保育士は保育園だけでなく、「知的障がい児施設」でも活躍できるのをご存じですか?
「大変そう…」「働けるか不安…」など、ネガティブなイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、とてもやりがいがあり保育士としてもスキルアップを目指せるお仕事です。
本記事では、知的障がい児施設について詳しくご紹介します。
年収や特徴、魅力やメリットをはじめ、働くうえで押さえておきたいポイントや求人の探し方なども詳しくご紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
知的障がい児施設とは?目的は?
知的障がい児施設とは、知的障がいを抱える子どもたちを保護者に代わって、“専門的な立場で支援する施設”の総称を指します。
知的障がい児施設の目的は、障がい児の自立や社会活動へ参加するための援助や保護をおこなうこと。
また、独立するために必要な知識や技能を身につける支援をすることです。
なお、知的障がい児施設は「入所型施設」と「通所型施設」の2種類に分かれます。
知的障がい児施設【入所型】
「入所型」の知的障がい児施設は、知的障がいだけでなく身体障がいや精神障がい、保護者の養育を受けるのが難しい子どもを受け入れています。
なお、入所型の施設はさらに以下の2種類に分かれます。
入所型施設①【福祉型障がい児入所施設】
身体・精神、知的障がいをもった子どもに対して、日常生活の指導や知識技能の習得のサポートをおこなう施設。
重度障がいやほかの障がいと重複したケースにも対応し、虐待(ぎゃくたい)などで保護者の養育が困難になった場合の保護もおこなう施設です。
入所型施設②【医療型障がい児入所施設】
福祉型障がい児入所施設の機能も持ちつつ、障がいのある子どもに医学的な治療・看護を提供する施設です。
自閉症や肢体(したい)不自由、重症心身障がい児など、子どもが持つ障がいの特性に合わせた支援をおこないます。
以前は、障がい種別ごとに施設が分かれていましたが、平成24年度より一元化がおこなわれ、複数の障がいにも対応できるようになりました。
現在でも、重症の心身障がいをもつ子どもを受け入れる施設は「重症心身障がい児施設」と呼ばれている場合があります。
知的障がい児施設【通所施設型】
通所施設型の障がい児施設は、障がいをもった子どもが自宅から通い保育や療育を受ける施設のこと。
日常生活に必要な動作や集団行動の適応方法など、自立に向けた知識技能を学びます。
一般的な保育園とは異なり、子どもたちの学習能力に合わせた指導がおこなわれます。
なお、通所型障がい児施設は、「児童発達支援」「放課後等デイサービス」「医療型児童発達支援」「保育所等訪問支援」の4つに分かれます。
知的障がい児施設の特徴や費用、何歳から入れる?
2019年の厚生労働省の資料によると、福祉型知的障がい児施設の事業所数は「235ヵ所」あり、福祉型の施設に入所している子どもは「5,000人」ほどいます。
自閉症をもった発達障がいをともなう児童が増えているため、全体としては増加傾向にあるのが現状です。
なお、知的障がいを含めた障がい児通所施設数はもちろん、利用している子どもの数も増加傾向にあるようです。
知的障がい児施設に入所できる対象者は、18歳未満の児童になります。
厚生労働省の資料によると、福祉型の施設は3歳から、医療型の施設は1歳から入所していることが分かります。
とくに、医療型は7歳になると入所数が増えており、小学校低学年から入所する児童が多いことが分かります。
なお、福祉型障がい児入所施設に入所する場合は料金がかかり、毎月の自己負担額は利用料金の1割です。
一人で多くのサービスを利用すると、費用負担が大きくなってしまうため、月ごとの利用負担額には上限が決められています。
この上限額は、前年の世帯所得に応じて、以下の4つに区分されます。
- 生活保護世帯は0円
- 市町村民税非課税世帯は0円
- 前年の世帯収入が890万円以下の世帯は、入所型は9,300円・通所型は4,600円
- 前年の世帯収入が890万円以上の世帯は、入所型・通所型とも一律37,200円
そのほか、自治体によっては食費または医療費の減免制度などを受けられる場合もあるようです。詳しくは市区町村のホームページを確認しましょう。
【参考サイト】:厚生労働省「障害児入所施設の現状」
【参考サイト】:厚生労働省「障害者福祉:障がい児の利用者負担」
知的障がい児施設の給料や年収は?
この記事を読んでいる方の中には、知的障がい児施設で働きたいけど「給料」「年収」が気になる方もいるかもしれません。
厚生労働省の調査によると、児童指導員の平均月給は「311,970円」、年収換算すると「3,743,640円」です。
年収・給与の推移を見たところ、令和元年から令和2年にかけて平均月給は730円増加、令和2年から令和3年にかけては16,810円も増加していることが分かりました。
児童指導員は給与・年収が低いと思われがちですが、徐々に増加傾向にあるといえるでしょう。
【参考サイト】:厚生労働省「令和2年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査(臨時調査)結果」
【参考サイト】:厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果」
知的障がい児施設の仕事内容や役割は?資格は必要?
知的障がい児施設での仕事内容は、子どもたちの保護や生活するうえで必要な訓練・自立支援を目的としたサポートをすることです。
入所型施設の場合は、24時間体制でスタッフが生活を管理し、自立支援や生活指導をおこなうため日勤・夜勤に分かれて勤務します。
日勤の職員は、おもに日常生活支援をおこないながら、集団生活のルールを教えたり、子どもの特性に合わせた遊び・学習をサポートしたりします。
夜勤の職員は、入浴介助や就寝の補助をはじめ、就寝時の見回りもおこないます。
また、日勤・夜勤の職員が入れ替わる際は、一日の出来事や入所者の様子などをスタッフ同士で丁寧に引き継ぐのも大切な仕事です。
知的障がい児施設で働くためには、「児童指導員任用資格」が必要になります。
下記の中で、1つでも条件を満たせれば「児童指導員」として知的障がい児施設で働くことが可能です。
- 4年制大学や通信制大学で教育学・心理学・社会学を専修する学部・学科を卒業する
- 高校もしくは中等教育学校を卒業後、2年以上児童福祉事業に従事する
- 社会福祉士もしくは精神保健福祉士の資格を取得している
- 児童保育士事業に3年以上従事し、厚生労働大臣または都道府県知事から認定される
- 幼稚園教諭・小中学校・高等学校の教育免許を所有しており、厚労大臣または都道府県知事から認定される
【参考サイト】:厚生労働省「児童指導員及び指導員の資格要件等」
知的障がい児施設で働くメリット・やりがい(魅力)は?
ここでは知的障がい児施設で働くメリット・やりがいを3つご紹介します。
知的障がい児施設で働くメリット・やりがい①【できた喜びをみつられること】
知的障がい児施設で働いていると、子どもの成長を実感できる場面が多くあります。
発達がゆっくりな障がい児の保育では、ちょっとした変化や成長にも気付くことができ、「できた」という喜びを一つひとつ見つけてあげられるのが魅力です。
発達がゆっくりな分、変化が見えにくい印象を持っている方もいると思いますが、できた時の喜びはその分大きいといえるでしょう!
子どもたち一人ひとりの小さな成長の積み重ねは、子どもにとって大きな自信につながります。
成長を身近で感じられるのは、知的障がい児施設で働くメリットといえるでしょう。
知的障がい児施設で働くメリット・やりがい②【障がいに対する知識やスキルが身につく】
知的障がい児施設の子どもたちは、軽度から重度まで一人ひとり異なる障がいをもっています。
そのため、知的障がい児施設で働くことで、さまざまな障がいの特性や発達過程に応じた適切な関わり方を身につけることができます。
障がいの特性や関わり方を理解できれば、保育園や幼稚園など別の職場で働いた場合にも、その子どもに合わせた関わり方や保育を考えてあげられるでしょう。
知的障がい児施設で働くメリット・やりがい③【社会貢献にもつながる】
知的障がい児施設は、どの施設も人手不足を抱えている場合が多いでしょう。
その中で、児童指導員として働ける方たちは、社会にとって貴重な存在です。
もちろん、関わり方に悩んでしまったり体力面でキツいと感じたりすることもありますが、その分、やりがいが大きく社会貢献につながっていることを実感できる仕事といえます。
知的障がい児施設の大変なこと・つらいことは?
ここでは、知的障がい児施設で働くうえで大変なこと・つらいことを3つご紹介します。
知的障がい児施設の大変なこと・つらいこと①【個々に合わせた対応が難しい】
知的障がい児施設に入所している子どもは、障がいの特性が一人ひとり違うため、個々に合わせた対応が難しいと感じる場面もあるでしょう。
また、中には親がいない複雑な環境で育ったり、親から虐待を受けた子どもが入所していたりと、心に深い傷を負っている子もいます。
そのような子どもと、どのように関わればよいのか分からなかったり、信頼関係がうまく築けなかったりと、慣れるまでは悩んでしまうこともあるかもしれません。
知的障がい児施設の大変なこと・つらいこと②【責任の重さを感じることもある】
知的障がい児施設で働いていると、責任の重さから「つらい」と感じることもあるでしょう。
たとえば、子どもたちの中には自分の思いを言葉で伝えることが難しく、周りの人に噛(か)みついてしまったり、叩いてしまったりとパニックを起こしてしまうこともあります。
そのような場面では怪我(けが)や事故につながることもあるため、責任の重さにつらいと感じることもあるでしょう。
また、子どもたちの近くで成長を見守る児童指導員は、子どもたちにとってさまざまな影響を与えやすい存在です。
そのため、関わり方や指導の仕方ひとつで、良い影響も悪い影響も与えてしまうかもしれないと責任を感じてしまう方も多いでしょう。
知的障がい児施設の大変なこと・つらいこと③【体力面でしんどいこともある】
知的障がい児施設で働いていると、体力面でしんどいと感じることもあるでしょう。
障がい児の中には自分の気持ちを上手く伝えることができず、物を投げたり相手を叩いたりとパニックを起こしてしまうこともあります。
そのような場面では、怪我(けが)をしないように全身をつかって止めることもあるでしょう。
また、子どもたちの介助をする中で、慢性的な腰痛や肩こりに悩まされてしまうことも少なくありません。
体力的にしんどいと感じたり、なかなか疲れがとれなかったりすると、続けるのがしんどいと感じてしまう方もいるでしょう。
知的障がい児施設で働く上で大切なこと・注意点!
知的障がい児施設で働く際に、大切なことや注意したいことは以下のとおりです。
- さまざまな障がいに対する正しい理解と知識を身につける
- 一人ひとりに合わせた柔軟な対応をする
- 忍耐力や寛容さを持つこと
- できないことではなく、できたことにスポットを当てる
ここまでご紹介したように、知的障がい児施設で働くことはやりがいも大きいですが、もちろん大変なこともたくさんあります。
「障がい」と一言でいっても、子どもたちによって抱えている障がいや特性は異なるため、関わり方に悩んだり、上手く対応できず落ち込んだりすることもあるかもしれません。
しかし、幅広い障がいの特性や正しい関わり方を身につけることで、その子に合わせた柔軟な対応ができるようになります。
その子に合った対応をするためにも、発達障がいに関する研修に参加したり、専門資格をとったりと、自主的に学びを深めるのが大切なことですね。
また、障がいを持った子や虐待を受けた子どもと関わるということは、忍耐力や寛容さ、包容力も必要になるでしょう。
「難しいから」と決めつけるのではなく、一人ひとりに合わせて少しずつスモールステップを踏んでいくことが大切です。
子どもたちの「できないこと」ではなく、「できたこと」をたくさん見つけてあげられるといいですね!
知的障がい児施設に向いている人は?
知的障がい児施設で働くのに向いている人は以下のような方です。
- イライラしないで冷静に対応できる人
- 障がいに対する理解と知識がある人
- 勉強熱心な人
- 忍耐力がある人
- 寛容で包容力がある人
- 社会に貢献したいと考えている人
- 保育・介護・福祉に関する知識や専門資格をもっている人
子どもが抱える障がいや問題は、短期間で改善できるものではありません。
長期間にわたり、その子に合った支援をおこなう必要があるため、どのような状況でも感情的にならずに適切な支援ができる人が向いているでしょう。
保育や福祉、介護に関する資格・経験がある人は、取得した知識を知的障がい児施設で活かすことも可能です。
知的障がい児施設に向いてない人は?
一方で、下記のような方は、知的障がい児施設で働くのは向いていない可能性があります。
- 臨機応変に対応するのが苦手な人
- 忍耐力がない人
- 体力がない人
- 勉強が嫌いな人
- ネガティブ思考な人
繰り返しになりますが、知的障がい児施設で働くことは、忍耐力や柔軟な対応が必要になります。
時には思い通りにいかないことや、悩むこともありますが、子どもたちの特性や成長スピードに合わせて丁寧にじっくり関わっていくことが大切です。
そのため、上記のような方には「合わない」「難しい」と感じる仕事かもしれません。
知的障がい児施設の求人の探し方は?
知的障がい児施設の求人を探す方法は、ハローワークに行ったり施設のホームページを見たりとさまざまですが、おすすめなのは求人・転職情報サイトを利用することです。
知的障がい児施設といっても、施設によって給与や方針はさまざまです。
夜勤手当や住宅補助手当がつくところもあり、施設の規模によっても待遇は変わってくるでしょう。
求人・転職情報サイトであれば、気になる条件面やこだわりなどを検索して、自分に合う施設を見つけることができます。
施設やスタッフの雰囲気などを確認するためにも、気になる施設は実際に見学させてもらうのもよいでしょう。
知的障がい児施設に応募する際の履歴書・職務経歴書の書き方
知的障がい児施設に応募する際の履歴書では、以下のポイントに注意して志望動機を書きましょう。
- 児童指導員として働きたいと思った理由
- その施設を志望する理由
- 仕事に活かせる自分の強み(スキル)
とくに採用担当者は、「数ある施設の中で、どうしてうちを志望するの?」と思っています。
そのため、「他の施設でもよいのでは?」と思われないように、その施設で働きたい理由を明確に伝えるようにしましょう。
なお、施設の魅力に触れるだけでなく、自分の強みも入れることで、より説得力のある志望動機になります。
また、職務経歴書には、あなたの経験やスキルがしっかりと伝わる内容を入れましょう。
たとえば、具体的な職務内容や役職、その職務を通して学んだことや意識したことなどを入れることで自分の強みをアピールできます。
自己PRでは、仕事に対する思いや入社後どのように活躍したいかを伝えられるといいですね!
もし、知的障がい児施設で働くのが初めてという方でも、前職での経験やスキルが大きなアピールポイントになります。
これまでの仕事でやってきたことやチャレンジしたことを整理して、自分の強みとして積極的にアピールしましょう。
知的障がい児施設のまとめ
知的障がい児施設の概要や働くメリット、働くうえでの注意点など詳しくご紹介しました。
知的障がい児施設では、知的障がいのある子どもに対して日常生活の指導やサポートをおこないます。
知的障がい児施設に入所している子どもたちは、障がいの特性も異なるため、適切な関わり方やサポートの仕方が分からず悩んでしまう方もいるかもしれません。
しかし、子ども一人ひとりと信頼関係を築きながら、その子の歩幅にあわせて丁寧に関わっていくことは、子どもの成長に良い影響が与えられるでしょう。
知的障がい児施設の仕事は、子どもの成長や変化を間近で見ることができるので、大きなやりがいを感じられる仕事です。
「保育士の経験を活かしてスキルアップしたい」「障がい児保育について学びたい」という方は、知的障がい児施設で働くのもよいでしょう。
近年は、施設も年々増えてきているため、求人自体も少なくありません。
給料面も徐々に改善されつつあるので、気になる方はぜひ求人をチェックしてみてはいかがでしょうか?
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