日本版DBSの導入により、保育施設など子どもと接する事業者では、採用時に応募者の性犯罪歴を確認する仕組みが始まります。
これまでの採用選考とは異なる対応が必要になるため、「保育士の採用はどう変わる?」「転職するときに確認を受けるの?」「施設側は何を準備すればいい?」と気になっている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、日本版DBSによって保育士の採用選考がどのように変わるのか、採用から犯罪事実確認までの流れや、保育士・施設側が知っておきたい注意点をわかりやすく解説します。
日本版DBSの施行で採用選考に何が変わる?
日本版DBSが施行されると、対象となる保育施設では、保育士など子どもと接する仕事に就く人を採用する際に、性犯罪歴がないかを確認する手続きが加わります。
保育士側は、これまでの履歴書提出や面接に加えて、内定後に性犯罪歴の確認に必要な手続きをおこないます。
一方、施設側は、採用予定者が子どもと接する仕事を始める前に犯罪事実確認をおこない、その結果を踏まえて採用や配置について判断する必要があります。
つまり、日本版DBSの施行後は、これまでの採用選考に、「性犯罪歴を確認する手続き」が加わることが大きな変化です。保育士・施設のどちらも、内定後から入職までの流れをあらかじめ理解しておくことが大切です。
参考:こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン 」
応募〜内定までの流れ
日本版DBSの施行後も、応募や書類選考、面接などの基本的な採用の流れは大きく変わりません。
ただし、内定後には「犯罪事実確認」の手続きが加わります。ここでは、保育士側・施設側それぞれの流れを確認しておきましょう。
保育士が経験する流れ
保育士は、通常どおり応募や面接を受けたあと、内定後に犯罪事実確認の手続きを進めます。施設から案内を受け、必要な情報を登録し、確認結果を待つのが基本的な流れです。
①求人に応募して書類選考や面接を受ける
まずは、これまでと同じように希望する保育施設の求人へ応募し、履歴書などの提出や面接を受けます。
犯罪事実確認は応募者全員におこなわれるわけではなく、原則として内定などにより対象業務に就くことが決まった人が対象です。
そのため、求人に応募した時点ですぐに犯罪事実確認の手続きが始まるわけではありません。まずは通常の採用選考を受け、その後、採用が決まった段階で必要な手続きへ進みます。
②内定後に犯罪事実確認について説明を受ける
内定後は、施設から犯罪事実確認をおこなう目的や手続きの流れについて説明を受けます。
どのような確認がおこなわれるのか、どのような情報を提出する必要があるのかなどを確認したうえで、施設からの案内に沿って手続きを進めます。
分からないことや不安な点がある場合は、そのままにせず、必要な書類や今後のスケジュールについて施設へ確認しておくと安心です。
③本人情報や本人確認書類を登録する
施設が犯罪事実確認書の交付を申請したあと、保育士本人も専用システムを利用して必要な手続きをおこないます。
氏名などの本人情報を入力し、マイナンバーカードなどを利用して本人確認に必要な情報をこども家庭庁へ提出します。
登録内容に不備があると確認に時間がかかる場合もあるため、施設から案内を受けたら必要な情報や書類を確認し、正確に登録することが大切です。
④こども家庭庁による確認結果を待つ
本人と施設の必要な手続きが完了すると、こども家庭庁が対象となる性犯罪歴の有無を確認します。
性犯罪歴が確認されなかった場合は、犯罪事実確認書が施設へ交付され、その結果をもとに入職や配置に向けた手続きが進められます。
一方、対象となる性犯罪歴が確認された場合は、施設へ結果が交付される前に本人へ通知されます。通知された内容に誤りがある場合は、本人は内容に誤りがあれば訂正を求めることができるほか、この段階で採用を『辞退』することも可能です。辞退した場合、施設側に性犯罪歴に関する情報が通知されることはありません。
施設が対応する流れ
施設側は、採用予定者が犯罪事実確認の対象となるかを確認し、内定後に必要な手続きを進めます。
本人への説明やこども家庭庁への申請や、確認結果の管理まで対応するのが基本的な流れです。
①採用予定者が犯罪事実確認の対象か確認する
まず、採用予定者が日本版DBSによる犯罪事実確認の対象となる業務に就くかを確認します。
保育士など子どもと継続的に接する仕事に就く場合は、原則として対象業務を開始するまでに犯罪事実確認を終える必要があります。
そのため施設側は、採用が決まってから慌てて対応するのではなく、あらかじめ採用フローの中に確認手続きを組み込んでおくことが大切です。
②本人へ犯罪事実確認について説明する
確認の対象となる採用予定者には、犯罪事実確認をおこなう目的や必要な手続き、情報の取り扱いについて説明します。
性犯罪歴に関する情報はプライバシー性が高いため、本人が手続きの内容を理解できるよう、分かりやすく伝えることが重要です。
また、必要に応じて本人から詳しい情報を取得する場合には、利用目的などを説明したうえで、適切に対応する必要があります。
③こども家庭庁へ犯罪事実確認書の交付を申請する
本人への案内をおこなったあと、施設は専用システムを利用して、こども家庭庁へ犯罪事実確認書の交付を申請します。
申請時には、採用予定者の情報のほか、対象業務に就く予定日や担当する業務内容など、確認に必要な情報を登録します。
保育士本人にも必要な手続きを案内し、双方の登録がスムーズに進むようサポートすることも施設側の大切な役割です。
④犯罪事実確認書を受け取り、結果を確認する
犯罪事実確認が完了すると、施設に犯罪事実確認書が交付されます。
施設は確認結果を踏まえて、採用予定者の入職や配置など、その後の対応を進めます。
また、犯罪事実確認書には取り扱いに注意が必要な個人情報も含まれます。閲覧できる担当者を限定したり、適切な方法で保管したりするなど、情報が外部へ漏れないよう管理体制を整えておくことも重要です。
参考:こども家庭庁支援局「全国こども政策関係部局長会議」
「条件付内定」とは?内定後に不採用になることもある
日本版DBSでは、内定後に犯罪事実確認をおこなうため、確認結果によっては採用や配置について改めて判断される場合があります。
ここでは、内定後に不採用となるケースや、内定取消しの考え方について解説します。
犯罪事実確認の結果が出るまでは「条件付き」の内定となる
日本版DBSでは、原則として内定後に犯罪事実確認をおこないます。
そのため、内定が出ても、確認が完了するまでは結果によってその後の対応が変わる可能性があります。いわば、確認結果を待っている「条件付き」の状態です。
施設側は、募集要項などで特定性犯罪歴前科がないことを採用条件として示したり、選考時に性犯罪歴の有無を確認したりしたうえで、内定後の手続きを進めます。
性犯罪歴が判明すると内定を取り消される可能性がある
犯罪事実確認で対象となる性犯罪歴が判明した場合、内定が取り消される可能性があります。
たとえば、採用選考で性犯罪歴について確認され、「性犯罪歴はない」と回答していたにもかかわらず、内定後に対象となる性犯罪歴が判明したケースです。
施設があらかじめ内定通知書などに「重要な経歴の詐称」を内定取消事由として定めている場合、虚偽の申告が内定取り消しにつながることがあります。
そのため施設側は、日本版DBSによる確認だけに頼るのではなく、募集・選考・内定の各段階で採用条件や内定取消事由を明確にしておくことが大切です。
性犯罪歴が判明しただけで必ず内定取消しになるわけではない
ただし、対象となる性犯罪歴が判明したからといって、必ず内定が取り消されるわけではありません。
内定は法律上、労働契約が成立していると判断される場合があるため、施設側が自由に取り消せるものではありません。内定取消しには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当と認められることが必要です。
たとえば、採用選考の段階で施設が性犯罪歴について本人に確認していなかった場合、内定後に性犯罪歴が判明したという理由だけでは、「重要な経歴の詐称」とはいえないことがあります。
この場合は、子どもと接する対象業務以外の仕事で採用できないかなど、ほかの対応も検討したうえで判断することになります。
つまり、「性犯罪歴が確認された=必ず不採用」と決まるわけではなく、採用選考時の確認内容や内定条件なども踏まえて、適切に判断する必要があります。
参考:こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン 」「こども性暴力防止法の施行に向けた準備状況について」
内定から入職まで1ヵ月程度かかる理由
日本版DBSの施行後は、内定が決まっても、すぐに保育業務を始められるとは限りません。ここでは、内定から実際に働き始めるまでに時間がかかる理由を詳しく見ていきましょう。
犯罪事実確認書の交付には2週間~1ヶ月程度かかる
内定後、施設がこども家庭庁へ犯罪事実確認書の交付を申請しても、すぐに結果が出るわけではありません。
日本国籍の場合、犯罪事実確認書が交付されるまでの標準処理期間は2週間~1ヶ月程度とされています。申請後は、本人情報や戸籍情報などの確認を経て、対象となる性犯罪歴がないか照会がおこなわれます。
また、申請内容に不備があり修正が必要になった場合などは、さらに時間がかかる可能性があります。
外国籍の場合は必要な手続きが異なり、標準処理期間は1ヶ月~2ヶ月程度です。
そのため、日本版DBSの施行後は、内定から対象業務を開始するまでに一定の期間がかかることを想定しておきましょう。
確認が終わるまでは原則として対象業務を始められない
新たに採用される保育士は、原則として、子どもと接する対象業務を始める前に犯罪事実確認を終える必要があります。
そのため、内定が決まったからといって、すぐに保育業務を始められるとは限りません。犯罪事実確認が完了する時期にあわせて、対象業務を開始する日を調整する必要があります。
転職を考えている保育士さんは、内定日だけでなく「いつから実際に保育業務を始められるのか」も施設側に確認しておくと安心です。
現在の職場の退職日と新しい職場での勤務開始日に無理が生じないよう、確認にかかる期間も考慮して余裕をもって転職スケジュールを立てましょう。
施設は入職予定日から逆算して早めに申請する必要がある
施設側は、犯罪事実確認にかかる期間を考慮したうえで、採用スケジュールを組む必要があります。
たとえば、1ヶ月後から対象業務に就いてもらう予定でも、申請が遅れると勤務開始に間に合わない可能性があります。
そのため、内定後は本人への説明や必要な手続きを速やかにおこない、できるだけ早めに申請を進めることが大切です。
また、申請内容の修正や追加の対応が必要になると、予定より犯罪事実確認書の交付が遅れることも考えられます。確認に必要な期間を見込んで、人員配置にも余裕をもたせておきましょう。
採用予定者にも、内定後に犯罪事実確認が必要であることや、対象業務を開始するまでに一定の期間がかかる可能性を伝えておくと、勤務開始日をめぐる認識のずれも防ぎやすくなります。
参考:こども家庭庁「こども性暴力防止法施行準備検討会(第2回)」
よくある質問(Q&A)
最後に、日本版DBSの施行後の採用や犯罪事実確認について、保育士や施設側から疑問が出やすいポイントをQ&A形式で紹介します。
内定後に不採用になることはありますか?
はい、犯罪事実確認で対象となる性犯罪歴が確認された場合、内定が取り消される可能性があります。
ただし、自動的に取消しになるわけではありません。施設側は、採用時の確認内容や内定取消事由などを踏まえて判断する必要があります。
確認にはどのくらい時間がかかりますか?
犯罪事実確認書が交付されるまでの標準処理期間は、日本国籍の場合で2週間~1ヶ月程度、外国籍の場合で1ヶ月~2ヶ月程度です。
原則として対象業務を始める前に確認を終える必要があるため、保育士・施設ともに余裕をもって入職スケジュールを組むことが大切です。
現職者も同じ確認を受けますか?
はい。対象となる施設で現在働いている保育士も、犯罪事実確認の対象になります。
施行時点ですでに働いている「施行時現職者」は、原則として2029年12月24日までに確認を受けます。
一方、日本版DBSの認定を受けた時点ですでに働いている「認定時現職者」は、原則として認定日から1年以内に確認を受けます。
その後も対象業務に従事し続ける場合は、5年ごとに再確認がおこなわれます。
まとめ
日本版DBSの施行後は、保育士の採用選考に犯罪事実確認の手続きが加わります。
内定後すぐに働き始められない場合もあるため、保育士は退職日や入職日に余裕をもち、施設側も確認期間を見込んで採用スケジュールを組むことが大切です。
制度が始まることで、「転職活動はこれまでとどう変わるの?」「いつから働き始められるの?」と不安に感じる保育士さんもいるかもしれません。
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