2024年に公表された「保育士等の人件費、10.7%引き上げ」。2024年12月には補正予算案が成立しており、2024年度分は4月から遡及の対象となるため、すでに手当が支給されている保育士の方もいるのではないでしょうか。

この記事では、保育士の賃上げについて気になる疑問などを、くわしく解説します。

保育士の人件費10.7%引き上げって本当?

保育士の賃上げは、本当です。

三原じゅん子こども政策担当大臣は、2024年11月の記者会見で「2024年度の保育士等の人件費を、前年度より10.7%引き上げる」旨を発表しました。

この内容を踏まえて提出された補正予算案は、同年12月に成立。およそ1,150億円もの予算が、保育士の賃上げに充てられることが決まりました。

子ども家庭庁:令和6年度保育関係補正予算の概要

保育士の賃上げはいつから?

それでは、10.7%の人件費UPは、いつから始まるのでしょうか。

今回の予算案が通ったのは2024年12月ですが、実際の人件費引き上げは2024年4月分の給与までさかのぼって行われるといわれています。

つまり、「保育士の人件費10.7%引き上げ」に伴う賃上げは、すでに始まっており、実際に支給されている人もいるということでしょう。

保育士の賃上げは一律10.7%ではない

保育士の賃上げがすでに始まっているのに「自分の勤務園では、まだ支給されていない」「手当は付くようになったが、10%も上がっていない」という方も多いのではないでしょうか。

実は、全ての保育士が、それまでの給与額の10.7%を一律受け取れるわけではありません。

10.7%というのはあくまでも、日本全国で働いている保育士の人件費全体に対する、加算の割合に過ぎないからです。

支給の有無や金額は、以下のような要素によって、変わります。

  • 勤務園やエリア
  • 園の采配
  • 保育士の勤続年数

勤務園やエリア

それぞれの保育園で必要となる保育の費用額は、国が定めた基準に基づき「公定価格」として算出されています。公定価格には、施設の定員数や預かる子どもの年齢が影響します。

また、この公定価格を大きく左右する要素の1つに「地域区分」があります。地域区分は、全国の市区町村を、物価や生活費によって分類したものです。

つまり、賃上げとしてそれぞれの保育園に支給される金額は、各園の状況や園のあるエリアによって異なり、改善額は必ずしも10.7%ではありません。

園の采配

保育士への賃上げによる支給額は、勤務園側の采配によって決まります。

そもそも、賃上げとして園に支給された費用が人件費に充てられるかどうかも、園が決めます。運営費や施設整備費といった、人件費以外の用途に流用されることもよくあります。

支給額の全額か、一部を人件費に充てるとしても全ての保育士に一律の手当が支給されるとは限りません。

日ごろの評価や役職などによって、支給額が決められることもあるでしょう。

保育士の勤続年数

今回の賃上げ率は、勤続5年ほどの若手職員の給与を基準に、算定されています。

そのため、この基準よりも年齢が高かったり、勤続年数が長かったりして、給与水準の高い職員には、10.7%より低い金額しか支給されない可能性が高いでしょう。

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パートは対象になる?

10.7%の賃上げは、保育士の人件費全体が対象とされているので、パート保育士も対象となる可能性があります。

ただし、前述した通り、賃上げの采配は、保育園などの雇用主側が行います。
園の判断によっては、パート保育士は加算対象とされなかったり、されてもわずかな金額しか支給されなかったりする可能性も、十分に考えられるでしょう。

賃金を上げる方法

賃金を上げる方法

ここでは、国の補助金などの制度による賃上げに頼らない、自分でできる賃金の上げ方について、解説していきます。

  • スキルアップする
  • キャリアアップする
  • 待遇のいい職場に転職する
  • キャリアチェンジする

ここからは、それぞれの方法について、1つずつみていきましょう。

スキルアップする

保育士としてスキルアップすると、給与を上げられる可能性があります。

保育士のスキルを上げるには、以下のような方法があります。

  • 本を読んで自主勉強する
  • 研修やセミナーに参加する
  • 資格を取得する

保育の方法や技術について知識を増やしたり、専門性を高めたりすることで昇給や昇進のチャンスを得られるかもしれません。

また、「処遇改善等加算Ⅱ」の対象となる研修に参加すると、賃金加算が受けられます。勤務園によっては、資格を取ると手当が得られる場合もあり、給料アップにつながるでしょう。

「処遇改善等加算Ⅱ」については「【2025年度(令和7年度)最新】保育士の処遇改善手当て、金額や支給条件などをわかりやすく解説!」の記事を参考にしてください。

キャリアアップする

今、保育士として働いている職場に勤め続けたいならキャリアアップを目指しましょう。

保育士に限らず、日本では勤続年数に応じて給料が上がる「定期昇給制度」が主流なので、勤める期間が長くなればなるほど、昇給していきます。

同時に、昇進を目指すとより給料が上がりやすいでしょう。

保育士の場合、職務分野別リーダーや専門リーダー→副主任→主任→園長(施設長)という順にキャリアパスを築いていき、昇進するごとに給与がアップします。

待遇のいい職場に転職する

思い切った行動に出るなら、転職活動をして現在の勤務園から、もっと待遇のいい職場に転職することをおすすめします。

前述の通り、1つの職場に勤務し続ければ、昇給するのが一般的です。しかし「定期昇給制度」を導入していない職場の場合、昇給がないケースもあります。

また、昇給されてはいても、金額が少なければ総額はあまり変わりません。元々の待遇があまり良くない場合、どれだけ長く勤めても望むだけの収入を得るのは難しいでしょう。

このような場合、今の勤務園に勤め続けるよりも、他の職場に移った方が給料アップを望める可能性があります。

ただし、転職による給料アップは、そう簡単なことではありません。

日ごろから保育の知識やスキルの習得に努め、自己研鑽を続けていれば、ほかの保育園からも「求められる人材」となれるのではないでしょうか。

保育士の賃上げまとめ

「保育士の人件費10.7%引き上げ」は、すでに始まっています。

ただし、全ての保育士に、それまでの給与の10.7%が加算されるわけではありません。

支給の有無や金額は、以下のような要素によって変わります。

勤務園の規模や状況、エリアによって各園への支給金額が算出されます。

実際にその収入を采配するのは、それぞれの勤務先である保育園です。園によって、全く支給されない場合もあれば、少額を支給される場合もあるでしょう。

また、自力で賃上げを目指す方法を探した方がいいケースもあります。

もし、保育士としての転職を考えているならば、「保育士人材バンク」をご活用ください。豊富な求人数で、効率的な転職活動がかないます。

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