保育士試験の全体像や出題範囲、勉強期間・勉強時間の目安を整理し、短期間で合格点に近づくための考え方や勉強の進め方を解説します。

「何から始めればいいか悩んでいる方」や「勉強が続かず不安を感じている方」に向けて、限られた時間で効率よく合格を目指すためのヒントもご紹介しますので、保育士の国家試験を受ける方なら是非、ご一読ください。

保育士試験の勉強について

保育士試験は、一次の筆記試験と二次の実技試験で構成されている国家試験です。

筆記試験は9教科8科目で構成されており、直接子どもに関わる内容だけでなく、福祉制度、法律、社会保障の仕組み、歴史的な背景など、かなり広い分野から出題されます。

そのため、「子どもが好き」「子どもと関わる仕事がしたい」という動機で勉強を始めた人ほど、最初にテキストを開いたときにギャップを感じやすいのが、保育士試験の特徴です。

筆記試験の科目をもう少し具体的に見ていきましょう。

筆記試験科目
  • 保育原理
    保育の基本理念や、子どもと関わる際に大切にされる考え方を学ぶ科目。
  • 教育原理
    日本の教育制度や教育に関する基本的な枠組みを理解する科目。
  • 社会的養護
    家庭で生活することが難しい子どもを、社会がどのように支援しているかを学ぶ科目。
  • 子ども家庭福祉
    子どもや家庭を支える福祉制度や支援体制について学ぶ科目。
  • 社会福祉
    高齢者・障がい者・生活困窮者など、社会全体で人を支える仕組みを広く扱う科目。
  • 保育の心理学
    子どもの発達過程や心理的な特徴について学ぶ科目。
  • 子どもの保健
    子どもの健康管理、病気や事故の予防、安全な生活環境について学ぶ科目。
  • 子どもの食と栄養
    子どもの成長に必要な栄養や食事内容、食育の考え方を学ぶ科目。
  • 保育実習理論
    音楽・造形・言語など、保育現場で求められる実践的な知識を扱う科目。

参考:全国保育士養成協議会「保育士試験出題範囲

このようにかなり体系的な知識を求められているため、いざ勉強を始めてみると「思っていたより大変そう」「全部覚えられる気がしない」と感じてしまい、学習が止まってしまうケースも少なくありません。

二次の実技試験は、「音楽」「造形」「言語」の3分野から2分野を選択して受験します。

一次試験・二次試験ともに、合格基準は各科目6割以上。

ここでとても大事なのが、保育士試験は絶対評価だという点です。

学生時代のテストや受験勉強では「周りより点を取らないといけない」「できるだけ高得点を目指す」という感覚が身についている人が多いでしょう。

その感覚のまま勉強を進めてしまうと、必要以上に完璧を目指したり、出にくいところまで手を広げてしまい、途中で「量が多すぎる」と感じて疲れてしまうことも少なくありません。

一方で、短期間で合格している人の多くは、「6割を確実に正解するには何が必要か」という視点で勉強しています。

満点を取ろうとする必要はありません。

出題されやすいポイントを押さえ、自分にとっての得点源や不得意な分野を整理し、出題されにくいところは思い切って割り切りながら、確実に正解できる問題を増やしていく。

この考え方に切り替えられるかどうかが、最初の分かれ道になります。

ちなみに一次試験の合格率は、再受験者を含めて20%前後で推移しています。

数字だけ見るとかなり高難度の試験であるように感じますが、これは9科目すべて6割以上を取らなければならない試験構造の影響が大きくなっています。

試験の仕組みを理解し、狙うべきところを絞ることが出来れば、「合格率=自分の合格確率」ではないことが見えてきます。

もう一つ、試験対策の中で意外と見落とされがちなのがメンタル面です。

勉強に集中できる環境を整えることはもちろんですが、インプットの質も試験本番のパフォーマンスも、心の状態に左右されます。

特に仕事や子育てと両立しながら受験する場合、「勉強していることを家族が理解してくれているか」「周りから応援してもらえているか」によっても、続けやすさが大きく変わります。

協力をお願いできるところはお願いして、集中して学習したい期間だけでも味方を増やしておくと、良い結果につながりやすくなります。

参考:こども家庭庁
保育士試験の実施状況(令和6年度)
保育士試験の実施状況(令和5年度)
保育士試験の実施状況(令和4年度)

保育士試験の勉強期間

「保育士試験の勉強って、何ヶ月くらい必要ですか?」

これは、ガイダンスや相談の場で必ず出る質問です。

一般的には、半年〜1年ほどを想定して学習計画を立てる人が多いです。

実際、テキストや通信講座でも、そのくらいの期間設定になっているものが多く見られます。

保育士試験は年に2回(前期4月・後期10月)実施され、合格した科目は3年間有効です。

そのため、まずは自分にとって合格しやすそうな科目だけに力を入れ、残りは次回に回そうというように、複数回に分けて受験する計画を立てる人も少なくありません。

ただ、仕事や子育てと並行して勉強する場合「時間ができたらやろう」と思っているうちに、数週間、数か月と何も進まないまま時間が過ぎてしまったというケースも多く聞いてきました。

勉強期間が長くなるほど、生活環境や仕事の変化、モチベーション低下などで、計画が崩れやすくなります。

これまで受験サポートした方々の傾向を見ると、「半年〜1年かけて余裕を持とう」と長期計画した人よりも、「3か月程度で短期集中して一気に取り切る」と覚悟を決めた人の方が、

結果的に合格率が高い傾向がありました。

期間を区切ることで、「今はこれをやる」「ここまで終わらせる」という優先順位が明確になり、学習効率が上がりやすくなるためです。

保育士試験の勉強時間

保育士試験の勉強時間の目安は100〜150時間程度です。

全9科目を一から勉強していく場合、このくらいが一つの基準になります。

ただし、ここで気をつけたいのが「150時間やったかどうか」ではなく、「150時間をどう使ったか」という点です。

たとえば同じ150時間でも、予定の合間になんとなくテキストを眺めていたり、スマホを触りながら集中しきれないまま過ぎてしまった時間と、あらかじめ時間を確保して「今日はここを理解する」「今日はここを整理する」と決めて取り組んだ時間とでは、学習の密度はまったく違います。

机に向かっている時間が長ければ長いほど、点数が伸びるというわけではなく、
頭の中で「考える作業」が起きていないと、知識は定着しません。

これは他の学習でもよく見られることですが「わからない」と言いながら、実は問題について考えているのではなく、ただ「わからない状態」で止まってしまっている、ということがあります。

今回の受験勉強でも同じで、長時間やっているのに結果が出ない人ほど、考えているつもりで、実は手が止まっている状態になっていることが少なくありません。

また、トータルが同じ勉強時間でも、日によってやったりやれなかったりという場合より、短時間でも毎日必ず取り組んだ人の方が、結果につながりやすい傾向があります。

勉強にムラがあると、試験本番で自信のない問題に出会ったときに「本当はあのときやれたはずなのに…」という迷いが出やすくなります。

一方で、毎日少しずつでも積み重ねてきた人は、「やるだけのことはやった」という感覚が支えになり、本番でも落ち着いて問題に向き合いやすくなります。

保育士試験の勉強法

保育士試験に限らず、国家試験は「出題基準」に基づいて作られています。

そのため、合格への近道はシンプルで、過去問をどれだけ活用できるかにかかっています。

目安としては、過去3〜5年分の過去問を「解いて終わり」ではなく、「理解して説明できる状態」まで持っていけると、合格点に届く知識は十分身につきます。

ただし注意したいのが、「いきなり過去問に取り組むやり方」と、「過去問だけでは対策しにくい領域があること」です。

まず予備知識がほとんどない状態で過去問を解いてみると、「見慣れない制度名」「聞いたことのない法律」「人名や専門用語の多さ」などに一気に圧倒されて、「自分には無理かも…」

と感じてしまう人が、とても多いです。

そこでおすすめなのが、次の流れです。

  1. 導入教材
  2. 過去問
  3. 復習

まず導入教材で、出題内容の全体像をざっくり把握していきます。

この段階で、完璧に覚える必要はありません。

むしろ、「ちゃんと覚え込まなければ」と力を入れすぎると、先に進めなくなります。

導入教材は、「できるだけ負荷がかからないもの」を選ぶことがポイントです。

活字からの理解が得意な方は、ストレスなく読み進められそうだと感じるテキストを。

一方で、活字に苦手意識のある方は、まずは動画教材などを活用して、耳や映像からイメージをつかめるものを選ぶのもおすすめです。

この段階で大切なのは、「一番詳しい教材」や「評価の高い教材」を選ぶことではなく、自分にとって見やすく、全体像をつかみやすい入口を選ぶことです。

こうして土台を作ったうえで過去問に取り組むことで、「あ、これさっき見たやつだ」「こういう聞かれ方をするんだ」と、知識が具体的につながり始めます。

そして、過去問で間違えたところを復習し、「なぜ違ったのか」「どう考えればよかったのか」を整理していくことで、解くための知識が安定していきます。

また保育士試験では、時事的なテーマや、改正された法律・制度、統計などが問われることもあります。

こういった問題に関しては、昨年度までの知識をそのまま使ってしまうと、誤った選択肢を選んでしまうことも起こり得ます。

そのため、古い教材を使用したり、ネットで調べた情報が古いことに気づかず勉強してしまった場合、誤った内容を覚えてしまう危険があります。過去問で基礎を固めつつ、法律や統計などの最新情報だけは、必ず最新版の教材や信頼できる情報源で上書きしておくことが大切です。

保育士試験の勉強をする順番

ここまでで、「いきなり過去問を取り組まず、まずは導入教材で全体像をつかみ、そこから過去問に進む」という勉強の基本的な流れをお伝えしてきました。

では実際に、どの順番で何から手をつけていくと続けやすいのかを、もう少し具体的に整理してみましょう。

保育士試験は、「何から始めるか」で、続けやすさが大きく変わります。

特に初めて勉強する人ほど、順番はとても重要です。

基本的には、次の流れがおすすめです。

① まずは導入教材で全体像をつかむ(目安:約30時間)

最初の目的は、知識を覚え込むことではありません。

保育士試験全体の輪郭を知ることです。

テキストでも動画でも、自分にとって負担の少ない教材を使って、9科目を一通り見ていきます。

この段階でのゴールは、内容を完璧に覚えることではありません。

「聞いたことがある」「なんとなく分かる」「どこかで見た気がする」と感じられる程度まで、全体像をつかめていれば十分です。

② 取り組む科目の順番は「気が進む科目」からでOK

「この科目からやらないといけない」という正解はありません。

もし途中で興味の持ちづらい単元になったり、脳が拒否し始めた場合も、別の科目に移って大丈夫です。

大事なのは、勉強を止めないこと。

飛ばしながらでも進めていき、最終的に全て取り組めればよいのです。

③ 進捗管理を見える化する

勉強が続くかどうかは、進捗管理でほぼ決まります。

残りページ数、残り動画数など、「あとどれくらいで終わるか」を見える形にしましょう。

ゴールが見えないと、モチベーションが下がったり、終わりの見えない不安から手が止まってしまいがちです。

④ 予習が終わったら過去問(最低3周)

1周目は点数を気にしなくてOKです。

目的は、問題を分類すること。

  1. すぐに確実に解ける問題
  2. あやふやな理解で間違えやすい問題
  3. まったく分からない問題

この3つに分けながら、テンポよく一周します。

⑤ 2周目以降は「あやふや問題」を重点的に

一番点数につながりやすいのが、「あやふやな理解で間違えやすい問題」です。

「すぐに確実に解ける問題」は、何度も繰り返す必要はありません。

逆に、「まったく分からない問題」は、無理に理解しようとすると時間がかかりすぎます。

それよりも、「なんとなく覚えていたけど違っていた」「勘違いしていた」「自分の常識と解答にズレがあった」という問題を一つずつ修正していくことが、合格点への近道になります。

⑥「正解探し」より「バツ探し」

保育士試験は、すべて五択問題です。

選択肢から正解を探そうとすると、「見たことがある気がする」「なんとなく合っていそう」といった、あやふやな感覚で選んでしまいがちです。

逆に、本当は合っているのに、「これは知らないから違うかも」と自分の知識を信用できず、消してしまうこともあります。

そこで意識したいのが、正解を当てにいくのではなく、確実にバツだと言える選択肢を消していくこと。

消去法で絞っていくことで、知識が完璧でなくても答えにたどり着ける場面は多くあります。

⑦ 丸暗記ではなく「根拠」を残す

過去問と全く同じ問題が出ることはないので、当たり前のことですが「答えは○番」と覚えるだけでは、本番では通用しません。

なぜ間違いなのかという根拠を残しておくことで、表現が変わっても対応できるようになります。

おわりに

このように、保育士試験は効率よくポイントを押さえて勉強していけば、短期間でも合格することは決して難しくありません。

試験の仕組みを理解し、闇雲に頑張るのではなく、合格点を取るための戦略を立てて、一歩ずつ取り組んでみてください。

髙山陽介

執筆者:髙山陽介(わでか保育士講座主催)
自身の受験経験と多くの受講生支援を通じ、受験者一人ひとりの状況に寄り添い、子育て中や仕事で忙しい人でも短期間で無理なく進められる合格までの道筋を示している。