フリー保育士とは、状況に応じて臨機応変に動く保育現場の心強い存在です。信頼されるポジションにやりがいを持っている方が多い一方で、フリーならではの悩みもあるようです。そこで今回は、フリー保育士の仕事内容を深掘りし悩みや解決策をご紹介します。
目次
フリー保育士とは?
フリー保育士とは特定のクラス担任ではなく、その日ごとにさまざまなクラスに入って保育を行う保育士のことです。人手が必要な配置に付き、求められている役割を担います。
基本的にはクラス担任のサポートに回ることが多いため、フリー保育士は経験年数の浅い保育士が担っているイメージが強いかもしれません。しかし、実際には、新人保育士だけでなくあえてベテランの保育士がフリー保育士として動いているケースもみられ、臨機応変さと幅広いスキルが求められるポジションです。
フリー保育士は、しばしば「保育補助」と混同されやすいですが、保育士資格を必要としない保育補助とは異なり、一般的に保育士資格を持つ方のことを言います。幅広い子どもと関わるため、年齢ごとの特徴や発達の知識など、保育の基本的な知識やスキルを身に付けていることが大切です。
フリー保育士の役割
フリー保育士が求められる場面は、「クラス職員の欠勤による人手不足が起きた場合」もしくは、「保育内容や子どもの様子に応じたサポートが必要な場合」です。
職員の休暇や、人手不足があらかじめ分かっている場合は、事前に配置が伝えられるケースもあります。「水遊び中のサポートが欲しい」など、保育内容まで決まっていれば、事前に着替えや持ち物の用意もするでしょう。
当日に配置が決まる場合は、フリー保育士の対応力が必要になります。給食の準備ひとつをとっても、0歳児クラスと5歳児クラスでは保育士の動きはまったくの別物です。基本的には、クラス担当の保育士から指示された仕事を担いながら、必要に応じてサポートを行うことになるでしょう。
仕事の内容
フリー保育士の具体的な仕事内容は、保育施設によって異なります。
フリー保育士がいてくれることで保育中の人手が手厚くなるだけでなく、クラス担任は連絡帳の記入や保育の準備、各種会議への参加など別の業務を進められます。
クラスに入らないときには、保育園全体の状況を把握しながら必要な業務を行います。いくつか例を上げると以下の仕事が想定されます。
- 行事の準備
- 書類の整理
- 保護者や関係機関からの電話対応
- 備品の管理・購入
- おもちゃの消毒
- 衣類や雑巾などの洗濯/清掃 など
フリー保育士が大切にすること
フリー保育士は、関わる子どもや仕事内容が日々異なるので「何を目指せばいいのか分からない」という方もいるかもしれません。仕事に就くうえでどんな目標を立てるとよいのか、経験年数別にご紹介します。
新卒でフリー保育士になった場合
経験年数が浅い方がフリー保育士を任された場合は、以下のポイントを意識してみてください。
- 各クラスの子どもと積極的に関わる
- クラス担任になるときに備えてクラス運営の方法を学ぶ
- 他の先生たちと積極的にコミュニケーションをとる
新卒の方こそ、フリー保育士の経験は絶好のチャンスです。さまざまなクラスに関わりながら、担任の先生のクラス運営のやり方を見て学ぶことができます。保育に入ったときに分からなかった所や、学べる視点があったら自分から積極的に質問をして、どんどん自分のモノにしていきましょう。
ベテラン保育士の場合
ある程度経験を積んだ方がフリー保育士になった場合は、クラスのサポートに加えてオールマイティなスキルが求められています。以下のポイントを意識してみましょう。
- サポートが必要な部分を察して自分から動く
- 良い部分や改善が必要なところを把握し、後輩の指導や育成に役立てる
ベテラン保育士になると、自分自身のスキルアップだけでなく、後輩育成も大切な業務になります。良い点を褒めたり、困っていることがないか気遣ったりして、実際にクラスに参加したときの気づきを指導や育成に活かしましょう。
よくある悩み
フリー保育士にはメリットがたくさんありますが、一般の保育士とは違った悩みを抱えてしまうこともあるでしょう。フリー保育士によくある悩みと、おすすめの解決策について解説します。
信頼関係の構築
フリー保育士のよくある悩みのひとつが子ども達との「信頼関係のつくり方」です。子どもたちは、基本的に接する時間の長い保育士のほうが心を開きやすい傾向にあります。自分をより知ってくれている大人に信頼を寄せるのは、ごく自然なことです。
さまざまなクラスに入るフリー保育士は、子どもと関係を築くまでに時間がかかりやすいため、少しさみしさを覚えてしまう方もいるでしょう。
解決策
信頼関係が築けるまでに時間がかかっても、子どもへの関わりはけっして無駄にはなりません。一人ひとり焦らずにじっくりと関わっていきましょう。子どもの興味や関心ごとを把握しておくと仲が深まりやすくなります。特徴や性格、会話や一緒に遊んだおもちゃをメモに残しておき、関わりのきっかけにしてみるのがおすすめです。
居場所づくり
さまざまなポジションにかかわるフリー保育士ですが、裏を返せばどこにも所属していないということでもあります。フリー保育士の人数は一般の保育士と比べて少ないため、孤独感を感じてしまう方もいるようです。
解決策
居場所づくりのための解決策は2つあります。
ひとつ目は「クラス担任の保育士と積極的にコミュニケーションを図ること」です。保育士も一人ひとり個性があるため、フリー保育士に頼みたい仕事をうまく伝えきれていない場合があります。コミュニケーションの取り始めは、行動の指示を仰いだり、子どもとの関わり方を相談したりして、仕事を会話のきっかけにしてみましょう。保育現場では保育士の連携がとても大切ですので、保育士同士の信頼関係が深まるほど働きやすさも高まります。
ふたつ目は、「上司に相談すること」です。仕事内容の幅が広く、辛いと感じている場合など、上司や主任の先生に相談をしてみましょう。仕事の進め方や考え方など同じ苦労を乗り越えている方はいるはずです。自分のスキルアップの良い機会と捉えて、色々と学ばせてもらいましょう。
また、担任を持ちたいと感じている場合は、次年度に向けた意向調査で伝えてみるのも選択肢の一つです。上司に気持ちを伝えるのは勇気がいりますが、前向きな希望なら「意欲がある」と保育園側にプラスに伝わりやすいでしょう。自分がよりよい環境で働くために、道を切り開くのもおすすめです。
自己評価の書き方
自己評価の要となる「目標の設定」は、よりよい保育を行い、保育士としてのスキルアップを図る上でも重要な取り組みです。目標設定は具体的な内容にする必要があります。しかし、対応範囲が幅広いフリー保育士の場合、自己評価で何について書けばいいのか困ってしまう方もいます。
解決策
フリー保育士が目標設定を行う場合は「どのようなサポートが求められているか」をイメージしてみましょう。実際にクラス担任や上司に頼まれた内容をヒントに目標設定してみるのもおすすめです。たとえば過去に「公園に出かけている間に給食の準備をしておいてください」と指示があった場合は、「日常的な保育の流れを覚えて、先回りした行動を取る」という目標を掲げてもいいでしょう。経験年数や今の保育スキルを振り返り、一歩先の目標に向かってスキルアップを目指してください。
自己評価については、以下の記事でも詳しく解説しています。
>>【徹底解説】保育士の自己評価とは?振り返りのポイントや書き方をご紹介!(例文付き)
フリー保育士のやりがい
フリー保育士には大変さがある一方で、幅広い業務を担う役割ならではの良さがあります。実際に働くと、どのようなやりがいを得られるのでしょうか。
多くの子どもと関われる
さまざまなクラスに出入りするフリー保育士は、多くの子どもと関わる機会が持てます。「乳児の食事介助のやり方」「年長児の製作の進め方」など、クラス職員にしか分からない年齢ごとのポイントやクラス運営を間近で勉強できるでしょう。幅広い知識を得ることで、担任を任された際、大いに役立ちます。
また、「どのクラスに入っても子どもから顔を覚えてもらえている」ことも、おおきなやりがいでしょう。子どものなかには、クラス担任には言いにくいことでも、フリー保育士なら言いやすいというタイプもいます。各クラスに入り、信頼関係を結べるまで時間がかかることに悩む場合もあるかもしれませんが、むしろすべての子どもと信頼関係を結ぶチャンスがあるとも言えます。「〇〇先生、待ってたよ!」と言ってもらえる日もあるかもしれませんね。多くの子どもと関われる毎日に、フリー保育士として大きなやりがいを感じられるでしょう。
クラス担当の保育士や園長から信頼される
フリー保育士が保育のサポートから手が回りきらない仕事まで担っているからこそ、日々の保育運営はスムーズに進められます。クラス担任や園長にとって、フリー保育士は縁の下の力持ちです。
周りから言ってもらえる「頼りにしています」「いつもありがとう」という感謝の言葉がやりがいへと繋がるでしょう。
フリー保育士のメリット
フリー保育士として働くと、次のようなメリットが得られます。
- 客観的に保育園全体を見渡せる
- 人間関係に縛られにくい
- 多種多様な仕事ができる
フリー保育士はクラスに所属していないからこそ、冷静にクラスや保育園全体の状況を感じ取れます。常に客観的な視点を持てるのがもっとも大きなメリットです。多くの保育士と関わるため、自分に足りないスキルを見つけたり、他の保育士のやり方を参考にしたりと、スキルアップに繋げることもできます。
また、同じ保育士と長時間過ごすことがないため、適度な距離感を保ちやすい点もポイントとなるでしょう。
他にも、担任と比べて事務仕事や打ち合わせなどクラスに特化した仕事より、その時々で必要な仕事をしていきます。クラス関係の仕事を手伝う日もあれば、行事など園全体の運営に関わる仕事も経験できます。
フリーの経験が活かせる場面
フリー保育士で身についた臨機応変さや客観的な視点は、クラス担任になるとさらに心強いスキルとなります。保育士の話に集中していない子どもや、困ったことを相談できずにいる子どもなど、前に立つ保育士には目が届きにくい子どもにも広くアンテナを伸ばせられるのが強みです。
また、フリー保育士の経験を持つ方は「どのような指示があると動きやすいのか」を知っているため、自分のクラスにフリー保育士や保育補助、実習生が入ったときに分かりやすく指示を伝えることができるでしょう。職員同士の円滑なコミュニケーションに繋がり、結果として子どもにとってよりよい環境が提供できます。
フリー保育士の経験を活かせる仕事
フリー保育士の経験を活かして別の仕事を探すなら、広い視野とコミュニケーション力が求められる職場がおすすめです。
保育現場で担任としての経験を積みたい場合は、「保育園」や「認定こども園」への転職も選択肢のひとつです。今、勤めている保育園で配置変更の望みが薄いようなら、転職も視野に入れてみましょう。きっと培われたコミュニケーション能力を活かすことができるはずです。
また、フリー保育士として発達障がいの子どもをサポートしていた経験がある場合は、放課後デイサービスや児童発達支援の仕事も経験を活かすこともできます。子どもとじっくり関わることができ、保育園で培った子どもとの関わり方も大いに役立てることができるでしょう。
他には、就学前の子どもと保護者が利用できる「子育て支援センター」が挙げられます。子育て支援センターでは、親子の交流や育児相談などを行っており、フリー保育士で身に付けた「限られた時間で信頼関係を積み上げる力」や「親子の様子に合わせて必要なサポートを行う力」が重宝されます。
フリー保育士まとめ
スムーズな保育運営のために尽力するフリー保育士は、保育現場でのオールラウンダーです。大変さも多いからこそ、フリー保育士だからこそ学べるスキルがたくさんあります。幅広い視野や高いコミュニケーション力は、今後担任を持ったときや転職時に自分を支えてくれる強みとなってくれるでしょう。
もし辛い状況になってしまったら、1人で抱えず周りの保育士に相談してくださいね。保育士同士が働きやすく、よりよい保育環境になるよう支え合いましょう。
また、フリー保育士をしていると「正当な理由がなく自分だけ担任をやらせてもらえない」という方や、「フリー保育士をしているうちに障がい児に関わる仕事をしてみたくなった」方など、様々な理由で転職を検討する場面もあるのではないでしょうか。
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クラスのサポートとして配置に付くときは、担任保育士がスムーズに保育できるよう立ち回ります。