保育園で発達障がいを疑われる子はいませんか?

問題行動があると、保育士としてもどう対応すべきか迷ってしまいますよね。

この記事では、「発達障がいかも?」 と思われる子どもへの正しい対応方法や発達障がいかどうかのチェックリストをご紹介します。

目次

この記事でわかること【発達障がいの子供への対応方法など】

「目が合わず、うまくコミュニケーションをとれずに心配な子がいる」

「いつも友達を叩いてしまったりトラブルになってしまったりする子がいる」

保育士として働いていると、そのような”気になる子”にあたるケースは少なくないと思います。小さな子どもの場合、ある程度は個性の範囲といえますが、発達障がいが疑われるケースもあります。

ただ、発達障がいの早期発見はむずかしい場合があり、「個性の範囲なのか?」「障がいなのか?」を見極めるのは簡単ではありません。早まって親御さんに伝えてしまうと、余計な心配をかけることにもなりかねないですよね。

このような状況から、見過ごされることも多い発達障がい。しかし、発達障がいは早期療育が大切ともいわれています。発見が遅くなると、子どもが周囲との関係から自信をなくしていき、鬱(うつ)や自傷などの二次障がいにもつながりかねません。

よって、発達障がいの兆候がみられた場合、早めの相談や対応が非常に重要といえます。

この記事では、発達障がいが疑われる場合のチェックリストや、保育士がとるべき対応をご紹介します。保護者への上手な伝え方もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

発達障がいとは?

発達障がいとは、生まれつきの脳機能の偏りによる障がいを指します。

正式には発達障がいという診断名はなく、脳機能の偏りの傾向によって、自閉症や学習障がいなどいくつかの障がい名に分類されます。

3歳半ごろから周囲との差が目立つようになることが多く、主に集団行動において何らかの問題が生じることで発見され、医師の診断により発達障がいと特定されます。

なお、生まれつきの特性のため、親や保育士の育て方が影響するものではありません

文部科学省の調査によると、小学校1年生時点で、発達障がいの可能性のある生徒は約10人に1人程度いるのではないかといわれています。

保育園や幼稚園に通う年代では発達のバラつきが大きいため特性がわかりにくいですが、年少(3歳)~年長(5歳)くらいで診断がつくことが多くなっています。

障がいというとマイナスのイメージがありますが、特定の分野で能力を発揮することも多いのが発達障がいの特徴。そのため、早いうちから適切な発達障がい児支援や療育を行うことで、その子の抱える生きにくさを軽減しながら、能力を伸ばしていくことができます。

参考サイト:文部科学省 5.発達障がいについて

保育園や幼稚園に通う子どもにみられる発達障がいの種類

前述したように、発達障がいは脳機能に偏りをもつ症状を一括りにした呼び名であり、正式な診断では、傾向によっていくつかの障がいに分類されます

※世界的な診断基準となる「DSM-5」により診断

発達障がいとは?発達障がいの種類【保育士人材バンク】
発達障がいとは?発達障がいの種類【保育士人材バンク】

障がいによってあらわれる行動特徴も異なるため、保育士は事前に発達障がいの種類を把握しておくことが重要です。

以下に、発達障がいの種類をご紹介します。

発達障がいの種類①ASD(自閉症スペクトラム症)】

<ASD(自閉症スペクトラム症)とは?>
  • 対人関係が苦手(気持ちがわからない)
  • だわりが強い
  • 100人に1人程度といわれる
  • 男の子に多い(女の子の2~4倍ほどといわれる)

ASD(自閉症スペクトラム症)は、人の感情を読み取ることを苦手としていたり、特定のものに強いこだわりをもっていたりすることが多い発達障がいです。

早ければ1歳半ごろから、言葉の遅れによって特定されることが多いですが、言葉の遅れを伴わないケースもあります(※)

対人関係の苦手さやこだわりの強さなどは共通した特徴ですが、症状のあらわれ方は個人によってバラつきがあります。

※以前は言葉の遅れを伴わないものをアスペルガー症候群と分けて診断されていましたが、2013年にアメリカ精神医学会がDSM-5(障がいの診断基準)を発表して以降、自閉スペクトラム症(ASD)としてまとめて表記されるようになりました

発達障がいの種類②ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障がい)

<ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障がい)とは?>
  • 不注意、多動、衝動性などの行動特性がある
  • 学童期の子どもの100人に3~7人ほどといわれる
  • 男の子に多い(女の子の3~5倍ほどといわれる)

ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障がい)※は、不注意、多動、衝動性などの行動特性がみられる発達障がいです。

不注意・多動・衝動性のどの特性があらわれるかには個人差があり、どれか1つの特性が強くあらわれるケースや、混在しているケースもあります。

多動や衝動性が強くあらわれる場合、集団で注意されることも多く、問題行動から診断につながるケースがよくあります。一方、不注意優勢型の場合は集団の中で目立たないことも多く、見過ごされがちになります。

なお、多動症状は成長に伴い落ち着いていくことが多いといわれます。一方、不注意や衝動性は約半数が青年期まで続き、さらにその半数が成人になっても症状が残るとされています。

※2013年以降、「注意欠陥・多動性障がい」という表記から「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障がい」という表記に変わりました

発達障がいの種類③LD(学習障がい)】

<LD(学習障がい)とは?>
  • 読み書きや計算など特定の分野に苦手さがある
  • 知的な遅れはない
  • 小学校で1クラスに1人程度といわれる

LD(学習障がい)は、知的な遅れがないのにもかかわらず、読み書きなど特定の分野に著しい苦手さがみられる発達障がいです。

保育園や幼稚園では発見されることは少なく、小学校低学年ごろに学習の遅れから診断がつくケースが多くなっています。

苦手分野によって、読字障がい(ディスレクシア)、書字障がい(ディスグラフィア)、算数障がい(ディスカリキュリア)に分類されます。

発達障がいの種類④DCD(発達性協調運動障がい)】

<DCD(発達性協調運動障がい)とは?>
  • 協調運動に苦手さがある
  • 不器用さが異常に目立つ
  • 人口の5~6%ほどといわれる

DCD(発達性協調運動障がい)とは、運動や手先を使う動作など、協調運動※に極端な苦手さがみられる障がいです。

一般的な発達障がいとは分けて考えられることが多いですが、生まれつきの脳機能の偏りによる障がいという意味で、神経発達障がいに分類されます。

※協調運動:「目と手(例:ハサミを使う)」など複数の身体機能を同時に動かす運動のこと

不器用な子として見過ごされるケースも多いですが、練習しても上達しにくいのが特徴です。他の発達障がいと合併してみられるケースも多くなっています。

発達障がいの種類⑤コミュニケーション障がい】

こちらも発達障がいとは分けて考えられることが多いですが、言語によるコミュニケーションに問題がある場合、コミュニケーション障がいと診断されることがあります。

世界的な診断基準となっているアメリカ精神医学会のDSM-5では、コミュニケーション障がい群として以下3つの言語的障がいが記載されています。

コミュニケーション障がい群

言語症/言語障がい:言語の習得や使用に困難さがある

語音症/語音障がい:思ったことをうまく言葉にできない

小児期発症流暢症(吃音)/小児期発症流暢障がい(吃音):言葉を流暢に話すことが

これらは話すことに著しい困難さがみられる場合に診断されることのある障がい名です。

このうち、吃音(きつおん)は「あ、あ、あのね」「あーーのね、」など言葉のつまりや伸ばしがみられる症状ですが、子どもの場合は発達性吃音(はったつせいきつおん)と呼ばれ、自然に消失していくことも多いといわれています。

あわせて知りたい症状・用語

発達障がいに関連する用語として、以下も覚えておくといいでしょう。

知っておくことで、障がいの判断材料のひとつとなります。

<癇癪(かんしゃく・パニック)>

感情のコントロールができず、泣いたり暴れたりといった感情の興奮が止まらなくなってしまう状態です。

感情コントロールが苦手なADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障がい)の子どもによくみられます。

<感覚過敏>

音、光、触感など、特定の感覚に過敏さがみられる状態です。発達障がいでは脳機能の偏りにより、感覚の過敏さがみられることがよくあります。

(例:うるさい音が苦手、食べ物の好き嫌いが多いなど)

<グレーゾーン>

発達障がいには診断のための基準があり、ギリギリ基準に満たない子どもをグレーゾーンと呼ぶことがあります。

診断名はつかなくとも何らかの困難さを感じているケースが少なくありません。

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この子、発達障がいかも?気になる行動チェックリスト

ここまでご紹介したように、脳機能の偏りによって起こる障がいはいくつかありますが、障がいによって診断がつく時期が異なります

保育園や幼稚園では、特に「ASD(自閉症スペクトラム症)」や「ADHD(注意欠如・多動性障がい)」の特性が、子どもの問題行動としてあらわれることが多く、保育士には特性の理解と早期発見・相談が求められます。

子どもの二次障がいを防ぐためにも、違和感を感じたときには見過ごさずに対処するようにしましょう。

参考として、以下に、発達障がいのチェックリストをご紹介します。

ASD(自閉症スペクトラム症)

以下の項目に多く当てはまる場合、ASD(自閉症スペクトラム症)の可能性があります。

ASD(自閉症スペクトラム症)の可能性
  • 視線が合わない
  • 名前を呼んでも振り向かない
  • 言葉の遅れがみられる
  • 指さしをしない
  • 人まねをしない
  • ごっこ遊びをしない
  • 友達に興味を示さない
  • 一人遊びが多い
  • 勝ち負けや順番、決まりなどに異常にこだわる
  • 人の言葉をオウム返しにする
  • 欲しいものがあると言葉を使わず人の手を引いて示す
  • 見通しの立たない状況(いつもと違う流れ)が苦手
  • 言葉を額面どおりにとらえる(比喩や裏の意味が理解できない)
  • 表情が乏しい
  • 会話が一方的
  • 行事に参加できない
  • 活動の切り替えが苦手
  • 人見知りがない(泣かない、帰りたがらない)
  • 食べ物の好き嫌いが強い
  • 光や音、触覚などに過敏さがある

自閉傾向があると、ひたすらおもちゃをきれいに並べていくなど、特定の遊びに熱中することが多く、切り替えが苦手で全体での活動に参加できないこともよくあります。

また、保育園や幼稚園では、運動会や発表会、遠足などの「行事」が多数ありますが、自閉傾向のある子どもは見通しの立たない状況が苦手なため、そうした「いつもと違う行事」がとても苦手です。

苦手な状況では、不安で泣いたりパニックになってしまったり、その場から逃走したりということが起こります。

さらに、ASD傾向がある子は勝ち負けやルールにこだわりが強いケースも多く、勝負に負けたり誰かが順番やルールを破ったりすると、泣いたり暴れたりして感情をコントロールできなくなることがよくみられます。

ただし、泣く泣かないには個人差があり、ずっと泣き続けて泣き止まないような子がいる一方、人への興味が薄いために当園の初日から泣かずに遊び続けるような子もいます。泣く泣かないだけでなく、こだわりの強さや人への興味などから、判断するといいでしょう。

ADHD(注意欠如・多動性障がい)

以下の項目に多く当てはまる場合、ADHD(注意欠如・多動性障がい)「多動・衝動優勢型」の可能性があります。

ADHD(注意欠如・多動性障がい)の「多動・衝動優勢型」の可能性
  • 座っていなければならない場面でも立ち歩いてしまう
  • 食事中もじっとしていられない
  • 友達のおもちゃを取ってしまってトラブルになることが多い
  • 突然道路に飛び出すなどの危険な行動が多い
  • 思い通りにならないと手が出たり癇癪(かんしゃく)を起こしたりする
  • 空気を読まずにしゃべりすぎる
  • 順番を待てない

以下の項目に多く当てはまる場合、ADHD(注意欠如・多動性障がい)の「不注意優勢型」の可能性があります。

ADHD(注意欠如・多動性障がい)の「不注意優勢型」の可能性
  • 何度言っても約束やルールを忘れてしまう
  • ぼーっとしていて話を聞いていないことがよくある
  • 気が散りやすく集中力が続かない
  • やるべきことをやり遂げられない
  • 話しかけても聞いていないように見える
  • 整理整頓が苦手

ADHD、特に多動や衝動性の傾向があると、保育園や幼稚園でも集団に馴染めない行動が目立ちます

衝動的で我慢が苦手な子の場合、手が出てしまったり順番が守れなかったりと、トラブルに発展するケースが少なくありません。

保育士は、生まれつきの特性がそうした行動につながっていることを理解し、その子が自信をなくしてしまわないような対応をとることが重要です。

また、不注意傾向が強いタイプは幼少期には見過ごされることも多いため、子どもと関わる保育士は、少しでもおかしいと感じたときには周囲への情報共有や相談を行うことが大切です。

LD(学習障がい)

LD(学習障がい)は小学校以降に発見されることの多い発達障がいで、1~2学年ほど学力の遅れがみられるのが診断の目安です。

そのため、以下のチェックリストは保育園や幼稚園の年代では参考程度に捉えてください。

以下の項目に多く当てはまる場合、LD(学習障がい)の「読字障がい」の可能性があります。

LD(学習障がい)「読字障がい」の可能性
  • 文字を読めない、読むのが極端に遅い
  • 読んでいる文字の意味を理解できない
  • 形の似ている文字を読み間違える

以下の項目に多く当てはまる場合、LD(学習障がい)の「書字障がい」の可能性があります。

□字を書くときにバランスをとれない
□行やマスに沿って書けない
□長い文章を書くのが苦手
□考えたことを文字にまとめられない

以下の項目に多く当てはまる場合、LD(学習障がい)の「算数障がい」の可能性があります。

LD(学習障がい)の「算数障がい」の可能性
  • 数の概念が理解できない(大小がわからない)
  • 数を数えるのが苦手
  • 計算ができない
  • 時計が読めない

DCD(発達性協調運動障がい)

以下の項目に多く当てはまる場合、DCD(発達性協調運動障がい)の可能性があります。

DCD(発達性協調運動障がい)の可能性
  • ハイハイをあまりしない
  • 転んだときに手がでない(ケガをしやすい)
  • 箸(はし)やハサミが使えない
  • 段差でよくつまづく
  • 運動が極端に苦手
  • よく物を落とす
  • 字や絵を書くのが苦手(手先をコントロールできない)

日常生活に支障をきたすほど不器用な場合、脳機能の偏りが原因のことがあります。心配な場合は専門機関に相談してみましょう。

コミュニケーション障がい

以下の項目に多く当てはまる場合、吃音(きつおん)や言語障がい、構音障がいの可能性があります。

吃音(きつおん)や言語障がい、構音障がいの可能性
  • 話し言葉のリズムがおかしい
  • 話し言葉のリズムがおかしい
  • 発音が不明瞭
  • 年齢相応の発音ができない
  • 思ったことを言葉にできない
  • 「あ、あ、あのね」など、言葉の始めで詰まってしまう
  • 「あーーのね」など、言葉の一部を伸ばしてしまう
  • 話そうとしても言葉がでない(体がかたまることもある)

※人前や園でのみ話せなくなってしまう症状がみられる場合、「場面緘黙(ばめんかんもく・選択性緘黙ともいう)」という精神疾患の可能性もあります(DSM-5では不安症に分類)疑われる場合は専門機関に相談してみましょう

発達障がいは早期療育が大切!保育士がとるべき行動

発達障がいは、早期発見、早期療育が非常に重要です。

なぜなら、鬱(うつ)などの二次障がいの予防につながるだけでなく、特別な能力の発見やその子らしい生き方を見つけることにもつながっていくためです。

もしも発達障がいの診断を受けないまま、「問題のある子」として育っていった場合、本人も自信を失い、以下のような二次障がいにつながるケースが多々あります。

<発達障がいの二次障がい>
  • 鬱などの精神疾患
  • 不安障がい
  • 自傷行為など

また、子どもだけでなく、親にとっても診断を受けないことはマイナスになるケースが多くあります。

例えば、発達障がいとわからずに子どもが問題行動を繰り返した場合、親は「自分の育て方が悪かったのかもしれない」と自分自身を責め、精神的に追い詰められていきます。そのため、発達障がいの診断が下りたことで、実は、ほっとする親も少なくないのです。

発達障がいは必ずしもその子にとってマイナスとなる要素だけでなく、うまく特性をいかせば特別な能力を発揮することもあります。幼いうちから苦手を克服し得意を伸ばす療育を続けていくことで、その子にとって生きやすい未来につながります。

発達障がいの診断は、生まれ持った特性を前向きに受け止めるための一歩といえます。

診断がつくかつかないかの時期に子どもと接する保育士は、なるべく早く違和感に気付くこと、周囲に情報共有や相談をしていくことが、非常に重要な役目となります。

 

保育園で発達障がいが疑われるときの対応と相談先

発達障がいが疑われる場合、まずは園内での情報共有、そのあとに地域の療育施設への相談、保護者への聞き取り・報告というステップが一般的となります。

いきなり保護者へ「発達障がいかも……」と報告すると、保護者もショックを受けてしまうため、発達障がいの可能性を慎重に検討しながら、保護者へどう伝えるかも含め園内で話し合っていきましょう。

以下に、保育園や幼稚園で発達障がいが疑われる子がいた場合の適切な対応や相談先を詳しくご紹介します。

発達障がいが疑われるときに保育士がとるべき行動【保育士人材バンク】
発達障がいが疑われるときに保育士がとるべき行動【保育士人材バンク】

先輩保育士や園長などに相談する

受け持ったクラスに発達障がいが疑われる子どもがいる場合、まずは先輩保育士や保育園の園長に相談します。

保護者への対応次第では、園全体の信用問題にもつながる可能性もあるため、個人の判断は控え、必ず保育園の方針としてどう対応していくかを全体で確認していきましょう。

うまく状況を伝えられるよう、日頃から子どもの気になる行動などをメモにとっておくといいでしょう。

地域の療育施設に相談する

保育園全体で情報共有をしたあとは、一度、地域の療育施設へ相談することをおすすめします。

保育園側の決めつけで発達障がいだと思って親に伝えたら、指摘が違ったとなれば、大きな問題となるためです。

一般的には、地域の発達支援センターなどが相談先の候補になります。

発達障がいが疑われる場合の相談先

・地域の発達支援センター
・地域の子育て支援センター
・家庭児童相談室
・保健センター
・児童相談所など

発達支援センター(療育センターと呼ばれる場合も)には療育の専門スタッフが在籍しているため、みられる問題行動から、「発達障がいかどうか?」の判断にも相談にのってもらえます。発達障がいの診断には明確な基準があるため、基準と照らし合わせて、保護者への報告前にある程度の判断をすることが可能です。

グレーゾーンの子どものように、明らかな障がいとは判断できない場合も、個別の配慮が必要と判断されれば療育をすすめられるケースもあります。

なお、発達支援センターに相談することで、必要に応じて療育施設や福祉サービスなどともつないでもらえます。

保護者に家庭での様子を聞く(園での様子も伝える)

発達障がいの可能性がかなり高そうだと判断されたら、保護者に伝える準備をしていきます。

ただ、発達障がいの判断には、「家庭と保育園で生活態度に違いがあるか?」なども重要な判断材料となるため、まずは家庭での様子や両親からみた困りごとなどの聞き取りから行います。

発達障がいの可能性を伝えるときは慎重に、できれば何度か面談を重ね、信頼関係を築いてから伝えられるといいでしょう。

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発達障がいと診断された保護者の心理

保護者へ発達障がいの可能性をどう伝えていくかを考えるうえで、保護者心理の理解は非常に重要です。

そこで、本章では発達障がいの可能性を伝えられた保護者がどのような心理状態になるのかをご紹介します。

大切に育ててきた子どもの障がいの診断は、その場では受け止められないほどの大きなショックとなります。

その後の人生にかかわるような障がいの診断や大切な人の死など、大きなショックを経験した場合、人は事実の受容までに以下のような心理プロセスを踏んでいくといわれています。

需要までの心理プロセス
  1. 否認
  2. 怒り
  3. 取引
  4. 抑うつ
  5. 受容

※心理学者キューブラー・ロスの「悲しみの五段階説より」

まずは、ショックな事実を受け止められず、そんなはずはない、何かの間違いだと「否認」します。

そのあとに、「怒り」の感情が湧いてきます。

怒りの矛先は、「保育園の対応の問題では?」など、園や先生に向かうことも少なくありません。

このときに、怒りに抵抗してしまうと怒りの感情を逆なでしてしまうため、そういう段階なのだと、そのままを受け入れてあげましょう。

「取引」とは、何かにすがろうとする段階です。神様を信じたり、少しでも効果のありそうな方法を試してみようとします。

「抑うつ」の段階では、何をしても障がいの診断からは逃れられないとしり、精神的に落ち込みます。こうした段階を経て、少しずつ諦めの感情が生まれ、受容へとつながっていきます。

これらの段階の経過は、人によりますが多くが数年単位の年月がかかります。それだけ、子どもの障がいの受容は簡単なものではないことを、保育士も覚えておくといいでしょう。

発達障がいの可能性があるときの保護者への伝え方

発達障がいの可能性を親に伝えるときは、できるだけショックを与えないよう、以下のポイントを意識しましょう。

発達障がいが疑われるときの親への伝え方のポイント【保育士人材バンク】
発達障がいが疑われるときの親への伝え方のポイント【保育士人材バンク】

発達障がいが疑われる段階では、「おたくの子はADHDかもしれません」などと障がい名を断定することは避けるようにしましょう。

まずは、保育園での様子を具体的に説明しながら、保育園側でさまざまな対応を取ってきたけれど、変化がみられなかったことを伝え、専門施設への相談をすすめます。このとき、問題行動を責めるような言い方にならないよう注意しましょう。

話をするときは極力、親の気持ちに寄り添いながら、親や子どものせいではないことを強調して、個別支援の必要性を伝えてあげるようにしましょう。

親としても、保育園に馴染めず当園拒否などに苦しんでいたり、暴力や怪我などトラブルが絶えなかったり、周囲から嫌がらせやいじめを受けたりなど、子どもの特性のせいで多くのつらい悩みを抱えているケースがあります。そうした悩みを聞き出しつつ、気持ちに寄り添った対応を心がけましょう

発達障がいの子どもとの向き合い方がわかると、親自身も安心できることを伝え、前向きに専門機関へ相談できるよう話をもっていけるといいでしょう。

保護者への対応で知っておきたい療育の基礎知識

保護者へ発達障がいの可能性を伝える段階では、「もしも障がいだった場合、これからどうなるのかがわからない」というのも、保護者の大きな不安要素になります。

そうしたときに、保育士が今後の流れや療育の方法を知っていると、保護者も安心できます。

そこで、本章では発達障がいの子どもの支援について、療育の基礎知識をご紹介します。

保育士が知っておきたい療育の基礎知識【保育士人材バンク】
保育士が知っておきたい療育の基礎知識【保育士人材バンク】

療育を行う施設・相談先

発達障がいが疑われる場合、まずは地域の発達支援センターなどに相談することになります。

発達支援センターには、専門の心理士、療法士などが在籍しており、専門知識のもと、障がいの診断や療育の必要性を判断してくれます。

発達障がいの正式な診断は、医師が行います。そのため、発達支援センターで相談後は、必要に応じて医療機関を紹介してもらい、発達障がいの正式な診断を受けます。

ただし、療育の福祉サービス自体は必ずしも診断がなくても利用できるため、まずは発達支援センターで相談し、その後の方向性を決めるという流れになります。

療育の内容

療育とは、子ども一人ひとりがもつ苦手さや困りごとに対して個別に行う支援のことです。

療育を行う場所は、地域の発達支援センターや、デイサービスと呼ばれる児童発達支援事業所(小学生以上は放課後等デイサービス)があります。

療育施設では児童発達支援管理責任者が子どもの状況にあわせて「個別支援計画」を作成し、計画に沿って支援を行なっていきます。

そのため、療育の内容は子どもによってさまざまで、例えば集団に馴染めない子どもであれば個別の活動をメインに得意なことを広げながら、少しずつ集団に馴染む訓練をしたり、手先の不器用さがある子どもには作業療法士が手先を使う遊びをしながら訓練をしたりします。

保育園と両立可能な「児童発達支援」について

未就学児の障がいがある子どもに対して行う支援を「児童発達支援」といいますが、児童発達支援は保育園と両立が可能です。

例えば、週2回は発達支援センターに通いつつ、保育園での生活を続けることもできますし、午前中は保育園や幼稚園に行きつつ、午後からはお迎えに来てもらって児童発達支援事業所で過ごすといった使い方もできます。

地域により福祉サービスの有無や空き状況はありますが、どんな方法がベストかは話し合いながら決めていくことができます。

保育園の加配制度

保育園で引き続き過ごすなかでトラブル等が心配な場合、「加配」という制度もあります。

加配制度とは、障がいのある子どもに対して個別に支援の先生を付ける制度で、保護者から自治体へ申請することで利用できます。

加配を付けられるかどうかの条件は自治体ごとに基準が異なり、保育園や幼稚園によっては園側が加配をつけないと決めているところもあります。加配制度を使えるかどうかは、保護者説明の前にあらかじめ園や自治体に確認しておきましょう。

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保育園での「気になる子」への対応方法

発達障がいが疑われるような「気になる子」がいた場合、すぐに療育へつなげることは難しく、ある程度の期間は保育園や幼稚園での対応が求められます。

そうしたときに、保育士はできる配慮や指導をもって、子どもたちを傷つけないような対応をとっていくことが必要です。

参考まで、以下に発達障がいが疑われるときに試したい対応方法をご紹介します。

【発達障がいが疑われる子への保育士ができる対応方法】
  • 次にやるべきことを絵カードで示す(見通しが苦手な子に)
  • とにかく褒める
  • 活動に参加できなくてもOKとする
  • 癇癪(かんしゃく)で出た感情は、落ち着くまですべてそのまま受け止める
  • トラブルが起きそうな状況を予測して防止策を考える

ただし、上記の方法はあくまでも一般的にいわれる対応で、実際には子どもによって合う合わないがあります

個々に応じた支援が必要なため、状況をみながらいろいろな方法を試してみるようにしましょう。

「おもちゃの取り合い」や「順番を待てない」など、同じようなトラブルが続くときは、トラブルに関する事例を調べ、効果のありそうな対応を試してみるのもいいでしょう。

また、保育士1人の判断で対応せず、必ず周囲と連携をとって対応を考えていってくださいね。

まとめ

保育園や幼稚園に発達障がいが疑われる子がいる場合、まずは園全体で情報共有をし、対応を考えていきましょう。発達支援センターなどの専門機関に相談することで、専門家の目から障がいの判断を手助けしてもらえます。

トラブルや障がいの可能性などを親に伝えるときは、子どもや親を責めないことを意識し、信頼関係を築いていきましょう。

発達障がいは必ずしもマイナスでないことを理解し、保護者や子どもに寄り添い、一緒にベストな選択肢を考えていってくださいね。

また、もし障がいをもつ子どもと関わる仕事をしたい場合は、保育園だけではなく「放課後等デイサービス」や「児童発達支援」で働くこともできます。

近年、制度の改正もあり「保育士資格」を活かせる職場として事業所も増えています。

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