求人倍率は、仕事探しをするうえで役立つ情報のひとつです。
地域によっても大きく変わり、仕事をしたい保育士に対して施設が求めている保育士の割合が分かります。
今回は都道府県別の求人倍率から過去の推移、自分に合った求人の見極め方までを解説します。
目次
保育士の求人倍率とは

求人倍率とは、求職者1人あたり何件の求人があるかを示す数字で「有効求人倍率」ともよばれます。計算式は以下のとおりです。
求人数÷求職者数=有効求人倍率
つまり、求職者1人に対して2件の求人があれば、求人倍率は2.0倍という計算になります。
1.0倍を超えていれば求人の数よりも求職者が多い「売り手市場」の状態、1.0倍未満なら求人の数よりも求職者が少ない「買い手市場」とみなされるのが一般的です。
保育士の求人倍率は、全国平均で見ても他業種に比べて比較的高い水準だといわれます。実際のところはどうなのか、全体の求人倍率と保育士だけの求人倍率を見比べてみましょう。
<令和6年(2024)1月時点の有効求人倍率>
全職種の有効求人倍率 | 1.35 |
保育士の有効求人倍率 | 3.54 |
参考)子ども家庭庁「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」
上記の表では、保育士の求人倍率は全職種を大きく上回っていることが分かります。保育士の場合は求職者1人に対し、およそ3.5倍の求人数があるということです。
保育士が求人倍率を知るメリット
求人倍率は、転職や就職活動を進めるときの判断材料のひとつになります。
働きたい地域の求人倍率が高いなら、多くの求人から自分に合う職場を選べる環境にあると考えられるでしょう。人手不足を解消するために給与や福利厚生を手厚くする園が増えている可能性もあります。
反対に、求人倍率が低い地域なら、求職者同士の競争が激しくなることをあらかじめ意識しておく必要があります。人気のある施設や待遇が良い求人などに応募者が集まり、すぐに採用枠が埋まってしまうこともめずらしくありません。
また、求人倍率をチェックすることで地域差を把握しやすいのもメリットです。これから資格取得を考えている人や、住んでいる場所から離れた地域への転職を検討している保育士にとっては「どの場所ならニーズが高いのか」を知るきっかけにもなるでしょう。
保育士の都道府県別求人倍率
ここからは、求人倍率を都道府県別で見てみましょう。
<令和6年(2024)1月時点の有効求人倍率>
都道府県名 | 有効求職者数 | 有効求人数 | 有効求人倍率 |
全国 | 13,819 | 17,973 | 3.54 |
北海道 | 692 | 1,575 | 2.28 |
青森県 | 207 | 345 | 1.67 |
岩手県 | 247 | 423 | 1.71 |
宮城県 | 262 | 947 | 3.61 |
秋田県 | 112 | 204 | 1.82 |
山形県 | 136 | 274 | 2.01 |
福島県 | 193 | 617 | 3.20 |
茨城県 | 210 | 994 | 4.73 |
栃木県 | 217 | 1,715 | 7.90 |
群馬県 | 207 | 443 | 2.14 |
埼玉県 | 657 | 2,645 | 4.03 |
千葉県 | 570 | 1,539 | 2.70 |
東京都 | 1,568 | 6,363 | 4.06 |
神奈川県 | 763 | 2,283 | 2.99 |
新潟県 | 187 | 497 | 2.66 |
富山県 | 93 | 285 | 3.06 |
石川県 | 99 | 326 | 3.29 |
福井県 | 69 | 285 | 4.13 |
山梨県 | 116 | 359 | 3.09 |
長野県 | 216 | 604 | 2.80 |
岐阜県 | 183 | 728 | 3.98 |
静岡県 | 264 | 1,390 | 5.27 |
愛知県 | 510 | 2,232 | 4.38 |
三重県 | 165 | 469 | 2.84 |
滋賀県 | 156 | 770 | 4.94 |
京都府 | 301 | 892 | 2.96 |
大阪府 | 853 | 3,640 | 4.27 |
兵庫県 | 569 | 1,895 | 3.33 |
奈良県 | 139 | 674 | 4.85 |
和歌山県 | 84 | 348 | 4.14 |
鳥取県 | 85 | 238 | 2.80 |
島根県 | 99 | 214 | 2.16 |
岡山県 | 232 | 1,249 | 5.38 |
広島県 | 265 | 1,735 | 6.55 |
山口県 | 197 | 378 | 1.92 |
徳島県 | 71 | 345 | 4.86 |
香川県 | 122 | 511 | 4.19 |
愛媛県 | 155 | 668 | 4.31 |
高知県 | 138 | 225 | 1.63 |
福岡県 | 624 | 2,218 | 3.55 |
佐賀県 | 153 | 449 | 2.93 |
長崎県 | 209 | 570 | 2.73 |
熊本県 | 304 | 817 | 2.69 |
大分県 | 213 | 504 | 2.37 |
宮崎県 | 200 | 485 | 2.43 |
鹿児島県 | 367 | 1,157 | 3.15 |
沖縄県 | 340 | 1,327 | 3.90 |
参考)子ども家庭庁「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」
資料の数値によると、東京や大阪などの都市部で、高い求人倍率となっている傾向がみられます。大都市では家賃や物価が高い地域も多いため、保育士を確保するために、自治体独自の家賃補助や補助金を設けている場合も多いです。
一方、地方であっても意外に求人倍率が高くなるケースもあります。保育施設や子ども人数が比較的少なくても、都市部から離れている場合や、地域の事情によっては保育士の確保に苦労していることも少なくありません。求人倍率をみると、その地域で保育士がどのくらい求められているのかが分かりますね。
ただし「求人倍率が高い」ことは必ずしも「求人数が多い」わけではないことに注意しましょう。
たとえば、令和6年(2025)1月時点で一番求人倍率が高いのは栃木県の7.90倍ですが、求人数でみるといくつかの都道府県が栃木県の1,715件を上回っています。反対に求人倍率が低くても、人口の多い都市部は比較的求人数が多い状況であるといえるでしょう。
保育士の求人倍率はあくまでも目安ですが、地域ごとの需要と供給を知るための指標となります。人口や物価、利便性など、そのほかの情報と合わせながら、参考材料のひとつとして役立てるのがおすすめです。
求人倍率の推移とその訳は?
過去5年間の求人倍率の推移から、保育士がどのくらい求められているのか見てみましょう。
年 | 保育士の有効求人倍率 |
令和2年(2020) | 3.86 |
令和3年(2021) | 2.94 |
令和4年(2022) | 2.93 |
令和5年(2023) | 3.16 |
令和6年(2024) | 3.54 |
参考)子ども家庭庁「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」
※各年度のもっとも高い月の数値を記載。
上記の期間中、全職種の求人倍率は2.0倍を一度も上回っていません。時期によって波はありますが、保育士の求人倍率は高い水準で推移していることが分かります。
保育士の求人倍率が高い理由
保育士の需要が高い理由として、共働き世帯の増加や保育に対するニーズも幅広くなってきたことで、夜間保育や休日保育など、さまざまな保育施設が求められるようになってきたからだと考えられます。
求人倍率が高いということは、求職中の保育士にとって自分に合った職場を見つけるチャンスです。たくさんの求人がある状況を活かして、自分に合った職場を見つけましょう。
自分にあった求人を探すには?

選択肢が多いと「どんな求人を選べばいいのか分からない」と悩んでしまう方も少なくありません。自分の強みやライフスタイル、働き方の希望に合うかどうかもしっかり確かめながら、自分にぴったりな職場を見極めましょう。
希望条件を洗い出す
まずは「自分の働き方の優先順位」を整理してみましょう。
たとえば、給与や賞与を重視して収入アップを狙いたいのか、残業や持ち帰り仕事が少ない園でプライベートとの両立を目指したいのか、人間関係の良さを何よりも求めるのか、など人によって重視するものはさまざまです。
<希望条件の例>
- 給与や賞与
- 勤務時間や残業の少なさ
- 通勤時間やアクセス
- 行事や制作物の負担の多さ
- 人間関係や職場の雰囲気
- ICT導入や書類作成の効率化
希望条件をリストアップしていくと「妥協できる部分」や「絶対に譲れない部分」が見えてきます。優先度の高い条件がはっきりすることで、求人情報や園見学でチェックすべきポイントが自然と絞られていくでしょう。
さまざまな方法で情報収集する
現場の空気や職場の人間関係など、「求人票からでは分からないけれど、転職するうえで大切なこと」はたくさんあります。さまざまな情報源から保育園のリサーチをしておきましょう。
<情報収集の方法>
公式サイト | 写真や行事レポート、職員のコメントなどが掲載されていれば、保育方針や日常の様子を垣間見ることができます。 |
知人や先輩保育士の紹介 | 給与や残業の実態など、外部に出ない情報を得られる可能性があります。 |
ハローワークや自治体サイト | 小規模保育事業や非公開の求人など、ほかにはない地域に根付いた求人が見つかることがあります。 |
保育士専門の転職サイト・転職エージェント | 多くの保育求人を取り扱い、業界に詳しいアドバイザーに相談できるのが強みです。 |
自分の強みに合った職場を探す
職場探しでは、給与や福利厚生などの条件も大切ですが「自分の特技や好きな保育スタイル」を活かせるかどうか見極める必要があります。
たとえば、ピアノやリトミックが得意なら音楽教育に力を入れている園を選ぶと活動の幅が広がりますし、乳児保育に強い関心があるなら小規模で丁寧なかかわりを重視する園が向いているといえるでしょう。
自分に合う園を探すには、まずは自分について振り返り「得意なこと」「苦手なこと」「やってみたい保育の方向性」を考えてみましょう。そのうえで、園の保育方針や行事のスタイルとの相性について判断するのがおすすめです。
また、気になる園があれば実際に足を運び、見学や面接でスタッフのかかわり方や雰囲気を肌で感じてみましょう。「ここなら自分の強みを発揮できそうだ」と思えれば、自信を持って応募できます。
保育士の求人倍率まとめ

保育士の求人倍率は全職種に比べて高い状態が続いており、地域によっては有効求人倍率が5倍や6倍を超えるところもあります。
求人倍率は目安のひとつであり、地域によって事情は異なりますが、求人倍率が高い地域での求職活動は、仕事を探している人にとってチャンスです。どんな求人があるのか積極的に探してみましょう。
もし一人での職場探しに不安があるなら、保育士専門の転職エージェント「保育士人材バンク」に相談してみませんか?希望条件や応募書類の確認、地域の保育事情など、個人では難しい情報収集と転職サポートを受けられます。
今の職場で感じている不満や転職に関するお悩み相談でも構いません。お気軽にご相談ください。