「保育士の借り上げ社宅制度は、2025年度から“1人1回限り”になるってホント?」
そんな不安を感じている保育士さんもいるのではないでしょうか?
確かに、制度には一部見直しがおこなわれていますが、すべてのケースが対象になるわけではありません。
実際には自治体ごとに対応が異なり、継続利用が可能な例外も存在します。
この記事では、「1人1回」の原則が導入された背景や例外条件、各地域の対応状況まで詳しく解説。
借り上げ制度の利用を検討している方はもちろん、すでに活用している方にも役立つ情報をお届けします。
保育士の借り上げ社宅制度は1人1回しか使えなくなるの?

保育士の家賃負担を軽減し、働きやすい環境を整えることを目的に始まった、保育士の借り上げ社宅制度。
2025年度から、横浜市をはじめ川崎市や松戸市など一部自治体で「借り上げ社宅利用は1人1回まで」に制限される運用が始まりました。
ただし、すべての自治体が即座に同じ対応をするわけではないようです。
子ども家庭庁による発表は?
子ども家庭庁が発表した、令和7年度予算関連資料では、「借り上げ社宅制度の全国的な見直しを進める方針」が示されています。
この中で、「一人一回限りの適用(やむを得ない事情により離職した場合を除く)とする」部分が盛り込まれました。
こちらの方針が確定になった場合、全国的にこの条件が各市区町村で適用される可能性がでました。
参考:子ども家庭庁「令和7年度 保育関係予算案の概要」
借り上げ社宅制度「1人1回」利用の定義とは?
「1人1回」とは、同じ人が制度を繰り返し利用することを原則として制限するルールを指します。
これまで一部の自治体では、転職のたびに新しい勤務先で再度制度を利用できるケースもありましたが、今後は「原則1人1回限り」とする運用が全国的に求められる方針です。
ただし、「1回」の定義は自治体によって異なり、たとえば転職先の自治体が違えば、再利用できるパターンや、ブランク後の再就職で例外が認められることもあります。
また、「1回」の基準も、「通算1年間」や「1就業先につき1回」など、運用ルールは自治体ごとに差があるため、必ず最新の募集要項を確認することが大切です。
この見直しの背景には、「限られた予算の中でより多くの保育士に支援を届ける」という目的があります。
今後の転職や引っ越しの際には、「過去に制度を利用したかどうか」が利用可否を左右する重要なポイントとなるため、注意が必要です。
参考:子ども家庭庁「令和7年度 保育関係予算案の概要」
借り上げ社宅制度が1人1回になることが確認できた市区町村
近年、一部の自治体では、借り上げ社宅制度の利用回数に明確な制限を設ける動きが進んでいます。
以下では、2025年度以降に「1人1回」のルールを明記した市区町村について、最新情報をまとめました。(2025年6月現在)
※保育士人材バンクが調査した内容に基づいており、実際の利用時には最新情報を市や法人に確認ください。
【横浜市】 全国通算で1人1回の制限導入済
横浜市は2025年度より、横浜市は「全国通算1回まで」の制限を導入しました。
他自治体ですでに借り上げ制度を利用している場合、横浜市で再度利用することはできません。
参考:保育士人材バンク「横浜市の保育士借り上げ社宅制度」
横浜市「令和7年度 制度変更点 「利用は 1 人 1 回まで」の詳細について」
【川崎市】 他自治体の利用歴があると利用不可
川崎市も横浜市同様に、全国通算「1人1回制」を導入済みです。
他自治体での制度利用歴がある場合、川崎市では再度利用できなくなります。
参考:保育士人材バンク「川崎市の保育士借り上げ社宅制度」
川崎市「川崎市保育士宿舎借り上げ支援事業」
【国立市】 同市内での再利用は制限・他自治体の利用歴は不問
国立市では、同市内での再利用については制限があるものの、他の自治体での利用歴は問われません。
具体的には、最終利用から1年が経過すれば再申請が可能とされており、一定期間を空ければ再度利用できるチャンスがあります。
参考:保育士人材バンク「国立市の保育士借り上げ社宅制度」
【松戸市】 全国通算で「1人1回」制限
松戸市では、全国どこで借り上げ制度を利用していても再利用は不可です。
5年以内の利用が可能な一方で、過去に一度でも同制度や類似措置を受けた方は対象外とされており、転職での再申請には注意が必要になります。
参考:保育士人材バンク「松戸市の保育士借り上げ社宅制度」
松戸市「松戸市の保育士確保に関する取組み」
【船橋市】 船橋市での再利用は不可、他市歴は不問
船橋市では、過去に船橋市内で借り上げ社宅制度を利用したことがある方は、再度の利用ができません。
一方で、他自治体での利用歴があっても制限の対象にはなりません。
つまり、船橋市内で初めて利用する方であれば、他市の利用歴があっても再度利用できる可能性があります。
参考:保育士人材バンク「船橋市の保育士借り上げ社宅制度」
船橋市「船橋市の保育士借り上げ社宅制度」
【その他】全国通算や再利用に制限のある自治体
以下の自治体でも、借り上げ社宅制度の利用において、「1人1回」などの制限が設けられています。
- 大阪府(池田市・松原市・箕面市・門真市)
- 兵庫県(神戸市・加古川市)
- 奈良県(奈良市)
- 佐賀県(唐津市)
- 沖縄県(沖縄市・豊見城市)
詳細な条件や例外の有無は自治体ごとに異なるため、事前に必ず確認しましょう!
※保育士人材バンクが調査した内容に基づいており、利用の際には最新情報を市や法人に確認ください。
参考:保育士人材バンク「借り上げ社宅制度 完全ガイド」
これまで通りかは不明な市区町村
「1人1回まで」という利用制限を設ける自治体が増える一方で、これまで通り使えるかの情報が出ていない市区町村があります。(2025年6月現在)
東京都23区
東京都23区では、今のところ「1人1回制」の情報は確認されておらず、複数回の利用や転職後の再申請が可能かを確認する必要があります。
区によって細かな制度内容には違いがありますが、原則としては従来通りの利用が可能です。
とくに東京で働き続けたい方にとっては、「転職しても借り上げ社宅制度が使える」という安心感があり、気になる求人がある場合やそのエリアでの勤務を希望する際には確認をとっておきたいですね。
東京都23区は保育園の数が多く、求人も豊富なため、地方から上京して保育士として働きたい方にとっても非常に魅力的なエリアです。
その他の自治体
上記に紹介をした以外の自治体では、これまで通り制度が運用されているか、現時点で制度変更の発表は確認されていません。
各自治体の制度は年度ごとに見直される可能性があるため、今後変更となる場合もあります。


借り上げ社宅制度を続けて利用できる条件

「1人1回まで」と制限されている場合でも、条件によっては引き続き制度を利用できるケースもあります。
利用から一定期間が経過している場合
市区町村によっては、前回の利用から1年以上経過していれば、再申請が認められる場合があります。ご紹介したように、東京都国立市などがこのケースに該当します。
利用歴が別自治体である場合
「1人1回制」の適用が“同一自治体内のみ”に限られているケースでは、転職先の自治体であれば再利用が可能な場合もあります。
事業者が変わった場合
同じ自治体内でも、前回と異なる事業者(法人)に就職した場合は、制度の再利用が認められることがあります。
産休・育休・介護休業後に復職する場合
産前産後休業・育児休業・介護休業などで一時的に利用を中断した場合でも、復職後に同じ法人に戻ることで再開できるケースがあります。
たとえば、休業により一度制度を解約したとしても、復職後に同一法人での勤務が続いていれば、借り上げ社宅制度を再申請し、再び利用を開始することが可能です。
このように、「1人1回」というルールがあっても、再利用が認められるケースも存在します。自治体や法人によって運用方針が異なるため、事前にしっかり確認しましょう。
参考:横浜市令和7年度 制度変更点 「利用は 1 人 1 回まで」の詳細について」
毎月の貯金シュミレーション
「借り上げ社宅制度があると、どれくらいお得なの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか?
ここでは、制度の有無によってどれくらい貯金額に差が出るのか、シンプルなケースで比較してみましょう!
※下記は手取り月収22万円、家賃8万円、生活費13万円で試算した一例です。
区分 | 手取り月収 | 家賃補助 | 家賃自己負担 | 生活費 | 毎月の貯金額 |
借り上げ制度【利用あり】 | 22万円 | 6万円 | 2万円 | 13万円 | 7万円 |
借り上げ制度【利用なし】 | 22万円 | なし | 8万円 | 13万円 | 1万円 |
借り上げ社宅制度を活用することで、毎月約6万円、年間で72万円もの貯金額に差が生まれます。
毎月の家賃を当たり前に払っている方も、借り上げ社宅制度を活用すれば、思いがけず生活にゆとりが生まれるきっかけになるかもしれません。
制度を上手く活用すれば、生活費の負担を大幅に軽減でき、将来のための貯金や自己投資にまわせるお金が増えます。
上京や一人暮らしを検討している保育士さんにとっても、大きなメリットといえるでしょう!
借り上げ社宅制度利用者の転職注意ポイント
転職を考える保育士さんにとって、借り上げ社宅制度が今後も使えるかどうかは大きなポイントです。
ここでは、制度を上手く活用しながら転職を成功させるために、事前に確認しておきたいポイントをまとめました。
転職先で制度が使えるか事前に確認を
転職後も借り上げ社宅制度を利用したい場合は、転職先が制度を活用しているか事前にしっかり確認しておきましょう。
自治体によっては、一部の施設が対象外となるケースもあるため、注意が必要です。
法人ごとの制度運用の違いを理解する
同じ自治体内であっても、法人によって制度の申請方法や補助のタイミングが異なる場合もあります。
転職後に「思っていたのと違う」とならないように、事前にしっかり確認しておくことが大切です。
「1人1回」制限の適用範囲をチェック
ご紹介したように、自治体によっては「1人1回まで」の利用制限を設けている場合があります。
市区町村をまたいだ転職ならOKというケースもあるので、細かなルールまで事前に確認しておくと安心です。
賃貸の契約は「法人」かどうかを事前に確認する
借り上げ社宅制度の多くは、保育園などの法人が物件を契約する仕組みです。
個人契約では対象外となるケースが多く、たとえ「制度を利用したい」と思っていても、勤務先の法人が契約をおこなっていなければ利用できません。
そのため、転職先が制度を利用できるかだけでなく、実際に法人が借り上げ契約をしてくれるかどうかも、あわせて確認しておきましょう。
制度目当てと思われない伝え方を
借り上げ社宅制度を利用したいという希望は自然なことですが、面接では「制度目当て」と受け取られないよう注意が必要です。
まずは、保育への想いや、転職の目的をしっかり伝えることで、採用担当者からの信頼につながります。
引っ越しを伴う転職はスケジュールを慎重に
新しい職場への転職と同時に引っ越しを予定している場合は、入職日や新居の契約時期に注意が必要です。
スケジュールがずれると、その月は借り上げ社宅制度の対象外となってしまうこともあるため、余裕をもって計画を立てましょう。


給料UPが望める転職方法

保育士として借り上げ社宅制度を利用する方の中には「収入を増やしたい」と感じる方も多いのではないでしょうか?
ここでは、給料アップを実現するために知っておきたい転職のコツをご紹介します。
待遇面だけでなく、働き方や将来のキャリアを見据えて、理想の職場を見つけるヒントにしてください!
待遇面の比較を事前にしっかりおこなう
求人票を見る際は、基本給だけでなく、手当や賞与・昇給制度なども細かくチェックしましょう。現職との違いを比べることで、納得のいく転職につながります。
キャリアアップを見据えた職場選びを
保育主任や園長候補など、将来的に役職を目指せる環境を選ぶことも収入アップの近道!スキルや経験が活かせる職場を探してみるのがおすすめです。
借り上げ社宅制度や各種手当の有無を確認
家賃補助や通勤手当など、給与以外の支援制度も実質的な収入に大きく影響します。福利厚生が充実している職場は、家計のゆとりにもつながります。
正社員採用を狙う
契約社員やパートよりも、正社員は安定した収入が得やすく、ボーナスや昇給のチャンスも豊富です。待遇面の充実を求めるなら、正職員が狙い目です。
転職エージェントを活用して好条件求人に出会う
保育士専門の転職エージェントを活用すれば、条件に合った非公開求人の紹介や、履歴書添削など転職に関わるさまざまなサポートが受けられます。
1人で探すよりも効率よく、希望に合った求人に出会えるのが大きなメリットです。
まとめ
2025年度以降、保育士の借り上げ社宅制度に、「1人1回まで」という利用制限を導入する自治体が増えています。
一方で、引き続き柔軟に制度を運用している地域や、例外的に再利用が認められるケースもあり、転職や再申請を検討している方は、最新情報の確認が重要です。
借り上げ社宅制度は、経済的な負担を減らし、貯金や生活のゆとりを生み出せる心強い支援制度。とくに上京や一人暮らしを考えている保育士さんにとっては、大きなメリットとなります。
保育士人材バンクでは、確認済みの最新制度情報に基づき、非公開求人のご紹介や条件面のサポートまで幅広くお任せいただけます。
自分に合った働き方を見つけたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。