいえ、保育園によって補助金配分の仕方もさまざまなのは事実です。
保育士は自分が本来どれくらいの処遇改善手当てをもらえる可能性があるのかを把握しておく必要があるでしょう。
給料明細には手当として処遇改善加算分が明記されているはずですので、確認し、配分されていないようであれば園に問い合わせてみましょう。
各自治体でも保育士の処遇改善の取り組みを実施
現在、保育士不足が深刻な都市部を中心に、自治体独自の保育士への処遇改善も実施されています。処遇改善の進んだ自治体の認可保育園に就職することで、より高い給料をもらうことも可能です。
参考までに、本章では地域ごとの保育士の処遇改善の取り組み例をご紹介します。
自治体の処遇改善手当①【東京都】
・独自に月額9,000円の給与上乗せ
参考サイト:東京都HP
自治体の処遇改善手当②【東京都江戸川区】
・月額10,000円の補助
・常勤保育士には5年ごとに100,000円の報奨金
・月額上限82,000円の家賃補助あり
参考サイト:江戸川区HP
自治体の処遇改善手当③【東京都大田区(大田区保育士応援手当)】
・4月~9月、10月~3月の中で6か月間勤務した方に月額10,000円の補助
・月額上限82,000円の家賃補助あり
参考サイト:大田区HP
自治体の処遇改善手当④【東京都千代田区】
・保育士の奨学金補助(年間240,000円まで、10年間)
・月額上限130,000円の住宅補助
参考サイト:千代田区HP
自治体の処遇改善手当⑤【千葉県船橋市(ふなばし手当)】
・月額換算48,575円の上乗せ(給与と賞与の上乗せ、年額580,000円)
・月額上限69,000円の家賃補助あり
参考サイト:船橋市HP
自治体の処遇改善手当⑥【千葉県浦安市】
・勤続年数に応じて月額最大60,000円の給与上乗せ(初任者でも43,000円の上乗せあり)
・賞与も1支給分につき、40,000円の上乗せ
・月額上限80,000円の家賃補助あり
参考サイト:浦安市HP
自治体の処遇改善手当⑦【千葉県松戸市(松戸手当)】
・1年目から11年目の保育士に45,000円の上乗せ
・12年目以降は勤務年数に応じて49,800円~78,000円の上乗せ
・新卒保育士には月額最大30,000円の家賃補助あり
参考サイト:松戸市HP
自治体の処遇改善手当⑧【千葉県流山市】
・正規保育士には月額43,000円を上乗せ
・非正規(パート)保育士にも月額20,000円を上乗せ
・月額上限67,000円の家賃補助あり
参考サイト:流山市HP
自治体の処遇改善手当⑨【埼玉県さいたま市】
・常勤保育士に年額193,500円の給料上乗せ
・月額上限72,000円の家賃補助あり
参考サイト:さいたま市HP
保育士の給料アップには転職という選択肢もあります。
保育士の処遇改善加算の今後
2024年2月19日に子ども家庭庁より「公定価格の処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲ の一本化について」の資料がリリースされていました。
これによると、2025年(令和7年)に向けて、処遇改善加算関係の「趣旨」や「要件」以外にも「算定額」や「配分のルール」など様々な角度で制度の整理をしながら処遇改善加算の制度を一本化する方針です。
保育士の処遇改善加算制度は色々な仕組みの上で算定されているので、一本化され、今より分かりやすく、有用な制度になる可能性あります。
また、同資料には、「処遇改善加算」の制度がはじまった2013年(平成25年)以降、3つの加算を設けることで累計+23%の給与改善と記載がされていました。
少しづつですが、保育士等の給料が増えやすい社会になってきているのではないでしょうか。
保育士の処遇改善加算に関する制度は、1人ひとりの給料に直結する制度でもありますので、状況を注視してみていきたいですね。
保育士の給料アップには転職という選択肢も
国の取り組みによる処遇改善手当ては、申請を出している認可保育園であれば受け取ることができます。
ただし、まとめて振り込まれた補助金をどのような割合で職員へ振り分けるかは、それぞれの園によって異なります。
また、転職をしようとする際には保育士の処遇改善のために独自の給料上乗せや家賃補助を実施している自治体を選ぶことで、より好条件で働けるようになります。
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もしも、現在の園が認可園でなかったり、給料面の条件が悪い、手当てが正しく配布されていないと感じるのであれば、一度ほかの園の条件を確認してみることをおすすめします。
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