「保育士として働いてきたけれど、退職金ってどのくらいもらえるの?」、「そもそも保育士に退職金はあるの?」このような疑問をお持ちではありませんか?
退職金は、長く働いた保育士が受け取れる大切なお金ですが、支給の有無や金額は、勤務先の制度によって異なります。
この記事では、保育士の退職金がもらえる条件や計算方法について詳しく解説します。
退職金について正しく理解し、今後の働き方を考える際のヒントにしてください。
退職金とは?
退職金とは、勤めていた企業や法人を退職する際に支給されるお金のことです。
勤続年数や給与をもとに算出され、企業や法人が従業員の貢献に感謝し、退職後の生活を支えるために支給されます。
退職金の制度は法律で義務付けられているものではないため、支給の有無や金額は勤務先の規定によって異なります。
そのため、「必ずもらえるわけではない」という点に注意が必要です。
退職金の種類には以下のようなものがあります。
- 退職一時金制度(社内積立)
⇒退職時に企業や団体から支給される特別手当
- 企業型確定拠出年金制度
⇒従業員が拠出額や運用方法を選択できる積立型制度
- 中小企業退職金共済制度
⇒中小企業従業員向けの退職金共済システム
- 確定給付企業年金制度
⇒定年後に一定額の退職金を受け取れる仕組み
- 特定退職金共済制度
⇒中小企業から大企業まで利用可能な退職金共済制度
保育士の場合は、勤務先が私立保育園なのか、公立保育園なのか、または社会福祉法人が運営する施設なのかによっても、退職金の有無や計算方法が異なります。
まずは、自分が働いている職場に退職金制度があるのかを確認することが重要です。
退職金を受け取る条件
退職金は、法人によって支給の有無や金額、条件が異なります。
一般的に、以下の条件を満たすことで退職金を受け取ることができます。
退職金制度がある法人に就職していること
まず前提として、退職金制度がある職場で働いていなければ、退職金を受け取ることはできません。
法人によっては、退職金制度自体を設けていない場合もあるため、就職前に確認することが大切です。
勤続年数の条件を満たしていること
多くの法人では、一定の勤続年数を満たした従業員にのみ退職金が支給されます。たとえば、3年以上、5年以上、10年以上など、法人ごとに規定が異なります。
勤続年数が短い場合は、退職金が支給されないケースもあります。
退職理由が適用範囲内であること
退職金が支給される退職理由は、法人によって異なります。以下のような退職理由の場合は、退職金を受け取れる可能性があります。
- 定年退職(企業や法人が定める定年に達したために退職すること)
⇒満額支給されることが多い
- 自己都合退職(従業員自らの意思で退職を決めること)
⇒減額される場合あり
- 会社都合退職(企業側の事情で従業員が退職を余儀なくされること)
⇒倒産や解雇などの場合、手厚い支給があることも
一方で、懲戒解雇の場合、重大な規則違反や不正行為による退職のため、退職金が支給されないことが一般的です。
就業規則や労働契約に基づいていること
退職金の支給条件は、就業規則や労働契約書に明記されています。
退職金制度の有無や支給額の計算方法、自己都合退職・会社都合退職による違いなども、企業ごとに細かく規定されている場合があります。
退職時にトラブルにならないよう、退職前に会社の総務や人事に確認するのがおすすめです。
退職金のシミュレーション
退職金は、「基本給×勤続年数に応じた支給率」で計算されるのが一般的です。
ここでは、基本給20万円~40万円とし、勤続5年~30年の場合の退職金をシミュレーションします。
退職金の計算例(税引き前)
今回は以下の計算式をもとに退職金を計算します。
- 退職金(税引前)=基本給×勤続年数に応じた支給率
一例として、基本給20万円~40万円の場合、勤続年数ごとの退職金は以下のようになります。
▼退職金(税引前)のシュミレーション例
勤続年数 | 支給率(基本給の〇倍) | 基本給20万円 | 基本給30万円 | 基本給40万円 |
3年 | 1.5倍 | 30万円 | 45万円 | 60万円 |
5年 | 2.0倍 | 40万円 | 60万円 | 80万円 |
10年 | 3.5倍 | 70万円 | 105万円 | 140万円 |
15年 | 5.0倍 | 100万円 | 150万円 | 200万円 |
20年 | 6.5倍 | 130万円 | 195万円 | 260万円 |
25年 | 8.0倍 | 160万円 | 240万円 | 320万円 |
30年 | 10.0倍 | 200万円 | 300万円 | 400万円 |
表のように、基本給が20万円の場合と40万円の場合では、同じ勤続年数でも退職金の金額が大きく変わることがあります。
税金が引かれることにも注意!
退職金は、そのまま全額を受け取れるわけではありません。毎月の給料同様に、所得税や住民税などが控除されるため、実際の受取額は税引き後の金額になります。
ただし、退職所得控除という制度があり、一定の金額までは非課税となるため、実際に税金が引かれるケースは限られます。
退職所得控除は、勤続年数によって決まります。
- 勤続年数が20年以下の場合
⇒退職所得控除=40万円×勤続年数
- 勤続年数が20年を超える場合
⇒退職所得控除=800万円+70万円×(勤続年数-20年)
退職金に税金はかかる?非課税になるケースとかかるケース
退職金が退職所得控除の範囲内であれば、税金はかかりません。
しかし、退職金が控除額を超えた場合、超えた分だけ課税対象になります。
【税金がかからない例】
- 勤続10年・退職金150万円 → 控除額400万円以内なので非課税
- 勤続20年・退職金500万円 → 控除額800万円以内なので非課税
- 勤続25年・退職金800万円 → 控除額1,150万円以内なので非課税
上記の場合は、退職金をそのまま受け取ることができます!
【税金がかかる例】
- 勤続25年・退職金1,200万円 → 控除額1,150万円は非課税、50万円分は課税対象
課税対象額の税金を差し引いた金額が、最終的な受取額になります。
基本給と総支給額の違いにも注意!
退職金の計算に使われる「基本給」と、給与明細に記載される「総支給額」は別のものです。
- 基本給 → 退職金の計算に用いられる給与(残業代や各種手当を含まない)
- 総支給額 → 基本給に加え、残業手当や通勤手当などを含む給与の合計額
通常、退職金の計算では「総支給額」ではなく「基本給」が基準になります。
そのため、支給率をかけて計算すると、思っていたよりも退職金の金額が少なくなることもあるため、注意しましょう!
参考:国税庁「退職金と税」


退職時にもらえるお金はどんなものがあるの?

退職時には、退職金以外にもさまざまな支給金や給付金を受け取れる可能性があります。ここでは、おもに受け取れるお金の種類を解説します。
失業手当(雇用保険の基本手当)
ハローワークで求職活動をする人が受け取れる手当です。
- 支給条件 → 離職前に一定期間(原則12か月以上)雇用保険に加入していた人
- 支給額 → 退職前の給与に応じて決定(給料の50~80%程度)
- 給付期間 → 自己都合退職は2~3ヵ月後に開始、会社都合退職はすぐに受給可
参考:ハローワーク「基本手当について」
退職一時金・企業年金(確定拠出年金・確定給付年金)
企業によっては、退職金とは別に「退職一時金」や「企業年金」が支給される場合があります。
- 退職一時金 → 退職時に一括で支給されるお金(会社が独自に用意)
- 企業年金 → 退職後に年金として受け取る制度
企業年金には、以下の2種類があります。
- 確定拠出年金(企業型DC) → 退職後、自分で運用管理を続ける
(転職先の制度に引継ぎor個人型iDeCoに移行)
- 確定給付年金(DB) → 企業が積み立てをおこない、一定の条件を満たせば支給される(将来の受取額が決まっている)
勤務先の退職金制度を事前に確認して、受け取れるお金をしっかり把握しておきましょう!
参考
厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」
労働金庫連合会「確定給付企業年金(DB)」
退職後の健康保険給付(傷病手当金など)
退職後も、一定の条件を満たせば健康保険から給付金を受け取れることがあります。
- 傷病手当金 → 退職前に病気や怪我で休業し、すでに受給していた場合、退職後も継続して受け取れる
- 高額療養費制度 → 一定の条件を満たせば、医療費の自己負担額を抑えられる
退職後も利用できる制度を知っておくことで、万が一の際に安心できます!
参考:
全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」
退職後にもらえる失業保険
退職後、収入がなくなることに不安を感じる方も多いですが、一定の条件を満たせば『失業手当(基本手当)』を受け取ることができます。
ここでは、失業手当の基本的な仕組みと、受給の流れを簡単に解説します。
失業手当をもらう条件は?
以下の条件を満たすと、失業手当を受け取ることができます。
- 仕事を辞めた後、働ける状態で積極的に求職活動をしていること
- 自己都合退職の場合→退職前の2年間で、雇用保険に通算12ヵ月以上加入していること
- 会社都合退職の場合→退職前の1年間で、雇用保険に通算6ヶ月以上加入していること
受給条件を満たしているかどうか、ハローワークで事前に確認しておきましょう!
失業手当はいくらもらえる
失業手当の支給額は、退職前の給与によって決まります。
【計算式】 ※1日あたりの基本手当日額
- 退職前6ヶ月前の平均給与×50~80%(年齢や給与によって変動)
【具体的な受給額の例】
退職前の月収 | 1日あたりの失業手当 | 90日間の受給総額(目安) |
20万円 | 約5,000円~6,000円 | 45万円~54万円 |
30万円 | 約7,000円~8,000円 | 63万円~72万円 |
月収が30万円の場合、90日間で最大72万円ほど受給できる可能性があります!
年齢や退職理由によっても異なるため、詳細はハローワークで確認しましょう。
参考:ハローワーク「基本手当について」
失業手当は何日間もらえる?
受給できる日数は、退職理由や雇用保険の加入期間によって異なります。
以下に、30歳未満で離職した場合の例をご紹介します。
退職理由 | 雇用保険の加入期間 | もらえる期間 |
自己都合退職 | 1年以上5年未満 | 90日 |
自己都合退職 | 5年以上10年未満 | 120日 |
自己都合退職 | 10年以上20年未満 | 150日 |
会社都合退職 | 1年以上5年未満 | 90日 |
会社都合退職 | 5年以上10年未満 | 120日 |
会社都合退職 | 10年以上20年未満 | 180日 |
自己都合退職であっても、最短で90日間(約3ヶ月分)もらえる仕組みです。
なお、受給期間は、離職時の年齢によっても変わるため、詳細はハローワークで確認しましょう。
参考:ハローワーク「基本手当の所定給付日数」
失業手当はいつからもらえる?
失業手当は、退職後すぐにもらえるわけではなく、一定の待機期間があります。
退職理由 | 待機期間 | 受給開始時期 |
自己都合退職 | 7日間+2~3ヶ月の給付制限 | 退職後 2~3ヶ月後 |
会社都合退職 | 7日間のみ | 退職後 約1週間後から |
会社都合で退職する場合はすぐにもらえますが、自己都合で退職する場合は2~3ヶ月後の開始になるため貯金を準備しておくと安心です!
失業手当をもらう手続きは?
失業手当を受け取るには、ハローワークで手続きが必要です。
【必要なもの】
- 離職票(会社からもらう)
- マイナンバーカード(または本人確認書類)
- 雇用保険被保険者証
- 証明写真(縦3cm×横2.5cm)
- 本人名義の銀行口座情報
【手続きの流れ】
- 退職後、ハローワークに離職票を提出する
- 求職申込をおこない、雇用保険説明会に参加する
- 7日間の待機期間終了後、認定日ごとに求職活動を報告する
- 受給開始(指定の口座に振り込まれる)
参考:ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」
保育士の退職金まとめ
保育士の退職金は、職場によって支給の有無や金額が大きく変わります。
退職金が支給されるかどうかは、勤続年数・雇用形態・法人ごとのルールなどによって異なるため、事前に確認することが大切です。
また、転職時には退職金制度の有無を確認し、制度が整った職場を選ぶことも大切です。
『保育士人材バンク』では、退職金制度のある保育園を簡単に探せるので、転職活動もスムーズに進めやすくなります。
自分に合った職場探しの第一歩として、ぜひ活用してみてください。