「保育士を目指したいけれど、学費の負担が心配…」そんな不安を抱えている方に知って欲しいのが、保育士の修学資金貸付制度です。
この制度は、保育士養成学校に通う方を対象に学費や生活費を支援するもので、条件をクリアすれば返還が免除されるケースもあります。
本記事では制度の仕組みや条件、具体的にどの地域で使えるのかなどを詳しく解説します。
「経済的に不安だけど、保育士になりたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
保育士の修学資金貸付制度とは
「保育士になりたいけれど、学費や生活費が不安で進学をためらっている・・・」そんな方に向けた支援制度が、保育士の修学資金貸付制度です。
修学資金貸付制度は、将来保育士として働く意思を持つ学生に対して、学費や生活費などの経済的負担を軽減することを目的とした公的支援。
卒業後、一定期間保育士として働くことで貸付金の返還が免除されるケースも多く、進学・就職の両面を支える制度です。
ここでは、修学資金貸付制度の「目的」や「制度の背景」「問い合わせ窓口」など、制度を利用するうえで知っておきたい基本情報を分かりやすくご紹介します。
修学資金貸付制度の目的とは?
近年は、保育士のなり手不足が深刻な社会問題となっています。
実際に、子ども家庭庁が令和6年(2024年)におこなった調査によると、保育士の求人倍率は3.54倍。前年同月から0.42ポイント上昇しており、依然として高い水準です。
求人倍率の数字は、保育士1人に対して約3.5件の求人があることを意味します。
参考までに、全職種の平均求人倍率は1.35倍。この数字と比べても、保育士の人手不足がいかに深刻かが分かります。
こうした背景を受けて、国や自治体ではさまざまな保育士確保策を展開しており、その中の一つに修学資金貸付制度があります。
修学資金貸付制度は、保育士を目指す人の進学を後押しし、将来的に地域で長く働ける人材を育てることを目的に導入されました。
参考:
子ども家庭庁:「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」
どこに相談すればいい?制度の問い合わせ窓口
保育士の修学資金貸付制度は、都道府県や一部の市区町村が実施しているため、利用できる条件や支援内容は地域によって異なります。
そのため、まずはお住まいの自治体の公式ホームページや、進学を検討している保育士養成校に問い合わせするのが確実です。
具体的な相談窓口としては、以下のような場所があります。
- 各都道府県の「福祉保健課」や「子ども・家庭支援課」
- 保育士養成校の「進路支援センター」や「学生相談室」
- 市区町村の保育人材支援窓口 など
多くの自治体では制度の詳細や申請方法をまとめたパンフレットやWebページを用意しており、貸付額や返還免除の条件なども事前に確認することが可能です。
また、申請のタイミングや必要書類も地域によって異なるため、進学を検討する段階から早めに情報収集を始めるのがおすすめです。
修学資金貸付制度が使える条件

修学資金貸付制度を利用するには、以下のような条件を満たす必要があります。
ご希望の施設や地域によって細かい条件は異なるため、あくまで目安として参考にしてください。
保育士養成施設(指定校)に在学していること
修学資金貸付制度を利用できるのは、都道府県や市区町村が「指定校」として認めている保育士養成施設に在学している人です。
一般的には、保育士資格取得に対応していて卒業と同じタイミングで資格を取得できる短期大学・大学・専門学校などが該当します。
申請時に「進学予定」であっても利用可能な場合がありますので、これから進学を考えている方も一度確認してみるのがおすすめです。
保育士資格を取得する見込みがあること
修学資金貸付制度の目的は、将来、保育士として働く人材を育成・確保することにあります。
そのため、たとえまだ資格を持っていなくても「卒業までに保育士資格を取得する見込み」があれば申請可能です。
保育士試験ではなく、養成校でのカリキュラムを経て資格取得するルートを想定した制度が中心となっています。
卒業後、一定期間保育士として働く意思があること
修学資金貸付制度の多くは、卒業後に保育士として決められた期間働くことで、貸付金の返済が免除される仕組みです。
一例としては、対象となる自治体内の保育園・認定こども園・児童福祉施設などで「2年以上」継続して勤務することが求められます。
この勤務条件を満たせば、借りた全額の全額が返済不要になる可能性もあり、「学びながら将来の就職先も決まる」という安心感につながります。
住民票が対象自治体にあること(もしくは卒業後に移住する意思がある)
制度を実施している自治体では、その地域で保育士として活躍してもらうことを目的としています。
そのため、「現住所がその自治体にあること」または、「卒業後に移住して働く意思があること」が、申請条件になっているケースが多く見られます。
地方へのUターン・Iターン就職を考えている方にとっては、この制度を活用して地元に戻るきっかけにもなります。
年齢要件を満たしていること
修学資金貸付制度では、申請者の年齢に制限が設けられている場合があります。
「申請時に30歳未満」「原則40歳未満」など、自治体によって条件は異なりますが、こうした年齢要件は、若手保育士の確保と育成を重視しているためです。
すでに社会人経験がある方でも、条件を満たしていれば利用できる場合があるため、まずは年齢制限を確認してみましょう。
参考:
東京都社会福祉協議会:「保育士修学資金 貸付申込みのしおり」
厚生労働省:「保育士修学資金の貸付け等について」
千葉県「保育士修学資金等貸付制度のご案内」
かながわ福祉人材センター「保育士修学資金貸付事業のご案内」
千葉県福祉人材センター「~ 保育士修学資金貸付制度 ~」
修学資金貸付制度の貸付額
修学資金貸付制度を利用するにあたって、どのくらいの金額が借りられるのか返還は必要なのかといった点は、とくに気になるポイントだと思います。
ここでは、貸付される金額の目安や返還免除の条件など制度の具体的な支援内容についてご紹介します。
貸付される金額の目安とは?
修学資金貸付制度では、月額最大5万円程度の貸付を受けられる自治体が多くあります。
たとえば、東京都では、「月額5万円×24ヶ月」で、最大120万円の貸付が可能です。
自治体によっては学費の支払いだけでなく、通学費や教材購入などにも柔軟に使えるのが特徴です。
貸付金額や支給のタイミングは自治体によって異なるため、詳しくは各募集要項を確認しましょう。
入学準備や生活費もサポート対象に
修学資金貸付制度は在学中の授業料だけでなく、入学金や入学準備金・通学のための交通費、さらには生活費の一部までカバーされるケースもあります。
たとえば、初年度に別枠で「入学準備金20万円」「就職準備金20万円」などが上乗せされる制度も存在します。
学費の負担を大きく軽減できるため、経済的な理由で進学をためらっていた方にとっては非常に心強い支援策といえるでしょう!
返還免除になるための条件とは?
修学資金貸付制度の最大の魅力は、「一定期間、対象施設で保育士として働けば返還が免除される」点にあります。
多くの自治体では、「2年間以上、所定の施設で常勤として勤務すること」が免除の条件になっており、この要件を満たせば貸付額が返済不要になります。
ただし、途中退職や転職などで要件を満たさなかった場合は、返還義務が発生するため、あらかじめ制度の詳細を確認しておくことが大切です。


使える地域
修学資金貸付制度は、多くの自治体で実施されています。
なかでも保育士不足が深刻な都市部では、より積極的に支援制度を設けている地域が目立ちます。
ここでは、都心を中心としたおもな実施地域の例をご紹介します。
都心部では制度が充実!東京都・大阪府の場合
東京都や大阪府などの都心部では、修学資金貸付制度も手厚い内容となっています。
たとえば、東京都では、月額5万円の修学資金に加え、入学準備金・就職準備金としてそれぞれ20万円ずつ支給される制度が整備されています。
総額で最大160万円前後の支援を無利子で受けることができ、卒業後に都内の対象施設で5年間勤続すれば、全額が返還免許となるのが大きな特徴です。
大阪府でも同様に、月額5万円+準備金の貸付にくわえ、5年間府内での勤務で返還免除される制度が実施されています。
さらに、大阪府では生活福祉資金制度と併用可能なケースもあり、ひとり暮らしや家計に不安のある学生にとって、非常に頼れる制度といえるでしょう。
これらの自治体では、保育士確保に向けて金銭的支援と就業定着支援の両面から手厚いサポートがおこなわれているため、進学・就職を都心で検討している方にはとくにおすすめです。
参考:
東京都福祉局「保育士修学資金貸付事業」
大阪福祉人材支援センター「保育士修学資金 修学生募集要領」
千葉県・埼玉県・神奈川県など関東圏でも柔軟な支援体制
関東圏の各県でも、保育士の確保と定着を目的とした修学資金貸付制度が積極的に導入されています。
都心部に比べてやや条件が異なるものの、地域に根ざした柔軟な支援体制が整っているのが特徴です。
たとえば、千葉県や埼玉県では、月額5万円の貸付にくわえて、入学・就職準備金として各20万円が支給される制度があります。
また、一定の条件を満たすことで、生活費加算が受けられるケースもあり、経済的な支援を重視する方にとって心強い内容です。
神奈川県においては、県単体での制度にくわえて、一部の市町村が独自の貸付・補助制度を実施している場合もあります。これにより、在住地域や進学先によって、受けられる支援の内容にバリエーションがあるのが特徴です。
とくに関東圏では、地元での就職意思が強く求められる傾向があり、「資格取得後、すぐにその地域で就労するかどうか」が返還免除の条件に含まれることが多く見られます。
そのため、制度を活用する際は、進学先と居住地の制度を比較しながら検討するのが大切です。
進学前の制度確認や、各自治体への問い合わせを早めにおこなうことが、無駄なく制度を利用するポイントといえるでしょう!
参考:
千葉県福祉人材センター「保育士修学資金貸付制度」
埼玉県福祉人材センター「保育士修学資金貸付」
かながわ福祉人材センター「神奈川県保育士修学資金のご案内 」
在学中も就職後も安心!愛知県・名古屋市の支援制度
愛知県では、保育士を目指す学生への支援制度が充実しています。
たとえば、月額5万円以内の修学資金にくわえ、入学準備金・就職準備金としてそれぞれ20万円まで貸付が可能です。
2年制の短期大学や専門学校に通う場合、最大160万円程度の支援が受けられ、卒業後に県内で5年間保育士として勤務すれば全額返還が免除されます。
また、県内の政令指定都市である名古屋市では、さらに上乗せで奨学金返済支援制度を実施しています。
市内の民間保育施設に就職した保育士を対象に、年間最大12万円・最長3年間の返済支援が受けられる仕組みです。
在学中から就職後まで切れ目のないサポートが受けられるため、学費や生活費に不安のある方にとって、非常に心強い制度といえるでしょう。
参考:
なごやつなぐ保育士「保育士になるあなたへ」
愛知県社会福祉協議会「保育士修学資金貸付事業の概要」
福岡県・宮城県(仙台市)など、九州・東北エリアの事例
福岡県では、県内の保育施設への就職・定着を促すため、修学資金貸付制度にくわえ、保育士の職場環境改善や定着支援策を組み合わせて展開しています。
貸付金は月額5万円で、入学・就職準備金として各20万円の支給もあり、5年間の継続勤務で返還免除が受けられます。
一方、宮城県では仙台市を中心に、震災以降、子育て支援体制の強化が急がれており、保育士確保の施策として修学資金貸付制度が積極的に導入されています。
仙台市でも同様に、貸付金月額5万円、入学・就職準備金各20万円の支給があり、市内での5年間勤務を条件に全額返還免除となる点が特徴です。
どちらの自治体も、地域に根ざした保育士の育成と定着を重視しており、「卒業後は地元で保育士として働きたい」と考えている方にとっては、非常に活用しやすい制度といえるでしょう!
参考:
福岡県社会福祉協議会「保育士修学資金貸付事業」
宮城県社会福祉協議会「宮城県保育士修学資金等貸付事業 募集概要」
保育士の修学資金等貸付制度を見越して賢く転職
保育士不足が続く中、自治体ごとに実施されている「修学資金貸付制度」は、保育士として新たな一歩を踏み出したい方にとって非常に心強い支援制度です。
学費や生活費の負担を軽減できるだけでなく、就職先の確保や地元への定着支援にもつながる、まさに“学びと仕事”の両方を後押ししてくれる制度といえるでしょう!
また、制度によっては一定の期間働くことで返還免除の特典もあり、将来を見据えた転職・再就職を考えるうえでも、非常に大きなメリットがあります。
制度の内容や条件は地域によって異なるため、進学先や就職希望地の自治体情報をしっかりと比較・検討することが大切です。
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