保育士として経験を積むと、任されることになる「クラスリーダー」。キャリアアップの第一歩ですが、「責任が重そうで不安」「先生たちとの連携ってどうすればいいの?」と悩む方も多いのではないでしょうか。

この記事では、クラスリーダーの具体的な仕事内容や、気になる「給料(処遇改善手当)」の仕組み、現場で役立つ悩み解決法を徹底解説します。

保育士の「リーダー」には2つの種類がある

一口に「保育士のリーダー」といっても、現場での役割(ポジション)と、国の制度上の役職では意味合いが異なります。ここを混同していると「リーダーをやっているのに給料が上がらない」といった誤解が生じてしまうため、まずは2つの違いを明確にしましょう。

1.現場のまとめ役「クラスリーダー(担任リーダー)」

ひとつは、日々の保育現場でクラス運営の中心となる「クラスリーダー」です。これは園が独自に定める役割です。

選ばれ方の例:経験2〜3年目以上の保育士が指名されることが多いです。1年交代や、行事ごとの持ち回りで担当することもあります。

給料:基本的にこの役割だけで大幅な昇給があるわけではありません(園によっては数千円の手当がつく場合もあります)。

位置づけ:現場の指揮官。主任や園長と、ほかの保育士とのパイプ役になります。

この記事では、主にこの「クラスリーダー」の業務や悩み解決について詳しく解説します。

2.役職としての「職務分野別リーダー・専門リーダー・副主任」

もうひとつは、2017年に新設された国の「処遇改善等加算II」という制度に基づく、処遇改善加算に紐づくリーダー職です。条件を満たすと辞令が交付され、国からのお金で給料(手当)がアップするのが最大の特徴です。

クラスリーダーとしての経験は、将来的にこれらの役職に就くための重要な実績となります。

①職務分野別リーダー

若手・中堅保育士向けの最初のステップです。

  • 対象:経験年数がおおむね3年以上
  • 条件:担当する職務分野(乳児保育、食育など)の研修を修了すること
  • 手当:月額5,000円〜(園の配分による)

②専門リーダー

職務分野別リーダーの次のステップとなる、中堅リーダーです。

  • 対象:経験年数がおおむね7年以上
  • 条件:職務分野別リーダーを経験し、4つ以上の分野の研修を修了すること
  • 手当:月額最大40,000円(園の配分による)

副主任保育士

専門リーダーと同等の手当がつきますが、より「マネジメント(管理職)」に近い役割を担います。園長や主任の補佐を行うポジションです。

  • 対象:経験年数がおおむね7年以上
  • 条件:職務分野別リーダーを経験し、マネジメント分野を含む研修を修了すること
  • 手当:月額最大40,000円(園の配分による)

このように、クラスリーダーを経験してスキルを磨くことは、将来的に「月額4万円アップ」などの確実な収入アップにつながるキャリアの土台となります。

【保育士】クラスリーダーの具体的な仕事内容

では、現場の「クラスリーダー」は具体的に何をするのでしょうか。「クラスをまとめる」といっても、その業務は多岐にわたります。ここでは5つの視点から解説します。

1.子どもたちの安全を守る「クラス運営」

何より一番大切なのは、子どもたちが一日を安全に、安心して過ごせる環境を作ることです。リーダーは常にクラス全体を見渡し、事故やケガを未然に防ぐ役割を担います。

  • 安全管理(環境構成):「保育室におもちゃが散乱していないか」「危険な場所に子どもが行っていないか」など、周りに目を配り、他の先生とも連携します。
  • 子どもの健康観察:一人ひとりの顔色や機嫌を把握します。体調が悪そうな子がいないか、アレルギー対応に間違いがないかなど、確認を行います。
  • 雰囲気作り:活動の切り替え時に子どもたちが混乱しないよう、わかりやすく声をかけたり、落ち着ける雰囲気を作ったりして、クラス全体のリズムを整えます。

2.スタッフ間の連携・チームワーク作り

子どもたちを守るためには、同じクラスに入る保育士同士のチームワークが欠かせません。先生たちが動きやすいように、声をかけ合うのもリーダーの大切な仕事です。

  • 役割分担の調整:その日の活動に合わせて、「誰がメインで、誰がサブに入るか」「誰がなんのポジションにするか」などを決め、スムーズに動けるように声をかけます。
  • シフトや休憩の調整:クラス内の配置バランスを見たり、みんなが適切なタイミングで休憩に入れるように時間を調整したりします。
  • 情報の共有(ホウ・レン・ソウ):朝のミーティングや引き継ぎで、子どもの体調や保護者からの連絡事項を共有し、伝達漏れがないように務めます。

3.保育計画の作成と進行

クラス運営の舵取り役として、計画作りをリードします。

  • 指導案の作成:年間指導計画(年カリ)、月案、週案などの作成を中心になって進めます。サブの先生と分担する場合でも、まとめはリーダーが行うこともあるでしょう。
  • 行事の企画:運動会や発表会など、クラス単位での出し物や構成を考え、本番までの準備スケジュールを組み立てます。

4.保護者対応とトラブル対応

保護者からの信頼を得るための、クラスの窓口となります。

  • 相談対応:保護者からの育児相談に乗ったり、園に対するご要望の一次対応を行ったりします。
  • ケガやトラブルへの対応:噛みつきや怪我などのトラブルがあった際、状況を把握し、保護者へ経緯を説明します。責任ある立場として、誠実な対応が求められます。

5.園全体・他クラスとの連携

自分のクラスだけでなく、園全体の動きを把握してつなぐ役割です。

行事や合同保育の調整:散歩の場所が被らないように調整したり、合同保育の際の手順を話し合ったりして、園全体がスムーズに回るように動きます。

リーダー会議への出席:園長や主任、他クラスのリーダーが集まる会議(昼礼など)に出席し、園の方針や決定事項をクラスのメンバーに伝えます。

クラスリーダーの1日のスケジュール例

リーダーがどのように動いているのか、日勤(9:00〜18:00)の場合を例に見てみましょう。常に「一歩先」を読んで動くのがポイントです。

時間内容リーダーの動き
9:00出勤・情報収集早番の先生から、登園時の子どもの様子や保護者からの伝言を聞き取ります。
9:30朝の会・活動全体の流れを見ながら、他の先生に「〇〇ちゃんのおむつ交換をお願いします」など具体的に声をかけます。
11:00給食・休憩回し配膳の進み具合を確認。先生たちが順番に休憩に入れるよう、声をかけます。
13:00午睡(会議・事務)子どもが寝ている間に連絡帳をチェック。週に数回あるリーダー会議に出席したり、指導案を書いたりします。
15:00おやつ・降園準備午後の活動の準備。怪我や体調不良の子がいないか、最終チェックをしてお迎えに備えます。
17:00お迎え対応・引き継ぎ保護者にその日の様子を伝えます。遅番の先生へ、特記事項を漏れなく引き継ぎます。
18:00退勤残業にならないよう、翌日の準備を済ませて退勤します。
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リーダーになる4つのメリット

業務量が増え、責任も重くなるリーダー職。「大変そう」というイメージが先行しがちですが、リーダーだからこそ得られる大きなメリットもあります。

1.自分の「理想の保育」に近づける

リーダーになれば、クラスの目標や活動内容を自分で提案し、決定権を持つことができます。「もっとこんな遊びを取り入れたい」「環境構成をこう変えたい」といったアイデアを形にできるのは、リーダーならではの面白さです。

2.「あなたでよかった」と信頼される

責任ある立場で保護者や他のスタッフと関わるため、信頼関係が深まります。行事が終わった後に保護者から「先生のおかげで成長が見られました」と言われたり、後輩から「先生のクラスで働けて楽しかった」と言われたりした時の喜びは、何にも代えがたいやりがいとなります。

3.スキルアップができる

全体を見渡す力、段取り力、トラブル対応力、後輩育成力。リーダーを1年経験すると、これらのスキルが飛躍的に伸びます。「視座(物事を見る視点)」が高くなるため、保育士として見える景色がガラリと変わり、自信もつきます。

4.キャリアアップ(年収アップ)が目指せる

前述の通り、将来的に「職務分野別リーダー」や「専門リーダー」「副主任」になって給料を上げるためには、クラスリーダーとしての実務経験や実績が評価の対象となります。長く安定して働き、収入を上げていくためには、大切なステップです。

よくある悩みと解決策【ケース別】

ここからは、初めてリーダーになった先生がぶつかりやすい壁と、その乗り越え方をケース別にご紹介します。

ケース1:年上の先生(先輩)に頼みづらい

これはよく聞く悩みの一つですね。「経験豊富な先輩にお願いするなんて恐れ多い」と萎縮してしまい、クラス運営が曖昧になってしまうパターンです。

【解決策】

「指示」ではなく「相談」と「依頼」のスタンスを持つ
無理に上司らしく振る舞う必要はありません。相手の経験を尊重し、頼る姿勢を見せましょう。

  • NG:「〇〇先生、これやってください」
  • OK:「〇〇先生、ここはどう進めるのがスムーズだと思いますか?知恵を貸してください」

「あなたを頼りにしています」というメッセージを伝えることで、先輩も協力しやすくなります。

ケース2:仕事量が多い

指導案、お便り、行事の計画、個人の記録……。自分の仕事に加え、クラス全体の管理も重なり、残業が続いてしまうケースです。

【解決策】

「任せる勇気」を持つ
真面目なリーダーほど「私がやらなきゃ」「直す手間を考えるなら自分でやったほうが早い」と抱え込みがちです。しかし、仕事を振ることも後輩の育成(=リーダーの仕事)の一つです。

  • 「壁面制作のパーツ作りをお願いできますか?」
  • 「掃除のチェックリストの記入を任せてもいい?」

小さなことから切り出して、自分の負担を減らす工夫をしましょう。

ケース3:スタッフ間の人間関係

保育観の違いや相性の問題で、クラス内の雰囲気が悪くなってしまうことがあります。

【解決策】

「中立」を守り、こまめな共有時間を設ける
どちらかの味方をするのではなく、まずは「子どものためにどうするか」という視点に立ち返ります。そして、不満が溜まる前に「5分ミーティング」を行いましょう。

事実ベースで話し合う場を作ることで、感情的な対立を防ぎやすくなります。

ケース4:保護者の対応

リーダーになると、保護者からの相談を受けることもあります。中には要望やクレームもあるかもしれません。

【解決策】

「傾聴」に徹し、解決は園長や主任と一緒に行う
答えられるものはその場で答えて問題ありませんが、無理に白黒つけようとしなくてもよいでしょう。

まずは相手の言いたいこととその気持ちを受け止め(傾聴)、クレームの場合は特に最終的な判断は園長や主任に報告してから決めましょう。「一人で抱え込まなくていい案件」と割り切ることで、心の負担が大きく軽減します。

ケース5:隣のクラスと比べて「自分はダメだ」と落ち込む

「隣のクラスは落ち着いているのに、うちは走り回ってばかり…」。他のリーダーと自分を比べて、自信をなくしてしまうパターンです。

【解決策】

「他クラス」ではなく「昨日の子どもたち」と比べる
クラスの雰囲気は、子どもたちの個性や月齢によって全く違います。隣と比較しても意味がありません。

「先月より靴が履けるようになった」「昨日より喧嘩が減った」など、縦軸(過去と現在)の成長に目を向けましょう。完璧なクラスなんて存在しません。

自分にあった職場を探す方法

「リーダーを任されたけれど、人間関係が辛すぎて限界」「今の園では、頑張ってリーダーをしても給料が上がる見込みがない」「次はリーダーとして、もっと評価される環境で働きたい」

もし、現在の状況でどうしでも環境が変わらずリーダーを続けることに強いストレスや不安を感じているなら、職場を変えることも一つの前向きな選択肢です。

保育士専門の転職エージェントを活用すると、自分に合った職場を効率よく探すことができます。

【保育士専門エージェントを使う3つのメリット】

  1. 内部情報の把握:「人間関係は良好か」「サービス残業はないか」など、求人票には載っていないリアルな情報を教えてもらえます。
  2. 自分に合った条件:「処遇改善手当をしっかりつけてほしい」「最初はフリーから始めたい」といった条件をエージェントと一緒に調べることができます。
  3. 非公開求人の紹介:好条件ゆえに一般公開されていない、質の高い求人に出会える可能性があります。

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保育士のリーダーまとめ

クラスリーダーは、子どもたちの安全を守りながら、保護者やスタッフをつなぐ重要なポジションです。

保育計画の作成や人間関係の調整など、リーダーとしての経験はあなたの保育士としての実力を確実に押し上げ、将来の給料アップ(専門リーダー・副主任等)やキャリアを支える大きな財産になります。

最初から完璧なリーダーを目指す必要はありません。「年上の先生には相談ベースで頼る」「一人で抱え込まずに周りに任せる」。そんな工夫をしながら、あなたらしいクラスを作っていってください。

もし、今の環境でどうしても苦しい思いをしているなら、無理をせず、新しい場所で再スタートを切ることも視野に入れてみてくださいね。

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