保育士から異業種への転職には、どのような選択肢があるのでしょうか。
今回は元保育士におすすめの転職先と自己PR、志望動機の書き方についてご紹介します。
今後のキャリアアップ・キャリアチェンジについてイメージを膨らませてみましょう。
目次
保育士は異業種に転職できるの?
保育士から異業種への転職は十分に可能です。なかでも、人と関わる職種の場合は、転職後の活躍が期待されることも多いでしょう。
なぜなら、保育士として身に付けた臨機応変な対応力や、子どもや保護者と信頼関係を築くコミュニケーション能力は、保育に関係なく多くの職業で求められる能力だからです。転職先を選ぶ際には、保育士時代の経験をどう活かせるかを明確に伝えることが成功のポイントとなります。
【異業種転職】保育士からのおすすめ転職先
それでは、保育士経験を活かして働けるおすすめの転職先を見てみましょう。
児童発達支援施設
児童発達支援施設は、発達に支援が必要な未就学児を対象に、生活スキルの向上や社会性の育成をサポートする施設です。個別指導や小グループでの活動を通じて、子どもたちの成長を支える役割を担っています。
保育園のように子どもが集団で過ごす環境でも、発達段階に応じた対応が必要なことには変わりありません。保育士として一人ひとりの子どもに合わせて関わってきた経験は、児童発達支援施設でも活かされるでしょう。
子どもの特性によって起こる生きづらさをサポートし、自信を持てるような環境を提供できます。
また、支援を必要とする子どものなかには、うまく気持ちを表現できない子どもも多くいますが、小さな変化を見逃さずすばやく対応してきた保育士経験が強みとなります。未就学児との関わりのなかでも、より専門的なサポートを行いたい方の転職先としておすすめです。
放課後等デイサービス
放課後等デイサービスは、障がいを持つ小学生から高校生を対象に、放課後や長期休暇中に学習や生活スキルの支援を行う施設です。活動内容は、宿題のサポートや社会性を育むためのプログラムが中心で、働く職員は子どもたちが安心して過ごせる環境づくりが求められます。
放課後等デイサービスでは個性あふれる子どもたちへの柔軟な対応力や、成長に寄り添う力が活かされます。とくに、子どもたちの個性や発達段階を理解し、それに応じた対応を行える力が必要になるでしょう。障がいや特性に対する知識も求められます。
また、保護者との密な連携が必要な場面も多いため、保育園での保護者対応経験が役立ちます。突発的なトラブルにも冷静に対応できるスキルや、子どもたちの興味を引き出す工夫を凝らした支援が求められたときに、保育士経験を活かして活躍できる職場です。
学童
学童は、共働き家庭やひとり親家庭の小学生を対象に、放課後や長期休暇中に安心して過ごせる環境を提供する施設です。基本的な業務には、宿題のサポートや遊びの計画・実施、安全管理も含まれます。保育園で関わる子どもよりも年齢は上がりますが、子どもの年齢に応じて関わる点では同じです。
また、子どもたちが「自主性や社会性を育む場」としての役割を持つため、人と人との関わり方や、その場に合った行動を指導するシーンも多くあります。保育士だった経験を活かし、子どもたちが安心して自分らしく過ごせる環境を作ることが大切です。
とくに小学生は、自己表現が活発で感情の起伏も激しい時期です。やさしいだけではなく、時には冷静な声かけや指導が必要になることもあるでしょう。
また、保護者に日々の様子を報告する際には、保育士としてコミュニケーションを交わしてきた経験が役立ちます。
児童館
児童館は、地域の子どもたちが自由に遊びや学びを楽しめる場を提供する施設です。未就学児から中学生まで幅広い年齢層の子どもたちを対象に、自由遊びの場や季節のイベント、地域活動のサポートなどを行います。保育園で子どもたちの興味を引き出していた工夫や声掛けのスキルがしっかりと活かされるでしょう。地域の保護者とコミュニケーションを取る機会も多く、子どもと家庭をつなぐ重要な役割として活躍できます。
児童館によっては年中さまざまなイベントを用意し、複数の企画が同時に進むこともめずらしくありません。多くの年間行事を企画から運営まで経験してきた保育士であれば、スケジュールの立て方や役割分担など、先を見越した取り組み方ができるでしょう。
幼稚園(幼稚園教諭免許必要)
幼稚園は、3歳から就学前の子どもを対象に教育を提供する施設です。一見、保育園と似ていますが、保育を主体とする保育園とは異なり、遊びや運動、音楽などさまざまな活動を通した「教育」に重点を置いているのが特徴となっています。
保育士資格を持つ方のなかには、幼稚園教諭免許と両方持っている方も多く、保育士からの転職もめずらしくありません。子どもたちの創造性を育む工作や音楽活動、集団遊びなど、保育士時代に身に付けたスキルを活かしながら、教育活動により力を入れた環境で働くことができます。クラス運営では、子どもたちを導くリーダーシップや、個性を活かす指導力も求められるでしょう。
認定こども園(両免許必要)
認定こども園は、保育園と幼稚園の機能を併せ持つ施設で、保育と教育の両方を提供しています。0歳から就学前までの子どもたちを対象に、長時間の保育が必要な家庭や、幼児教育を重視したい家庭など、さまざまな保育・教育のニーズに対応できるのが特徴です。
認定こども園では、保育士としての日常保育スキルだけでなく、教育カリキュラムへの理解や計画力も求められます。また、職員同士の連携が重要な場面が多いため、チームワークを大切にしてきた保育園での経験が役立つでしょう。
近年、認定こども園は施設数を大きく増やし、保育士の転職先として有力な候補のひとつになりました。保育・教育どちらにも対応できるオールラウンダーを目指す方にとって魅力的な選択肢といえます。
保育園運営会社の本社勤務
保育園運営会社の本社勤務では、現場での保育業務ではなく、園全体を支える管理業務や事務業務を担当します。勤務する会社によって仕事内容は異なりますが、スタッフのスケジュール調整、保護者向けの広報活動、行事の企画運営に必要な物品調達、保育士採用の補助などが一般的な仕事内容です。
保育士として働いた経験があれば、現場の大変さやサポート業務がどんな仕事をしてくれると心強いのかが分かります。現場の視点に立って業務を担うことで、本社勤務での仕事も評価されやすい点が魅力です。
また、パソコンスキルや書類作成の経験がある場合、それらの能力も存分に活用できます。本社勤務は、保育士としての現場経験を基に新たな視点で業界全体に貢献したい方におすすめの職場です。
ベビーシッター
ベビーシッターは、家庭での個別保育を中心とした仕事で、保護者の外出時や一時的なサポートを行います。具体的には、依頼者の家へ訪問し、子どもの安全を確保しながら遊びや食事の補助、寝かしつけなどを行うのが主な業務です。子どもを預かる場所や環境が毎回異なるため、保育士時代の経験を活かしつつも、より家庭的でその場に応じた対応力が求められるでしょう。
個々の家庭のニーズに応じて業務内容が変わるため、保護者と密にコミュニケーションを取ったり、臨機応変に対応したりと、イレギュラーな状況に合わせられる柔軟さも欠かせません。
保育園とベビーシッターの違いは、アットホームな環境で子どもとじっくり向き合う時間が確保できることです。フリーランスで働くことも可能で、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能な点も魅力となっています。
保育ママ
保育ママとは、小規模な環境で少人数の子どもを預かり保育を行う仕事です。自営業として働くケースが多く、ベビーシッターとは異なり、一般的に保育士自身の自宅で子どもを預かります。また、場合によっては保育士資格や自治体の認可が必要です。
少人数の子どもを対象とするため、家庭的な雰囲気の中で一人ひとりに寄り添ったきめ細かな保育ができます。
また、保護者と密接に関わりながら、信頼関係を築いていけるのも保育ママの魅力です。子どもたちの生活リズムを整え、身の回りの自立やコミュニケーションを育む保育ママの存在は、保護者にとって心強い存在になるでしょう。
働き方の自由度が高いため、自分のペースで保育を続けたい方に適しています。
インターナショナルプリスクール
英語が得意な方は、国際的な環境で子どもたちの成長を支援できるインターナショナルプリスクールでの仕事がおすすめです。言語や文化が異なっていても、子どもへの接し方や年齢に応じた発達の理解がある保育士の経験が役立ちます。
子どもたちが楽しみながら英語を学べるように、保育園とは違ったアプローチや工夫が必要になります。保護者も国際的なバックグラウンドを持つことが多いため、信頼関係を築くためには柔軟で積極的なコミュニケーションが求められるでしょう。
言語を通じたコミュニケーション力や多文化への理解が求められるため、語学力を磨きたい方にとって非常にやりがいのある職場です。
【異業種転職】保育士の経験が活かせる転職先
保育や幼児教育の分野以外でも、子どもと関わる経験が活かせる転職先はたくさんあります。
テーマパークのスタッフ
テーマパークのスタッフは、アトラクションの運営やイベントのサポート、来園者への案内業務などを通じて、子どもから大人まで幅広い層に楽しい時間を提供しています。笑顔で子どもへ声をかけるのは、保育士が得意とするスキルのひとつ。わくわくした気持ちを引き出せる人材は、テーマパークとしても貴重な存在です。
また、突発的なトラブルへの柔軟な対応力や、安全管理スキルは、アトラクションの確認やイベントの際にとても役立ちます。元保育士のもつ素質は、特にファミリー層の来園者に安心感と親しみを感じてもらえるでしょう。たくさんの来園者に丁寧に関われる方には、ぴったりの転職先です。
子ども服ショップの接客
子ども服ショップのスタッフは、来店した親子に対して商品を提案し、試着や購入をサポートする仕事です。子どもが動きやすい服や、成長に合わせたサイズ選びのアドバイスができるのは、保育士経験者ならではの強みとなるでしょう。また、保護者の忙しさや大変さを理解し、スムーズな接客を心がけることで、信頼感を得やすくなります。
試着に気が向かない子どもを楽しませたり、自分で脱ぎ着する方法を伝えたりと、子どもに直接対応する際にも保育士経験が役立ちます。接客業で求められるコミュニケーション力や観察力を活かしながら、親子が心地よく買い物を楽しめるサポートには大きなやりがいを感じられるでしょう。
病院・美容室の託児
子育て中の方も安心して利用できるように託児所を設けている病院や美容室では、子どもを安全に見守るスタッフが必要です。実際の求人では、保育士資格や幼稚園教諭免許が必須ではないケースが多いですが、資格を持っている方や保育士経験は転職時に優遇されやすいでしょう。
病院や美容室の託児を利用する子どもは、保護者と離れることに慣れていないことも多く、不安な気持ちになりがちです。また、託児は保育と比べて関わる時間が短いため、限られた時間で関係を築かなければいけません。子どもの不安を和らげ、保護者には安心して治療やリフレッシュを行える環境を提供することが大切です。
子ども用品・保育教材の営業
子ども用品の営業は、保育園や幼稚園に向けて玩具や保育教材、保育士用エプロンなどの商品を提案する仕事です。営業活動をするにあたり、現場のニーズや小さな困りごとを知っている元保育士の経験が大きな強みとなります。保育の経験者ならではの視点で施設の担当者との信頼関係を築くことができるでしょう。
商品の特徴をプレゼンする際にも、実際の保育でどう使うのか、具体的な提案やアドバイスができます。営業成績がモチベーションになるのはもちろん、子どもたちの成長を間接的に支えることでやりがいを感じられる職業です。
【異業種転職】保育士が自己PRで書けること
保育士ならではの経験やスキルは、異業種への転職でも大きな武器となります。一般的な職業のなかでも、保育士の強みとなる部分を5つご紹介しますので、自己PRの際に参考にしてみてくださいね。
コミュニケーション能力
保育士は子どもだけでなく、保護者や同僚などと密にコミュニケーションを取る仕事です。「相手の気持ちを汲み取りながら話す力」や「異なる立場の人と信頼関係を築く力」は十分なアピールポイントになります。たとえば、「さまざまなタイプや考え方を持つ保護者とも円滑な関係を築き、子どもの成長を一緒に見守ってきた」といった具体例を加え、説得力をアップさせる伝え方がおすすめです。
臨機応変な対応力
子どもは予想外の行動を取ることも多く、保育の現場では常に柔軟な対応が求められます。「突然の出来事にも冷静に対応できる力」や「その場の状況に応じて臨機応変に行動できる能力」は、異業種でも評価されやすいスキルです。自己PRでは、「緊急時に複数の子どもの安全を確保しつつ、保護者への対応も迅速に行った経験」など、実際のエピソードも一緒に伝えてみましょう。
チームワーク力
保育士は栄養士、看護師をはじめ、保育以外の関係機関のスタッフなどと連携して仕事を進めることもめずらしくありません。「スタッフ間の意見調整をスムーズに行った実績」や「子どもを通じてどのような連携をしてきたのか」という経験は、協調性やリーダーシップとして評価されるでしょう。
子どもの成長を支える忍耐力
言葉や体の使い方が未熟な子どもたちに寄り添い成長を見守るには、強い責任感と忍耐力が必要です。投げ出さずに丁寧に伝えたり、できたことを見逃さずに褒めたりと、子どもとの関わりに責任を持つ姿勢は、保育業界に限らず重宝されるスキルといえます。
マルチタスク力
保育士は保育以外にも書類作成やスケジュール管理、行事準備など幅広い業務を行っています。一見保育とは関係のないと思える、事務や営業職などへの転職でも力になってくれるでしょう。「複数の業務を、優先順位をつけながら進められるスキル」としてアピールできます。
【異業種転職】志望動機の記載例
保育士から異業種へ転職する際、応募先の企業に対し「なぜその職種や会社に興味を持ったのか」「これまでの経験をどう活かしたいのか」を志望動機の中でいかに伝えられるかがポイントです。記載例として、5つご紹介します。
1.教育・支援系職種の場合(放課後等デイサービスなど)
志望動機例:
「子どもたち一人ひとりの成長や個性を見守るなかで、発達に支援が必要な子どもたちに対する専門的なサポートの重要性を実感しました。御社は、子どもたちの特性に合わせた支援を行うと同時に、保護者へのフォローにも力を入れており、その姿勢に大変共感しております。子どもたちとご家族が安心して成長できる環境づくりに貢献したいと思っています。」
2.事務系職種の場合(保育園運営会社のバックオフィスなど)
志望動機例:
「保育現場で働いてみて、保育園運営にはバックオフィスの役割がとても大きいと感じています。バックオフィスのサポートで実際に業務負担の軽減を実感し、現場を支える業務にも興味が湧き、より広い視野で保育施設全体に貢献したいと思うようになりました。これまでの経験を新たな形で活かし、業務の効率化や現場支援に取り組みたいと考えています。」
3. 接客系職種の場合(おもちゃの販売など)
志望動機例:
「保育士として働くなかで、子どもや保護者が安心しておもちゃを選ぶ大切さを感じてきました。保育の現場で得た経験を活かし、御社の商品を通じて、より多くの親子に役立つ情報や提案を届けたいと考えています。また、商品の特徴や魅力を正しく伝え、信頼されるスタッフを目指します」
【異業種転職】職務経歴書はどうやって書けばいいの?
異業種への転職を目指す保育士にとって、職務経歴書はこれまでの経験を新たな職種にどう活かせるかをアピールする重要なツールです。ただ業務内容を書くのではなく、「どんなスキルを活かし、どんな結果を出したのか」分かりやすく伝える必要があります。ただし、異業種への転職の場合は、あまりに専門的な内容ではイメージしにくいため、一般的に想像しやすいエピソードを記載するのがおすすめです。
職務経歴書のコツ1:業務内容を具体的に記載する
業務内容は、異業種の方にも伝わる言葉で詳しく説明しましょう。
<例>
「保育業務を行っていました」→「2歳児クラスの担任として、8名の子どもを担当。日常的な保育のほか、行事の企画運営や保護者への対応を行い、子ども一人ひとりの成長をサポートしました。」
クラス規模や役割を具体的に記載すると、イメージしやすい親切な職務経歴書になります。
職務経歴書のコツ2:実績や成果を数字で示す
「実績」や「成果」を数字で示すと、より具体性が増します。
<例>
「行事運営では、年間5つのイベントを企画・進行しました。保護者との満足度調査でも90%以上の良い評価でした」
「新人スタッフの育成担当として、2名の新規保育士に1年間指導してきました」
数字を交えることで、仕事の規模や取り組みの結果が採用担当者に伝わりやすくなります。
職務経歴書のコツ3:異業種に活かせるスキルを強調する
保育士ならではのスキルを、異業種でどう活かせるか記載しましょう。
<例>
「子どもへの関わり方に一貫性を持てるように、保護者や同僚と連携をとり、子どもの様子を共有してきました。今後も顧客やチームメンバーとの信頼関係を築く際に役立つと考えています。」
上記のように、身に付けた強みを異業種での仕事に結びつけながらアピールするとより効果的です。
保育士から異業種まとめ
保育士の持つスキルは異業種への転職でも強みになるものばかりです。
しかし、異業種転職を進める前に一度、「子どもと関わる仕事を離れたいか」を振り返ってみましょう。「子どもはかわいいけれど、今の職場に不満がある」という場合、保育業界のまま環境を変えることで不満が解消される可能性があります。
どのような働き方をしたいのかじっくりと考え、自分らしい最適なキャリアを選んでくださいね。