保育士の資格や経験は、さまざまな職場で役立てられます。今回は、保育士の転職先や保育士資格を活かせる職場のご紹介や自分に合った求人を見つけるコツをお伝えします。
保育士資格が活かせる職場10選
子どもと向き合う仕事という点では同じでも、それぞれの役割や実際の仕事内容は異なります。今回紹介する職場は次のとおりです。
- 認可保育園
- 認可外保育園
- 認定こども園
- 小規模保育事業
- 事業所内保育園
- 院内保育園
- 託児所(一時保育施設)
- 幼稚園
- 放課後等デイサービス
- 児童発達支援
- 学童クラブ
それでは、保育士資格を活かせる職場を一つひとつ見てみましょう。
1. 認可保育園
認可保育園とは自治体が定めている認可基準を満たしている施設のことで、福利厚生や賃金などの待遇が比較的整っているのが魅力です。0~5歳児までの子どもを幅広く受け入れるため、保育士は年齢に応じた対応力が求められます。
また、一言で保育園といっても保育理念は施設ごとにさまざまです。そのため、転職先の保育園によっては、違った保育観を学べます。
複数の保育士がチームとなって協力し合うことが基本となるため、連携力やコミュニケーション能力を伸ばしやすい環境といえるでしょう。子どもの成長を日々実感できる、やりがいのある職場です。
- 公立、社会福祉法人、株式会社など、運営母体によって研修制度や給与形態、福利厚生が異なる。
- 行事の負担や事務仕事が多すぎないか確認し、ICTの導入やサポート体制があるかどうかチェックしておくと安心。
2.認可外保育園
認可外保育園は、英語教育やリトミック、食育など独自の保育方針やカリキュラムを実践している施設も多く、個性豊かな運営形態が特徴です。保育に対する情熱や、新しいことに挑戦する意欲が求められ、保育士自身の強みやアイデアを活かしやすい環境といえます。ただし、給与や待遇面のばらつきが大きいこともあるため、仕事探しの際は保育理念と合わせて契約内容もしっかり確認しておきましょう。
- 運営母体や規模が多様で、園ごとのカラーがある。
- 給与や勤務体系に差があるため、事前の情報収集が重要。
- 自身の強みを活かした保育やスキルを発揮しやすい。
3.認定こども園

認定こども園は、保育園と幼稚園の両方の機能をあわせ持つ施設です。0歳児から就学前まで幅広く受け入れて、乳幼児保育や幼児教育など幅広い活動をしながら子どもと関わることができます。保育士資格だけでなく幼稚園教諭免許も活かせるため、保育と教育のスキルを同時に伸ばしたい方におすすめです。
カリキュラムや行事の種類が比較的多いですが、そのぶん子どもの成長に繋がるさまざまなきっかけを作りやすく、保育士としてのスキルアップも期待できます。保育と教育両方の視点から子どもの成長をサポートできる一方、幅広い年齢に対応するため、臨機応変さが必要となります。
- 幼保連携型・幼稚園型など複数のタイプがあり、制度や運営形態・活かせる資格が施設によって異なる。
- 保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を取得していると、転職が有利になるケースが多い。
4.小規模保育事業
小規模保育事業は、0~2歳児を対象に少人数で運営される保育施設です。乳児保育に特化しているため、一人ひとりの発達や生活リズムに寄りそいやすく、深い信頼関係を築けるのが魅力です。
子どもの人数が少ないため職員の人数もコンパクトな場合が多く、保育士同士で連携し、日々の業務をカバーし合う柔軟さが必要となります。ミルクやオムツ替え、離乳食など乳児特有の専門知識やスキルを習得したい方におすすめです。
- 子どもの年齢は0歳から2歳で少人数の保育となるため、発達に応じたきめ細かなケアを実践しやすい。
- 保育士の人数は大規模園に比べて少ないため、シフトや業務分担のチェックが大切。
5.事業所内保育園
事業所内保育園は、企業が従業員の子どもを預かる目的で設置・運営している施設です。会社の勤務スケジュールに合わせたシフト制を取っている場合が多く、地域の子ども達をお預かりしていない場合は、土日休みの企業なら保育園も休みになり、夜勤やシフト制の企業では夜間保育を行うことがあります。職員同士だけでなく保護者とも距離が近く、仕事との両立を直接サポートするというやりがいがあります。企業独自の福利厚生が適用される場合もあるため、就業条件をよく確認しましょう。
- 保護者が同じ建物や敷地内にいる場合が多く、体調不良時などに素早く対応できる。
- 企業形態によって休みやシフトが異なるため、夜間勤務や休日保育の可能性があり開園時間をチェック。
- 小規模保育の場合が多く、一人ひとりに合わせた柔軟な保育がしやすい。
6.院内保育園
院内保育園とは、病院で働く医療従事者の子どもを預かるために運営している保育施設です。夜勤や土日勤務にも対応することが多く、変則的なシフトで働ける方に向いています。子どもの体調不良時は保護者にすぐ連絡できる半面、医療現場との連携が必要となる場合もあります。保育に携わりながら医療現場も支える役割は、一般的な保育園とはまた違ったやりがいを感じられるでしょう。
- 病院勤務のシフトに合わせ、夜勤や早朝保育を行うケースが多い。
- 医療スタッフと日常的に接するため、ケガや病気などの緊急時もスムーズに対応できる。
7.幼稚園
幼稚園は、3〜5歳の子どもを対象とした施設です。遊びを通した学びだけでなく、体操やリズム活動、英語など専門的プログラムを導入している園もめずらしくありません。正社員の求人では幼稚園教諭免許が必要になる場合が多く、集団教育のノウハウが身につきやすい環境です。行事や季節のイベントが充実しており、子どもたちの成長の変化を年度ごとに実感できるやりがいがあります。
- 土日休み、長期休暇が取りやすい場合が多く、働き方を整えやすい。
- クラス担任として子どもと深く関わり、行事や保護者との懇談など責任ある業務も比較的早くから経験できる。
- 基本的には幼稚園教諭免許を保有していることが必須の場合が多い。
8.放課後等デイサービス
放課後等デイサービスは、障がいのある小学生から高校生までを対象に、放課後や長期休暇中の生活支援を行う施設です。学習サポートやコミュニケーション訓練、社会性を育むプログラムなどを行い、一人ひとりの特性に合わせたサポートをしています。保育園とは年齢層が異なりますが、子どもの成長を支援するという点では同じです。
保育士としての観察力や柔軟な対応力が活かせるでしょう。また、保護者からも育児や発達に関する相談を受けることがあるため、専門的な知識やスキルも身に付きます。
- 小学生〜高校生が対象で、放課後や休日に勤務するケースが多い。
- 学習支援や社会的自立を促すプログラムなど、施設ごとに特色がある。
- 保護者や学校との連携が重要で、コミュニケーション力が活かせる。
9.児童発達支援
児童発達支援は、就学前の障がいを抱える子どもや発達に支援が必要な子どもに対し、療育や発達サポートを行う施設です。個別や小集団での活動が中心で、子どもの特性や成長段階に合わせたきめ細やかな指導が求められます。ほかの専門職(言語聴覚士、作業療法士など)とチームで対応するケースも多く、保育士としての視点を活かしながら関係機関と協力して支援計画を組み立てられるのが魅力です。
- 一般的な保育園と同じ年齢の子どもが対象となるため、保育経験を活かしながらキャリアをスタートできる。
- 保護者の悩みに寄り添い、家庭や関係機関との連携ノウハウや専門スキルが学べる。
- 療育や発達サポートの経験は、保育園や幼稚園などほかの施設でも役立つ。
10.学童クラブ
学童クラブは、放課後や長期休暇中の小学生が安全に過ごす場を提供する施設です。子どもたちの宿題サポートや遊びの見守り、行事やイベントの企画運営などを行いながら、子どもたちの社会性や自主性の育ちを支援します。
乳幼児保育とは違い、子ども自身の考えや意欲を尊重しながら働きかける必要があるため、あえて見守ったり子ども同士での解決を促したりと、その場の状況判断や柔軟なコミュニケーション力が求められるでしょう。保護者との情報交換し合う機会も多く、成長を一緒によろこぶ機会が大きなやりがいのひとつです。
- 小学生が対象となるため、生活習慣や学習習慣のサポートが中心。
- 学校や保護者と密に連携する必要がある


保育士経験が活かせる福祉施設以外の職場5選
保育士の経験やスキルは、保育以外の現場でも活かすことができます。家族で訪れる場所や子どもに関連する施設で子どもに慣れている保育士が重宝されるのはもちろん、保育士として培った力には他業種でも評価される能力も多いからです。
保育士の転職先におすすめの職場のなかで、今回は以下の5つをご紹介します。
- 営業職
- キッズスペースやキッズコーナー(商業施設)
- 介護士(介護福祉士)
- アパレル
- 給食関連
1.営業職
営業職は商品やサービスを提案・販売するだけでなく、顧客の要望を丁寧にヒアリングし、長期的な信頼関係を築くことが求められます。保育士として培ったコミュニケーション力や相手の気持ちに寄り添う姿勢は、営業活動の強みになるでしょう。
たとえば、子どもたちの微妙な表情や変化を感じ取ってきた経験は、何気ない会話からニーズを引き出したり、顧客自身もはっきりと整理できていなかった課題を発見したりする際に役立ちます。顧客に応じて提案内容を変えたり、相手の反応でさらにもう一プッシュしたりと、これまで身に付けてきた臨機応変さが応用できるでしょう。
【転職のポイント】
・保護者や子どもへの観察・質問が営業の商談にも活きる。
・長期的なやり取りで顧客と信頼関係を深める営業スタイルに向いている。
・コミュニケーション力を活かして営業成績が上がれば、収入アップにもつながりやすい。
2.キッズスペースやキッズコーナー(商業施設)
商業施設内のキッズスペースやキッズコーナーでは、親が買い物や食事を楽しむ間に子どもの遊びをサポートします。短時間での預かりが多いため、初対面の子どもともすぐに打ち解けるコミュニケーション力が欠かせません。子どもに対し、笑顔で丁寧に関わることに長けている元保育士にはまさにぴったりの職場です。
託児所や一時保育との大きな違いは、商業施設内のキッズスペースやキッズコーナーは比較的開放的な場所に設置されている点です。子どもの年齢層が幅広いため、ケガや迷子が起こらないよう、できるだけ死角を作らずにスタッフ同士での連携が必要となります。
【転職のポイント】
・土日祝や連休期間に利用者が増えやすく、繁忙期と閑散期で業務量が変わる。
・短時間パートやアルバイトが多いため、自分のスケジュールに合わせやすい。
3.介護士(介護福祉士)
介護職は高齢者や障がいを持つ方の生活全般を支援する仕事で、衣服の着脱や食事介助など「サポートする」という点で保育との共通項があります。保育士時代に身につけた観察力や相手のペースに寄り添う姿勢は、介護現場でも大きな武器になるでしょう。人と接することが好きで、相手の生活を支えるやりがいを感じたい方には、キャリアチェンジとしても検討できる選択肢です。
【転職のポイント】
・資格取得や研修制度が整っている施設も多く、未経験からでも始めやすい。
・保育と同様に「相手の気持ちに寄り添う」コミュニケーションスキルが重要となる。
・24時間体制の介護施設も少なくなく、シフト制勤務が一般的。
4.アパレル
アパレル業界では、子ども服売り場を中心に保育士の経験が活かせる場面があります。たとえば、試着の際に子どもが嫌がらないよう気を引く工夫や、動きやすい服を選ぶアドバイスなど、日頃の保育経験をベースにした接客ができるのが強みです。対人コミュニケーションが重要な業界でもあるため、親しみやすい雰囲気を持ち相手に合わせた言葉がけができる方は、即戦力として活躍できるでしょう。
【転職のポイント】
・土日祝や繁忙期に勤務が集中しやすい。
・子ども服売り場では着脱しやすさや安全性への理解が接客の強みにつながりやすい。
・ファッションが好きな人は、保育とは違う新たな楽しみを得られる。
5.給食関連
給食関連の仕事では、保育園や学校、給食センターなどで調理補助や献立作成に携わります。保育士経験を通じて得た「子どもの食習慣」「アレルギー配慮」「嫌いな食材を克服するコツ」などの知識は、給食づくりでも大いに活かせるでしょう。将来的に調理師や栄養士を目指す道もあり、子どもたちの健康を食事面から支えたい方にとってはやりがいのある職場です。
【転職のポイント】
・食材の切り方や固さ、味付けなど、子どもの発達段階に合わせた工夫が必要になる。
・調理だけでなく衛生管理やアレルギー対応など、幅広い知識を学べる。


保育士の働きやすい職場環境

保育士と聞くと「仕事が大変」「忙しい」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実は職場によって保育士の仕事内容や負担は大きく異なります。なかでも、保育士が「働きやすい!」と感じる職場には以下の傾向がみられます。
ICT導入に積極的
保育現場では、連絡帳や月案、シフト管理などをデジタル化する取り組みが進んでいます。専用アプリを導入することで、紙ベースで行っていた事務処理が大幅に削減され、保護者への連絡もスピーディーに行えるのがメリットです。保育園では連絡帳や月案、シフト共有などでICT化しているケースが多くみられます。
福利厚生が充実(給食補助・休憩時間・休日など)
保育士の負担を軽減し、長く働き続けてもらうために、福利厚生を手厚く整えている園も少なくありません。たとえば、昼食代を無料または補助している施設では、保育士の金銭的な負担を軽減するだけでなく、子どもと同じメニューを味わい食育に参加しやすいメリットがあります。他にも保育補助を雇い、保育士がしっかり休憩を取れるように、人手を増やしている職場も増えています。福利厚生が充実した職場は、心身ともに安定して働ける環境を求める方にとって大きな魅力といえるでしょう。
仕事の持ち帰りが少ない
行事の規模や子どもの定員数が少ない施設の場合は、残業や持ち帰り仕事が生じにくい傾向があります。求人情報に「残業なし」と記載されているケースもめずらしくありません。このような職場ではプライベートとの両立が図りやすく、負担を感じにくい働き方ができるでしょう。もちろん園ごとに違いはありますが、自分の希望するワークライフバランスに合った職場を選ぶうえで、仕事量が適切に抑えられているという視点は大切です。


自分に合った職場の探し方

保育士として働く職場を探す際には、給与や勤務地だけでなく、自分の保育観やライフスタイルに合った環境を見極める必要があります。ここでは、転職を成功させるためのコツをご紹介します!
条件を絞って検索する
保育施設は数が多いぶん、最初に「これだけはゆずれない」という条件を明確にしておくとスムーズです。賃金、立地、保育方針など自分が最優先にしたいポイントをリストアップしてから求人情報を検索しましょう。また、保育業界に特化した求人サイトや転職エージェントならICT化や細かな福利厚生についても確認できる場合があります。「ICT導入」「給職員給食あり」といったキーワードを見落とさないようにするのも大切です。
専門家に相談する
「自分ひとりで転職するのが不安」という方には、保育士専門の転職エージェントの活用がおすすめです。ヒアリングをもとに自分に合った求人の紹介を受けられます。また、一般公開されていない「非公開求人」の紹介を受けることもあり、好条件や高待遇の案件を紹介してもらえる可能性があります。
さらに履歴書の添削や面接対策、条件交渉の代行など、転職活動全般をサポートしてもらえる点も大きなメリットです。とくに仕事に就きながら転職活動を進める保育士にとっては、忙しいなかでも転職を進めやすく、自分の強みを客観的に整理する機会にもなります。初めての転職やブランクのある人でも、プロのアドバイスを受けながらスムーズに就職先を見つけられるでしょう。
「保育人材バンク」は全国の保育事情に精通したプロがサポートする転職エージェントです。すぐに転職したい方はもちろん、「情報収集したい」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
事前に見学・面接で確認する
求人情報やホームページだけでは読み取れない現場の様子を知るには、実際に園を見学し、スタッフや保護者、子どもの様子を確認するのが一番です。たとえば「職員同士はどの程度コミュニケーションを取れているか」「休憩はきちんと確保されているか」「ICT導入や残業削減の取り組みは実際に機能しているか」など、気になる点を質問してみましょう。面接時に園長や主任保育士に直接質問するのは緊張するかもしれませんが、入職後のギャップを減らすためにも遠慮なく確認することをおすすめします。
保育士の職場まとめ
保育士として活躍できる職場には、院内保育園や学童クラブ、さらには介護士やアパレル業界、給食関連まで、さまざまな可能性が広がっています。職場環境もICT導入や福利厚生の充実など、働きやすさを追求する施設が増加傾向にあります。
自分に合った職場を見つけるには、まず「どんな保育がしたいか」「どんな働き方を望むか」を明確にし、求人情報や見学を通じて具体的に確認することが大切です。また、転職エージェントを活用すれば、非公開求人の紹介や応募書類の添削サポートなどを受けられ、条件交渉もスムーズに進めることができるでしょう。
「保育士人材バンク」は全国の保育事情に精通したプロがサポートする転職エージェントです。すぐに転職したい方はもちろん、「情報収集したい」という方も、まずはお気軽にご相談ください。