保育士を目指したいと思っても、「どんな資格や免許が必要?」「大学や短大を卒業していなくてもなれる?」と疑問に感じる方もいるでしょう。

保育士になる方法はひとつではなく、学歴やこれまでの経歴によって選べる取得ルートが異なります。この記事では、保育士に必要な資格・免許の基本から、学歴別の取得方法、保育現場で求められるスキルまで分かりやすく解説します。

目次

保育士になるために必要な資格・免許の名前とは?

保育士として働くためには「保育士資格」が必要です。ここでは、資格の基本的な仕組みや登録について、簡単に確認していきましょう。

保育士になるのに必要なのは「保育士資格」

保育士として働くために必要となるのが「保育士資格」です。保育士は、子どもの生活や成長を支える専門職であり、資格を持たない人が「保育士」と名乗ることはできません。

資格を取得する方法はひとつではなく、学歴やこれまでの経歴などによって目指せるルートが異なります。具体的な取得方法や方法については、このあと学歴別に詳しく紹介します。

保育士資格は国が定める国家資格

保育士資格は、児童福祉法に基づいて定められている国家資格です。保育士は、子どもの保育をおこなうだけでなく、保護者に対して保育に関する指導をおこなう専門職として位置づけられています。

また、「保育士」は資格をもつ人だけが使用できる名称独占資格です。子どもの発達や生活、安全などを支える専門職として、一定の知識や専門性を持っていることを示す資格といえるでしょう。

保育士として働くには保育士登録が必要

保育士資格の取得要件を満たしたあとも、そのまま保育士として業務を始められるわけではありません。保育士として働くためには、都道府県の保育士登録簿に登録し、「保育士証」の交付を受ける必要があります。

保育士証は、保育士として登録されていることを証明するものです。就職時に提出を求められることもあるため、資格取得後に保育士として働く予定がある場合は、必要な登録手続きを済ませておきましょう。

保育士資格に更新や有効期限はない

保育士資格には基本的に有効期限がなく、一度取得すれば定期的に試験を受け直したり、資格更新のための講習を受けたりする必要はありません。そのため、保育の仕事から一度離れた場合でも、資格そのものを取り直すことなく再び活かせます。

結婚や出産、育児、別の仕事への転職などでブランクが生じても、将来的に保育現場へ戻る選択肢を持ち続けられます。長期的なキャリアのなかで活用しやすいことも、保育士資格の特徴のひとつです。

【学歴別】保育士資格を取得するための条件と方法

保育士資格を取得する方法は、大きく分けて「指定保育士養成施設で必要な科目を履修して卒業する方法」と「保育士試験に合格する方法」の2つがあります。

指定保育士養成施設を卒業する場合は保育士試験を受ける必要はありません。一方、保育士試験から資格取得を目指す場合は、学歴や実務経験などによって受験資格が異なります。

ここでは、主に保育士試験を利用する場合の条件を学歴別にご紹介します。

学校教育法に基づく大学・短大卒なら受験できる

学校教育法に基づく大学または短期大学を卒業している場合は、保育士試験の受験資格があります。保育や教育に関する学部・学科である必要はなく、たとえば文学部や経済学部など、保育とは関係のない分野を専攻していた人でも受験可能です。

そのため、「大学は卒業したけれど、保育について学んだ経験がない」という場合でも、保育士を目指すことができます。社会人になってから保育の仕事に興味を持った人にとっても、保育士資格に挑戦できるルートのひとつといえるでしょう。

大学在学中・中退でも条件を満たせば受験できる

4年制大学に在学中の場合や、卒業せずに中退した場合でも、一定の条件を満たしていれば保育士試験を受験できます。大学に2年以上在学し、62単位以上を修得している場合は、基本的に受験資格があります。

また、現在大学に在学している人についても、年度中に必要な在学期間や単位数を満たす見込みがあり、大学から認められれば受験できる場合があります。大学を中退している場合は、在学期間や修得単位数を証明する書類が必要になるため、過去の在籍状況を確認しておきましょう。

専門学校卒は学校や課程によって条件が異なる

最終学歴が専門学校の場合、卒業した学校や課程によって受験資格が異なります。基本的には、学校教育法に基づく専修学校で、修業年限2年以上の専門課程を卒業していれば、保育とは関係のない学科であっても保育士試験を受験できます。

たとえば、美容やビジネスなど保育以外の分野を学んだ専門学校であっても、学校と課程が条件を満たしていれば受験できるということです。一方、すべての「専門学校」と呼ばれる学校が対象になるとは限りません。

自分が卒業した学校が学校教育法に基づく専修学校であるか、修業年限や課程が条件を満たしているか分からない場合は、卒業した学校へ問い合わせて確認しましょう。

高校卒は卒業時期や実務経験によって条件が異なる

最終学歴が高校卒の場合は、卒業した時期によって受験資格が異なります。1991年(平成3年)3月31日以前に高校を卒業している場合は、経過措置により実務経験がなくても受験できます。また、高校の保育科を1996年(平成8年)3月31日以前に卒業している人も対象です。

それ以降に高校を卒業した場合は、原則として児童福祉施設などで「2年以上かつ2,880時間以上」、児童の保護に従事した実務経験が必要です。勤務時間だけでなく、勤務時間も条件を満たす必要がある点に注意しましょう。

また、認可外保育施設など、勤務先によっては都道府県知事による受験資格の認定が必要になる場合があります。自分の勤務経験が受験資格として認められるか判断しにくい場合は、勤務先や受験を希望する都道府県へ事前に確認しておくと安心です。

中学校卒は一定の実務経験が必要

最終学歴が中学校卒の場合でも、実務経験の条件を満たせば保育士試験を受験できます。児童福祉施設において「5年以上かつ7,200時間以上」児童の保護に従事していることが基本的な条件です。

高校卒の場合よりも必要な実務経験は長くなりますが、「中学卒だから保育士を目指せない」というわけではありません。保育所など対象となる施設で経験を積むことで、保育士資格への道を開くことができます。

ただし、勤務している施設の種類によっては都道府県知事による受験資格認定が必要になる場合があります。実務経験を積んでから条件を満たしていなかったと気づくことがないよう、勤務先が対象施設に該当するかを早めに確認しておきましょう。

子ども家庭庁「保育士になるには

保育士と幼稚園教諭の違いとは?必要な資格も異なる

保育士と幼稚園教諭の違いとは?必要な資格も異なる

保育士と幼稚園教諭は、どちらも子どもの成長を支える仕事ですが、必要な資格・免許や働く施設、対象となる子どもの年齢などに違いがあります。

将来どのような施設で働きたいのかを考えながら、それぞれの特徴を確認してみましょう。

保育士資格と幼稚園教諭免許状は別物

保育士として働くために必要なのは「保育士資格」、幼稚園教諭として働くために必要なのは「幼稚園教諭免許状」です。名前は似ていますが、それぞれ別の資格・免許であり、保育士資格を取得しただけで幼稚園教諭として働けるわけではありません。

幼稚園教諭免許状には一種・二種・専修免許状などがあり、大学や短期大学などで必要な課程を修了する方法があります。一方、保育士資格は指定保育士養成施設を卒業する方法や保育士試験に合格する方法などで取得できます。

働く施設や対象年齢が異なる

保育士は、保育所をはじめ、認定こども園や児童福祉施設など幅広い場所で資格を活かせます。保育所は、保育を必要とする乳児・幼児を対象とした児童福祉施設で、0歳児から小学校就学前までの子どもが利用します。

一方、幼稚園は学校教育法に定められた「学校」で、基本的に満3歳から小学校就学前までの子どもが対象です。このように、同じ就学前の子どもと関わる仕事でも、働く施設の位置づけや対象年齢などに違いがあります。

保育士は「生活全般」を支えて幼稚園教諭は「教育」を担う

保育士は、食事や着替え、睡眠など日々の生活を支えながら、遊びやさまざまな経験を通して子どもの成長を援助します。保護者が安心して子どもを預けられるよう、家庭と連携しながら支援することも大切な役割です。

一方、幼稚園教諭は、学校教育の一環として、遊びや生活を通して子どもの心身の発達を促します。ただし、「保育士は生活だけ」「幼稚園教諭は勉強を教えるだけ」という意味ではありません。

幼稚園でも遊びや生活そのものを大切にした教育がおこなわれており、どちらも子どもの発達を総合的に支える仕事です。

両方の資格・免許をもつと活躍できる場が広がる

保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方を取得していると、保育所や幼稚園だけでなく、認定こども園などでも資格を活かしやすくなります。とくに幼保連携型認定こども園で働く「保育教諭」は、原則として保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方をもつことが求められています。

将来的にさまざまな施設で経験を積みたい場合など、働き方の選択肢を増やしたい場合は、両方の取得を検討するのもよいでしょう。一定の実務経験などを満たした人を対象に、もう一方の資格・免許を取得しやすくする特例制度も設けられています。

文部科学省「幼稚園教諭免許状授与の所要資格の特例に関するQ&A

保育士に必要な能力・スキル

保育士には、子どもと関わるだけでなく、保護者や職員と協力する力、安全を守る力など、さまざまな能力が求められます。ただし、最初からすべてを完璧に身につけている必要はありません。

ここでは、保育士として働くなかで特に大切になる10の能力・スキルを紹介します。

子どもの小さな変化に気づく力

保育士は、子どもの表情や行動、食欲、体調などを日頃からよく観察します。「いつもより元気がない」「遊び方が違う」といった小さな変化に気づくことが、体調不良や悩みの早期発見につながることもあります。

一人ひとりの普段の姿を知り、丁寧に見守る力が大切です。

子どもの気持ちに寄り添う力

子どもは、自分の気持ちをうまく言葉にできないこともあります。泣いたり怒ったりしているときも、行動だけを見るのではなく、「何が嫌だったのかな」「どうしたかったのかな」と考えることが大切です。

気持ちを受け止めながら関わることで、子どもの安心感や保育士への信頼につながります。

子どもに分かりやすく伝える力

子どもへ何かを伝えるときは、年齢や発達に合わせて言葉や伝え方を工夫する必要があります。短く具体的に説明したり、実際に見本を見せたりすることも効果的です。

また、注意する場面でも一方的に叱るのではなく、なぜいけないのかを子どもが理解できるように伝えることが大切です。

保護者と信頼関係を築く力

保育士は、送迎時の会話や連絡帳、面談などを通して保護者とも日常的に関わります。園での子どもの様子を丁寧に伝え、保護者の話にも耳を傾けることが信頼関係を築く第一歩です。

子育てに関する悩みや不安を相談されることもあるため、保護者の気持ちに寄り添いながら、必要に応じてアドバイスをすることも大切な役割です。

他の保育士と協力する力

保育は一人でおこなう仕事ではなく、同じクラスの保育士や園長、主任、他クラスの職員などと協力しながら進めます。子どもの様子を共有したり、忙しい場面で助け合ったりすることが大切です。

自分だけで抱え込まず、困ったときには相談することも、チームで安全な保育をおこなうために必要な力です。

その場の状況に合わせて対応する力

保育現場では、予定どおりに一日が進まないことも珍しくありません。突然の体調不良や子ども同士のトラブル、天候による予定変更など、その場で対応を考える場面があります。

周囲の状況を確認し、何を優先すべきか考えながら柔軟に行動する力が必要です。

子どもの安全を守る力

子どもの安全を守ることは、保育士の重要な役割です。遊具や室内に危険な場所がないか確認したり、子どもの行動を予測しながら見守ったりする必要があります。

また、ケガや体調不良が起きた際に、落ち着いて対応する力も欠かせません。日頃から事故を防ぐ意識をもって行動することが大切です。

体力や自分の体調を管理する力

保育士は、子どもと走ったり、抱っこをしたり、立ったり座ったりと身体を動かす機会が多い仕事です。そのため、一定の体力も必要になります。

また、安定して動き続けるためには、自分自身の体調管理も大切です。十分な休息や食事を意識し、無理をしすぎないことも長く働くために必要な力といえるでしょう。

仕事を計画的に進める力

保育士には、日々の保育だけでなく、行事の準備や書類作成、保育室の環境づくりなどさまざまな仕事があります。

複数の業務が重なることもあるため、締め切りや優先順位を考えながら進める力が必要です。周囲と役割を分担しながら計画的に取り組むことで、余裕を持って仕事を進めやすくなります。

分からないことを学び続ける姿勢

保育士になったあとも、子どもの発達や安全管理、保護者支援などについて学び続けることが大切です。どんなに経験を積んでも、分からないことや迷うことはあります。

先輩保育士へ相談したり、研修に参加したりしながら新しい知識を身につけることで、保育の幅も広がっていくでしょう。

まとめ:自分に合ったルートで保育士を目指そう

保育士になるための道は一つではなく、学歴やこれまでの経験に合わせて選べる方法があります。「今からでも目指せるかな」と不安に感じている方も、まずは自分に合った取得ルートを知ることから始めてみましょう。

「子どもが好き」「子どもの成長をそばで見守りたい」という気持ちが少しでもあるなら、それは保育士を目指すうえで大切な第一歩です。必要な資格やスキルは、学びや経験を重ねながら少しずつ身につけていけます。

今の自分にできることから始めながら、自分のペースで保育士への一歩を踏み出してみてください!