保育士は、子どもの成長を支えるやりがいのある仕事です。しかしその反面、仕事上の悩みは尽きないもの。
今回は、保育士が直面しがちな悩みを整理し、具体的な解決策や考え方のヒントをご紹介します。
前向きな一歩を踏み出すためのヒントにしてみてください。
保育士が抱える悩みとは
子どものかわいらしい姿や成長を見守れる保育士という職業には、大きなやりがいがあります。ただし、どんな職業にも大変さがあるように、保育士にも直面しやすい悩みがあります。
厚生労働省の資料によると、保育士の退職理由として以下の回答がありました。
- 職場の人間関係(33.5%)
- 給料が安い(29.2%)
- 仕事量が多い(27.7%)
- 労働時間が長い(24.9%)
※参考:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」24P
回答結果を見ると保育士の悩みは1人の問題ではなくどの保育園でも起こりうる、多くの方に共通する悩みであると分かります。ここではもう少し悩みを深掘りしてみましょう。
職場・保護者との人間関係
保育士の退職理由の中でもっとも多く挙げられたのが、人間関係の悩みです。保育士の仕事は保育士同士が連携する場面がとても多いため、考え方の違いや保育観のズレがあると、良い関係性を保つのが難しくなる場合があります。
また、保護者への対応に悩んでいる方も少なくありません。「しっかりと様子を伝えなきゃ」とプレッシャーに感じたり、保護者からの要求にどう対応していいのか分からなくなったりと、困っている方もいるのではないでしょうか。
給料が安い
保育士の給料は地域や職場によってさまざまです。しかし、なかには「仕事内容に見合ったお給料ではない」と感じている方もいます。給料面だけではなく「人間関係が複雑」「仕事量が多い」などの理由が加わると、給料に対しても不満が高まりやすくなるでしょう。
保育士の給料は、勤続年数やキャリアアップで伸びていきますが、大きな収入アップが期待できない環境ではモチベーションにも影響が及びます。
仕事量が多い・労働時間が長い
一部の保育園では、人手不足や仕事量の多さなど、なんらかの理由によって負担が大きくなっている場合があります。保育士の仕事には、子どもと向き合う保育時間以外にも、保育日誌や連絡帳の記入、行事の準備、掃除や環境整備など「子どもがいない時間の仕事」もたくさんありますよね。
仕事量が多いほど、勤務時間が長くなり、残業や持ち帰りにつながりやすくなります。経験が浅いうちは仕事の段取りが上手くつかめず、効率的に進められないこともあるでしょう。仕事にやりがいはあっても、あまりに負担が大きいとストレスが溜まりやすくなります。
想像と現実のギャップ
今回のアンケート結果とは別に「思っていた職場・働き方と違っていた」可能性についても注目しておきましょう。想像していた職場と、実際に働いた職場とでギャップが大きいほど、そのズレが不満や悩みに変わりやすくなるからです。
たとえば、あまりピアノが得意ではない方が、行事だけでなく普段の保育でもピアノをよく弾く保育園を選ぶと、日々の業務にプラスしてピアノ練習も必要になります。結果として、負担量が増えてしまうケースのひとつです。
反対に、得意分野がほとんど活かされない職場も「仕事へのやりがい」が満たされない悩みにつながります。保育士の悩みが生まれる根本には「自分に合った職場かどうか」というポイントも大きく影響するといえます。
よくある悩みの解決方法

大切なのは「悩まないことではなく、悩みとの向き合い方」です。いざという時に対処できるよう、起こりやすい悩みとその解決方法を知っておきましょう。
一人で抱え込まない
まず前提として、どのような悩みであっても、「一人で悩まないこと」がとても重要です。どんなに経験豊富な保育士でも、悩みがゼロになることはありません。「自分だけの問題」だと思わず、周囲に共有することで解決の糸口が見つかりやすくなります。
また、一人きりで悩みと向き合っていると、マイナス思考に陥りやすくなります。前向きに解決法を探すときには、ほかの人の考えやポジティブな意見を取り入れてみることをおすすめします。
仕事の効率化を意識する
「仕事量が多い」「時間が足りない」という悩みは、働く保育士の多くが感じています。一気に解消することは難しくても、効率化を意識することで一部の負担を軽くできるかもしれません。
たとえば、行事や製作の準備などは、パートやアルバイトの職員に任せたり、保育園内で役割分担を見直すという方法も考えられます。また、ICT化を進めている保育園であれば、連絡帳や出欠管理をデジタル化し、手作業の時間を減らすこともできるでしょう。自分ひとりでの工夫に限界があれば、やはり周りに相談しながら業務負担について見直すことが必要です。
保護者対応の工夫
保護者の対応に悩んでいる方は、まずは保育園全体の「対応の方針」を確認しておきましょう。きまったマニュアルがなければ、保護者との関係性作りが上手な先輩保育士の対応を真似することから始めるのもおすすめです。
保育士にもさまざまなタイプの方がいるように、保護者も一人ひとり異なり、適切な対応もそのときによって変わります。「何を話していいのかわからない」という方は、まずは子どもの様子をメモに取ることから始めてみましょう。話すことばかりを意識するのではなく、家庭での様子を聞いてみても良いですね。
自分の強みを活かす
保育の仕事は幅広く、すべてを完ぺきにこなすのはベテラン保育士でも難しいでしょう。うまくいかないことに対し「〇〇ができない」と思い詰めるのではなく、「自分が得意なことをどう活かすか」に注目することが大事です。
ピアノが得意な方の例を挙げると、ピアノのスキルを活かしてほかのクラスに協力するぶん、苦手な制作準備はほかの職員と協力して補い合う、そのような連携と工夫ができれば保育園全体のチームワーク力が高まります。苦手なことや悩みだけでなく、自分の強みにも注目してみましょう。
保育士の悩み相談先
困ったときに頼れる場所を知っておくことは、心の安心にもなります。悩みを打ち明けられそうな選択肢があるか、ご自身に当てはめてみてくださいね。
園内との上司・同僚
保育に関する具体的な悩みや困りごとを相談するなら、まずは主任や園長などの上司はもちろん、身近な同僚に気持ちを話してみましょう。状況やあなたのことを知っている相手からのアドバイスは、具体的で解決の糸口が見つかりやすくなります。なにより「悩みに一緒に向き合ってくれる人」は、心強い存在となるはずです。正直に「困っている」「辛い」と伝えてみましょう。
家族や友人
悩みの種類によっては、話を聞いてもらうだけでもスッキリする場合があります。そんなときは、家族や友人に話を聞いてもらうのもおすすめです。人となりを知ったうえでのアドバイスや、職場とは違う視点で意見をもらえることもあるため、自分の気持ちを整理するきっかけになるかもしれません。
自治体や専門の相談窓口
多くの自治体や行政には「こころの健康相談」や「保育士向け相談」などの窓口が設けられています。専門のカウンセラーや相談員が対応してくれるため、第三者の客観的なアドバイスを受けられるのが特徴です。匿名で利用できるケースもあるので、安心して相談できます。
転職エージェントやキャリア相談サービス
今の職場で状況が良くなることが最善ですが、「今の職場での働き方がどうしても合わない」と感じるときには、転職エージェントに相談するのも一つの方法です。今すぐに転職する予定はなくても、求人情報を見たり、キャリアパートナーに自分に合った働き方を相談したりと、今後のキャリアの方向性を整理するサポートを受けることができます。
本当に求める「働きがい」や「労働環境」を見つけるために
悩みを解決するには、目の前の問題に対応するだけでなく、自分が「どんな働き方をしたいのか」を考えることが大切です。以下のポイントを意識してみましょう。
自己分析をする
保育士と一言でいっても、職場によって関わる子どもや働き方はさまざまです。「子どもと関わる時間を大切にしたい」「プライベートとの両立を重視したい」「スキルを活かしてキャリアを広げたい」など、人によって大切にしたいポイントも異なります。自分に合った職場選びがその後の悩みを防ぐためにとても大切です。自分の価値観を見つめ直し、どんな保育園なら働きやすいのか考えを整理してみましょう。
情報収集をする
自分の求める働き方や重視する労働条件が定まった後は、情報収集を始めます。気になる職場があれば、公式サイトや見学をしてみてできるだけ実際の雰囲気を確かめましょう。給与や勤務条件など、聞きづらいことがあれば転職エージェントなどのサービスを利用し、保育業界の最近の傾向や求人情報には載らない耳寄りな情報を聞いてみるのもおすすめです。
周囲と比べすぎない
悩みがあると「他の人はできているのに自分は」と比べて自信を無くしてしまいがちです。仕事への向き合い方や成長は自分自身を基準にして、小さな変化をポジティブに認めてあげることが大切です。
「自分らしい働き方」を実現するための具体的なアクション

自分の悩みと理想の働き方を整理したら、いよいよ次は行動に移す段階です。小さな工夫や準備を積み重ねることで、「自分らしい働き方」に近づけます。
スキルアップを意識する
自分らしい働き方の実現のために、スキルアップのメリットはとても大きな意味を持ちます。資格取得や研修でスキルや知識を身に付けると職場での信頼を得やすくなり、任される仕事の範囲も広がります。
自分の得意分野を伸ばすことで「ここなら自分らしさを発揮できる」という場面が増えるでしょう。自分らしさを自覚できるだけでなく、そのほかの悩みが生じても別の分野で自信がついていれば乗り越えやすくなります。
働き方を工夫する
保育士の仕事は、フルタイムだけが選択肢ではありません。時短勤務やパート勤務、扶養内での勤務など、自分のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を選ぶことで、心身の負担を減らすことができます。
まずは自分の希望を具体的に洗い出し、職場に伝えてみましょう。また、これから仕事探しをする方は、働きやすい環境が整っているかに注目して探してみてください。
環境を変えることも選択肢に
悩みが解決するように動いていても思うような変化が見られない場合、新しい職場を探すことも視野に入れてみましょう。
自分らしく働ける職場への転職は後ろ向きな選択ではなく、むしろポジティブな行動です。
保育士は認可保育園や私立園だけでなく、企業主導型保育園、病院内保育、学童保育など幅広い現場で活躍しています。環境を変えるだけで、悩みが大きく改善されることも少なくありません。
転職エージェントを活用する
転職の時には、ハローワークや地域の情報誌などさまざまなサービスが利用できますが、「自分らしい働き方」を重視する方には、転職エージェントをおすすめします。
「保育士人材バンク」のような保育業界に特化した転職エージェントは、保育士だけでなく保育事務や保育補助など幅広い求人を取り扱っているため、効率的に転職活動を進められます。公開されていない「非公開求人」に出会える可能性があるのも大きなメリットです。
また、求人票だけでは分かりにくい園の雰囲気や人間関係、残業の有無など具体的な情報を得られることもあります。「園見学に行く前に内部事情を知れる」のは、転職エージェントを活用する大きな利点です。
保育士の悩みまとめ
保育士は子どもの成長を支えるやりがいのある仕事ですが、人間関係や仕事量、労働環境など悩みが多いのも現実です。大切なのは、一人で抱え込まず、相談や情報収集を通して自分らしい働き方を見つけていくことです。
もし今の環境が合わないと感じるなら、保育専門の転職エージェント「保育士人材バンク」を活用し、新しい一歩を踏み出してみてください。あなたに合った環境で、保育のやりがいをもっと実感できるはずです。