結婚、出産、子育てをきっかけに保育士を辞めてしまった方の中には、もう一度保育現場で働きたいと復職を考えている方もいるかもしれません。
また、中には、保育士から他業種に転職してみたけど「やっぱり大好きな子どもと関わりたい」と復職を検討している方もいるでしょう。
とはいえ、ブランクのある保育士さんにとって復職は不安が大きいですよね。
本記事では、保育士に復職するときのポイントをご紹介します。
保育士に復職するメリットや、復職支援に役立つ制度、転職する際の志望動機の書き方など詳しくご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
保育士として復職するメリット
「家庭と両立できるか不安・・」「身につけた知識や経験が新しい職場で活かせるのか心配」など、復職に対して不安な方は少なくないはず。
しかし、保育士として復職することにはさまざまなメリットがあります。メリットを知ることで不安が少しでも軽減できるでしょう。
ここからは保育士に復職するメリットを一つずつ解説していきます。
社会貢献ができることにやりがいを感じる
もともと保育士は社会から必要とされる仕事ですが、とくに近年は待機児童問題や保育士不足、共働き世帯や単親家庭の増加により、ますます保育士が求められるようになりました。
そのため、保育士に復帰することは、大きな社会貢献につながります。
また、大切な命を預かる保育士は確かに大変な職業ですが、子どもたちの成長を身近で感じられるやりがいのある仕事です。子育ての悩みに寄り添いアドバイスができる保育士は、保護者にとっても心強い存在といえます。
保育士としてやりがいを感じられることは、復職するうえで大きなメリットといえるでしょう。
保育士として活躍しやすい
一度保育現場を離れた方の中には、「今でも働けるのか不安」「職場に迷惑がかからないか心配」と不安を抱く方もいます。
しかし、たとえブランクがあったとしても、働き始めると自然と体が動くものです。
保育士として培ってきた経験や知識は復職後にも十分活かせるでしょう。
また、出産や子育てを経験した方は、自身の子育て経験を活かした保育ができるのもメリットの1つ。保護者や子どもの気持ちに寄り添った丁寧な保育ができるでしょう。
保育士から他業種へ転職した場合も、業種は違っても社会人として積み上げてきた経験が復職後に活きるはずです。
さらに、保育園側にとっても新卒保育士を一から教育するより経験のある保育士を採用した方がすぐに活躍してもらえるというメリットがあります。
好待遇で復職できる可能性もある
好待遇で復職できる可能性があるのもメリットの1つです。
保育士の人材不足解消や離職率低下のために、政府はさまざまな施策を取り入れています。たとえば、パソコンやスマートフォンを活用したICTシステムの導入支援により、保育士の業務負担が減ってきている保育園もあります。
また、2013年(平成25年)に始まった処遇改善制度は、保育の賃金を底上げするために手当が支給されるようになりました。
それにより平成22年に325万円だった保育士の平均年収は、2019(令和元年)には364万円になっています。つまり39万円も上昇していることが分かります。
そのため、以前保育士として働いていたときよりも、働きやすい環境になっていたり、給料が高くなっていたりと好待遇で復職できる可能性があります。
参考:厚生労働省 『保育士の現状と主な取組』
復職補助制度を利用できる可能性がある
前述したように政府は保育士不足問題を解消するため、さまざまな施策を実施しています。
そのうちの1つが保育士の復職支援制度です。
このあと詳しく解説しますが、保育士の復職を応援するために各自治体がおこなっている制度です。
たとえば復職が決まった保育士さんに向けて、引っ越し費用や子どもの保育料を一部補助したり、未就学の子どもを優先的に保育施設へ預けたりできる制度があります。
これらの支援を上手く活用すれば金銭面に不安がある方、復職が心配な方でも安心して復職できるでしょう。
参考:東京都保健福祉局『おかえり保育士』
保育士の復職支援制度をご紹介
国や自治体は保育士の復職支援を後押しする、さまざまな取り組みをおこなっています。ここでは具体的に、どのような復職支援制度があるのかご紹介します。
また地域によって使える制度も異なりますので、自分が働きたい場所で使える制度があるか予めチェックしておきましょう。
保育士の復職支援制度①就職準備金貸付
保育士として復職する際に、就職に必要な準備資金の一部を貸りられる制度です。
一部自治体では『潜在保育士の再就職支援業』という名称の制度もあります。
貸付金の上限額は40万円で、引越し費用や通勤のための自転車、仕事に必要な備品などの一部を無利子で借りられます。
ちなみに、復職後2年間保育士として働けば、返還は免除される仕組みです。
なお、制度を利用するためには、下記の条件を満たす必要があります。
- 保育士として週20時間以上勤務する人
- 保育士登録をしてから1年以上経過している、もしくは保育士登録をしてから1年未満で養成学校の卒業または保育士試験合格から1年以上経過している人
- 保育所などを離職してから1年以上経過している人、もしくはこれまで保育所などに勤務したことがない人
参考:東京都『おかえり保育士』
参考:東京都福祉局 『保育人材確保の取組について』
参考:千葉市『保育士就職準備金貸付事業の実施について』
保育士の復職支援制度②保育所復帰支援資金
復職する保育士の子どもが保育園等に入園した際、保育料の一部を貸してくれる制度です。貸付額は保育料の半額で無利子で最長で1年間借りられます。
保育士として復職して2年間働けば返還免除ができる可能性があります。
週20時間以上保育士として勤務している方が対象となり、収入基準を満たす連帯保証人を1名立てる必要があります。
「保育料の負担が大きい」という方でも、安心して我が子を預けた上で保育士として働き始められるでしょう。
参考:東京都社会福祉協議会『未就学児をもつ潜在保育士に対する保育所復帰支援事業』
保育士の復職支援制度③未就学児をもつ保育士の子供の預かり支援資金
未就学児をもつ保育士が、ファミリーサポートセンター事業やベビーシッター派遣事業などを利用する際、利用料の一部を貸してもらえる制度です。
貸付額は、利用料の半額(年123,000円以内)で最長2年間借りることができます。
ほかの制度と同様に2年間保育士として働き続けることで、返済が不要になる場合があります。
仕事が忙しくなった時など、使える制度があることを覚えておくと何かの役に立つかもしれませんね。
参考:東京都社会福祉協議会『未就学児をもつ保育士の子供の預かり支援資金』
保育士の復職支援制度④就職支援研修・就職相談会
ブランクがある方の中には、「最近の保育事情が知りたい」「保育に関する知識が古いかもしれない」と心配な方もいるでしょう。
そんな方には、『就職支援研修・就職相談会』がおすすめです。
下記のような講義や、相談会を開催しているため、ブランクのある保育士さんでも安心して復職を目指せます。
- 現在どのような保育士が求められるのか
- 最近の保育事情について
- 就職活動のポイント
参考:東京都『おかえり保育士』
保育士の復職支援制度⑤就職支援セミナー
保育士を辞めてからブランクが長い方、保育園で働いた経験がない方には、『就職支援セミナー』がおすすめです。
講義と保育園実習が受けられるので、保育士に必要な専門知識や技術を学び直せます。
保育士としてブランクがある方でも、子どもとの関わり方や、事故や怪我の対応など、現場に活かせる内容を学べるので、復職に向けて前向きに準備ができるでしょう。
参考:東京都『おかえり保育士』
復職の保育士を必要とする理由とは
厚生労働省が発表した調査結果によると、2022年(令和4年)10月の保育士有効求人倍率は2.49倍です。全職種の平均は1.35倍なので、他業種と比べると保育士は人手不足ということが分かります。
また、近年よく耳にする問題が「待機児童問題」です。
待機児童とは、保育施設へ入所申請をおこなっているにも関わらず施設の定員がいっぱいで入所できない児童のこと。
この待機児童問題を受けて政府は保育士の人手を増やすために、さまざまな取り組みを進めてきました。
2021年には、新子育て安心プランを導入したことで保育施設の受け皿が増えました。それにより、2017年に26,081人いた待機児童が、2022年には2,944人まで減少しましたが、共働き世帯が増えたことで、保育の需要は高まっています。
内閣府の発表によると、働く夫と専業主婦の世帯は減り続けている一方で共働き世帯は増加傾向にあり、2001年と比べて2021年の共働き世帯は約1.5倍も増えていることが分かっています。
そのため、今後も保育士の需要は高まることが予想されます。
とくに保育経験がある潜在保育士は重宝されるでしょう。
参考:厚生労働省『保育士の有効求人倍率の推移(全国)』
参考:厚生労働省子ども家庭局保育課『令和4年4月の待機児童数の調査結果』
参考:内閣府『特-8図 共働き等世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯)』
保育士として働ける16施設
保育士が働ける職場は、保育園だけではありません。
保育士資格を活かして働ける施設は下記のとおりです。
- 保育園(保育所)
- 幼稚園
- 認定こども園
- 企業内保育所
- 病児保育室
- 院内保育所
- 放課後等デイサービス
- 児童発達支援
- 家庭的保育事業
- ベビーシッター
- インターナショナル・プリスクール
- 託児所
- 放課後児童クラブ(学童)
- 児童館
- 乳児院
- 母子生活支援施設
保育士資格を活かして働ける職場はたくさんあります。
仕事内容はさまざまですが、保育士としての経験やスキルを活かせるでしょう!
失敗しない復職のために
保育士として復職する上で、押さえておきたいポイントがあります。
気持ちよく働き始められるように下記のポイントを確認しておきましょう。
保育士証を確認する
保育士に復職する際、意外と見落としがちなのが『保育士証』です。
採用面接や入社時には、保育士証(コピー)の提出を求められるため、手元にあるか確認しておくのが大切です。
もし、働いていたのが平成18年以前という場合は、保育士登録をおこなう必要があります。
というのも、以前は『保育士資格証明書』『保母資格証明書』を持っていれば、保育士を名乗って仕事ができました。
しかし、平成15年に児童福祉法の改正で保育士として仕事をするためには、都道府県が管理をする『保育士登録簿』に登録しなければならなくなりました。
そのため、都道府県知事の名前が入った『保育士証』が手元にあるかどうか確認してみてください。
もし「保育士登録が済んでいない」「登録しているかどうか分からない」という方は、保育士登録機関である『登録事務処理センター』に確認しましょう。
ちなみに、保育士登録は一度おこなえば、再度更新の必要はありません。
氏名や本籍地を変更した際は、書き換え手続きが必要となるので、その際も『登録事務処理センター』に連絡が必要です。
参考:社会福祉法人日本保育協会『登録事務処理センター』
復職する上での希望条件を明確にする
復職してから後悔しないためにも復職する上での希望条件を明確にするのが大切です。
たとえば雇用形態や勤務時間、保育方針や福利厚生など保育園によってさまざまなので、自分の希望を整理しておく必要があります。
同じ職場で長く働き続けるためにも、自分にとって重視したいポイントを明確にするのが重要です。希望条件を明確にすることで、転職活動もスムーズになります。
研修やセミナーに参加する
ブランクがある場合、保育士として働いていたときの知識や経験が活かせるのか不安に感じる方も多いでしょう。
そこでおすすめなのが自治体や民間企業が主催している保育の研修やセミナーです。
保育士としての専門知識をアップデートすれば、不安を解消した上で復職できるでしょう。
また、研修やセミナーに参加すると同じように復職を考えている保育士さんに出会える可能性もあります。そこで悩みを共有したり、情報交換したりすることで復職への不安を和らげるきっかけになるかもしれません。
保育士に復職する時の履歴書の書き方
保育士の履歴書の書き方は、一般的な履歴書の書き方と大きな違いはありません。
しかし採用担当者はあなたのこれまでの経験やスキル、復職に向けた熱意を確認したいと思っています。
採用担当者に自分をアピールするための重要な書類なので、書き方のポイントをしっかり押さえておきましょう。
履歴書を書く際に意識したいポイントは下記のとおりです。
- 志望動機はその園ならではの理由を書く
- 自己PRは園が求める人物像を理解した上で、長所や経験と絡めてアピールする
- 短所は改善のためにどのように工夫しているのかも記載する
- 経歴には担任経験の有無なども入れて具体的に伝える
- 退職理由はポジティブな理由を記載する
再就職・転職する上で、履歴書は第一印象を決める大切な書類です。
しっかり自己分析した上で、即戦力と思ってもらえるように自分の強みや経験をアピールしましょう。
保育士に復職する時の志望動機の書き方
前述したとおり、志望動機には「その園ならではの理由」を記載するのが大切です。
採用担当者は、「どうしてうちの園で働きたいのか」「どの部分に興味をもって応募してきたのか」を重視して志望動機を確認しています。
どの園にも出せるような、ありきたりな志望動機はNGです。
志望動機を書く際は下記のポイントを意識して書いてみましょう。
- 転職理由はネガティブな表現は避ける
- 条件面や待遇面は触れず、保育に関係する内容を入れる
- 園独自の特徴や魅力に触れて説得力のある志望動機にする
- 今後のキャリアプランや保育士としての目標なども記載する
保育士の志望動機は、熱意や人柄を判断するための大切な書類です。
「たくさん保育園がある中でどうしてその園を選んだのか」「今後保育士としてどのように成長していきたいか」について詳しく記載しましょう。
産休・育休からの復職で気を付けるポイント
産休や育休から保育士に復職する方は、下記のポイントに注意しましょう。
子どもの預け先を決める
育休明けで復職する場合は、子どもの預け先を決める必要があります。
保育施設は保育園や幼稚園、託児所などさまざまありますが自治体の保育課や福祉課で情報を集めるのがおすすめです。
施設によっては空きがない場合もあるので、早めに確認しておくのがよいでしょう。
途中入園が可能なケースもありますが、一般的には4月入園に向けて10月~園児募集を開始する園が多いです。
前述したように、保育士の復職支援制度を利用すれば保育料の負担を抑えられたり、優先的に保育施設に預けられたりとメリットがあります。
保育士復帰に向けて早めに情報収集を始めて、安心して子どもを預けられる保育施設を見つけましょう。
負担の少ない働き方を検討する
フルタイムで保育士に復帰する選択肢もありますが、自分の子どもが預け先に慣れるまでは、パートやアルバイトなど負担の少ない働き方を選ぶのも1つです。
パートやアルバイトであれば、保育補助がメインとなるので子育てと仕事を両立しながら無理のない働き方ができるでしょう。
「生活に慣れてきたら正社員として働きたい」という方は、転職活動の際にその旨を伝えるのがおすすめです。
他業界に転職して保育士として戻る時に気を付けるポイント
他業種に転職して保育士に復職する場合、下記のポイントに注意しましょう。
ブランク歓迎の求人に応募する
一度他業種に転職した場合、保育士として問題なく働けるのか不安な方もいます。
その場合は前述したように研修やセミナーに参加して、保育について学び直すのもおすすめです。
また、保育園を選ぶ際「ブランクOK」などの求人に応募するのも1つです。
保育園側もブランクがあることを理解した上で受け入れてくれるため、安心して働き始めることができるでしょう。
体力をつける
他業種から保育士に復職する場合、体を慣らすことも大切です。
保育士は子どもを抱っこしたり、子どもと走り回ったりと体力が必要な職業です。
また、感染症が流行ることも多く体調管理も重要です。
他業種の仕事にもよりますが、事務員などデスクワークの仕事から保育士に復職すると、「体力的にキツい」と感じることもあるかもしれません。
復職して環境に慣れるまでは、体調を崩す可能性もあるため「体力をつけておく」「体調を整えること」を意識して新しい生活に備えましょう。
保育士に復職したいと思う理由
結婚や妊娠、異業種への転職など、さまざまな都合で一度保育を離れた方が「やっぱり保育士に復職したい」と思うのは下記のような理由が考えられます。
- 子どもの成長を見守ることでやりがいや達成感を味わえるから
- やっぱり子どもが好きだと思ったから
- 保育士資格を活かせるから
- 社会の役に立っていると実感できるから
保育士は子どもたちの命を預かる責任ある職業なので、大変なこともたくさんあります。しかし日々子どもたちと関わる中で成長を実感できたとき何物にもかえがたい、やりがいや達成感を味わうことができるでしょう。
また、保護者に感謝されることも多く保育士を続けてきてよかったと思える場面がたくさんあります。
「給料が高い」「仕事が多い」など、保育士はネガティブなイメージも持たれがちですが近年は保育士の働きやすさに向けて、国や自治体も力を入れています。
ご紹介したように、保育士の復帰を支援する制度も充実しているため悩んでいる方はこれをきっかけに、もう一度保育士として働いてみてはいかがでしょうか?
保育士への復職まとめ
保育士に復職するメリットや復職支援に役立つ制度、転職する際の志望動機の書き方などをご紹介しました。
ブランクがある保育士さんは、いざ復職するとなると不安があるかもしれません。
しかし、人手不足を抱える保育現場ではブランクがあっても経験がある保育士さんは重宝される傾向があります。
国や自治体、事業者は保育士の働きやすさのために、さまざまな制度を導入しており上手く活用することで少ない負担で復職できるかもしれません。
なお、保育士へ復職する上で大切なのが職場探しです。
保育士人材バンクでは、希望条件に合った求人をご紹介可能です。
ブランクがある方でも、転職に自信がない方でもご安心ください。
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「子育てが落ち着いたから、保育士に復帰したい」「自分に合った保育園へ転職したい」という方は、ぜひ一度ご相談してみませんか?