保育所等訪問支援とは、「障がい児通所支援の一種で、通っている園や学校などに専門職員が訪問して支援を行う福祉サービスです。

この記事では、保育所等訪問支援の対象者や支援内容、利用方法など、概要をわかりやすくご紹介します。

この記事をお読みいただければ、保育所等訪問支援の概要や支援イメージがわかります。

また、記事後半では、訪問支援で働いてみたい方へ、就職や転職の前に知っておくべき訪問支援の仕事内容の概要やメリット・デメリットをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

保育所等訪問支援とは?

保育所等訪問支援とは?【保育士人材バンク】
保育所等訪問支援とは?【保育士人材バンク】

保育所等訪問支援とは、「障がい児を対象とした福祉サービスです。

デイサービスと異なり、子どもが通っている保育園・幼稚園・認定こども園・小学校などに支援員が訪問し、必要な支援を行います

頻度は月に1~2回ほどです。

保育所等訪問支援事業所から派遣される専門職員は、子どもが保育園や学校で集団生活に適応できるよう、専門知識をもってサポートします。

なお、保育所等訪問支援の根拠法は、「児童福祉法」となります。

保育所等訪問支援の定義

保育所等訪問支援の定義

児童福祉法 第 6 条の 2 の 2 第 5 項この法律で、保育所等訪問支援とは、保育所その他の児童が集団生活を営む施設として厚生労働省令で定めるものに通う障害児につき、当該施設を訪問し、当該施設における障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援その他の便宜を供与することをいう。

引用先:児童福祉法 第六条の二の二

保育所等訪問支援は福祉サービスのなかで障がい児通所支援」に分類されます。

保育所等訪問支援事業所とは

保育所等訪問支援事業所は、「2012年の児童福祉法改定により創設された、訪問支援員を派遣する施設です。

単独施設は少なく、児童発達支援センターなどに併設されているかたちが多くなっています(多機能型運営)。

事業所から、教育・保育の現場に専門知識のある支援員を派遣し、障がいのある子どもの社会生活をサポートします。

参考サイト:厚生労働省 障害児通所支援 厚生労働省 保育所等訪問支援の効果的な実施を図るための手引書

保育所等訪問支援の対象者は?

保育所等訪問支援の対象者【保育士人材バンク】
保育所等訪問支援の対象者【保育士人材バンク】

保育所等訪問支援の対象となるのは、「0~18歳の障がいや発達の遅れなどがある子どもです。

保育所等訪問支援を利用できる障がい例

保育所等訪問支援を利用できる障がい例
  • 発達障がい
  • 知的障がい
  • 身体障がい
  • 聴覚障がい
  • 視覚障がいなど

保育園や小学校など集団生活を送る施設に通う子ども、あるいは乳児院・児童養護施設に入所する子どもなどが対象となります。

参考サイト:厚生労働省 障害児通所支援

また、障がい児だけでなく、「どこか気になる」状態の子どもも利用可能です。

保育所等訪問支援を利用できる症状の具体例

保育所等訪問支援を利用できる症状の具体例
  • じっとしていられない
  • 集団行動が苦手
  • 言葉が遅い
  • こだわりが強い
  • 友達とトラブルが多い
  • 指示が通りにくい
  • 登園
  • 登校を嫌がる(不登校)
  • 勉強についていけない

医療的ケア児も保育所等訪問支援の利用は可能ですが、支援員に看護師はいないため、医療的ケアの実施はできません。

また、毎日の利用など頻繁な訪問も難しいでしょう。

年齢制限(利用可能年齢の上限)は18歳の誕生日を迎えるまでとなります。

保育所等訪問支援のやり方は?何をする?

次に、保育所等訪問支援の支援内容ややり方、時間・回数などをご紹介します。

保育所等訪問支援【支援内容】

保育所等訪問支援の支援内容は、大きく分けると「直接支援」「間接支援」があります。

保育所等訪問支援の支援内容【保育士人材バンク】
保育所等訪問支援の支援内容【保育士人材バンク】

例えば、発達の遅れがあり指示が通りにくい子どもに対しては、「直接支援」としてスムーズに集団活動に参加できるよう、支援員が子どもの側で見守りや声がけなどの後方支援を行います。

また、勉強に遅れがある子どもに対しては、「間接支援」として教材の提案をしたり、集中しやすい環境設定などを行ったりします。

先生に対しての発達課題の共有や支援方法の助言なども間接支援に含まれます。

保育所等訪問支援利用できる回数【月1~9回程度】

保育所等訪問支援の一般的な利用回数は、月に「1~2回」で、自治体により月「2~9回」程度まで利用できます。

厚生労働省から出されている手引書では、月に2回程度の利用が想定されています。

ただし、上限は子どもの状況に応じて変更可能となっており、支援の必要度により各自治体が必要な支給量を決定します。

支給量の上限目安はそれぞれの自治体ごとに定められており、多くとも上限5~9回程度が上限となっています。

参考サイト:厚生労働省 保育所等訪問支援の効果的な実施を図るための手引書 厚生労働省発表Q&A

保育所等訪問支援1回の訪問時間は1~2時間程度

時間に関する規定はなく、訪問時間は訪問先の活動内容などに合わせて決めるケースが多くなっています。

訪問時間の目安は1回の訪問あたり「1~2時間」程度です。

保育所等訪問支援訪問の時間帯はニーズに応じて調整

時間帯の規定もなく、「この時間に来てほしい」といった希望や利用者の課題に応じて訪問する時間帯を決めます。

例えば、「制作の時間に不器用さが目立つ」といったお子さんであれば、制作の活動時間にあわせて支援員が訪問し、支援に入ります。

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保育所等訪問支援の訪問先はどこ?

保育所等訪問支援の訪問先(対象施設)は、以下のとおりです。

保育所等訪問支援の訪問先【保育士人材バンク】

学校などの公的施設のほか、自治体が認めた「集団生活の場」であれば訪問が可能です。

保育所等訪問支援を利用するには通所受給者証が必要

保育所等訪問支援は「障がい児通所支援」という福祉サービスにあたるため、利用の際は自治体が発行する「通所受給者証」を発行してもらう必要があります。

通所受給者証とは

通所受給者証とは、障がい児通所支援に分類される福祉サービスを利用するための証明書。

児童発達支援や放課後等デイサービス利用も同じ受給者証を使用しますが、利用したいサービスごとに支給決定を受ける必要があります。

保育所等訪問支援を利用する場合の受給者証申請では、基本的に「診断書」や「手帳」は不要です。

ただし、自治体により「医師の意見書」もしくは「療育相談の実施」が求められることがあります。

通所受給者証【申請方法】

通所受給者証は、お住まいの自治体の「福祉窓口」で申請します(障がい福祉課など)。同時に相談支援事業所

※に相談すると、受給者証の申請手続き等をサポートしてもらえます(相談支援の利用が必須の自治体もあります)

※相談支援も福祉サービスのため、利用のためには別で支給申請が必要です

児童発達支援・放課後等デイサービスとの同日利用は可能

保育所等訪問支援は、「児童発達支援(未就学児のデイサービス)」もしくは「放課後等デイサービス(小学生以上対象)」同日利用が可能です。

保育所等訪問支援の利用料金は?

保育所等訪問支援の利用料金【保育士人材バンク】
保育所等訪問支援の利用料金【保育士人材バンク】

保育所等訪問支援の利用料金は、福祉サービスのため原則「1割負担」となっています。

1回あたりだと「1,000円」程度が目安です。

月に複数回利用する場合は、所得により上限額が決められており、年収900万円以下の一般世帯では月4,600円が上限目安となります。

また、上限金額は他の福祉サービスと合算されるため、デイサービスなどの利用があれば、あわせて月4,600円程度までが上限目安となります。

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保育所等訪問支援の流れ

保育所等訪問支援を利用するまでの流れ【保育士人材バンク】
保育所等訪問支援を利用するまでの流れ【保育士人材バンク】

保育所等訪問支援の流れとしては、お住まいの市区町村の福祉窓口へ、受給者証の申請を行い、支給決定後に保護者が保育所等訪問支援事業所と契約します。

そこから児童発達管理責任者が園や学校へ訪問や聞き取りを行い、子どもの課題や支援の必要度をチェックし「個別支援計画」を作成。

その後、園や学校と打ち合わせのうえ、訪問開始となります。

なお、手続きから利用開始までは1~2か月ほどかかります

保育所等訪問支援の【訪問支援員】専門職員とは

保育所等訪問支援の訪問支援員は、以下のような専門資格をもつ専門職員です。

保育所等訪問支援の訪問支援員

<基本職員>

・保育士・児童指導員

<訓練担当職員>

・理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)

<心理担当職員>

・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士など

保育所等訪問支援は児童発達支援と同じ分野の支援であることから、訪問支援員は保育士・児童指導員が基本となっています。

加えて、障害特性に応じてリハや心理の専門職員が訪問することもあります。

これらの資格に加え、障がい児支援に関する経験・知識を有していることも訪問支援員として認められる条件となります。

参考サイト:厚生労働省 保育所等訪問支援の効果的な実施を図るための手引書

保育所等訪問支援で働きたい方が知っておくべき概要

ここからは、保育所等訪問支援事業所で働きたいと考えている方へ、仕事内容や給料などの概要をご紹介します。

保育所等訪問支援事業所①【必要資格】

保育所等訪問支援で働くための「必要資格」としては、以下があげられます。

保育所等訪問支援【必要資格】

<責任者>

※個別支援計画作成・児童発達支援責任者

<基本職員>

・保育士・児童指導員

<訓練担当職員>

・理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)

<心理担当職員>

・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士など

加えて、障がい児支援に関する一定の経験・知識も、訪問支援員の要件のひとつです。

保育所等訪問支援の人員配置

なお、保育所等訪問支援事業では、必要な人員配置として以下が定められています。

保育所等訪問支援事業【人員配置】

また、これらを一人の職員が兼任することはできないとされています。

保育所等訪問支援事業所②【給料】

保育所等訪問支援で働く場合、給料は保有資格によって変わります

以下は、求人情報を参考にした給料の目安です。

資格名給料目安
児童指導員18~26万円
保育士19~26万円
リハスタッフ20~27万円
心理担当スタッフ22~30万円
児童発達支援管理責任者25~35万円

訪問支援員の給料は、障がい児支援の経験年数によって変わるケースも多いようです。

経験年数が長いほど、給料もアップします。

パートの場合、時給で「1,300円程度が相場です。

保育所等訪問支援事業所③【仕事内容】

訪問支援員の仕事内容は、以下があげられます。

保育所等訪問支援の仕事内容

保育所等訪問支援【仕事内容】
  • 訪問での個別支援
  • 先生への助言
  • 各種機関との連携
  • 教材準備
  • 記録等の書類作成
  • スケジュール調整
  • 個別支援計画、アセスメントシートの作成(児童発達支援管理責任者)

訪問支援員は、基本的に個別に動くことになるため、スケジュールを調整しながら園や学校と連携し支援日程を組んでいきます。

保育所等訪問支援事業所④【施設の数や形態】

保育所等訪問支援の事業所は、令和2年時点で全国に843施設と多くはありません。

参考サイト:厚生労働省 障害児通所支援

施設形態としては、単独型は少なく、発達支援センターなどに併設されるかたちが多くなっています。

設置基準が厳しく、事業所設置の敷居も高いため、今後は児童発達支援事業所や放課後等デイサービスと兼任のかたちで運営される「多機能型事業所」が増えていくと考えられます。

多機能型の場合、デイサービスのスタッフも兼任するケースがほとんどのため、訪問支援員以外のデイでの業務も仕事内容に加わることになります。

保育所等訪問支援事業所⑤【求人状況】

保育所等訪問支援は事業所数が少ないため、求人募集も少ない傾向にあります。

ただ、保育所等訪問支援に対する補助金は児童発達支援や放課後等デイサービスと比べても加算率が高く、国も支援に力を入れています。

そのため、今後は多機能型の運営で参入する事業者が増えてくると考えられます。

なお、公立の発達支援センターが保育所等訪問支援事業を担う場合には、訪問支援員も地方公務員である発達支援センターの職員が担当します。

発達支援センターで働くためには、自治体の地方公務員試験に受かる必要があります。

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保育所等訪問支援で働くメリット・デメリット

次に、保育所等訪問支援で働くメリットデメリットをご紹介します。

保育所等訪問支援で働く【メリット】

保育所等訪問支援で働く【メリット】
  • 専門性を高められる
  • 対象の子どもとじっくり関わることができる
  • 残業が少なく勤務時間を調整しやすい

保育所等訪問支援では、これまでの経験や知識をいかし、専門性を高めながら支援を行なっていきます。

誰でもなれる仕事ではなく、障がい児支援のプロとしてやりがいをもって働くことができます。

これまで児童福祉の分野で経験を積んできた保育士や児童指導員であれば、定形発達とそうでない発達の違いがわかるようになるなど、より専門性を高めることができるでしょう。

また、訪問の時間が決まっているため、残業が少なく勤務時間を調整しやすいのもメリットです。

保育所等訪問支援で働く【デメリット】

保育所等訪問支援で働く【デメリット】
  • 知識や経験、高い支援技術が必要
  • 施設への助言や連携のためのコミュニケーション能力が必要

保育所等訪問支援では専門職員として個別の支援を中心に行なっていくため、知識や経験、高い支援技術を必要とします。

施設や先生へ助言する立場でもあり、コミュニケーション能力も必要です。

療育や障がいに関して、日々勉強していく姿勢もプロとして必要といえます。

保育所等訪問支援の勤務に向いている人・向いていない人

次に、保育所等訪問支援に向いている人向いていない人の特徴をご紹介します。

保育所等訪問支援に向いている人

保育所等訪問支援【向いている人
  • 障がい児支援の経験や知識が豊富な人
  • 子どもだけでなく先生もサポートしたい人
  • 学び続ける意欲のある人

保育所等訪問支援に向いているのは、「これまで障がい児支援の分野で経験を積んできた人です。

訪問支援員として、存分に経験をいかすことができるでしょう。

これまでプロ意識をもって障がいのある子どもたちと関わってこられた方は、今度は子どもの支援だけでなく、先生方に対しても支援を行うことができます。

また、療育の知識や障がいに関する情報を知りたい、学びたいという意欲のある方も、保育所等訪問支援に向いているでしょう。

保育所等訪問支援に向いていない人

保育所等訪問支援【向いていない人】
  • コミュニケーションが苦手な人
  • 学ぶ意欲がない人
  • 子どもの毎日の成長を側で見守りたい人

保育所等訪問支援に向いていないのは、コミュニケーションが苦手な人」や、「学ぶ意欲がない人」です。

保育所等訪問支援では、子どもだけでなく、先生や各種機関の大人ともうまく連携をとっていかなければなりません。

また、保育所等訪問支援は月に2回程度の訪問が一般的なため、毎日じっくり関わって支援をしたい人には向いていないかもしれません。

保育所等訪問支援の求人の探し方

保育所等訪問支援の求人を探す方法としては、以下があげられます。

保育所等訪問支援の求人の探し方

保育所等訪問支援【求人の探し方】
  • 地域の情報誌や新聞の求人欄をチェックする
  • インターネットで検索する
  • ハローワークに行く
  • 保育士専門の求人サイトで調べる

保育所等訪問支援の求人はそれほど多くないため、いくつかの方法を併用して調べてみるのがいいでしょう。

当サイト保育士人材バンク」をはじめとする保育士専門の求人サイトでは、保育関係の仕事に絞った求人を簡単に検索できます

雇用形態や給料条件、エリアなども細かく絞った絞り込み検索が可能なため、より条件に合う求人を見つけられますよ。

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保育所等訪問支援の履歴書の書き方と面接のポイント

最後に、保育所等訪問支援の求人に応募する際の、履歴書面接のポイント・注意点をご紹介します。

少ない求人で確実に採用につながるよう、応募前にポイントを確認しておきましょう。

保育所等訪問支援志望動機のポイント】

保育所等訪問支援の志望動機は、履歴書を書く際に特に重要視されるポイントです。

自身の経験に加え、意欲や熱意をしっかりアピールしましょう。

「なぜその施設で訪問支援員になりたいのか?」経験を踏まえて具体的な理由を記載できると熱意が伝わる志望動機になります。

保育所等訪問支援職務履歴書のポイント】

保育所等訪問支援は経験が重要視されるため、履歴書とは別に職務履歴書の提出を求められることがあります。

職務履歴書には、訪問支援員としていかせる経験・スキルをアピールポイントとしてしっかり記載するようにしましょう。

保育所等訪問支援面接のポイント】

保育所等訪問支援の面接では、人柄だけでなくしっかりと自分の考えをまとめる能力や障がい児支援の知識、考え方などをチェックされます。

「1人で支援に入った際に、子どもや先生に対して問題なく受け答えができるか?」が見られますので、確実に答えられるよう、あらかじめ聞かれそうな質問を想定し練習しておくといいでしょう。

保育所等訪問支援のまとめ

保育所等訪問支援は、「0~18歳の障がいのある子どもを対象とする福祉サービスです。

子どもが集団生活に適応できるよう、定期的に園や学校を訪問して必要な支援を実施し、先生へ助言も行います。

訪問支援員は、プロ意識をもって子どもや先生と関わっていくことが大切です。

訪問支援員になることで、障がい児支援のプロと呼べる、頼れる存在になるでしょう。

保育所等訪問支援で訪問支援員として働いてみたい方は、ぜひ、「保育士人材バンク」で求人を探してみてください。

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