この記事では職務分野別リーダーとは何かを丁寧にご説明します。

関係する制度や役割、要件はもちろん職務分野別リーダーになるための研修内容や役職に就くメリットまでわかりやすく解説します。

「これから職務分野別リーダーを目指す方」や「今役職に就いている方」など何かしらの理由で職務分野別リーダーに興味がある方は、是非チェックしてみてください。

職務分野別リーダーとは?

職務分野別リーダーは、2017年に導入された国の制度「処遇改善等加算Ⅱ」に伴い、設置された保育士のポジションです。

もともと主な保育士のキャリアは園長や主任などの役職しか存在しなく、以下のような問題が生じていました。

  • 中堅保育士の役職がない
  • 中堅保育士の役割分担が難しい
  • 全体としてキャリアアップが分かりづらい

また、ポジションが少ないために経験を重ねても保育士がキャリアアップしにくいこともあり、「賃金が上がりにくい」「待遇の悪さから保育業界から離れてしまう」などの状況を引き起こす原因にもなったことでしょう。

保育士の処遇を改善する施策の一つとして、国は保育士のポジションを増やし、キャリアアップと待遇改善の両方をかなえる仕組みをつくり、「処遇改善等加算Ⅱ」を導入したのです。

職務分野別リーダーはその「処遇改善等加算Ⅱ」でつくられた保育士の役職です。

職務分野別リーダーの次点では、「専門リーダー」「副主任」などの役職もあり、一番最初になる役職の位置づけともいえるでしょう。

なお、「処遇改善等加算Ⅱ」の制度で職務分野別リーダーとなった場合、およそ月額5,000円の賃金加算が受けられます。

保育士の処遇に関する国の制度

保育士の処遇を改善するために設けられた制度は「処遇改善等加算Ⅱ」だけではありません。

ほかにも、以下2種類の制度が設けられています。保育士として働くにあたって処遇改善加算は、耳にする制度だと思います。概要を紹介いたしますので、気になる方は合わせてチェックしてみてください。

  • 処遇改善等加算Ⅰ
  • 保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業(処遇改善等加算Ⅲ)

処遇改善等加算Ⅰ

2015年に設けられた「処遇改善等加算Ⅰ」は、保育所などの施設に勤めるすべての職員の、平均勤続年数から算出された加算率に応じて、補助金が支給される制度です。

出典:内閣官房「公的価格の制度について

保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業(処遇改善等加算Ⅲ)

2022年2月から設けられた「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」は、保育士や幼稚園教諭を対象に、収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるため、事業主に費用補助を行う制度です。

国の処遇改善について、よりくわしく知りたい場合には「2023年(令和5年)【最新】保育士の処遇改善手当ての額や支給条件、現状をわかりやすく解説!」を参考にしてくださいね。

職務分野別リーダーの役割

職務分野別リーダーはその名前からもわかるように、ある一定の分野や仕事を任されるポジションです。

詳しい仕事内容や役割は保育園によってさまざまですが、職務分野別リーダーの役割は主に以下のことが想定されます。

  • 担当分野内で他職員にアドバイスを行う
  • 各専門分野の相談窓口となる
  • 保育所など施設内で研修を実施する

前提として各役割は、保育園などの施設によって異なります。

研修で学んだことを活かして各分野に関するアドバイスや研修の実施、相談窓口としての役割を任される可能性もあるでしょう。

一方で、職務分野別リーダーになっても業務内容は特に変わらないケースも考えられます。

そのような場合でも、自分なりに考え職務分野別リーダーとして周りに良い影響を与える行動ができると良いですね。

職務分野別リーダーになるための要件

職務分野別リーダーになるための要件は、大きく分けて以下の3つです。

  1. 経験年数概ね3年以上
  2. 担当する職務分野(6分野のうち1つ)の研修を修了
  3. 職務分野別リーダーとして法人から任命される

まず前提として、保育士としておおむね3年以上の経験が必要でしょう。

次に各都道府県が実施するキャリアアップ研修を、1分野(15時間)受講しなければなりません。

研修を無事終了した後、保育園などの勤務先から正式に任命を受け職務分野別リーダーとして働くことになります。

実は2の「研修修了要件」は、経過措置としてこれまで厳密に適用されてきませんでした。しかしその経過措置も終わり、2024年度からは研修修了の要件がしっかり適用になっているため、注意が必要です。詳細は勤務している市区町村などに確認をしておくとよいでしょう。

またキャリアアップ研修は以下の6つです。

  • 乳児保育
  • 幼児教育
  • 障がい児保育
  • 食育・アレルギー
  • 保健衛生・安全対策
  • 保護者支援・子育て支援

それぞれの分野については次にご紹介する「職務分野別リーダーになるための研修」で説明します。

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職務分野別リーダーになるための研修

職務分野別リーダーになるためには、行政で決められている「キャリアアップ研修」を受ける必要があります。

先にご紹介をした以下6つの専門分野の中から1つ研修を受けます。

  • 乳児保育
  • 幼児教育
  • 障がい児保育
  • 食育・アレルギー
  • 保健衛生・安全対策
  • 保護者支援・子育て支援

研修は1分野につき15時間以上受け、しっかりと最後まで修了しなければなりません。

どの分野の研修も、研修で得た知識を生かし他の保育士に助言をしたり実際の保育現場で活用したりすることができるでしょう。

ここからは1つずつ各分野について、簡単に解説していきます。

乳児保育

「乳児保育」の研修では、主に0歳から3歳未満児向けの保育について学びます。

乳児保育に関する理解を深めることで、子ども1人ひとりの発達具合に応じた保育を行う実践的な能力をつけることを目的としています。

研修の具体的な内容は、以下の通りです。

  • 乳児保育の意義
  • 乳児保育の環境
  • 乳児への適切な関わり
  • 乳児の発達に応じた保育内容
  • 乳児保育の指導計画、記録及び評価

幼児教育

「幼児教育」の研修では、主に3歳以上児向けの保育について学びます。

幼児教育に関する理解を深めることで、子ども1人ひとりの発達具合に応じた幼児教育を行う実践的な能力をつけることを目的としています。

研修の具体的な内容は、以下の通りです。

  • 幼児教育の意義
  • 幼児教育の環境
  • 幼児の発達に応じた保育内容
  • 幼児教育の指導計画、記録及び評価
  • 小学校との接続

障がい児保育

「障がい児保育」の研修は、障がいへの理解を深め適切な保育計画を立て、1人ひとりの子どもの発達の状態に応じた保育を行う、実践的な能力をつけることを目的としています。

研修の具体的な内容は、以下の通りです。

  • 障がいの理解
  • 障がい児保育の環境
  • 障がい児の発達の援助
  • 家庭及び関係機関との連携
  • 障がい児保育の指導計画、記録及び評価

食育・アレルギー

「食育・アレルギー」の研修では、以下の能力をつけることを目的としています。

・食育への理解を深め、食育計画の作成と活用ができる力

・アレルギー対応への理解を深め、適切にアレルギー対応を行える力

研修の具体的な内容は、以下の通りです。

  • 栄養に関する基礎知識
  • 食育計画の作成と活用
  • アレルギー疾患の理解
  • 保育所における食事の提供ガイドライン
  • 保育所におけるアレルギー対応ガイドライン

保健衛生・安全対策

「保健衛生・安全対策」の研修では、以下の能力をつけることを目的としています。

・保健衛生の理解を深め、適切に保健計画の作成と活用ができる力
・安全対策についての理解を深め、適切な対策を講じることができる力

研修の具体的な内容は、以下の通りです。

  • 保健計画の作成と活用
  • 事故防止及び健康安全管理
  • 保育所における感染症対策ガイドライン
  • 保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン
  • 教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン

保護者支援・子育て支援

「保護者支援・子育て支援」の研修では、保護者や子育ての支援について理解を深め、適切な支援を行える、実践的な能力をつけることを目的としています。

研修の具体的な内容は、以下の通りです。

  • 保護者支援・子育て支援の意義
  • 保護者に対する相談援助
  • 地域における子育て支援
  • 虐待予防
  • 関係機関との連携、地域資源の活用

参考:厚生労働省「保育士等キャリアアップ研修の分野及び内容」

職務分野別リーダーになるメリット

ここからは、職務分野別リーダーになるメリットを紹介します。

具体的には、主に以下3つのメリットがあります。

  • 収入が増える
  • キャリアアップを目指せる
  • 保育の専門的な知識を学べる

職務分野別リーダーになるかどうかを悩んでいる方は、ぜひ読んでみてくださいね。

収入が増える

1つ目のメリットは収入が増えることです。

職務分野別リーダーには、1人当たり約月額5,000円が加算されます。ただし、単純にこれまでの給与に5,000円が加算されるわけではありません。

加算額を受け取るのは保育園などの勤務先です。支給金額や分配方法は施設に一任されているので、5,000円より減額される可能性も十分にあります。

とはいえ、勤務先によっては、満額支給するケースもあります。月に5,000円あれば、年間で6万円もらえることになります。日々の暮らしの助けになるのではないでしょうか。

キャリアアップを目指せる

2つ目のメリットはキャリアアップが目指せることです。

職務分野別リーダーは、保育士として勤務した年数が3年と挑戦できるポジションです。

出典:厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ

職務分野別リーダーは、キャリアアップの中で最初の入り口でもあります。

その後さらに経験を積むことで、「副主任保育士」や「専門リーダー」などのポジションを目指せます。

ゆくゆくは主任保育士や園長を目指したいと思っている保育士さんにとって、キャリアを積む第一歩となるでしょう。

保育の専門的な知識を学べる

3つ目のメリットは、保育の専門的な知識を学べることです。

職務分野別リーダーになるには、担当分野のキャリアアップ研修を受けなければなりません。15時間以上の研修なので全て受講するのに2、3日かかることが多いでしょう。

保育士の研修は、運営法人が開催するものや園外で開催されるものもありましたが、キャリアアップ研修は各都道府県で定期的に開催されています。

これまでなかなか研修に参加できなかった分野でもこの機会に学んでみてはいかがでしょうか。

またキャリアアップ研修をきっかけに得意分野ができ、今よりやりがいを感じられる機会が増えるかもしれません。

職務分野別リーダーの自己評価の書き方

保育士の自己評価は、自身が実践してきた保育を振り返り次年度の保育や自己成長に役立てる取り組みです。

自己評価の項目は「保育所保育指針」にも設けられており、以下のような目的から保育所など、多くの施設で実施されています。

  • 人事評価への活用
  • 保育所など施設全体の目標達成
  • 保育の質の確保、向上
  • 人材育成

参考:厚生労働省「保育所保育指針

また保育士自身にとってさまざまなメリットが得られます。

・自分の現状を振り返り、課題を見出せる
・スキル向上のきっかけとなる
・仕事へのモチベーションが上がる
・子どもや保育への気づきを得て、理解を深められる
・保育所などの施設全体の保育内容や方向性を認識する機会となる

参考:厚生労働省「保育所保育指針

職務分野別リーダーは、以下のような点を意識して自己評価をするとよいでしょう。

  • 保育園が求める自分の役割は何だったか
  • 役割に対してどう貢献してきたか
  • 身に付けた知識やスキルをどう活かしてどのような結果になったか
  • 結果を踏まえ今後どうしていきたか
  • 専門リーダーなど他役職の先生とどのように連携したか
  • 今後のスキルアップ、キャリアアップへの展望 など
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職務分野別リーダーまとめ

おさらいとなりますが、職務分野別リーダーは、2017年に導入された国の制度「処遇改善等加算Ⅱ」に伴い、設置された保育士のポジションです。

それまでの保育業界の課題であった保育士の賃金や離職率などの改善をするため、保育士のキャリアアップと待遇改善の両方をかなえる仕組みとして導入されました。

職務分野別リーダーになるための3つの要件は以下でした。

  1. 経験年数概ね3年以上
  2. 担当する職務分野(6分野のうち1つ)の研修を修了
  3. 職務分野別リーダーとして法人から任命される

現場で保育士として働きながらも、それぞれの分野で中心的な存在となり他の職員への助言や研修を行うことなどがあります。

職務分野別リーダーになるためには、6つのキャリアアップ研修から1つ、受講修了する必要があります。

  • 乳児保育
  • 幼児教育
  • 障がい児保育
  • 食育・アレルギー
  • 保健衛生・安全対策
  • 保護者支援・子育て支援

そして、職務分野別リーダーになると以下のようなメリットがあります。

  • 収入が増える
  • キャリアアップを目指せる
  • 保育の専門的な知識を学べる

今後、保育士として働いていく中でよりキャリアアップをしたい方におすすめしたいポジションです。

職務分野別リーダーを目指すか迷っている方がいましたら、ご紹介した沢山のメリットがあるため前向きに検討することをおすすめします。

また、「職務分野別リーダーになっても処遇改善手当がもらえない」「キャリアアップしたいのに正当な理由なく自分だけ役職に就かせてくれない」など、どうしても自分だけでは解決できない場合は、思い切って転職を選んでみるのでも一つの手です。

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