近年、認定こども園の数が増えてきていますが、保育士、幼稚園教諭、両方の資格・免許があると、活躍の場が広がります。
そこで、確認しておきたいのが、国が一時的な措置として設けている『幼保特例制度』です。
幼保特例制度は、どちらか片方の資格・免許をもっていれば、もう1つの資格がとりやすくなる制度です。
本記事では、幼保特例制度がいつまでに利用できる制度なのか、間に合わないとどうなるのか、申請方法など、詳しく解説していきます。
保育教諭を目指している方、キャリアアップを目指している方はぜひ参考にしてみてください。
目次
幼保特例制度とは?
『幼保特例制度』とは、保育士資格と幼稚園教諭免許どちらかしか持っていない場合に、通常よりも少ない学習時間と負担で資格取得ができる制度です。
幼保特例制度の背景や目的は?
前提として、幼稚園教諭は文部科学省、保育園は厚生労働省とそれぞれ管轄が分かれていますが、国は2006年に学校教育と保育を一体的に提供するための施設『認定こども園』を創設しました。
待機児童問題や、多様なニーズに対応する目的で作られた認定こども園は、2007年に全国で105施設しかなかったのが、2022年(令和4年)には9,220施設まで増えています。
今後も増え続けることが予想される認定こども園ですが、働くためには、『保育士資格』と『幼稚園教諭免許』、両方の資格・免許をもった保育教諭にならなくてはなりません。
そこで国は、どちらか片方の資格しか持っていない方でも、スムーズに保育教諭に移行できるように、一定期間、経過措置を設けました。それが幼保特例制度です。
経過措置期間中は、一定の条件をクリアすれば、大学などの養成校で指定の8単位のみを修得すれば、従来よりも時間や負担がかからずに資格・免許が取得できます。
参考:
文部科学省:『1認定こども園について』
子ども家庭庁:『都道府県別の認定こども園の数の推移』
幼保特例制度の対象者は?
幼保特例制度が対象となるのは、下記に該当する方です。
- 保育士資格と幼稚園教諭免許のどちらかを持っている方
- 「3年かつ4,320時間以上」の実務経験がある方
- 大学(通信制大学)で指定の単位を修得できる方
実務経験として認められる対象施設は次のとおりです。
- 認定こども園(幼保連携型、地方裁量型、保育所型、幼稚園型)
- 保育園
- 幼稚園(特別支援学校の幼稚部も含む)
- 小規模保育事業
- 事業所内保育事業
- 公立の認定外保育施設
- 離島その他の地域において特例保育
- 幼稚園併設型認定外保育施設
- 認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書が交付された認可外保育施設
現在は働いていない、潜在保育士・幼稚園教諭の方も条件を満たせば、特例制度の対象となります。
くわえて、子ども・子育て会議において、2023年度(令和5年)からのさらなる併有促進策「幼保2年特例」が発表されました。
幼保連携型認定こども園における保育教諭として、実務経験が2年かつ2,880時間以上あれば、取得すべき8単位のうち、2単位を取得したものとみなされる特例です。
この特例により、すでに幼保連携型認定こども園で働いている方は、より両方の資格がとりやすくなったといえます。
参考:
全国保育士養成協議会:『特例制度について』
厚生労働省子ども家庭局保育課:『幼稚園教諭免許・保育士資格の更なる併有促進について』
幼保特例制度はいつまであるの?
幼保特例制度は、認定こども園法の改正により、当初2015年4月1日から5年間限定の制度でしたが、新特例が適用となりました。幼保特例制度の期間は10年間に延長されたので、2025年3月31日までとなりました。
ただし、全国保育士養成協議会のホームページでは、保育士受験免除申請期間は、(2025年)令和7年までと記載されており、2025年3月(2024年度)までに、実務経験と学習を修了する必要があるようです。
幼稚園教諭になるための教員免許申請は、2025年3月までとなっているようなので、それまでに必要な単位を取得するなどして、余裕をもって必要書類を用意しておく必要があるでしょう。
参考:文部科学省:『幼稚園教諭免許状授与の所要資格の特例に関するQ&A』
全国保育士養成協議会:『特例制度について』
幼保特例制度の延長はある?
幼保特例制度が再々延長するかどうかは、2024年6月時点でまだ未定のようです。
幼保特例制度は、元々、期限付きで始まった措置なので、いつ終了となってもおかしくないでしょう。
新特例によって、2025年3月31日までは延長が決定していますが、両方の資格取得を考えている方は、どちらにしても余裕をもったスケジュールで準備を進めるのが安心といえます。
幼保特例制度の申請方法
幼保特例制度を利用して資格・免許を取得する際の、申請方法は次のとおりです。
幼稚園教諭免許を取得する場合
幼保特例制度を使って、幼稚園教諭免許を取得する際の申請方法は次のとおりです。
①研修を実施している機関を確認する(大学や短期大学、専門学校)
↓
②対象となる研修機関で必要な研修科目を受講して単位を修得する
↓
③申請書類を準備する
・申請書(研修機関や教育委員会から入手する)
・教育職員免許状検定授与申請書
・保育士資格証の写し
・研修終了証明書
・その他自治体や所轄の教育委員会が指定する書類
↓
④申請書類を所轄の教育委員会に提出する
↓
⑤審査が通れば、幼稚園教諭免許が交付される
なお、申請方法や必要な書類は各自治体によって異なる場合があります。
参考:東京都教育委員会:『幼保特例による申請』
子ども家庭庁:『特例制度のリーフレット』
保育士資格を取得する場合
幼保特例制度を使って、保育士資格を取得する際の申請方法は次のとおりです。
①自治体の保育行政担当部門や福祉事務所のホームページで情報を集める
↓
②各都道府県が指定している保育士養成施設
↓
③研修機関で必要な研修を受けて単位を取得する
↓
④申請書類を準備する
・申請書(自治体指定の様式)
・幼稚園教諭免許状の写し
・保育経験証明書(勤務先が発行したもの)
・幼教専修証明書(指定保育士養成施設が発行するもの)
・その他、自治体が指定する書類
↓
⑤『全国保育士養成協議会』に受験免除申請をする
参考:子ども家庭庁:『特例制度のリーフレット』
子ども家庭庁:『幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例』
全国保育士養成協議会:『指定保育士養成施設での科目等履修による免除について』
全国保育士養成協議会:特例制度について(幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例)
幼保特例制度が活用できる職場
幼保特例制度は前提として、『幼保連携型認定こども園』への円滑な移行を進めるための制度です。
幼保連携型認定こども園で働く際は、保育士資格、幼稚園教諭免許の両方を取得し、『保育教諭』として働く必要があります。
しかし、幼保特例制度を活用して、保育士資格、幼稚園教諭免許の両方を取得していれば、その他の認定こども園でも活躍できます。
幼保特例制度が活用できる職場は次のとおりです。
- 幼保連携型・・・幼稚園と保育所両方の機能をあわせもつ施設
- 幼稚園型・・・認可幼稚園に保育所の機能を備えた施設
- 保育所型・・・認可保育園が幼稚園の機能を備えた施設
- 地方裁量型・・・認可外の地域の教育・保育施設が認定こども園として機能を果たす施設
なお、幼保連携型をのぞく、その他の認定こども園で満3歳以上のクラスを持つ際は、幼稚園教諭と保育士資格の両方をもっているのが望ましいとされています。
保育教諭の資格をもっていれば、数ある認可保育園の中から自分に合う職場を見つけられるでしょう。
参考:子ども家庭庁『認定こども園概要』
認定こども園の経験が活かせる職場
保育園と幼稚園両方の良さをもった『認定こども園』は、今後も増え続けることが予想されます。
幼保特例制度を利用して、保育士資格、幼稚園教諭免許の2つを取得すれば、数ある選択肢の中から自分に合った職場を探せます。
また、将来的に、別の職場へ転職したいとなった場合にも、認定こども園で保育教諭として経験したことが強みになるでしょう。
保育教諭の経験が活かせる職場は次のとおりです。
- 認定こども園
- 保育園
- 幼稚園
- 企業内保育施設
- 学童クラブ
- 病院内保育施設
- 児童福祉施設(児童養護施設、障がい児施設など)
認定こども園で保育教諭として経験を磨けば、保育と教育、2つの視点をもって、子どもと関われるようになります。
そのため、認定こども園だけでなく、子どもと関わる幅広い職場で、『保育のプロ』として活躍できるでしょう!
幼保特例制度まとめ
幼保特例制度について、詳しく解説しました。
従来は時間とお金、労力がかかる資格取得も、幼保特例制度を利用すればスムーズに取得できます。
なにより、保育士資格と幼稚園教諭免許、2つをもっていれば、活躍の場がグンと広がるでしょう!転職したいとなった場合にも、自分の強みとしてアピールできます。
前述したように、幼保特例制度は期間限定の制度なので、「両方の資格をとりたい」「キャリアアップを目指したい」という方は、ぜひ早めに準備を進めましょう。