この記事では、副主任とは何かをわかりやすく説明します。
副主任の役職や新設された経緯のほか、与えられる役割、待遇が具体的に知りたい方はぜひ読んでみてください。
副主任になるための方法や、求人の探し方も説明しているので、キャリアアップを目指す保育士の方にとって、実践的な内容となっています。
目次
副主任とは?
保育士の副主任は2017年に導入された国の制度「処遇改善等加算Ⅱ」に伴い、新たに設置されたポジションです。
「処遇改善等加算Ⅱ」は、中堅保育士のキャリアパスと待遇改善を目的に導入された制度こと。ここからは、この制度が導入された経緯を解説します。
元々、保育士としての役職には園長や主任保育士などの管理職しか存在しませんでした。しかし、役職が少ないことで、以下のような問題が生じていました。
・数少ない管理職で、施設全体を管理するのが難しい ・中堅保育士の明確な役割が決まっておらず、仕事量がかたよりやすい ・保育士のキャリアアップ・賃金改善が具体化されていない |
「処遇改善等加算Ⅱ」の制度がはじまる前は、国が定めた中堅保育士の役職は存在せず、いくら経験を重ねてもキャリアアップしにくく、給与なども改善されにくいという現実がありました。
こういった現状を打開するために「処遇改善等加算Ⅱ」の制度が導入されたのです。
副主任の役割って?
副主任の役割は、管理職である園長や主任をサポートする立場で、園全体の調整役を行い、現場をまとめることです。
「処遇改善等加算Ⅱ」で新たに導入されたポジションは、副主任だけではなく「職務分野別リーダー」と「専門リーダー」という、2つの役職も新設されています。
まず最初は職務分野別リーダーになることができ、さらにその経験を経て、ライン職の副主任保育士か、スタッフ職の専門リーダーを目指せます。
ここからは「処遇改善等加算Ⅱ」で新設された、ほか2つの役職と比較しながら、副主任の役割について、さらにくわしく解説していきます。
出典:厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」
副主任と専門リーダーの違い
副主任の役割は、専門リーダーと比較するとよくわかります。
副主任と専門リーダーは、経験年数などの条件が同じため一見似たような役職に思えますが、2つの役職の大きな違いは働き方にあります。
副主任がライン職に対して、専門リーダーはスタッフ職です。
具体的にいうと、副主任の仕事は、保育現場に入りながらも上役である主任保育士や園長などの管理職をサポートする仕事も行ないます。
一方の専門リーダーは、あくまでも保育の現場で働くことが基本です。専門知識やスキルを生かして、より実務的な課題解決などに取り組む役割が多くなります。
副主任と職務分野別リーダーの違い
副主任と職務分野別リーダーの大きな違いは、任される範囲と役割でしょう。
それぞれの役職に就くための要件となる、研修の受講数から見ても、職務分野別リーダーよりも副主任の方が、保育士としての知識やスキルが豊富といえます。
職務分野別リーダーは、1クラスや2クラスなどの一定の範囲をまとめる役割に対して、副主任は園全体や乳児、幼児などまとめ役となる範囲が大きい傾向にあります。
ただし、保育園によって各役職が担う仕事内容は違います。その役割に期待されている仕事内容を把握しておきましょう。
副主任の手当や給料はどのくらい?
副主任保育士になると、月額最大で4万円の手当を受けられます。
ただし、「処遇改善等加算Ⅱ」によって得られる補助金の分配方法は、保育士の雇用先の施設に一任されています。
補助金の分配は、対象となる役職ではない職員への分配も可能で、手当の金額の幅は5,000円~40,000円と施設の采配によって、受け取れる額が大きく変わります。
副主任の役職になるには、保育士としておおむね7年以上の経験が必要といわれていますが、以下の表は、保育士経験5~14年までの収入をまとめたものです。
最大4万円の手当が受けられた場合の加算額と、その手取り額も計算しているので、副主任に興味のある方は、チェックしてみてくださいね。
経験年数 | 平均月収 (手取り額目安) | 手当加算後の平均月収 (手取り額) |
5~9年 | 約25万円(約20万円) | 最大約29万円 (約23万円) |
10~14年 | 約26万円(約21万円) | 最大約30万円 (約24万円) |
※賞与は含まれていません。
出典:e-Stat_政府統計の総合窓口「令和5年賃金構造基本統計調査」
副主任になるための要件
副主任になるための要件は、以下の4つです。
1. 経験年数が概ね7年以上 2. 職務分野別リーダーを経験 3. 7分野のうち、4分野以上の研修を修了(うち1分野は「マネジメント」) 4.副主任保育士として発令 |
前提として、保育士として概ねですが7年以上の経験と職務分野別リーダーとして働いた経験が必要です。
※職務分野別リーダーについては「職務分野別リーダーの役割とは?役職に就くための研修や要件、メリットもご紹介!」の記事で、くわしく解説しています。
次に、各都道府県が実施するキャリアアップ研修で4分野(合計60時間)以上、受講しなければなりません。
また、副主任になるにはキャリアアップ研修の内「マネジメント」研修の受講が必須なので、その他3分野と併せて、計4分野を受講します。
研修を修了したら、保育所などの勤務先から正式に発令を受け、副主任として働き始めます。
副主任になるためには、発令のタイミングを見越して研修を受ける必要があります。
しかし実際には、要件の3つ目にあたる「研修修了要件」は、これまで適用されておらず、2022(令和4)年度までは、研修を受けずに副主任になることができました。
2023(令和5)年度からは、以下の図の通り、要件が段階的に適用されています。
発令が2025(令和7)年度の場合、前年度の2024(令和6)年度中に、3分野(45時間)以上の研修の修了が必要です。
その後、2026(令和8)年度以降に副主任になる場合には、本来の要件通り、前年度中に4分野(60時間)以上の研修修了が求められます。
研修内容については「副主任になるための研修」で、くわしく説明します。
副主任になるための研修
副主任になるためには、所定のキャリアアップ研修を受ける必要があります。
受講が必要なのは、全部で4分野以上ですが、うち1分野は「マネジメント」が指定されているので、残り3分野は以下6つの研修から選んで受けます。
・乳児保育 ・幼児教育 ・障がい児保育 ・食育・アレルギー ・保健衛生・安全対策 ・保護者支援・子育て支援 |
研修は1分野につき15時間以上の受講と定められており、修了には2、3日かかります。
どの分野の研修も、研修で得た知識を生かし、他の保育士に適切な助言や指導ができる、実践的な能力を身に付けるための内容になっています。
ここからは1つずつの分野内容について、簡単に解説していきます。
マネジメント
「マネジメント」の研修は、以下の能力を身につけることを目的としています。
・主任保育士の下でミドルリーダーとして働く際に求められる役割と知識の理解 ・施設の円滑な運営と保育の質を高めるために必要な、マネジメント・リーダーシップ |
研修の具体的な内容は、以下の通りです。
・マネジメントの理解 ・リーダーシップ ・組織目標の設定 ・人材育成 ・働きやすい環境づくり |
乳児保育
「乳児保育」の研修では、主に0歳から3歳未満児向けの保育について学びます。
乳児保育に関する理解を深めることで、子ども1人ひとりの発達具合に応じた保育を行う、実践的な能力をつけることを目的としています。
研修の具体的な内容は、以下の通りです。
・乳児保育の意義 ・乳児保育の環境 ・乳児への適切な関わり ・乳児の発達に応じた保育内容 ・乳児保育の指導計画、記録及び評価 |
幼児教育
「幼児教育」の研修では、主に3歳以上児向けの保育について学びます。
幼児教育に関する理解を深めることで、子ども1人ひとりの発達具合に応じた幼児教育を行う、実践的な能力をつけることを目的としています。
研修の具体的な内容は、以下の通りです。
・幼児教育の意義 ・幼児教育の環境 ・幼児の発達に応じた保育内容 ・幼児教育の指導計画、記録及び評価 ・小学校との接続 |
障がい児保育
「障がい児保育」の研修は、障がいへの理解を深め、適切な保育計画を立て、1人ひとりの子どもの発達の状態に応じた保育を行う、実践的な能力をつけることを目的としています。
研修の具体的な内容は、以下の通りです。
・障がいの理解 ・障がい児保育の環境 ・障がい児の発達の援助 ・家庭及び関係機関との連携 ・障がい児保育の指導計画、記録及び評価 |
食育・アレルギー
「食育・アレルギー」の研修では、以下の能力をつけることを目的としています。
・食育への理解を深め、食育計画の作成と活用ができる力 ・アレルギー対応への理解を深め、適切にアレルギー対応を行える力 |
研修の具体的な内容は、以下の通りです。
・栄養に関する基礎知識 ・食育計画の作成と活用 ・アレルギー疾患の理解 ・保育所における食事の提供ガイドライン ・保育所におけるアレルギー対応ガイドライン |
保健衛生・安全対策
「保健衛生・安全対策」の研修では、以下の能力をつけることを目的としています。
・保健衛生の理解を深め、適切に保健計画の作成と活用ができる力 ・安全対策についての理解を深め、適切な対策を講じることができる力 |
研修の具体的な内容は、以下の通りです。
・保健計画の作成と活用 ・事故防止及び健康安全管理 ・保育所における感染症対策ガイドライン ・保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン ・教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン |
保護者支援・子育て支援
「保護者支援・子育て支援」の研修は、保護者や子育ての支援について理解を深め、適切な支援を行える、実践的な能力をつけることを目的としています。
研修の具体的な内容は、以下の通りです。
・保護者支援・子育て支援の意義 ・保護者に対する相談援助 ・地域における子育て支援 ・虐待予防 ・関係機関との連携、地域資源の活用 |
副主任の求人探し方
ここからは、実際に副主任として働くための求人の探し方について、みていきましょう。
まずは副主任として働ける施設の条件を紹介します。
副主任として働ける施設の条件
副主任として働きたいと考えている場合、以下の条件を満たしている施設を探しましょう。
(1)認可外(無認可)保育所ではない (2)副主任や専門リーダー、職務分野別リーダーにあたる役職を設けている (3)「処遇改善等加算Ⅱ」への申請を行っている |
(1)認可外(無認可)保育所ではない
「処遇改善等加算Ⅱ」の対象となる施設は、認可を受けていない認可外(無認可)の保育所は、対象になりません。
(2)副主任や専門リーダー、職務分野別リーダーにあたる役職を設けている
副主任の設置を定めている「処遇改善等加算Ⅱ」は、保育士のキャリアアップを目的に設けられた制度で加算対象となる役職が定められています。
そのため、副主任・専門リーダー・職務分野別リーダーか、それと同じような役職が設けられていなければ対象となりません。
(3)「処遇改善等加算Ⅱ」への申請を行っている
「処遇改善等加算Ⅱ」への申請を行っていない施設は手当を受けられません。
園内で役職があったとしても、処遇改善等加算Ⅱとして申請していない場合は加算されません。したがって職員が受け取ることもできない、ということになります。
また申請を行うかどうかの判断は、施設にゆだねられています。
副主任として働きたいなら、「保育士専門の求人サイト」で探そう
先にご紹介をした副主任になる要件を確認しながらも、実際に副主任保育士として働きたい、副主任を目指したい場合、そののポジションで働ける人材を探している施設とマッチングするのが理想的です。
そのための求人を探すには、以下のような方法が考えられます。
・ハローワーク ・新聞や地域情報誌の求人欄 ・求人サイト |
これらの方法であれば、特定の地域の求人を網羅的にチェックすることができます。
しかし、今回のように、雇用条件を「副主任」に限定する場合には、求人サイトの中でも、保育士の就職・転職に特化した、「保育士人材バンク」を利用するのがおすすめです。
担当のキャリアパートナーと役職を意識しながら求人を探せるので、効率的な就職・転職活動ができます。
今はまだ、副主任の条件を備えていない方であっても、「副主任」の役職を設けている施設だとわかるので、将来的なキャリアプランを描きやすくなりますよ。
「処遇改善等加算Ⅱ」の制度の活用実績がある施設であれば、あなたの保育士としてのキャリアアップを後押ししてくれるでしょう。
副主任まとめ
副主任は、2017年に導入された国の制度「処遇改善等加算Ⅱ」に伴い、新たに設置された保育士の役職です。保育現場で働きながらも園全体の管理業務にも関わることができるポジションです。
将来的に、主任保育士や園長を目指したいと考えているのであれば、まずは副主任のポジションを目指してみるのはいかがでしょうか。
副主任としての仕事や経験は、キャリアや待遇面でメリットが大きいだけでなく、あなたを保育士として、大きく成長させてくれるはずです。
また「どうしても自分だけ不当に昇格をさせてもらえない」「役職に見合った給料がもらえていない」など、自分一人ではどうすることもできない問題があり、解決ができない場合には、転職を視野に入れるのも一つの手です。
保育士人材バンクでは、保育士専門のキャリアパートナーが、あなたに合った最適な転職先を探すサポートをさせていただきます。