保育士には、基本給のほかにさまざまな手当が支給されています。手当の有無が手取りの給料に大きく影響するため、就職する前にしっかりと確認が必要です。

今回は、保育士がもらえる手当の種類や、自治体独自で行っている取り組みなどをご紹介します。

保育士の手当とは?

保育士の手当とは?【保育士人材バンク】

手当とは、基本給と違って条件に当てはまった方に支払われるものです。支給元別に大きく3つに分けて解説していきます。

  • 保育園から支給される手当
  • 自治体から支給される手当
  • 国の政策で支給される手当

いずれの種類にも、さまざまな手当があり、条件や勤める保育園によって受け取れる支給額が変わります。一見すると給料が少なく見える求人でも、手当を含めると実は良い条件だったというケースもあるため、手当は就活や転職で見逃せないポイントのひとつです。

同じ手当でも職場が違えば支給額はそれぞれ異なるため、これから求人を探す方は「一般的にどのような手当があるのか」「相場はどのくらいなのか」を知っておきましょう。

保育士の手当にはどんなものがあるの?

それでは、主に保育園から支給される手当から解説します。

1.ボーナス・賞与

ボーナス・賞与は年に1〜3回ほど支給される手当のことです。主に正職員が対象の手当てですが、保育園によってはパートやアルバイトなど非常勤保育士も対象となる場合もあります。

基本的にボーナスの支給額は、月給をベースに仕事の評価や支給月数など、法人で決まっている方法で計算されます。算出方法は求人情報などに明記されていることも多いので確認してみましょう。

2023年時点で、保育士の平均ボーナスは約71万円です。一回ごとの支給額はおよそ30万円〜40万円ほどが見込まれます。

参考)令和5年賃金構造基本統計調査

2.資格手当

資格手当は、国家資格である保育士資格を持っている方に支給される手当のことです。保育園には保育士の配置基準があり一定数、保育士が必要となります。有資格者として働く方を適切に評価することにも繋がるでしょう。

保育園のなかには、基本給にまとめられ、資格手当という形ではない場合もあります。また、すべての保育園で取り入れているわけではないため、求人情報で資格手当の有無や金額を確かめておく必要があるでしょう。

3.役職手当

主任や副園長などの役職になると給料に上乗せされる手当のことです。近年はキャリアアップ研修が導入され、専門リーダーや職務分野別など、手当の対象となる役職も新たに追加されています。

築いてきたキャリアが評価され、働くうえでのモチベーションのひとつになりやすい手当です。

4.通勤手当

通勤手当とは、働くために必要なガソリン代や電車賃などを保育園が負担してくれる手当です。細かな支給方法は保育園によって異なり、手当の上限額が決まっていることもあります。

求人情報に掲載されているケースが多いので、手当の有無や詳細を確認しておくのがおすすめです。

5.扶養手当

扶養手当とは、保育士に妻や夫、子どもなどがいる場合に支給される手当です。扶養手当は会社が従業員に対して支給する手当なのに対し、よくメディアで取り上げられる「扶養控除」は国が行っている制度で異なるため注意しましょう。

扶養手当は家族を養っている保育士には心強いものではありますが、保育園では扶養手当を設けていないところも多いようです。

6.残業手当

所定労働時間を超えて働いた場合には、残業手当が支給されます。保育園から働く従業員へ支払われるものですが、保育士に限られた手当ではなく、労働基準法によってすべての労働者に定められている手当です。

業務が忙しくなる時期に、労働時間を超えた分だけ支給されるケースもあれば、あらかじめひと月あたりの見込み残業を定めて支給される場合もあります。

7.特別業務手当

特別残業手当とは、年末年始保育など特定の期間や行事によって追加に勤務が発生した場合、支給される手当のことです。また、お盆のように人手が少なくなる特定の時期に対し支払われることがあります。パートで働いている場合は、時給が高くなる場合もあります。

8.被服手当

保育士に必要な衣服(Tシャツ・エプロン・帽子・靴など)を購入する費用が支給される手当です。使用頻度の高いエプロンなどは、現品で支給されるケースもあります。

保育士が準備しなくてはいけない衣類は意外と多く、季節物の衣類や上着などコストがかかりやすいものも購入する必要があります。手当として補助があると、安心して衣服を用意できるでしょう。

【自治体別】手当や制度をご紹介

【自治体別】手当や制度をご紹介【保育士人材バンク】

都道府県や市町村のなかには、待機児童や保育士確保のために独自の取組を行っている地域があります。たとえば、東京都で行っている取組は次の通りです。

東京都

保育従事職員資格取得支援

保育園などで働きながら資格取得を目指す方が対象の制度です。

養成学校の入学料や受講料、教材費、通信講座の受講料など、保育士を取得する費用の一部に支援が受けられます。

勤めている職場や区市町村を通じて受けられる制度です。実施しているかどうか知りたい方は、市区町村のサイトを確認してみましょう。

保育士として就職する方への貸付支援

保育士として新たに就職する方や、再就職を予定している方に貸し付けを受けられる制度が3つあります。いずれも保育士として週20時間以上勤務している方が対象です。また、東京都内で2年間就労すると、貸付金が「全額免除」となります。

①保育所復帰支援資金         未就学児をもつ方が保育士に復帰する際、子どもにかかる保育料の一部に貸付を受けられる制度です。保育料の半額、月額最大27,000円(最長1年間)の貸し付けを受けられます。
②再就職支援資金就職にともなう出費に対し、最大40万円の貸し付けを受けられます。貸付金の使い道は引っ越し費用や衣服購入など幅広いのが特徴です。
③子どもの預かり支援資金未就学児を持つ保育士が就労のために利用する預かり支援(ベビーシッター・ファミリーサポートセンターなど)の利用料に対し、その半額までの金額に貸し付けを受けられます。金額と期間は、年額123,000円以内で最長2年間です。

保育士に対する取り組みは、都道府県だけでなく市区町村でも行われていますので、今回はいくつかピックアップしてご紹介します。

葛飾区(東京都)

<保育士等奨学金返済事業>

奨学金制度を使って保育士資格を取得した保育士を対象に、月額上限20,000円までの補助を行う事業です。葛飾区内の私立保育施設で働き、1日6時間以上・月20時間を超える常勤保育士であるなど、複数の条件を満たす必要があります。

<住宅手当扶助>

保育園が保育士の住宅手当を増額する場合に、月額10,000円までの金額を葛飾区で補助してくれる制度です。賃貸・持ち家どちらであっても、保育園が住宅手当を支給していれば対象となります。

江戸川区(東京都)

<給料の加算>

月額40,000円相当の東京都キャリアアップ補助のほかに、江戸川区独自で10,000円相当の加算を行っています。

<5年ごとに報奨金>

江戸川区で常勤として働く保育士は勤続5年を達成すると、6年目に報奨金100,000円が支給される制度です。報奨金は、その後も10年、15年、20年の節目ごとに続きます。

<保育園申し込み時に配慮>

葛飾区に住んでいる方で、子どもを区内の保育園で預ける場合、入園しやすくなるよう配慮されます。

千葉市(千葉県)

<給料の加算>

市内の認可保育園や認定こども園、小規模保育事業などに勤めている保育士の給料に月額最大30,000円を上乗せして支給しています。

<就職準備金の貸付>

地域の有効求人倍率によって、200,000円もしくは400,000円の貸し付けが受けられます。就職にともなって準備が必要な衣類や、住居費などの出費が対象です。

<保育料の貸付>

子どもを保育園に預けて就労している場合、掛かった保育料の半額(最大27,000円)を1年間借りられます。

船橋市(千葉県)

<ふなばし手当>

船橋市独自で行っている給料の上乗せは、金額が大きいことで知られています。たとえば、常勤の保育士の加算額は月額約43,220円、賞与は年間約83,700円です。勤務時間や出勤日数の条件を満たせば、パートタイマーでも対象となります。

<保育士試験の費用助成>

保育士試験に合格し、船橋市内の保育施設で1年以上勤務する見込みの方には、資格取得に掛かった費用の一部を助成しています。補助額の上限は150,000円です。

<保育園の申し込み時に配慮>

船橋市で働く保育士は、子どもを保育園に預ける際に申し込み時に加点され、入所しやすくなる配慮を行っています。

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【全国】手当や制度をご紹介

保育士への手当や支援制度は、近年国も力を入れて取り組んでいる事業です。とくに、内閣府が進めてきた「処遇改善加算」は、保育士の年収に大きな影響を与えました。

参考)保育士の現状と主な取組

処遇改善加算は、保育園が手続きを行い、まとめて受け取った金額を保育士やそのほかの職員に分配する仕組みです。民間の認可外保育園など、対象とならない保育施設もあるため、同じ保育士であっても対象となる場合とならない場合があります。

処遇改善加算にはⅠ・Ⅱ・Ⅲの3種類あり、それぞれ対象となる条件や金額が異なります。また、「処遇改善加算Ⅱ」に関しては、対象ではない職員へ分配することも可能となっているため、加算される金額も人それぞれです。

複雑な制度ではありますが、保育士の平均給与は着実に上がってきています。また、2025年度(令和7年度)以降、政府は処遇改善加算の一本化について検討するとしており、保育士の処遇改善に向けての動きは今後も続いていくと考えられるでしょう。

保育士の処遇改善については、こちらでも詳しく解説しています。

【2024年度(令和6年度)最新】最新保育士の処遇改善手当ての額や支給条件、現状をわかりやすく解説!

まだある!暮らしを支えるお得な制度

まだある!暮らしを支えるお得な制度【保育士人材バンク】

保育士を支援する制度は、賃金アップ以外にもさまざまなものがあります。実施状況は都道府県や勤める保育園によって異なるので、求人情報を確認するときに合わせてチェックしましょう。

宿舎借り上げ支援制度

宿舎借り上げ支援制度とは、住宅費用を補助するための制度です。雇っている保育士のために賃貸借契約を結んだ場合、その住居費の全額または一部を国や自治体が支給してくれます。

東京都の場合、一戸あたり月額82,000円が基準額の上限です。家賃が80,000円の物件なら保育士の負担は0円となり、90,000円なら実質負担は8,000円となります。さらに、市区町村が独自に上乗せしているケースもあり、条件が重なれば住居にかかる費用を大きく抑えられるでしょう(例:東京都千代田区、東京都港区)。

ただし、宿舎借り上げ支援制度が対象になる期間は、採用された日から7年以内という点に注意してください。また、補助を受けられる期間はこれまで度々変更されているため、今後も変更する可能性があります。

宿舎借り上げ社宅制度については、こちらでも詳しく解説しています。

【最新】保育士の家賃補助制度(住宅手当)の種類や条件は?いつからいつまでもらえる?

給食費支給

子どもと同じ給食を食べている保育園では、多くの場合、保育士も毎月給食費を支払っています。決まった金額を毎月支払ったり、食べた分だけ天引きされたりと支払い方法はさまざまですが、毎月5,000円ほどの出費が高いと感じている方もいるのではないでしょうか。

保育園によっては、「給食費支給」「給食費無料」の福利厚生を実施している園があります。給食は毎日のことなので、一食あたりは小さな金額でも長く働くほど心強い手当に感じられるでしょう。

奨学金返済支援制度

保育士資格を取るために奨学金を利用して進学した方は、奨学金の返済を支援してくれる制度をチェックしてみるのがおすすめです。市区町村のなかには、その地域の認可保育園に就職することや常勤で働くなど、いくつかの条件を満たしている方を対象に、奨学金の返済を一部負担してくれる制度を導入しています。

<例>

年度内の上限額
東京都荒川区200,000円(ひとり親家庭等は300,000円)
東京都足立区100,000円(同じ事業者で勤続5年を超えると150,000円に引き上げ)

手当を受け取れる職場の探し方

手当や補助の有無が暮らしや手取り収入に影響するため、これから保育士として働く方はもちろん、転職をお考えの方もしっかりとチェックしたいところです。しかし、手当にはたくさんの種類があるため「どう探していいのか分からない」という方もいるかと思います。

保育士向けの支援制度や、手厚い手当を導入している保育園をお探しの方は、ここからご紹介する方法で確認してみましょう。

都道府県や区市町村ホームページを確認する

まずは、お住まいの地域で取り組んでいる支援制度の確認です。

都道府県や区市町村のホームページでは、保育士確保や処遇改善についての情報が確認できます。奨学金返済支援や就職準備金など、国や都道府県から支給される支援の対象に当てはまっているかどうか確認してみましょう。

ハローワークなどで求人情報を確認する

ハローワークで閲覧できる求人情報には、保育園で導入している手当が掲載されています。保育園によっては具体的な支給額なども確認できるため、どのような手当を導入しているのか知りたいときにおすすめです。

転職・求人サイトでこだわり検索をする

「賞与は3ヶ月以上欲しい」「社宅制度がある保育園がいい」など、自分が求めている手当が絞れている方は、転職・求人サイトの検索機能を使うのもよいでしょう。希望する地域で条件に当てはまる求人を一気に比較できます。また、手当以外にも職場環境や希望賃金など複数の条件を同時に検索することも可能です。

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保育士の手当まとめ

保育士がもらえる手当にはたくさんの種類があります。とくに保育園から支給される手当は金額や条件も幅広いため、求人で収入面を確認するときは手当のチェックも欠かせません。

もちろん、転職活動を成功させるためには、手当だけでなく保育方針や働きやすさも重要です。自分に合った保育園を探すために、さまざまな視点からじっくり検討してみてくださいね。

また、保育士人材バンクでは保育士に特化したキャリアパートナーが、転職をサポートいたします。

「今より好条件の職場で働きたい」「保育士の資格を活かした転職をしたい」「そもそも求人ってどんなものがあるの?」など、転職に関するご相談をお気軽にいただければと思います

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