「保育士の「借り上げ社宅制度」は保育園等を運営する事業者が保育士のために物件を借りて、家賃の一部もしくは全部を補助する仕組みのことです。保育士として働くのであれば、活用しない手はありません。
この記事では保育士借り上げ社宅制度について詳しく解説していきます。
目次
保育士の借り上げ社宅制度とは?
保育士の借り上げ社宅制度とは、国(厚生労働省)による「保育事業者宿舎借り上げ支援事業」のことです。この事業は保育士の離職防止を目的に、2015(平成27)年に始まりました。
保育園等を運営する法人が、保育士が住むための賃貸マンションやアパートを借りると、自治体から補助金が支給されます。
また、家賃補助が受けられるのは、勤務先の法人が自治体に制度利用の申請をしている場合です。
支給額は1人当たり最大月82,000円で、補助を受けられる場合、保育士は家賃の全てか、一部を負担してもらえます。
2024(令和6)年借り上げ社宅制度の最新情報
次に2024(令和6)年7月時点での、借り上げ社宅制度に関する最新情報をまとめます。
保育士の借り上げ社宅制度が使える条件
保育士が借り上げ社宅制度を利用するには、利用する保育士自身が以下のような条件を満たすことが必要です。
<主な条件一例>
- 常勤の保育士として採用されている(勤務日数や時間に規程がある場合も)
- 現在、自治体内の保育園などに勤務している
- 雇用年数が制度で決められた規程を満たしている
- 借り上げ社宅に居住している(自治体内に住民票がある)
- 社宅から勤務先までの距離が制度で決められた規程を満たしている
しかし、これは全てのに共通する条件ではありません。自治体や法人によって、異なる条件を設けている場合もあるので、しっかり確認する必要があります。
2024(令和6)年度 保育士借り上げ社宅制度の変更点
2024(令和6)年度には、支給対象となる保育士の雇用年数が、前年度より1年短い6年以内に短縮される動きがあります。
参考:こども家庭庁『令和6年度保育関係予算案の概要』
ただし、前年度までにこの借り上げ社宅制度を利用していて、引き続き当年度も続けて利用する場合には、下記の通り以前の年数が適用されます。
・2020年度以前に採用され、当該年度から引き続き補助対象者 → 10年 ・2021年度以前に採用され、当該年度から引き続き補助対象者 → 9年 ・2022年度以前に採用され、当該年度から引き続き補助対象者→ 8年 ・2023年度以前に採用され、当該年度から引き続き補助対象者→ 7年 |
※2024(令和6)年度採用時、直近2ヶ年の1月当たりの保育士の有効求人倍率(職業安定所別)が連続して2未満の場合は、補助対象年数が5年以内となる場合があります。
この雇用年数の規程も、自治体によって独自の基準を定めていることがあり、借り上げ社宅制度を利用したい市区町村できちんと条件を確認しておくことが大切です。
保育士の「借り上げ社宅制度」はなくなるの?
現状では、保育士の「借り上げ社宅制度」がすぐ無くなるということはないでしょう。
ただ前述した通り、この制度は毎年見直しが行われています。
見直しの主な対象となっているのは、支給対象となる保育士の雇用年数です。
元々、支給対象となる保育士の雇用年数は、2020(令和2)年度で10年でした。
それが、2021(令和3)年度には10年から9年に、2022(令和4)年度には9年から8年にと、年々短くなり、2024(令和6)年度には6年以内となっています。
見直しが続いていることは、制度そのものが縮小しつつあるという見方もできます。
元々この制度は保育士の離職防止を目的に始められたものです。
現在、エリアによっては、待機児童や保育士不足の問題が解消されつつある自治体もあるため、保育士の「借り上げ社宅制度」は目的を果たしたと見なされ、将来的には終了となる可能性も、あるといえるでしょう。
【ケース別】保育士借り上げ社宅制度の利用可否
ここからは、保育士借り上げ社宅制度が使えるかどうかを、ケース別に解説します。
ご自身の状況などと置き換えて考えてみてくださいね。
同棲でも使える?
保育士借り上げ社宅制度は、基本的には単身者を対象としています。そのため、婚約者や恋人との同棲での利用は一般的ではありません。
とはいえ、自治体や法人の規約や規程の内容によっては、使える可能性も十分あります。保育士人材バンクのサイトでは「同棲OK」の求人も多数揃えています。
気になる方はチェックしてみてください。
結婚しても使える?
前述した通り借り上げ社宅制度は、基本的に単身者を対象としていますが、自治体や法人によっては、結婚していても使える場合があります。
ただし、以下のような条件で使えないケースもあるので、注意しましょう。
・配偶者が世帯主 ・配偶者の方が収入が多い ・配偶者が家賃補助などを受けている |
産休でも使える?
産休中や育休中であっても雇用が継続されている限り、借り上げ社宅制度が使える場合があります。
しかしやはりこれも、各自治体や法人の規約や規程により、さまざまです。出産を予定している方や、妊娠を希望している方は、あらかじめ確認した方がよいでしょう。
転職しても使える?
保育士借り上げ社宅制度をすでに利用している場合、その法人を退職した時点で、住んでいた部屋から退去しなければなりません。
さらに、同じ自治体の中で転職した場合、制度の受給可能期間が残っていたとしても、転職後には利用できなくなるように定めている自治体もあります。
これは不正受給を防ぐためのもので、他に、別の自治体に転職する場合でも、これまでの利用年数を差し引くケースがあります。
さまざまなケーズがありますので、自治体独自のルールを把握した上でしっかりと転職活動することが大切です。
得する借り上げ社宅制度の使い方
次に、借り上げ社宅制度を使うにあたって更に活用できる制度をご紹介します。
保育士に対して、保育園の運営法人や自治体が以下のような支援制度を行っている場合があります。
- 初期費用の補助制度
- 引っ越し費用の補助制度
- 更新料への補助制度
一つずつ解説してきます。
初期費用補助
借り上げ社宅制度では、園の法人が、保育士本人に代わって物件の賃貸借契約をします。
その流れで、初期費用をまとめて負担してもらえるケースがあります。
例えば家賃が8万円の場合、一般的に敷金・礼金、仲介手数料など合わせて30万円以上もの初期費用がかかります。
30万円というと大金ですよね。これだけの初期費用が浮くとなると、金銭的にかなり助かるのではないでしょうか。
法人によって、全て負担してくれる場合や、一部負担をしてくれる場合もあります。利用の前にしっかり確認をしておきましょう。
引っ越し費用補助
この制度がある法人では、引っ越しにかかる費用が無料になったり一部軽減されたりする場合があります。
特に可能性が高いのは保育士不足が続いている、首都圏エリアにある保育園に勤める場合です。
自治体が引っ越しの補助金を出すケースもあるようです。
法人や自治体による引っ越し費用の負担には、以下のようなパターンが考えられます。
・引っ越し費用を全額負担
・引っ越し費用を一部(定額)負担
・引っ越し費用を上限額まで(10万円など)負担
一人暮らしの引っ越し相場額は、時期にも寄りますが5万~10万円ほどです。かなりの金額が節約できますね。
更新料への補助制度
一般的に2年に一度必要になる、「更新料」に必要補助になる場合もあります。園の法人が物件の賃貸借契約をしている関係で、法人や自治体が補助を出してくれる場合があります。
更新時には、家賃の1~2ヶ月分が必要で、家賃が8万円の場合には8万~16万円ほどが必要です。
更新料を払わずに済むのなら、住み慣れた物件になるべく長く住み続けたいという気持ちが高まりますね。
保育士借り上げ社宅制度が使える求人の探し方
では、保育士借り上げ社宅制度が使える求人を探すには、どのような方法があるのでしょうか。
保育士の求人の調べ方には、以下のような方法があります。
- 求人情報誌や新聞記事
- ハローワーク
- 知り合いの紹介
- 求人サイト
この中で最もおすすめなのは、インターネット上の求人サイトを利用する方法です。
わざわざ求人票を見に行かなくても、手元で色々な情報が手に入ります。
また、現在働いている方でもスキマ時間を使って効率的に調べものができますね。
求人票に書いていないときは?
借り上げ社宅制度を使いたい場合、先に挙げた求人情報誌やハローワークの求人票に、借り上げ社宅制度の利用条件や補助金額の上限などが明記されていないことがあります。
そんなときにおすすめなのが、転職エージェントの活用です。
保育士の転職に特化した転職エージェントには、以下のような強みがあります。
・借り上げ社宅の条件や補助金額などを確認しながら転職活動が進められる ・インターネットに出ていない非公開求人が知れる ・キャリアパートナーに相談しながら自分に合った転職先を探してもらえる |
借り上げ社宅制度が使いたいと考えている場合は、転職エージェントを活用してみてはいかがでしょうか。
また保育士人材バンクでは、借り上げ社宅について、特に詳しく情報を掲載しています。更に「同棲OK」「名義変更OK」や「初期費用負担補助あり」など、借り上げ社宅の中でも、こだわって探すことが可能です。
主な市区町村の借り上げ社宅制度の紹介
ここからは、東京、神奈川、千葉の首都圏エリアの市区町村で、実際に運用されている借り上げ社宅制度について、2024年7月現在の情報をいくつか例を挙げて紹介します。
東京都の借り上げ社宅制度
東京都は、多くの市区町村で借り上げ社宅制度が利用できます。
千代田区の借り上げ社宅制度
千代田区の借り上げ社宅制度による補助金額は、月額最大11万3,750円で、これは都内でもかなり高い水準です。
千代田区の一人暮らし物件の家賃相場は10万円ほどですが、しっかり補助を受けられれば十分生活が可能性になります。
区外に住む場合では、一戸当たり月額7万1,750円。区内に住む場合で最大月額11万3,750円が補助されます。
区外に居住する場合 | 一戸当たり 月額最大7万1,750円 |
区内に居住する場合 | 一戸当たり 月額最大11万3,750円 |
補助対象となるのは、以下の費用です。
・賃借料 ・共益費 ・礼金 ・更新料 |
月々の家賃だけでなく、共益費や礼金、更新料まで含まれるので、経済的に助かりますね。
制度の詳細は「千代田区の保育士借り上げ社宅制度」をご確認ください。
三鷹市の借り上げ社宅制度
三鷹市の借り上げ社宅制度による補助金額は、月額最大8万2,000円です。
市が独自に定めている加算などは、特にありません。とはいえ三鷹市で一人暮らしの家賃相場は6万円ほどなので、満額受けられる可能性も十分あります。
三鷹市の場合、市外に住む場合や、非常勤の方も補助対象です。
制度の詳細は「三鷹市の保育士借り上げ社宅制度」をご確認ください。
神奈川エリアの借り上げ社宅制度
神奈川でも、多くの市区町村で、借り上げ社宅制度が採用されています。
横浜市の借り上げ社宅制度
横浜市の借り上げ社宅制度による補助金額は、月額最大6万1,000円です。
横浜市の一人暮らし物件の家賃相場は、区によって差があり、4万~7万円ほどで、比較的家賃の高い都筑区や西区、中区などに住む場合には、家賃の持ち出しがやや増えることが想定されるでしょう。
横浜市で制度が使えるのは常勤の保育士で、基本的には市内の保育施設に勤めている方に限られており、比較的厳しい条件だといえます。
しかし、対象支給対象となる保育士の雇用年数は10年目までと、長めに設けられています。
制度の詳細は「横浜市の保育士借り上げ社宅制度」をご確認ください。
相模原市の借り上げ社宅制度
相模原市の借り上げ社宅制度による補助金額は、月額最大5万4,000円です。
相模原市で制度が使える保育士は、常勤で他にも利用するにあたってルールがあります。
制度の詳細は「相模原市の保育士借り上げ社宅制度」をご確認ください。
千葉県の借り上げ社宅制度
千葉の市町村でも、借り上げ社宅制度の条件などは独自のものがあり、利用したいときには必ず確認するようにしましょう。
市川市の借り上げ社宅制度
市川市の借り上げ社宅制度による補助金額は、月額最大7万5,000円で、千葉県内では比較的高いといえます。
しかし、市川市の一人暮らし物件の家賃相場は県内で高い水準で、7万円ほどなので、全額を補助でまかなうことは難しく、家賃の手出しが必要になる場合もあるでしょう。
市川市で制度が使えるのは常勤の保育士で、基本的には市内の保育施設に勤めている方に限られており、比較的厳しい条件だといえます。
しかし、対象支給対象となる保育士の雇用年数は10年目までと、長めに設けられています。
制度の詳細は「市川市の保育士借り上げ社宅制度」をご確認ください。
千葉市の借り上げ社宅制度
千葉市の借り上げ社宅制度による補助金額は、月額最大6万3,000円です。
千葉市の一人暮らし物件の家賃相場は区によって差があり、4.5万~6万円ほどです。住む物件によっては、家賃の持ち出しがやや必要となるかもしれません。
千葉市では、市内に居住する場合に借り上げ社宅制度が利用できます。
制度の詳細は「千葉市の保育士借り上げ社宅制度」をご確認ください。
その他の市区町村情報も借り上げ社宅制度 完全ガイドを活用して、住みたい場所の情報を調べてみましょう。
保育士借り上げ社宅制度まとめ
保育士借り上げ社宅制度は、国や自治体による補助金を活用して、保育園などの法人が、居住するための社宅(賃貸マンションやアパート)を借りる制度です。
制度を採用している施設などに就職すると、保育士は家賃の全額か一部が補助されます。
自治体や法人によって、受給できる条件や金額が違うので、お得に活用したいなら、事前のリサーチや確認が重要です。
就職や転職先を選ぶ、一つの目安にしてはいかがでしょうか。
また、保育士人材バンクでは借り上げ社宅の利用条件を「同棲OK」や「ペットOK」など、こだわりの条件で検索ができます。また、「初期費用補助あり」「引っ越し代補助あり」などの条件でも検索ができます。
ぜひ保育士人材バンクの便利な検索機能を利用して、好条件の求人を探してみてくださいね。
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