支援を必要とする子どもに、適切な配慮でサポートする加配保育士。保育園ではどのような役割を持っていて、どんな仕事内容を担っているのでしょうか。もし、加配保育士の仕事について興味があれば、今回の記事を参考にしてみてくださいね。

加配保育士とは?

加配保育士とは、障がいを持つ子ども等に集団生活を支援するために配置された保育士のことです。かつては重度や中度の身体障がいや知的障がいの子どもが対象でしたが、近年では軽度の障がい児まで拡充され、2021(令和3)年度の受け入れ児童数は86,000人を超えています。

実施か所数と受け入れ児童数
引用)厚生労働省「厚生労働省の取組について

令和4年4月時点で、加配を担当している保育士は全国に46,720人です。上記グラフを見ると障がい児保育を実施している施設数が右肩上がりなことから、今後もますます加配保育士が必要とされるでしょう。

加配保育士の配置基準

加配保育士について国の明確な規定はありませんが、市町村ごとに補助金の有無や配置基準が設けられていることがあります。決められた配置基準を行うことで行政から加算として保育園などに費用が入る形になります。

参考:東京都「障害児支援(保育所、認定こども園、幼稚園、学童クラブ等)について

加配保育士の役割・仕事内容

加配保育士の役割・仕事内容

加配保育士は、一般的な保育士の業務に加えて、以下の役割や仕事内容を担います。

障がいの特性に合わせた支援

加配保育士のもっとも重要な役割は、子どもの障がいに合わせた適切な支援です。障がいの程度や特性は子ども一人ひとり異なるため、まずは子どもに寄り添い、「大人のサポートはどんなときに必要か」「どの程度の支援が必要か」を見極めていきます。

通常、保育園では年齢に応じた年間計画や週案などを組みますが、支援の必要な子どもに合わせた、個人(個別)カリキュラムの作成も加配保育士の大切な仕事のひとつです。カリキュラム作成を通じて加配保育士は子どもを客観的に見ることができ、障がいのある子どもも必要なサポートを受けやすくなります。

子ども全員への言葉がけで内容を理解できない場合には、そばで図を見せて伝えてあげたり、運動が苦手な子どもには、できる範囲の活動を準備して徐々に慣れてもらったりと、子どもの様子に合わせた関わりを行うのが主な仕事です。

他の園児との関係をサポート

障がいの特性や子どもの性格によっては、集団生活のなかで困りごとが起こる場面があります。例えば、衝動的に動いてしまいやすい子どもが、お友だちのおもちゃを悪気なく取ってしまうなど、細かなトラブルは日常茶飯事です。そのようなときは、加配保育士の支援が欠かせません。

「いま、〇〇くんが使っているね」と、状況を伝えてあげることでトラブルを未然に防いだり、「ほかにもあるから、これは返そうね」と解決へと導いたり、加配保育士の支援で子ども同士がやり取りを学んでいくことができます。集団生活のなかで起こるトラブルは、コミュニケーションを学ぶきっかけのひとつです。

障がいを持つ子どもには、周りの状況や人とのコミュニケーションが苦手な子おり、人との関わりを丁寧に見守る加配保育士の持つ役割は大きいといえます。

保育士や保護者、関係機関との連携

加配保育士は、子どもにもっとも寄り添い日々の保育を行いますが、すべて1人で抱える必要はありません。子どもの様子や悩みは、クラス担任をはじめ、園全体で共有しながらサポートすることが望ましいでしょう。

保護者からの相談や、気持ちのケアを請け負う場合もあります。他の保育士よりも保護者と密な関係を築くことになるでしょう。

また、保育園にもよりますが、保健師や放課後デイサービス(児童発達支援)などの関係機関とのやり取りで対応する場合もあります。関係機関との連携は、保育園内だけでなく、包括的に子どもをサポートしていくために様々な連携が必要になる場合があります。

加配保育士の給料は?

加配保育士の給与は、一般の保育士と同水準です。地域によって平均給与は異なりますが、月給20万円~25万円前後が目安でしょう。

また、加配の対象となる子どもの人数は毎年異なるため、必要な加配保育士も年度ごとに異なります。そのため、加配保育士はパートや契約社員といった非正規雇用のケースも多くみられるのが特徴です。時給の相場も、一般的な保育士と同じくらいの水準でしょう。

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加配保育士のなり方

加配保育士のなり方

加配保育士になるには、他の保育士と同じく保育士資格が必要です。

保育士資格を取得する方法は「保育士の養成学校を卒業する」か「保育士試験に合格する」かのどちらかですが、いずれもカリキュラムの中に障がい児保育についても含まれています。

つまり、保育士資格を持っていれば、加配保育士として働くことが可能です。

加配保育士の大変なこと

実際に加配保育士として働いてみると、クラス担任時では感じなかった大変さや悩みを抱えることがあります。具体的にどのような点が大変なのでしょうか。

障がいや療育についての勉強が必要

前述した通り、加配保育士には保育士資格以外に特別な資格は必要ありません。しかし、実務では障がいについての理解や高いスキルが求められる場面があります。

例えば、障がいといっても自閉症、アスペルガー症候群、視覚障がいなどさまざまな種類があり、対応も子どもによってさまざまです。まずは、その障がいの特性を知り知識を得ることからはじめる事が必要です。

障がいの基本的な知識のほかに、子どもの発達を見極めることも必要です。すべて手助けするのではなく、成長を促すためにあえて見守ったり「どうしたらいいかな?」と聞いてみたりと、その子に合った関わりが必要です。成長に合わせて、配慮する内容や度合いを調整することもあるでしょう。

子どもへの適切なサポート方法は、保育士資格を取得するカリキュラムだけで身に付けるのは難しいでしょう。現場経験から学ぶことはもちろん、専門書を読んだり、講習を受けたりして勉強する必要があります。

プレッシャーやストレスを抱えやすい

しっかりと考えたうえで子どもをサポートしていても、常に上手くいくとは限りません。「昨日はスムーズだったのに、なんだか今日はうまくいかない」ということもしばしばです。また、思うように信頼関係を築けず、困ってしまうこともあります。

障がいのある子どもへの対応は、保育のプロである保育士でも悩む場面があるでしょう。

真面目な方ほど「自分で何とかしなきゃ」と抱え込みがちです。しかし、そのような時ほど悩みが大きくなる前に、同僚や先輩保育士に相談し、さまざまな意見を求めてみましょう。話すだけで気持ちの整理ができることもありますし、思わぬ解決策が見つかるかもしれません。

加配保育士のやりがい(メリット)

加配保育士のやりがい(メリット)

子どもへの関わりで大変なことも多い加配保育士ですが、どのようなやりがいを得られるのでしょうか。とくに大きなやりがいやメリットを2つご紹介します。

子どもにじっくり向き合える

目の前の子どもとじっくり向き合えるのも、加配保育士のやりがいのひとつです。

クラス全体を見る保育士の場合は、常に複数の子どもを同時に保育しています。個別の対応をしながらも全体への声掛けをすることもしばしばあります。

反面、加配保育士が対応するのは、1人もしくは2人前後の場面が多く、子どもの様子に合わせて手厚く対応ができやすいといえます。気持ちを言葉にするまでゆっくり関わったり、やりたい遊びをとことん繰り返したりと、子どものペースに合わせた関わりができるのが大きなメリットです。

保育士としてのスキルがアップする

加配保育士として働くと、「子どもの様子を見極める目」と「対応力」が上がります。

例えば、絵本の読み聞かせの時間に部屋から出て行ってしまう子どもに、座るように伝えるのではなく、「どうして部屋から出て行ってしまうのか」をまず考えられるようになります。じっと座るのが苦手なのか、絵本の絵柄が苦手なのか、直前に起きたトラブルで気持ちが落ち着かないのか、座れない行動ひとつにも、さまざまな背景が考えられます。背景を見極められるようになれば、子どもにより適した声掛けと対応が可能です。

子ども一人ひとりに合わせた関わりが大切なのは、障がいの有無に関係なく、どの子どもに対しても同じです。「子どもの様子を見極める目」と「対応力」が上がれば、保育士として大きくスキルアップできるでしょう。

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加配保育士に向いている人

最後に、加配保育士に向いている人のタイプを解説します。誰にでもできる仕事ではないからこそ、自分に向いていると感じている方は、ぜひ加配保育士としてスキルアップに挑んでみましょう。

障がいについての勉強を続けられる人

障がいについて学び続けられる方は、加配保育士に向いています。

同じ診断名がついていても、実際の様子は子どもによって異なります。そのため、保育園や自治体で行っている研修会やセミナーに積極的に参加し、具体的な支援方法を学び続けることが大切です。

障がいの子どもへの対応は確実な前例が作れないため、「Aくんには適している関わりが、Bくんには適していない」ということも起こり得ます。

知識を学びつつ、保育現場では試行錯誤を繰り返し、子どもや障がいについての理解や知識を学び続けることができる方が向いているでしょう。

小さな変化を見つけるのが得意な人

表情や行動の小さな変化を見逃さない方も、加配保育士に向いています。

1人の子どもにじっくり関われるのが、加配保育士の強みです。普段の保育では見逃してしまいそうな、「気持ちの切り替えが昨日より早かった」「靴下を片方だけ自分ではいた」など、小さな変化を見つけて子どもと一緒によろこべる方は、加配保育士としての楽しさを見出せるでしょう。

見つけた小さな変化は、保護者とも喜びを共有できます。子どもの成長に不安が強い保護者には、「できていない部分ばかり目についてしまう」という方も少なくありません。子どもの成長を見逃さない加配保育士は、保護者にとっても心強い存在です。

加配保育士のまとめ

加配保育士は障がいを持つ子どもに寄り添い、日々の生活をサポートする仕事です。知識やスキルを必要とするため大変なことも多いですが、やりがいも大きく、保育士としてのスキルアップを図れます。子どもの成長にじっくり関わって行きたい方は、ぜひチャレンジしてみてくださいね。