保育士の処遇改善制度のひとつに「保育士等キャリアアップ制度」があります。研修を受講することで、専門性の向上やキャリアアップを目指せるので、しっかり活用していきたい制度ですね。今回は、保育士キャリアアップ研修の概要や内容の他に、受ける事のメリットや受けた後の注意点も紹介していきます。

保育に関わる専門的な知識を身につけたい方や、保育士としてキャリアアップをしてやりがいを増やしたい、賃金アップしたいという方は、是非チェックしてみましょう。

保育士等キャリアアップ研修とは?

保育士等キャリアアップ研修とは、保育士の処遇改善と専門性向上のために導入された制度のことを指します。

主に一定の経験年数を積んだ保育士を対象に研修を行い、受講した研修や数に応じて役職に就くことでキャリアアップ・給与アップにつながる制度です。

保育士の処遇改善加算に関わる制度には、令和5年時点で「処遇改善加算Ⅰ」「処遇改善加算Ⅱ」「処遇改善加算Ⅲ」の3種類があります。

保育士等キャリアアップ研修とは?【保育士人材バンク】

保育士等キャリアアップ研修は処遇改善加算Ⅱによって策定された制度で、経験年数と受講する研修分野に応じて「職務分野別リーダー」「専門リーダー」「副主任保育士」等へのキャリアアップを目指すことができます。

かつては園長や主任保育士を除くと一般保育士のみだった職員配置が、段階的に役職へ就けるようになり、若手や中堅もキャリアを積みやすくなりました。

※保育士の処遇改善についての詳しい解説はこちら

保育士等キャリアアップ研修の制度とは?

保育士等キャリアアップ研修の制度とは?【保育士人材バンク】
出典:厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」

保育士等キャリアアップ研修は、8つの研修分野に分かれています。

➀乳児保育
②幼児教育
③障害児保育
④食育・アレルギー対応
⑤保健衛生・安全対策
⑥保護者支援・子育て支援
⑦マネジメント
⑧保育実践

新たな役職へとキャリアアップするには、8つの研修分野から必要なものを受講し、修了しなければなりません。

また、保育士の状況によって、受講するべき研修が違うことがあります。

例えば、「マネジメント」研修は、副主任保育士を目指す方が主な対象となり、
「保育実践」は経験年数が少ない方やブランクのある方に向けた研修となります。

状況や今のポジションによって、受講する研修をしっかり見定めましょう。

役職と就任要件

研修を受けて就任できる役職は以下の3つです。

  • 職務分野別リーダー(特定分野のリーダー保育士)

 経験年数:おおむね3年以上
 要件:研修を1つ以上修了すること

  • 専門リーダー(専門分野に精通したリーダー保育士)

 経験年数:おおむね7年以上
 要件:職務分野別リーダーを経験し、4つ以上の研修を修了すること

  • 副主任保育士(主任の補佐を担う管理職)

 経験年数:おおむね7年以上
 要件:職務分野別リーダーを経験し、4つ以上の研修を修了すること
    うち1つはマネジメント分野であること

役職によって経験年数や就任要件が異なりますが、就任要件を満たしたすべての方が就任できるわけではありません。保育園の運営状況や職員人数によって役職に付ける人数には制限があることを覚えておきましょう。

処遇改善の金額

保育士等キャリアアップ研修を受け、役職についた保育士が勤めている施設には、次の加算額が支給されます。

  • 職務分野別リーダー:最大月5,000円
  • 専門リーダー・副主任保育士:最大月40,000円

ただし、処遇改善による手当は、施設によって加算対象となる人数が異なります。

最大5,000円加算となる職務分野別リーダーは一般保育士のうち5分の1までとなっており、最大40,000円加算となる専門リーダーや副主任保育士は合わせて一般職員の3分の1までと定められています。

施設の状況や保育士の人数によって、役職に就ける人数が変わってきますので注意しましょう。

令和5年度から適用される研修修了要件とは

保育士等キャリアアップ研修は、要件を満たすと施設に支給される加算の要件を令和4年度から適用する予定でしたが、

新型コロナウイルスの影響などを考慮し、令和5年度から段階的な適用となりました。

参考:東京都 東京都保育士等キャリアアップ研修に関すること

  • 副主任保育士と中核リーダー

今までは、令和4年度までに4分野の受講が必要でしたが、令和5年度〜令和7年度にかけて毎年1分野ずつ必要な研修数が増えていき、令和8年には完全に受講していることが支給要件になりました。

  • 職務分野別リーダー

今までは、令和4年度までに1分野以上の受講が必要でしたが、令和6年度から1分野以上の研修が必要となりました。

研修修了が役職の必須条件になる可能性が高まる

上記でもご紹介しましたが、施設に支給される「処遇改善加算Ⅱ」の支給要件について、保育士が修了する必要のあるキャリアアップ研修の数や項目が、経過措置と共に再決定しました。

そのため施設側は、どの保育士がどの研修を修了しているのかを把握したうえで各役職を決めるようになることが想定されます。

このような事情を考えると、保育士としてのキャリアを築くためには、今のうちにキャリアアップ研修を積極的に受講しておくことが必要だと言えます。

また、キャリアアップ研修の受講後は、「修了証」が交付されます。

自分がどの研修を修了したかを証明する大切な書類で、保育士としてのキャリアにも影響する物なので、無くさないように保管しておきましょう。

保育士等キャリアアップ研修の修了証とは?

保育士等キャリアアップ研修で受講を終えると、修了証が交付されます。

修了証発行時から氏名の変更や紛失などがあった場合、再発行・再交付が必要となります。

都道府県や研修を受けた実施機関に必ずお問い合わせください。

また、受講修了した他の都道府県でも効果があるものなので、原本は修了者ご本人がしっかり管理する必要があります。

出典:東京都「東京都保育士等キャリアアップ研修 申請書等作成マニュアル」

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保育士等キャリアアップ研修を受けるメリット

ここからは、保育士等キャリアアップ研修を受講することで得られる、具体的なメリットを紹介していきます。

メリット①専門知識を身に付けられる

昨今の保育業界は、子どもや家族を取り巻く環境変化とともに、保育園に求められる役割も多様化しており、保育士にもより幅広い知識と専門性が求められるようになりました。

保育士等キャリアアップ研修を受講することで、各分野ごとに深く学ぶことができ、正しい知識やスキルは研修後の実践でも役立ちます。

また、専門知識を持っている保育士が園内に増えれば、各分野の情報を共有することによって、園全体で保育や保護者対応の質を上げることもできるでしょう。

さらに、専門的な知識を身に着けることで、キャリアアップを目指すこともできます。

今よりも高い役職に就くことでモチベーションが上がり、更にやりがいをもって働くことができるでしょう。

メリット②給与アップが期待できる

給与アップが期待できる【保育士人材バンク】

出典:保育士の現状と主な取組

国が処遇改善制度を拡充していくなかで、保育士の給与は近年右肩上がりで推移しています。「保育士等キャリアアップ研修」も保育士の待遇改善に大きく貢献している制度のひとつです。

保育士等キャリアアップ研修を修了し、今よりも高い役職に就くことができれば、それに伴って給与アップが期待できます。

施設によって支給金額は異なりますが、最大月40,000円の手当となれば、金銭面で心強いものとなります。

メリット③転職や復職時に経験を示すものさしになる

保育士等キャリアアップ研修は都道府県や特定の機関によって行われるものですが、修了証が発行されたあとは県外でも有効となります。

制度が導入されたことで、転職時や復職する方でも以前のキャリアを活かしやすくなりました。

国が仕組みを整え、ガイドラインを示している保育士等キャリアアップ研修は、修了することで一定の水準を満たしていることを示す指標となります。

保育士にとっては転職や復職時のアピールポイントになり、園にとっても採用活動時、判断基準のひとつとなるでしょう。

保育士等キャリアアップ研修の注意点

保育士等キャリアアップ研修を受けることで専門性が高まり、給料アップも期待できるとご紹介してきましたが、ここでは、研修後の注意点もご紹介していきます。

研修終了後予想通りの給与アップになるとは限らない

給料アップを期待して研修に臨む方も多いですが、前述したように勤めている職場によっては給料アップの額が異なる点に注意しましょう。

専門リーダーや副主任保育士に支給される手当は、決められた割合の方に40,000円を支給し、残りを主任保育士や職務分野別リーダーに分配できる仕組みになっています。

研修終了後予想通りの給与アップになるとは限らない【保育士人材バンク】

出典:保育士の現状と主な取組

支給対象人数や金額によっては、予想通りの手当が支給されないケースもあるため、事前に園側へ確認することができる場合、対象人数や支給金額の部分は把握しておくとよいでしょう。

手当だけを目的とせず、キャリアアップや専門性の向上などの良い側面も意識して研修に臨むといいかもしれませんね。

保育士等キャリアアップ研修の申し込み方法は?

保育士等キャリアアップ研修は、中堅までの保育士を対象としており、正社員に限らず、特定の条件をクリアしていれば契約社員やパートタイマーも参加可能です。

ただし、研修の申し込みは勤めている保育園を通して行うため、希望者全員が受けられるとは限らない点に注意しましょう。

保育士等キャリアアップ研修を受けるには、都道府県が指定している研修実施期間に申し込みます。研修実施期間はおもに3種類です。

・市区町村(世田谷区・足立区・江東区など)
・指定保育士養成施設(大学・専門学校など)
・保育に関する研修実績を持つ非営利団体(社会福祉法人や一般社団法人など)

研修と参加募集期間は決まっているため、いつでも受講できるとは限りませんが、近年は対面のほかにオンラインなどの受講方式も導入され、受講しやすい環境になってきました。東京都の研修実施機関数は令和5年時点で91団体を超え、研修や定員数を伸ばしています。

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保育士等キャリアアップ研修の研修内容は?

保育士等キャリアアップ研修には8つの研修分野があり、各分野で活躍できる人材育成を目的としています。具体的な研修内容は次の通りです。

乳児保育

乳児を対象とした保育に対する理解を深める研修です。適切な環境を提供し、個人差の大きい子ども一人ひとりに合わせた保育のスキルを学びます。

<研修内容>
・乳児保育の意義
乳児保育の環境
乳児への適切な関わり
乳児の発達に応じた保育内容
乳児保育の指導計画、記録及び評価

幼児教育

子どもの年齢や発達に応じた保育内容と環境設定、指導案や評価への捉え方を学ぶ研修です。就学に向けて小学校との円滑な情報交換や連携についても学びます。

<研修内容>
・幼児教育の意義
幼児教育の環境
幼児の発達に応じた保育内容
幼児教育の指導計画、記録及び評価
小学校との接続

障がい児保育

障がいについて理解を含め、子どもにとって適切な支援や配慮を学ぶ研修です。障がい児を含めた集団保育への工夫や援助について学びます。

<研修内容>
・障がいの理解
・障がい児保育の環境
・障がい児の発達の援助
・家庭及び関係機関との連携
・障がい児保育の指導計画、記録及び評価

食育・アレルギー

食に関する知識を深め、アレルギーを持った子どもへの対応などを学ぶ研修です。栄養やアレルギー疾患に関する基礎知識から、食事提供の方法まで、安全な計画とガイドラインについて学べます。

<研修内容>
・栄養に関する基礎知識
・食育計画の作成と活用
・アレルギー疾患の理解
・保育所における食事の提供ガイドライン
・保育所におけるアレルギー対応ガイドライン

保健衛生・安全対策

傷病への対策と、子どもたちがケガなく安全に過ごすための知識や技術を学ぶ研修です。感染症や事故予防のためのガイドラインを作成し、突発的な状況でも速やかで適切な対応ができるよう必要な情報を学びます。

<研修内容>
・保健計画の作成と活用
・事故防止及び健康安全管理
・保育所における感染症対策ガイドライン
・保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン
・教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン

保護者支援・子育て支援

園児の保護者たちとの接し方や、適切な子育て支援の方法を学ぶ研修です。地域における保育園の役割を理解し、相談・援助の技術を高めます。

<研修内容>
・保護者支援・子育て支援の意義
・保護者に対する相談援助
・地域における子育て支援
・虐待予防
・関係機関との連携、地域資源の活用

マネジメント研修

主任保育士を補佐する立場として、園児たちだけでなく保育士も含めた円滑な運営を行うための知識を学ぶ研修です。客観的な視点と、先を見据えた人材育成の力が求められます。

<研修内容>
・マネジメントの理解
・リーダーシップ
・組織目標の設内容定
・人材育成
・働きやすい環境づくり

保育実践研修

子どもへの理解を深め、保育に関する基本的な関わり方や環境づくりについて学ぶ研修です。運動遊びからやり取りを楽しむ遊びまで、さまざまな遊びと展開を学び、実践に役立てます。

<研修内容>
・保育における環境構成
・子どもとの関わり方
・身体を使った遊び
・言葉・音楽を使った遊び
・物を使った遊び

参照:保育士等キャリアアップ研修ガイドラインの概要

保育士等キャリアアップ研修のe-ラーニングとは

保育士等キャリアアップ研修は、オンラインで受講できるe-ラーニング形式も取り入れられています。対面式の研修と同じく受講時間は15時間で、インターネットを通じて配信される動画を視聴して受講します。受講後に確認テストやレポートを提出し、修了証が発行される流れが一般的です。

動画の視聴方法はパソコン、スマートフォン、タブレットなどから選べて、都合の良い時間に受講ができるため、日々の業務が忙しい方でも取り組みやすいでしょう。多くの実施団体でe-ラーニングでの研修を行っているので、お住まいの地域でチェックしてみてくださいね。

参考:東京都の研修状況

保育士等キャリアアップ研修の活かし方

保育士等キャリアアップ研修の活かし方【保育士人材バンク】

保育士等キャリアアップ研修は処遇改善や役職の側面が取り上げられがちですが、以下のような活かし方もできます。

自分の保育を見直すきっかけになる

研修を受けることは、自分の保育について見直す良いきっかけになります。

研修で学んだ視点を明日からの保育にどう活かすか、今一度振り返ってみましょう。

「いつもの保育に新しい活動を取り入れてみてはどうだろうか」「保護者としっかり向き合えているか見直したい」など、日々の仕事の中でより良くなる視点や見過ごしていた視点が見つかるかもしれません。

転職・異動でキャリアが途切れない

保育士等キャリアアップ研修を修了しておくと、転職や異動時などに、キャリアが一からスタートとなるケースを防ぐこともできるでしょう。

研修の修了をきちんと示すことで、次の転職先でも役職を維持できる可能性が高まります。

また、保育士等キャリアアップ制度は全国で実施されており、県外への転職(異動)を予定している方にも取得するメリットがあります。

なかでも職務分野別リーダーは、おおむね3年という比較的早い段階から受講できるので、早めに研修へ行ける環境であれば、ぜひ受講しておきましょう。

他にも、障がい児保育や乳児保育など、受講できる研修のなかには保育園以外でも役立つ分野があります。
保育園でのキャリアアップだけでなく、児童発達支援施設などへの転職にも研修で得た知識を活かすことができるでしょう。

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保育士等キャリアアップ研修のまとめ

研修を修了してしまえば、職場や住む地域を変えてもキャリアを継続しやすくなります。

仕事をしながらの受講は大変ですが、e-ラーニングでの受講も検討しながら、ぜひ取得を目指していきましょう。

各研修を修了することで、処遇改善が期待できるだけでなく、キャリアアップ転職にも役立ちます。

現在勤めている保育園が制度を導入している場合、積極的に活用していきたいですね。

もし、今の職場では保育士キャリアアップ研修の申し込みができないという方や、研修を修了していてもキャリアアップに繋がらずに悩んでいるという方は、お気軽に保育士人材バンクへご相談ください。

どのような解決策があるか、一緒にお探し、ご希望を叶えるお手伝いをさせていただきます。

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