子どもや保護者に寄り添い、日々子どもの成長を考える保育士にはさまざまなスキルが求められます。具体的にはどのような能力が必要なのでしょうか。今回は、保育士としてスキルアップをしたい方や「何を学べばいいのか分からない」という方に向けて、必要なスキルや学び方をご紹介します。
目次
保育士に必要なスキルとは?
初めからすべてにおいて完璧な人はいません。しかし、自分にスキルが備わっているかを常に振り返り、目標を掲げて行動することがとても大切です。
まずは、保育士に求められている基本的なスキルをおさらいしましょう。大まかに「適性・資質」「実践的なスキル」に分けられます。
適性・資質
保育士として働くうえで、もっとも重要なのは「子どもに寄り添う心」です。子どもが何を考え、何を楽しんでいるのかを常に観察します。保育士の一方的な思いではなく、常に子どもの視点に立って判断しなくてはいけません。やさしく声を掛けることはもちろんのこと、子どもが成長できるようなその時々の適切な関わりが分かることが大切です。
また、子どもだけではなく、保護者との関わりも多い保育士には、「コミュニケーション能力」も必要です。コミュニケーション能力が高いと、保護者から信頼を得やすく、安心して子どもを預けて貰えるようになります。
また、職員同士で連携する場面でも、コミュニケーション能力が高い方がいると、仕事が円滑に進み、チームワークが取りやすくなります。
実践的なスキル
一方で、保育現場では実践的なスキルも必要です。保育に活かせるスキルを身につけていれば、周囲から保育面に関する信頼も得やすくなります。
基盤として必要なのは、子どもの成長に関わる事など、日々の保育に直結する知識ですが、他にも音楽や絵画、運動に関する技術も保育の現場で活かせる機会がたくさんあります。とくに「ピアノ」は一定のスキルを必要としている保育園も多いため、身につけていると強みになるでしょう。
上記以外では、「防災や医療(応急処置)に関すること」も子どもの命を預かる上で必要な知識です。事故やケガは突発的に起こるため、冷静な判断と適切な対応が求められます。また、保育施設では感染症も流行りやすいため、病名と主な症状を覚えておくとよいでしょう。
別の観点では、「簡単なパソコンの操作能力」も必要な場合があります。保育士は意外と書類業務も多く、パソコンを使用する機会がたくさんあるものです。パソコンで行う仕事は簡単なものがほとんどですが、基本的な操作は自分でできるようになると、おたよりや指導案の作成等スムーズに業務を進めることができるでしょう。
各役職で必要なスキルは?
1年目と10年目の保育士が持つ悩みが異なるように、立場や役割によって求められるスキルも変化していきます。
ここからは、役職ごとにどんなスキルが求められているのかをピックアップしてお伝えします。
一般保育士に必要なスキル(新卒・未経験)
新卒や経験年数の浅い方は、まず社会人としてのマナーや園のルールを身につけ、「報告・連絡・相談」を欠かさないようにしましょう。
分からないことや、悩みがたくさんあることは恥ずかしいことではありません。見本となる先輩の保育をよく観察し、自分でも実践してみたり、直接聞いてみたりして、一つひとつスキルを身につけていくことが大切です。
実務では先輩保育士のサポートがありながらも、手遊びや絵本の読み聞かせから始まり、徐々に担う範囲が増えていきます。
仕事の大小に関わらず、任されている業務には責任を持って臨みましょう。焦らずに毎日少しずつ出来ることを増やしていけるとよいですね。
一般保育士に必要なスキル(保育経験2年目以降)
一般保育士として2年以上働くと、クラス担任を任されることが想定されます。
初めての担任で不安な事もあるかと思いますが、できる事を一つずつ増やしていくことは変わりません。
必要なスキルとしては、クラス全体を見る視野の広さや、保護者対応をしっかりと行なえるコミュニケーション能力を身につけていくと良いでしょう。
また、他クラスの担任の先生や主任の先生と色々な相談をする機会も増えていきます。上記に挙げた「報告・連絡・相談」の方法など、1年目に身につけたことも大きく役に立つことでしょう。
職務分野別リーダーに必要なスキル
3年以上の実務経験を持つ職務分野別リーダーになるころには、指示されていることだけでなく、プラスアルファの行動が求められるようになります。自分から仕事を進めていく積極性が重要になるでしょう。
また、新卒をサポートするポジションを担うこともあり、指導力も求められていくかもしれません。
自分の強みを活かしたり、新たなスキルを身につけたりと、保育士として一段階成長する時期ともいえます。
専門リーダーに必要なスキル
おおむね7年目以上でつく専門リーダーは、職場では中堅と呼ばれるポジションです。キャリアアップ研修で身につけた知識やスキルを活かし、現場では頼りにされる立場になります。
専門リーダーになるころには、目の前の仕事だけでなく、先を見通した計画力も求められます。後輩が担当している行事等にも、いつごろ準備に取り掛かれるか支障となる問題はないかなど、事前に予測しサポートする気配りを意識しましょう。
副主任に必要なスキル
副主任は主任を支え、各保育士の育成も担う役職です。また、園長や主任で話し決まったことを、現場の保育士に伝える役割をもつこともあるでしょう。そのため、相手にしっかりと情報を届ける伝達力や、その時々に応じて適切な対応ができる調整能力が必要です。
主任や園長との関わりも増えてきますので、上記以外にも様々なスキルを身につけるチャンスのある役職です。
主任に必要なスキル
園のサブリーダーである主任は、園長の代わりとして保護者や関係機関など来園者の対応を担うポジションで、相手の立場や状況に合わせた臨機応変な対応力が求められます。
園長には伝えにくい現場の不満や、悩みを聞く相談窓口となっているケースも多く、落ち着いた対応と幅広い視野が必要です。
日々色々な方から相談が来る立場でもあり、問題解決能力を身につけることで、一つひとつの課題や問題が大きくならずに園全体の運営がスムーズになります。
園長に必要なスキル
園長が担う業務は、施設全体の安全管理や資金管理、人事や採用まで多岐にわたります。どの仕事も重要ですが、とくにマネジメント能力とリーダーシップは必要不可欠です。子どもが生き生きと過ごせる環境づくりに努め、保育士から信頼されるリーダーを目指しましょう。
スキルアップ方法のご紹介
保育士がスキルアップする方法は、保育経験を積むこと以外にもたくさんあります。学び方によっては業務時間にスキルアップできる方法もあるでしょう。また、オンライン研修を活用すると忙しい方でも学ぶ事ができます。
他にも、「障がい児保育について学びたい」「リトミックについて知りたい」など、自分が学びたい内容が決まっている方は、目的に合った研修・勉強方法を選ぶのもおすすめです。
役職に付いている方は、役割に応じて必要なスキルを身につけるのもよいですね。
具体的には、以下の方法でスキルアップできますので、詳しく解説していきます。
研修に参加
保育士が参加できる研修には、行政や各企業によって開催される研修があり、種類もさまざまです。法人によっては研修を業務時間としてしっかりカウントしたり、積極的に参加を促したりするケースもあります。
他にも役職アップを目指す方なら、政府が導入した処遇改善制度の「キャリアアップ研修」への受講も選択肢のひとつです。8つの研修分野に分かれており、専門的な理解を深めることができます。
オンライン講座に参加
最近では、人数や場所を問わず参加できるオンライン講座も豊富です。開催される講座内容も多種多様なものがあり、子どもの発達が学べる講座や、従業員満足度向上の一貫として働きやすい環境づくりを学べる研修もあります。
開催数が多いので、自分の学びたい講座も見つけやすいでしょう。
通信講座を活用して勉強
欲しい資格や学びたいジャンルが定まっている方は、通信講座も選択肢のひとつになるでしょう。決まった時間に開催される研修と違って通信講座なら、好きなときに自分のペースで進められます。専門講師と相談ができる場合は、難しい点も相談しながら学び続けられるのがメリットです。
本などで独学
本などで独学するメリットは、始めやすさにあります。書店まで足を運べば、自分で中身を確認してから買えるのも魅力です。コストがかかりにくいため気軽に選びやすく、「やっぱり違うことを学びたい」と思った場合も切り替えやすいでしょう。
また、本であれば電車の中でも勉強でき、お手軽にスキルアップをすることができます。
転職をしてスキルアップ
転職もスキルアップ方法としておすすめです。
たとえば、今の職場が研修参加に積極的でない場合、転職によって研修に参加でき、自身のスキルアップが積極的にできる環境に身を置くことが可能になります。
また、食育や英語など、自分が伸ばしたい分野に力を入れている保育園へと転職できれば、考え方や子どもへの関わり方を実際に経験しながらスキルアップすることができるでしょう。
保育士のスキルアップができる資格をご紹介
保育士に必要なスキルは幅広く多種多様ですが、資格を取得することで自分の強みや専門性をさらに身につけることができます。保育で活かせるだけでなく、キャリアアップや転職時のアピールポイントになるでしょう。
ここでは、「どんな資格を選べばいいのか分からない」という方に向けて、保育士におすすめの資格をご紹介します。
リトミック指導員
リトミックとは音楽に合わせて動き、リズム感や運動能力などを育む教育方法のことです。リトミックに関わる資格には様々な種類があります。取得をするには養成校に通うほか、全国で開催されている資格講座への受講でも取得できます。
リトミックの活動をする際に、特別な資格が必要という訳ではありませんが、取得することで正しい知識と指導のスキルが備わり、保育園や幼稚園での活動に役立てられます。
近年では子どもに向けた活動だけでなく、社会人や高齢者に実施するケースも増え、需要が高まっている資格です。
おもちゃコンサルタント
おもちゃコンサルタントは、子どもの成長に合う適切なおもちゃを見定め、具体的な活用方法まで身につけることができる資格です。
おもちゃに関する認定資格として知名度があるため、転職時にもアピールしやすい資格です。「E ラーニングコース」を選べば、自宅にいながら学ぶこともできます。
絵本専門士
絵本専門士は、絵本や読み聞かせで幅広い知識と高いスキルを持っていると証明することができる資格です。
絵本専門士の取得講座を受けるには、保育士や幼稚園教諭などの資格に加え、絵本に関わる実務経験が3年以上必要です。
絵本に関しての資格には他にも「認定絵本士」もあります。
絵本の読み聞かせは保育現場で毎日のように行われていますので、すぐに実践でき資格を活かす場面も多いのが特徴です。
職務経歴書にはどのように書くの?
転職時は履歴書のほかに、職務経歴書の提出が求められる場合があります。
基本的な経歴を記載する履歴書とは異なり、職務経歴書は業務実績を具体的に伝えることができ、これまで積み上げてきたスキルをアピールするチャンスです。とくに、保育士以外の資格を取得している場合は、積極的に伝えることをおすすめします。
また、保育士以外の資格を書くときは、取得した日付を忘れずに記載し、記載した資格を保育の現場でどう活かしたかも書いておくとよいでしょう。
保育士がスキルアップをするメリット
保育士がスキルアップすることで、保育の質が高まり子どもにとってよい環境をつくることができます。また、保育士自身にも多くのメリットがあることを知っておきましょう。
- 保育の質が高まる
- 保育の専門性を身につく
- 保護者から信頼されやすくなる
- 転職時の武器となる
- 昇給アップに繋がる可能性がある
様々なスキルが身につくと保育士として仕事の幅が広がり、自分自身の成長を実感できることもあるでしょう。自信がつくことで、モチベーションアップにも繋がります。
また、強みが増えると転職活動の際にアピールポイントになり、その後のキャリアにもよい影響を及ぼす可能性があります。ぜひ、積極的に学び、スキルや資格を取得していきましょう。
保育士のスキルについてまとめ
保育士として必要なスキルは幅広く、さらには時代と共に変化することもあるでしょう。また、保育の現場では日々色々なことが起こり、その都度必要なスキルは変わってきます。
多種多様なスキルが求められる保育士として働き続ける為には、日頃からスキルアップをし続けることが大切です。
まずは自分が目指す具体的な保育士像や、理想とする働き方をイメージし、目標に近付けるようなスキルアップをしていけるようにしましょう。
ただ、今の環境ではスキルアップをしたくても出来ないという方は、思い切って転職を検討してみるのも一つの手です。
「保育士等キャリアアップ研修を自分だけ受けさせてくれない」「スキルアップの勉強をしたいけど、持ち帰りの仕事が多く時間が作れない」などでお悩みの方は、自分にあった職場を探してみても良いかもしれません。
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