「児童発達支援管理責任者」の仕事内容は、個別支援計画の作成、相談業務、療育・スタッフとの連携など多岐に渡ります。
また障がい児をサポートする事業所でのリーダー的存在となる役職です。
将来性のある職種として注目されていますが、実際にどのような役割をもっているのでしょうか?
児童発達支援管理責任者の業務内容や働く場所など、児童発達支援管理責任者の仕事内容や役割などについて詳しく解説します。
目次
児童発達支援管理責任者の役割や仕事内容は?
子どもの発達支援を行う現場において、児童発達支援管理責任者は支援の方向性や計画を立てるリーダーのような役割を担っています。保護者との面談や関係機関との連携など、多くの業務を担うことになるでしょう。
ここからは児童発達支援管理責任者の役割や主な仕事内容についてご紹介します。
児童発達支援管理責任者の仕事内容①【個別支援計画の作成】
児童発達支援管理責任者の担うメインの業務は個別支援計画の作成です。
個別支援計画は、子どもの成長を支援してくための指標であり、現在の様子や今後の目標などを定めています。実際の支援内容は個別支援計画をもとにして提供するため、支援計画の方向性がとても重要です。
そのため、個別支援計画の作成には、本人や保護者との面談や、関係者同士で意見を出し合う手順が必須となります。また、子どもの成長や取り巻く環境は日々変化しているため、一度作成して終わりではありません。個別支援計画の計画と修正を繰り返し、子どもの様子に合わせたより良い療育を目指していくことが児童発達支援管理責任者の大きな役割です。
<個別支援計画の作成とサービス提供の流れ>
個別支援計画の作成①【アセスメント】
障害を持つ子ども本人や保護者に面談をします。現在出来ることや、日常生活で支援を必要としていることなどをヒアリングし、事業所に求めているニーズと今後の課題を整理していきます。
個別支援計画の作成②【原案作成】
アセスメントをもとに、個別支援計画の原案となるものを作成します。現在の具体的な課題や、本人・保護者のニーズと支援目標、達成を目指す時期など、ヒアリングの内容に加え、1人ひとりの状態に合わせた支援計画を立てます。
個別支援計画の作成③【カンファレンス】
サービスに関係する担当者を集め、個別支援計画の原案について意見を出し合います。
個別支援計画の作成④【原案修正】
カンファレンスで出た意見や案をもとに個別支援計画を修正していきます。
個別支援計画の作成⑤【支援計画の交付・サービスの提供】
本人や保護者に内容を説明し、同意を得てからサービスを提供します。関係者や支援する職員はお互いに情報を交換し合い、経過を観察していきます。
個別支援計画の作成⑥【モニタリング(中間評価)】
本人や保護者とは定期的に面接を行い、子どもの様子の変化や目標の達成具合を確認していきます。
個別支援計画の作成⑦【計画の修正】
モニタリングをもとに、いまの状態や成長に適した個別支援計画へと修正していきます。個別支援計画は6ヶ月に1回以上の修正が必要です。
個別支援計画は、きちんと条件を満たしていなければ減算になる可能性があります。気を付けたい注意点は次のとおりです。
<個別支援計画の注意点>
- 個別支援計画が児童発達支援管理責任者による指揮のもとに作成されていない。
- 個別支援計画作成の手順が正しく踏まれていない。(原案がない・同意を得ていないなど)
- モニタリングや個別支援計画の見直しが適切に行われていない。(所定の期間内に見直しが行われていないなど)
- 新規利用者の個別支援計画が利用開始月に作成されていない。
【参照】横浜市健康福祉局障害支援課「個別支援計画を作成するにあたって」
児童発達支援管理責任者の仕事内容②【相談業務】
児童発達支援管理責任者の業務内容は、個別支援計画の作成や修正以外にも多岐にわたります。本人や家族からの相談に応じるのも、大切な業務の1つです。
本人や家族とは、個別支援計画作成のためのアセスメントや交付時に面談を行いますが、それ以外にも相談の希望があれば対応します。不安な時や困ったときに気軽に頼れる存在になれるよう、日頃から信頼関係を結んでおくことが必要です。日常生活での悩みや関係機関への不安、障害についての質問など、具体的なアドバイスを通して家庭への支援を行いましょう。
児童発達支援管理責任者の仕事内容③【療育・スタッフ指導】
児童発達支援管理責任者は、子どもに自ら療育を行うことがあります。また、必要に応じて療育を担っている職員への指導やアドバイスを行う機会もあるでしょう。
児童発達支援管理責任者の仕事内容④【その他の業務】
児童発達支援管理責任者の業務内容は、各事業所によってさまざまです。
送迎サービスを行っている事業所では、児童発達支援管理責任者が運転や付き添いなどを行う場合があります。また、事業所の管理者と兼任しているケースでは、利用者との契約業務、見学者対応なども業務に含まれている可能性も。児童発達支援管理責任者として入職する場合は、事前に業務内容についてよく確認しておくのをおすすめします。
児童発達支援管理責任者の働く場所は?
児童発達支援管理責任者の配置が義務づけられている事業所は、主に「通所施設」と「入所施設」の2種類に分けられます。
児童発達支援管理責任者の就業先①【障害児通所施設】
「障害児通所施設」は、障害のある子どもが発達や課題に応じた支援を受けることを目的とした施設です。障害児通所施設には、提供するサービスによって4種類の事業所があります。
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス
- 保育所等訪問支援
- 医療型児童発達支援
児童発達支援管理責任者の就業先②【障害児入所施設】
障害児入所施設は、障害の重い子どもが日常生活に必要な知識、技能を身に付けることを目的とした施設です。子どもの障害や成長に合わせた自立を目指します。
- 福祉型障害児入所施設
- 医療型障害児入所施設
実際の業務内容や勤務時間は事業所によってさまざまですが、児童発達支援管理責任者として働く場合は解説した施設のうち、いずれかの場所に勤めることになります。
【参考サイト】厚生労働省「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案の概要」
児童発達支援管理責任者の勤務時間は?
児童発達支援管理責任者として従事すると、「実際にどのような勤務時間になるので
しょうか?」放課後等デイサービスを例に、1日のスケジュールをご紹介します。
<児童発達支援管理責任者の勤務スケジュール>
9:00 | 出勤朝礼事務作業療育の準備保護者との面談個別支援計画の作成関係機関との打ち合わせ など |
12:00 | 休憩 |
13:00 | 送迎 |
14:00 | 療育のサポート事務作業保護者対応相談業務 など |
17:00 | 送迎 |
17:30 | 清掃打ち合わせ・会議 など |
18:00 | 退勤 |
例にあげた放課後等デイサービスは、小学生以上を対象とした事業所です。そのため、基本的に子どもを預かり療育を行うのは午後となっています。午前中は事務作業や面談、関係機関との打ち合わせなど、その日ごとにある程度のある程度の融通がきくと言えるでしょう。
児童発達支援管理責任者の研修やOJTは?
児童発達支援管理責任者の研修は都道府県ごとに行っています。資格を取得するまでには、次のような要件を満たす必要があります。
<児童発達支援管理責任者の資格取得要件>
- 実務経験の要件をクリアすること
- 基礎研修(相談支援従事者初任者研修講義部分+研修講義、演習部分)を修了すること
- 基礎研修後、OJT(実践を積みながら学んでいく教育訓練)を受ける
- 実践研修を修了する
さらに、資格取得後は5年後の更新研修への受講が必要です。このような研修システムを経ることで、療育の分野で必要な知識や児童発達支援管理責任者としての専門性を高めていきます。
基礎研修後にOJTの期間を経て、実践研修へ
児童発達支援管理責任者の資格取得には前述のとおり実務経験の要件を満たす必要がありますが、2019年に研修制度の見直しがあり、実務経験の要件を満たす2年前から基礎研修の受講が可能になりました。また、この見直しによって基礎研修後にOJTの期間も追加されています。
<OJT(On The Job Training)とは>
OJTとは、実際に業務を担いながらスキルを身に付けていく教育訓練のシステムのことです。児童発達支援管理責任者の研修においては、基礎研修を修了した方は個別支援計画の原案作成の業務を担えるようになります。また、すでに児童発達支援管理責任者などが1名配置されている場合は、2人目として配置することが可能です。
OJTの期間に経験を積んだあとは実践研修へと進みます。すべての研修を修了することで、正式に児童発達支援管理責任者として配置される流れです。
児童発達支援管理責任者の平均年収は?
これからキャリアアップで児童発達支援管理責任者の資格を目指す方にとっては、平均年収は気になるところですよね。事業所の種類によってばらつきは大きいものの、全体的に保育士よりも高い平均年収であるのが一般的です。
<児童発達支援管理責任者と保育士との年収比較>
児童発達支援管理責任者 | 保育士 | |
職種全体の平均 | 4,267,462円 | 3,668,861円 |
福祉型障害児入所施設 | 5,662,130円 | 3,965,212円 |
医療型障害児入所施設 | 5,983,824円 | 4,293,788円 |
児童発達支援 | 3,990,877円 | 3,252,114円 |
医療型児童発達支援 | 5,876,463円 | 3,913,373円 |
放課後等デイサービス | 3,298,587円 | 2,716,548円 |
保育所等訪問支援 | 4,658,940円 | なし |
職種全体の平均値を保育士と比べると、約60万円の差があることが分かります。医療型の支援サービスの年収は比較的に高く、保育士との年収差も大きいようです。
療育の分野でキャリアアップを目指す方にとっては、資格取得による年収アップは大きな魅力です。実際には事業所によって年収や手当などに差があり、平均とは異なるケースもありますが、事業所の種類を選ぶ際の参考の1つとしておさえておきましょう。
児童発達支援管理責任者のやりがいは?
発達支援管理責任者の仕事は多岐にわたり、支援内容を決める重要な役割を担っていることから「大変」「辛い」という印象を抱かれがちです。しかし、実際には大変さを上回るやりがいがあります。
- 事務所の内部で、運営に携われる
- 子ども一人ひとりの成長に向き合える
- 本人だけでなく、家族のサポートもできる
- 給与が高い
児童発達支援管理責任者は子どもの置かれている環境や発達を客観的に見つめ、支援の計画や目標をたてていきます。個別支援計画の修正や確認、本人や保護者の面談などを通して、子どもの成長と徹底的に向き合うことが可能です。また、家族の悩みやニーズにも焦点をあて、子どもを見守る同志のような存在になれる点も魅力といえるでしょう。
働くうえで、収入面は大きな要素と言えます。責任も大きい役職ですが、そのぶん専門性があることが証明される児童発達支援管理責任者には、待遇のよい求人も多くあります。キャリアアップを考える方にとって、収入があがることで大きなモチベーションとなります。
児童発達支援管理責任者に向いている人は?
これから児童発達支援管理責任者を目指す方のなかには、「自分がその仕事に向いているのか不安に思っている方もいるのではないでしょうか?」実際の業務内容を踏まえ、必要な素質や向いている方の特徴を解説します。
児発管に向いている人①【より良いサービスを行おうとする向上心】
児童発達支援管理責任者は子どもの成長を客観的に見守り、成長や家族のニーズに合わせて適切な支援計画を立てる役職です。現状を常に振り返り、より良いサービスを提供できるか追求していく必要があります。また、児童発達支援管理責任者の作成する個別支援計画は事業所全体で共有し、サービスを提供していきます。療育や発達に関する専門性が求められる職業であり、勉強を継続していく向上心がある方は向いていると言えるでしょう。
児発管に向いている人②【周囲の状況を把握し、連携する力】
本人や家族が生活しやすい環境を作っていくためには、関係機関との連携が必要不可欠です。児童発達支援管理責任者の役割には、他の相談機関や保育施設、サービス事業所との連携や調整も含まれています。関係機関が手を取り合い本人や家族に関わっていけるよう関わっていく必要があります。状況を把握する力や、コミュニケーション力の高い方は現場でも頼りになる存在となるでしょう。
児発管に向いている人③【現場をまとめる力】
発達支援の現場では、個別支援計画をもとに実際のサービスを行うのは別の職員であることも多くあります。現場のマネジメントを行うのも児童発達支援管理責任者の業務の1つです。必要に応じて直接指導を行ったり、反対に見守ってみたりと、現場の職員をまとめる力も必要になります。ほかの職員との信頼関係や伝え方のスキルが重要となるでしょう。
児童発達支援管理責任者に転職するには?
児童発達支援管理責任者として働くためには、募集されている求人への応募が必要です。
障害福祉サービスの事業所や利用者数は近年増え続けており、関係する仕事に就く方も比例するように増加しています。厚生労働省の障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第2回)によると、平成29年の全職種の求人倍率は1.5倍だったのに対し、障害福祉関係だけに絞った求人倍率は3.2倍でした。働く人への高い需要がうかがえます。
事業所ごとに1名の児童発達支援管理責任者の配置が必要とされている児童発達支援管理責任者も、現在はまだまだ人手不足です。
募集されている求人には、児童発達支援管理責任者としてのキャリアがある方はもちろん、無資格者であっても研修の要件に満たしていれば募集できるものもあります。積極的に働く場所を探してみましょう。
福祉の仕事に特化した求人サイトや、エージェントのいる転職サイトなど、人材紹介サービスを使うのも選択肢の1つです。ミスマッチを防ぐために、自分の重視している条件を洗い出しておきましょう。
【参照サイト】厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第2回)」
児童発達支援管理責任者の仕事内容のまとめ
児童発達支援管理責任者は発達支援の現場において、障害児や家族のニーズをうけ個別支援計画を作成する職業です。個別支援計画を作成することが主な業務内容ですが、関係機関との連携やスタッフへの指導など、実際には幅広い役割を担っています。
児童発達支援管理責任者になるには国で定められた実務経験と研修を受ける必要がありますが、資格取得後は仕事の幅が広がり、キャリアアップも可能になるでしょう。すでに要件を満たしている方やこれから取得を目指す方はぜひ参考にしてみてくださいね。
また、「今より良い条件で働きたい」「放課後等デイサービスや児童発達支援に興味がある」「転職が不安」という方はぜひ保育士人材バンクへお気軽にご相談ください。
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