今回は、乳児院での仕事内容や働くメリットと合わせて、給料や待遇についても解説します。

乳児院では、原則として1歳未満の乳幼児をシフトにより24時間体制でケアするお仕事です。様々な理由で保護された子どもの生活をサポートする、とてもやりがいがあるお仕事です。

乳児院での仕事や給料が気になっている方は、ぜひ参考にしてください。

乳児院とは?

乳児院は、家庭のさまざまな事情で、家族と一緒に暮らせない乳幼児を養育する施設です。

養育の中心は1歳未満の乳児ですが、特に必要のある場合には就学までの子どもの預かりも可能です。

2023年(令和5年)2月時点の年齢別利用数は、0歳児が1,729人で全体の71%に上り最も多く、1歳児が477人、2歳児が148人、3歳児が40人と、年齢を重ねるにつれ少なくなります。

在所期間はさまざまですが、1年以内が44.6%と最も多く、1年~2年未満は30.5%、2~3年未満は15.8%と、9割以上が3年未満の利用いう結果が出ています。

2022年(令和4年)10月1日時点の調査では、全国に145の乳児院があり、3,802人の定員に対して2,560人の乳幼児が在籍していました。

また、同調査で乳児院で働く人の数は全国で5,519人いることがわかりました。

一方で、同じ時期の調査では保育園等の施設で働く保育士の人数は、およそ39万人です。保育士資格を活かせる選択肢として乳児院を選ぶ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

参考:厚生労働省

令和4年度 児童養護施設児童等調査の概要
令和4年 社会福祉施設等調査の概況(総括表)
令和4年 社会福祉施設等調査の概況

働ける資格と人数

乳児院で働ける資格と配置人数は乳児の人数によって異なります。

以下に概要のご紹介をさせていただきます。

・医師(若しくは嘱託医)…1人

・看護師、保育士、児童指導員…最低7人(うち看護師1人)乳児10人以上で乳児1.7:1

 (乳児10人で看護師2人以上、+10人ごとに1人追加)

・栄養士…乳児10人以上で1人・調理員…乳児10人未満で1人、10人~30人未満4人

参考:厚生労働省「最低基準等及び措置費における職員配置基準について

ここからは看護師と保育士、児童指導員の配置基準について詳細に解説します。

保育士・看護師・児童指導員は、基本的に(子どもの数÷1.7)で求められる数以上の人員を置く必要があります。なお、乳児が10人未満の場合には、7人以上と定められています。

ただし、看護師は乳児10人未満の場合に1人以上、10人で2人以上必要です。またそこから定員が10人増えるごとに1人以上看護師を配置しなければいけません。

児童指導員とは…

「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第43条」に定められた要件(各種資格や学歴・職歴など)を満たす人に付与される任用資格。

※くわしくは「児童指導員とは?どんな仕事?任用資格の取得方法や要件、平均年収、仕事内容、保育士との違いを詳しく解説!」をご覧ください。

また加算要件として、定員20人以下の施設では保育士1人を配置することができます。

ご参考までに、定員30人までの乳児院を事例として、最低限必要な看護師や保育士・児童指導員の人数は以下の通りです。

乳児人員合計(保育士・看護師・児童指導院)看護師
10人未満7人最低1人
10人7人+保育士1人加算最低2人
20人12人+保育士1人加算最低3人
30人18人最低4人

乳児院で働く保育士の給料

乳児院で働く職員の給料について、行政などが出している公的なデータは現状ありません。

ただし、実際の求人データを見ると、乳児院の求人情報にある基本給は、18~30万円ほどで、地域によって大きくバラつきがあります。

東京都内などの都心部の場合には、25万円を超える求人がたくさんあり、それ以外のエリアでは、一般的な保育園の給料より少し高いか同水準くらいの相場感です。

行政が出している資料内では、保育園で働く保育士の給料は、手取りで月額約21万円なので、乳児院の場合にも、そのくらいを想定しておくと大きく外れることは無いでしょう。

(参考:政府統計の総合窓口「令和4年賃金構造基本統計調査」)

さらに、以下のような事情を考慮すると、乳児院で働いた場合の給料は保育園で働く保育士よりも、若干高くなると推察されます。

・深夜手当や夜勤手当がつく

深夜手当や夜勤手当がつく

前述した通り乳児院では、24時間体制で子どものケアを行う必要があります。

2交代制の勤務の場合、正社員であれば夜の10時から早朝5時までの深夜帯を含む時間に働く「夜勤」があります。

深夜帯に働く場合、労働基準法に基づき通常の労働時間の給料に25%上乗せした「深夜手当」がつきます。

勤務先によっては、深夜手当だけでなく法人が独自で設けた「夜勤手当」が加算される場合もあります。

そのため、実際に支給される給料は、基本給よりやや高い金額となることが想定されます。

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乳児院で働く保育士の仕事内容

乳児院で働く保育士は、以下のような仕事に携わります。

日常生活のケア

事務仕事

保護者や里親のサポート

地域の子育て支援

ここからは実際の仕事内容を、1つずつ見ていきましょう。

①日常生活のケア

メインの仕事となるのが、乳幼児の日常生活のケアです。

具体的には、以下のようなお仕事をします。

・食事(ミルク、離乳食、おやつ)

・おむつ替え、トイレ

・着替え・体のケア(爪切りなど)

・入浴(沐浴)

・遊び(歌、読み聞かせ、室内・外遊びなど)

・見守り

・寝かしつけ(午睡、夜間)

新生児や1歳・2歳の子どもが多いため食事やトイレ、着替えなど生活に必要なケアやお手伝いをしていきます。

保育園との違いをあげると夜間も子どもたちのケアを行う点で、本来であれば家庭で行う入浴や夜の寝かしつけなども行います。

夜間のお仕事では、乳児に数時間おきの授乳(ミルク)やおむつ替えがあるでしょう。幼児がいる場合でも、夜泣き対応など想定され、夜でもお忙しいことが考えられます。

また、担当している子どもの体調が優れないときには、看護師との連携を行います。

②日常的な事務作業

保育園で働く保育士と同じように、日々の事務仕事も行います。

養育の計画書や記録の作成、イベントがある場合はその計画やスケジュール管理など、乳幼児をケアする時間の他に、事務仕事も行うでしょう。

時間の確保が難しい場合には、子どもたちが寝ている時間他の職員と交代で時間を作って取り組んだり、場合によっては残業をしたりすることもあるでしょう。

③保護者や里親のサポート

乳児院では、保護者や里親に対する子育て支援も行います。

保護者への支援は、子どもが乳児院に入所する前の相談から始まります。退所後に家庭復帰を目指す場合には、入所中に、具体的な育児や家庭環境の改善について助言やサポートをします。

支援は退所後も継続して行い、医師や看護師、栄養士などの専門職と連携して、家庭へのスムーズな移行を目指します。

また、退所後子どもが里親の家庭に入る場合には、里親に対しても家庭環境の整備や育児についての助言や支援を行っていきます。

④地域の子育て支援

乳児院には、地域の子育て家庭への支援という役割もあり、以下のような取り組みを行っています。

・地域住民からの相談の受付や支援

・地域子育て支援拠点事業(ひろば事業)

・病児・病後児保育

・子育て短期支援事業(ショートステイ、トワイライトステイ)

地域の子育て家庭の居場所となる「子育て支援施設」として、遊び場を提供したり、保護者からの相談の受付や支援を行ったりしています。

また、日中に病児や病後児を預かる「病児・病後児保育」や「子育て短期支援事業」として行っている、一時的な「ショートステイ」や夜間の「トワイライトステイ」の取り組みでは、地域の子どもを預かることもあります。

乳児院で働くメリット

乳児院で働くメリットは、主に以下の2つあります。

やりがいがある

ルーティーンが決まっている

ここからはメリットを1つずつ見ていきましょう。

やりがいがある

乳児院で働く一番のメリットは、仕事にやりがいがあることです。

決まった子どもを主にケアする担当制を導入している場合、日々決まった子どもとの関りが多くなります。

昼夜問わずケアをするので、1人ひとりの子どもと、じっくり関係性を築くことができ、日々の成長を身近に実感できるでしょう。

大変なこともたくさんありますが、その分やりがいを強く感じられる仕事だといえます。

生活が主体

乳児院では、季節の行事やレクリエーション活動を行うことはあっても、保育園や幼稚園のように「入園式」や「卒園式」などの大きな行事はあまりなく、静かな毎日を過ごせます。

生活主体の関わり方をする乳児院での働き方は、人によってはメリットとなるでしょう。

経験が転職に活かせる

乳児院で学んだ経験は、転職にも活かすことができるでしょう。

例えば、保育園でいうと0歳や1歳の担任として即戦力が期待されたり、さまざまな困りごとがある保護者の相談にものることができます。

また、各職員との連携は転職後も、周りとのコミュニケーションを潤滑に行うことに役立てることができますね。

乳児院の給料まとめ

乳児院は、家庭のさまざまな事情で、家族と一緒に暮らせない乳幼児を養育する施設で、0歳・1歳の乳児を中心に、日々のケアを行います。

乳児院で働く保育士の給料は、保育園で働く場合と同じか夜勤手当などを考慮すると若干高くなりやすいといえます。

また、深夜手当や夜勤手当などの手当がつくという特徴もあるため、待遇面では比較的充実していると考えてよいでしょう。

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