今後、保育士を続けていくうえで、昇進について気になる方もいるかもしれません。
「保育現場で子どもとずっと関わりたい」「主任保育士として保育士を指導したい」「園長になって理想の園をつくりたい」など、人それぞれ理想のキャリアがあるでしょう。
とはいえ、昇進するためにはどうすればいいのか分からない方も多いのではないでしょうか?
本記事では、保育士が昇進するメリットや昇進するためのポイントをご紹介します。
目次
保育士の昇進とは?
保育士の昇進とは、経験や能力に応じて、より責任のあるポジションに進むことを指します。
昇進によって職位が上がると、責任ある大きな仕事を任されるようになります。
一般的な会社の昇進は、主任、課長、部長などの役職に就くことを指しますが、保育園の場合は一般企業にあるような役職はありません。
このあと詳しく紹介しますが、保育園での役職は、職務分野別リーダー、専門リーダー、副主任、主任、園長などがあります。
どのような昇進先がある?
保育園の役職は、少し前まで、『主任保育士』と『園長』の2種類のみでした。
しかし2017年、政府は保育士不足の問題を解消すべく、新たに3種類の役職を増やしました。
現在、保育士の昇進先は全部で5つあります。それぞれ紹介していきます。
職務分野別リーダー
『職務分野別リーダー』は、2017年から新たに加わった役職の1つです。
保育士が昇進するうえで、最初のステップとなります。
職務分野別リーダーになるためには、保育士としての経験年数が3年以上あり、担当する職務分野の研修を修了していることが条件です。
ただし、要件を満たしていても、必ずしも昇進できるとは限りません。
職場が職務分野別リーダーとしての発令をすることで、正式に昇進となります。
役職手当として、月額5千円を受け取れる可能性があります。
参考サイト:厚生労働省 「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」
専門リーダー
『専門リーダー』も、2017年に新しく加わった役職です。
専門リーダーは、その分野のプロフェッショナルとして、保育現場で働きながら現場の保育士に対してアドバイスやサポートができます。
専門リーダーになるためには、保育士としての経験年数が7年以上あり、かつ職務分野別リーダーとしての経験が必要です。
また、全部で8つある専門分野のうち、4つ以上の研修を修了していることが条件です。
職務分野別リーダーと同じで、職場から発令があることで正式に昇進できます。
役職手当として、月額4万円を受け取れる可能性があります。
参考サイト:厚生労働省 「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」
副主任保育士
『副主任保育士』も新しくできた役職です。
一般的にはライン職と呼ばれるポジションで、いわば現場と責任者をつなげるパイプ役です。主任保育士のサポートや、保育士の育成を行います。
副主任保育士になるためには、保育士としての経験年数が7年以上あって、職務分野別リーダーとして経験を重ねることが必要です。
くわえて、8つある専門分野のうち、マネジメント分野と、その他の分野の研修を3つ以上修了する必要があります。
職場の正式な発令を受けることで、昇進できます。
月額4万円の役職手当を受け取れる可能性があります。
参考サイト:厚生労働省 「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」
主任保育士
『主任保育士』は、もともとある役職で、保育現場の責任者です。園長のサポートや保育士への助言などもおこなうでしょう。
ここまで紹介した役職とは違って、園の運営に関わるポジションで、園長がいないときは代理を務めます。
主任保育士になるために必要な経験数やスキルは、特に決まっていません。
厚生労働省の資料によると、主任の平均勤続年数が21年と記載されているため、そのくらいの経験年数が必要になるかもしれません。
しかし、主任保育士レベルの経験と能力があると判断されれば、経験年数が少なくても昇進の声がかかる可能性も十分あるでしょう。
主任保育士の役職手当は明確には決まっていないため、園によってさまざまですが、私立保育園で働く一般の保育士の年収相場が約306万円に対して、主任保育士の年収相場が約460万円です。
つまり、保育士と主任保育士とでは、年収の差が大きくあることが分かります。
参考サイト:厚生労働省『幼稚園・保育所などの経営実態調査結果(収支状況等)』
園長(施設長)
保育園の園長は、園全体の運営や経営をおこなう最高責任者です。
人材採用やクレーム対応、自治体との連携、スタッフの育成など、業務内容は多岐にわたります。
主任保育士同様に、園長になるための資格要件はとくに決められていません。
しかし、「保育所設置認可等事務取扱要網」には、公立保育園で園長(施設長)になるための条件として、
“公立保育所(公設民営を含む。)の施設長となる者は、児童福祉事業に2年以上従事した者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者であること。”と記載があります。
引用:東京都福祉局 「保育所設置認可等事務取扱要綱」
上記を踏まえると、認可保育園などの園長になるためには、最低限として2年以上の実務経験が必要です。
参考サイト:東京都福祉局 「保育所設置認可等事務取扱要綱」
よくあるキャリアパスのパターン
保育士の昇進先と、それぞれの役職について詳しく解説したところで、よくあるキャリアパスのパターンを紹介します。
あくまで一例ですが、保育士は下記のような流れで昇進していくのが一般的です。
【ステップ①】 副担任、サブ、フリー保育士などの保育補助
【ステップ②】 クラス担任
【ステップ③】 職務分野別リーダー
【ステップ④】 副主任保育士または専門リーダー
【ステップ⑤】 主任保育士
【ステップ⑥】 園長(施設長)
昇進するメリット
昇進することに対して、「責任が増えるから大変そう」「仕事が増えてめんどくさそう」とネガティブに思う保育士さんもいるかもしれません。
しかし、実は昇進することで得られるメリットはたくさんあります。
保育士が昇進するメリットは次の5つです。
給料が上がる
昇進するメリットは給料が上がることです。
保育士は業務量に対して、給料が低いイメージを持たれがちです。
徐々に改善されつつありますが、保育士の退職理由をみると、給料の安さが上位にあがっています。この結果から処遇の見直し・改善がまだまだ必要なことが分かります。
しかし、昇進すれば、給料が上がります。どんなに仕事が大変であっても、給料が上がれば、その分、モチベーションも上がるでしょう。
また2017年以降、国は保育士の処遇を改善すべく役職を増やしたこともあり、以前よりも昇進しやすくなったといえます。
参考サイト:厚生労働省『図表1-2-62 保育士として就業した者が退職した理由』
やりがいにつながる
昇進すると、責任ある仕事を任されたり、リーダーシップを発揮したりする機会が増えます。
責任ある仕事はもちろん大変ですが、やりがいを実感できるでしょう。
難易度の高い仕事を任されるということは、会社に期待されているということです。
大変でもやり遂げたときは、達成感や自信につながります。
また、昇進すると、保育士の指導を任される機会も増えます。
若手の保育士が、悩みながらも成長していく姿を近くで見られることは、やりがいにつながるはずです。
より良い保育環境を作れる
昇進すると、保育に関する良い意見が言いやすくなるというメリットもあります。
これまで保育士として培ってきた経験やスキルは、より良い保育を作っていくための力になるでしょう。
「〇〇な保育がしたい」「子どもにとっても保育士にとってもより良い環境を作りたい」など理想がある方は、昇進することで実現できる可能性があります。
マネジメントスキルが身につく
昇進するメリットの1つに、マネジメントスキルが身につくことが挙げられます。
役職が上がると保育の仕事だけでなく、運営目線での業務が増えてきます。
園を円滑に運営するために、全体をまとめたり、問題を解決したり、意思決定をしたりと、保育士の時とは求められるスキルが変わってきます。
慣れるまでは大変なこともありますが、マネジメントスキルが身につけば、さらに上の役職を目指せるでしょう。
転職で有利になる
保育士が昇進すると、転職で有利になるというメリットもあります。
なぜなら、昇進するにはそれなりの経験とスキルが必要になるからです。
仮に別な保育園へ転職するとなっても、経験やスキルが高いと見なされ、即戦力として採用してもらえる可能性が高いでしょう。
転職先でもこれまでの活躍が評価され、責任あるポジションを任される可能性もあります。
昇進するためのポイント
昇進するためのポイントは下記の3つです。
昇進したいと考えている保育士さんは、ぜひ参考にしてみてください。
経験を積み重ねる
昇進するためには、経験を積むことが大切です。
たとえば、経験が浅い新人保育士さんは、まず園の方針やルール、シフトごとの業務内容など、基本的な部分を身につける必要があります。
役職ごとに求められるスキルや経験が異なるので、目の前の経験を積み重ねて、必要なスキルを着実に身につけていくことが重要です。
資格取得や研修に参加してスキルアップを目指す
経験を積み重ねると、スキルは自然に身についていくものですが、自分で資格を取得したり研修に参加したりしてスキルアップを目指すのも1つです。
具体的には、リトミック指導員や絵本専門士など保育現場で役立つ資格や勉強をするのもよいでしょう。
また、主任保育士や園長など、事務仕事や外部とのやりとりが増える役職を目指すなら、下記のようなスキルを取得するのも1つです。
- WordやExcelなどの操作スキル
- 会計・経理業務に役立つスキル
- ビジネスシーンに最適なメール対応や書類作成スキル
さらに、処遇改善と専門性向上を目的とし厚生労働省が作った『保育士等キャリアアップ研修』に積極的に参加するのもおすすめです。
転職して上のポジションを狙う
転職して上のポジションを狙うのも1つでしょう。
求人票をみると、主任保育士や園長を募集している園もあるため、応募するのも1つです。今の園で少しずつキャリアアップを目指すよりも、最短で昇進できます。
とくに、新規園の募集であれば、主任や園長として1から保育園を作っていく経験もできるでしょう。
昇進できない時は
今勤めている保育園では、「昇進するのが難しいかもしれない・・・」と感じた場合は、以下の方法を参考にしてみてください。
園長や人事担当者に話してみる
まずは、園長や人事担当者に、昇進したいことを正直に話してみましょう。
意欲や熱意が伝われば、責任ある仕事やポジションを任されることもあるかもしれません。
どんなに昇進したいと思っていても、周りに伝わらなければチャンスは来ないかもしれません。面談などで積極的に想いをアピールするのがおすすめです。
また、上席に「昇進したい」という気持ちを伝えることで、自分に足りない部分を教えてくれたり、昇進するためのアドバイスをもらえたりする可能性もあるでしょう。
転職を候補に入れる
今の環境で、どれだけがんばっても昇進が難しいと感じた場合は、転職を検討するのも1つです。
前述したように、主任保育士や園長を募集している求人も多々あります。
くわえて、評価制度が明確になっている保育園であれば、キャリアアップしやすくスムーズに昇進を目指せるでしょう。
保育士の昇進まとめ
保育士が昇進するメリットや、昇進するためのポイントを紹介しました。
少し前までは、保育士が昇進する場合、主任保育士と園長という選択しかありませんでした。
しかし、処遇改善によって役職が増え、キャリアアップ研修ができたことで、昇進・昇給しやすくなったといえます。
昇進と聞くと、「何だか大変そう・・・」という方もいるかもしれません。
しかし昇進することで、今より給料が上がったり、保育士としてスキルアップできたり、理想の保育ができたりと、メリットもたくさんあります。
自分が描く理想のキャリアを実現させるためにも、「この先保育士としてどうなりたいのか」、考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか?
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