時代の変化とともに、保育士の働き方は多様化しています。
「プライベートを大事にしながら働きたい」「子育てが一息ついたので復職したい」といったように、自分のライフスタイルに合わせて柔軟に雇用形態を選ぶ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、保育士の雇用形態について詳しく解説します。
雇用形態別の特徴やメリット・デメリットをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
雇用形態の種類
雇用形態とは、簡単にいえば、仕事の働き方の種類のことです。
保育士の働き方は、大きく5パターンに分かれます。
ここからは、雇用形態別に特徴やメリット・デメリットなどを紹介します。
①正社員
フルタイム勤務で安定した働き方がしたい方には、正社員が合っています。
園によって異なりますが、勤務時間は1日8時間程度で、早番、中番、遅番などのシフト制で働くのが一般的です。
メリット
正社員で働くメリットは次のとおりです。
- 月給制で安定した収入が得られる
- 社会保険や育休・産休、退職金、交通費支給など福利厚生が充実している
- リーダーや主任、園長など昇進のチャンスがある
- 任される業務の幅が広いため、保育士としてのスキルを幅広く高められる
デメリット
正社員保育士で働くデメリットは次のとおりです。
- 忙しい時期や人手不足のときは、残業や休日出勤する可能性がある
- 早番や遅番など、不規則なシフト制で生活リズムを整えるのが難しい場合もある
- 責任あるポジションにつきやすく仕事が辞めにくい可能性がある
②パートやアルバイト
ライフスタイルに合わせて柔軟に働きたい方には、パートやアルバイトがおすすめです。
パートやアルバイトは、週2~3日の勤務や朝や夕方のみなど、短時間勤務が可能です。
曜日や時間を固定して働く場合がもあり、育児中の方やWワークの方に人気の働き方です。
メリット
パートやアルバイトで働くメリットは次のとおりです。
- プライベートと両立しながら無理なく働ける
- クラス担任など責任ある業務が少ないため心身の負担が少ない
- 勤務時間の融通が利きやすい
- 保育資格がなくても働ける場合がある
デメリット
パートやアルバイトで働くデメリットは次のとおりです。
- 働いた時間に応じた収入となるため、収入がやや不安定になることがある
- 正社員に比べて受けられる福利厚生が少ない
- 保育補助が多いため、理想とする保育や自分の意見が反映されにくい
- 責任ある業務が少ない分、正社員よりもやりがいや成長を感じにくい
- キャリアアップの機会が少ない
③契約社員
一定の契約期間で安定して働ける契約社員も、選択肢の1つです。
契約社員の就労期間は一般的に1~3年程度。
保育園によっても異なりますが、働き方は正社員とほとんど変わらないケースが多いです。
メリット
契約社員で働くメリットは次のとおりです。
- 正社員と同じフルタイム勤務で安定した収入が得られる
- 短期間の契約になるため、ライフプランに合わせた働き方ができる
- 条件を満たせば正社員登用のチャンスがある
- 職場を見極めるためにお試しで働ける
- 正社員と比べて業務負担や責任が重くない
デメリット
契約社員で働くデメリットは次のとおりです。
- 契約更新がない場合は次の雇用先を探す必要がある
- 正社員に比べて昇給や昇進の機会が少ない
- 退職金やボーナスがほとんど出ない
- 子どもたちを卒園まで見届けられない可能性もある
④派遣社員
派遣社員は、派遣会社を通じていろいろな保育園で働けるため、保育士に人気のある働き方です。
派遣社員の場合、雇用主は保育園ではなく、派遣会社になります。
給与の支払いや、福利厚生の手続きも、すべて派遣会社がおこないます。
勤務先や勤務時間の選択肢が広いため、自分のライフスタイルに合わせた働き方ができます。
メリット
派遣社員で働くメリットは次のとおりです。
- 残業や持ち帰り業務が少ない
- 保育園でさまざまな経験が積める
- 一般的なパートやアルバイトよりも時給が良い
- 未経験の方やブランクがある方でも働きやすい
- 職場の労働環境などに困った場合は、派遣会社に相談できる
- 一定の期間働くことで、正社員への登用を提案されることもある
デメリット
派遣社員で働くデメリットは次のとおりです。
- 正社員と業務の範囲や待遇が異なるため、職場で壁を感じてしまうこともある
- 契約期間が決まっているため、契約終了後は新しい職場を探す必要がある
- 就業先が用意する正社員向けの福利厚生を受けることができない
- 基本的には契約期間終了まで辞めるのが難しい
⑤短時間正社員
短時間正社員は、正社員と同じ待遇を受けつつ、所定労働時間が短い・所定労働日数が少ない働き方です。
育児や介護と仕事を両立したい社員や、ライフスタイルやライフステージに合わせて働きたい方におすすめの雇用形態です。
優秀な人材の確保や、保育士の働きやすさを重視し、導入する保育園が少しずつ増えています。
メリット
短時間正社員で働くメリットは、次のとおりです。
- 福利厚生、昇給、賞与など正社員と同じような待遇が受けられる
- 勤務時間が短い分、プライベートとの両立がしやすい
- 雇用が安定しているため、長期的に働くことができる
- フルタイムの正社員と比べて業務負担が軽減される
- ブランクをつくらずに保育士としてのキャリアを継続できる
デメリット
短時間正社員で働くデメリットは、次のとおりです。
- 収入がフルタイムの正社員よりも少なくなる
- 正社員との関わりが少なくなる分、チームワークの一体感を感じにくい
- 業務の範囲が限定されるため、やりがいや成長を実感しにくい
参考:
東京労働局「労働基準法」
厚生労働省「派遣で働く皆様へ」
全国保育士養成協議会「短時間正社員制度を活用した保育士の再就職促進について」
常勤と非常勤の考え方
保育士の働き方には、「常勤」と「非常勤」の2種類があります。
一般的には、常勤保育士や非常勤保育士と呼ばれます。
ここでは、常勤と非常勤それぞれの働き方の特徴や、メリット・デメリットをご紹介します。
それぞれの特徴を理解し、自分に合った働き方を選びましょう!
常勤の働き方について
常勤とは、フルタイム勤務の働き方で、一般的に正社員として働くことを指します。
常勤の働き方の特徴について
常勤の特徴は次のとおりです。
- 1日あたりの労働時間は8時間程度、週5日勤務が基本
- クラス担任やリーダー業務、行事の企画運営など業務内容は多岐にわたる
- 早番・中番・遅番などシフト制で働く場合が多い
- 安定した雇用でキャリアアップのチャンスが豊富にある
※常勤の定義は行政や法人によって違いがあります。
常勤で働くメリット
常勤で働くメリットは次のとおりです。
- 月給制で収入が安定しており、賞与や昇給がある場合が多いため、長期的な生活プランを立てやすい
- 福利厚生が整っているため、安心して長く働き続けられる
- リーダーや主任、園長などへの昇進のチャンスが多い
- 担任として子どもの成長をじっくり見守れるのでやりがいを感じやすい
- 職員や保護者と関わる機会が多く、信頼関係が深まりやすい
常勤で働くデメリット
常勤で働くデメリットは次のとおりです。
- 人手不足や忙しい時期は、残業や休日出勤が発生する可能性があり、プライベートとの両立が難しくなることもある
- 保護者対応や行事の準備、書類作成など、保育以外の業務負担が大きい
- シフト制で家庭やプライベートとの調整が難しい
- 長期的な勤務が基本となるため、他の職場への転職を決断しにくい
非常勤の働き方について
非常勤は、短時間や週数日に勤務する働き方です。
パートやアルバイト、派遣社員などの、雇用形態が該当します。
非常勤の働き方の特徴について
非常勤の特徴は次のとおりです。
- 1日4~6時間、週2~3日などの勤務が一般的
- クラス担任を任されることは少なく、保育補助業務が多い
- 柔軟な勤務シフトが組めるため、ライフスタイルに合わせた働き方ができる
非常勤で働くメリット
非常勤で働くメリットは次のとおりです。
- 自分のスケジュールに合わせた勤務ができるため、プライベートと両立しやすい
- 行事などの主担当を負う業務が少ない
- 職場選びの幅が広く、自分に合う職場を見つけやすい
- ブランクのある方や未経験の方でも無理のないペースで働ける
非常勤で働くデメリット
非常勤で働くデメリットは次のとおりです。
- 働いた時間に応じた給与となるため、常勤よりも収入が不安定
- 常勤よりも受けられる福利厚生が不十分な場合がある
- 昇進や昇給のチャンスが少ないため、長期的にキャリアを積むのが難しい
- 常勤と比べて職場の一体感を感じにくい
常勤と非常勤の選び方のポイント
常勤と非常勤にするか悩んでいる方は、下記のポイントを参考に自分に合った働き方を選びましょう!
- 「安定性を重視するのか」「柔軟な働き方を重視するのか」で選択する
→ 安定した収入や充実した福利厚生を重視するなら常勤がおすすめ
→ プライベートと仕事の両立を重視するなら非常勤が合っている
- 「収入面をどう考えているのか」で選択する
→ 月給制で長期的に生活の安定を考える人には常勤が向いている
→ 時給制や日給制で必要最低限の収入を得たい人には非常勤がおすすめ
- 「業務負担を軽減したいのか」で選択する
→ 業務は多いがスキルアップややりがいを得たい人には常勤が向いている
→ 業務負担が軽くストレスが少ない働き方を重視するなら非常勤がおすすめ
- 「キャリアアップを目指すのか」「補助的な業務を希望するのか」で選択する
→ リーダーや主任、園長など責任あるポジションを目指したいなら常勤がおすすめ
→ 責任あるポジションは避けて、補助業務に集中したいなら非常勤が向いている
- 「職場での一体感を求めるか」で選択する
→ チームの一員としてチームワークを感じたいなら常勤が合っている
→ チームとの一体感は感じにくくても短時間勤務希望なら非常勤がおすすめ
- 「長期的なキャリア形成を目指すのか」で選択する
→ 長期的なキャリア形成を目指すなら常勤が向いている
→ ライフステージに合わせた働き方を重視するなら非常勤が向いている
上記のポイントを参考にして、自分に合った働き方を選び、保育士として充実したキャリアを築きましょう!
今の雇用形態が合わないと思ったら
今の雇用形態が自分に合わないと感じた保育士さんは、下記の方法を試してみましょう!
自分にとって理想の働き方を考える
まずは、自分がどのような働き方を理想としているのかを明確にするのが大切です。
「ライフスタイルに合わせて無理なく働きたいのか」「安定した収入を得られる働き方を希望するのか」など、自分に合う雇用形態を見直すことで、少ないストレスで長く働き続けられるでしょう。
自分にとって理想の働き方を明確にすることは、転職やキャリアの方向性を考えるうえで重要です。
同僚や保育士仲間に相談してみる
働き方に悩んだら、職場の同僚や保育士仲間に相談してみるのも1つの方法です。
ほかの保育士の経験やアドバイスから、解決策や新たな解決方法が得られる可能性があります。
同じ立場の仲間に相談することで、共感し合えることも多く、安心感につながる心強いサポートになるでしょう!
上司へ素直に相談してみる
勤務先の上司へ素直に相談することで、勤務時間やシフトの調整、雇用形態の変更など、解決策を提案してくれたり、改善してくれたりする可能性があります。
「上司に相談するのはハードルが高い」と感じる方もいるかもしれませんが、素直に気持ちを伝えることで、信頼関係が深まり、より働きやすい環境へとつながります。
キャリアアップやスキルアップを目指す
特に正社員として働きたい方は、新たなスキルを習得すればキャリアの選択肢が増え、より柔軟な働き方が可能になります。
たとえば、保育に役立つ研修を受講したり、資格を取得したりすることで、活躍の場が広がり、別の役職や雇用形態にチャレンジする準備が整います。
保育士としてスキルアップを続けることで、自己成長にもつながり、働くやりがいやモチベーションアップにもつながるでしょう!
育児・介護休業制度の活用を検討する
育児や介護など、家庭の事情で今の働き方が合わない場合は、『育児・介護休業制度』の利用を検討してみましょう。
育児・介護休業制度とは、育児や介護など家庭の事情に合わせて、一定期間、仕事を休むことができる制度です。
育児休業は、子どもが1歳になるまで(条件によっては2歳まで)取得可能で、介護休業は1回につき最長93日間まで分割で取得できます。(取得するためには条件あり)
制度を活用することで、育児や介護を理由に退職せずに、長期的なキャリアを形成することができます。
参考:厚生労働省「就業規則への記載はもうお済みですか」
どうしても変更ができない場合
上司や会社へ素直に相談しても雇用形態が変わらない場合や、状況が改善されない場合は下記の選択肢を検討しましょう。
今の負担が軽くなる他の改善策を検討する
雇用形態の変更が難しい場合は、今の負担を軽くする方法を考えてみるのがおすすめです。
たとえば、業務量を減らしてもらったり、作業効率を上げるための方法を試したり、他の改善策を試すことで、大幅に負担が減る場合もあります。
自分だけで改善するのが難しい場合は、具体的な改善策を上司に提案してみましょう。
人事部や他の管理者に相談する
直属の上司に相談しづらい場合や、相談しても状況が変わらない場合は、人事部や他の上司に相談するのがおすすめです。
上司以外に相談することで、第三者の視点からのアドバイスや、自分では思いつかない新しい改善策が得られる可能性もあります。
自分のキャリアプランを再考する
雇用形態が変わらない場合は、一度自分のキャリアプランを再考してみましょう。
長期的な目標を見直すことで、自分に合った働き方ができる職場や、雇用形態を見つけるきっかけになることも。
自分が理想とする働き方や、ライフスタイルに合う環境を探すためには、柔軟な視点でキャリアを見直すことが大切です。
フリーランスや自営業の選択肢も検討する
自由な働き方を求めるなら、フリーランス保育士や自営業という選択肢もあります。
理想の保育を実現できたり、自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能になったり、できることや仕事の幅が広がります。
新しい挑戦を通じて、保育士として新たなキャリアの可能性が広がるきっかけになるかもしれません。
自治体や厚生労働省が設置している窓口を利用する
働き方について悩んでいる場合は、自治体や厚生労働省が設置している、保育士向けの相談窓口を利用するのも1つです。
保育士の悩みを相談できる窓口は、次のようなものがあります。
- 厚生労働省 : 『働く人のこころの耳相談』
- 法務省 : 『みんなの人権110番』
- 厚生労働省 : 『こころの健康相談統一ダイヤル』
- 厚生労働省 : 『総合労働相談コーナー』
上記のような窓口には、専門の相談員がいるため、具体的なアドバイスや支援を受けられる可能性があります。
保育の転職エージェントに相談してみる
今の働き方に悩んでいる方は、保育専門の転職エージェントに相談するのもおすすめです。
転職エージェントは、保育業界の最新の求人情報を持っており、現在の求人市場やさまざまな園のリアルな情報を知ることができます。
また、働き方やキャリアの悩みを専門のアドバイザーに相談することで、キャリアの方向性を見直すきっかけや、第三者視点のアドバイスを受けられます。
たとえ今すぐに転職を考えていなくても、将来の選択肢を増やすために役立つはずです。
転職エージェントへの相談は基本的に無料でできるので、気軽に利用してみましょう!
転職を検討する
どうしても状況が改善されない場合は、転職を視野に入れてみてはいかがでしょうか?
保育園といっても、規模や保育方針、雰囲気、働き方、待遇はさまざまで、保育士資格や今までの経験を活かせる職場はたくさんあります。
転職を視野に入れることで、自分に合った働き方や環境を見つけるチャンスが広がるでしょう!
また、新しい職場では、スキルや経験の幅を広げられるだけでなく、理想の保育が実現できる可能性もあります。
今の状況を変えるための第一歩として、前向きに転職を検討してみましょう!
保育士の雇用形態まとめ
保育士の雇用形態について詳しく紹介しました。
ご紹介したように、それぞれの雇用形態にはメリットやデメリットがあるため、自分のライフスタイルやキャリアプランに合わせて、ベストな選択をするのが大切です。
自分にピッタリな働き方を見つけることで、自分らしく長く働き続けることができます。
まずは、自分の理想の働き方や目標を整理して、理想の働き方を実現するための第一歩を踏み出しましょう!
保育士人材バンクでは、専門のアドバイザーがあなたのキャリアプランに合わせたアドバイスをおこない、自分に合った職場や働き方を見つけるお手伝いをします。
転職や働き方の見直しを考えている方も、今すぐ転職を考えていない方も、まずは気軽にご相談ください。
あなたが笑顔で働ける環境を一緒に見つけていきましょう!