この記事では、保育士の配置基準の最新情報を伝えるとともに、保育士が覚えておきたい配置基準を施設別・年齢別(1歳児・3歳児など)に詳しくご紹介します。

2024年度、76年ぶりに保育士の「配置基準」が見直された内容もふまえてご紹介をしていきますので、興味がある方はチェックしてみて下さい。

目次

この記事でわかること【保育士の配置基準】

この記事でわかること【保育士の配置基準】【保育士人材バンク】
この記事でわかること【保育士の配置基準】【保育士人材バンク】

保育士の配置基準とは、「保育の際に最低限必要な保育士の人数」のことをいいます。

子どもの年齢や施設の種別ごとに必要な人数が、法律で細かく定められています。

参考サイト:厚生労働省 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準

「保育士1人あたりが見る子どもの人数が適切か?」ということが、近年、問題視されてきたこともあり、2024年度から、保育士の配置基準が76年ぶりに見直されました

この記事では、見直しされた配置基準についてお伝えするとともに、年齢別・施設別・自治体別の配置基準、配置基準の計算方法などを細かくご紹介します。

2024年度に行われた保育士の配置基準見直し

2023年の12月11日、保育現場にとって大きなニュースが政府から発表されました。

政府の「こども未来戦略」での少子化対策の費用において、「保育士の配置基準」の一部を2024年度より見直すことが盛り込まれたのです。

この見直しにより、保育士1人あたりがみる子どもの人数が少しだけ少なくなります

2024年度に変更された内容を、具体的に見ていきましょう。

2024年度に行われた保育士の配置基準見直し【保育士人材バンク】

参考サイト:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和二十三年厚生省令第六十三号)
参考サイト:こども未来戦略方針(令和5年6月13日)
参考サイト:子ども家庭庁 大臣等会見

4・5歳児の配置基準を「30人→25人」へ変更

まず、大きな変化としては、5歳児の保育士配置基準が、「30人から25人」へ変更されました。

つまり、保育士1人あたりの人数が、5歳児では「30人から25人」に減少するということです。

5歳児を担当する保育士には、小学校へ提出する子どもの成長をまとめた資料(要録)作成などをはじめ重要な仕事も多く、30人もの子どもを1人でみながらすべての業務をこなすことは難しい現状がありました。

それが、今回の配置基準の変更により負担が減る可能性があるでしょう。

3歳児の配置基準を「20人→15人」へ変更

3歳児の配置基準も、「20人から15人」へ変更されました。

保育士の配置基準変更に伴う今後の課題

今回の改定で、配置基準にかかわる保育士確保の費用が国の予算として盛り込まれました。

課題としては、保育士不足により保育士をすぐに確保できない問題などが考えられます。

また、地域によっては保育士確保がすぐには難しいことから、もしも配置基準を満たせない場合にも、「当面の間は従前の基準により運営することも妨げない」との経過措置が設けられる可能性があります。詳細は、ご自身がお仕事をしている自治体に確認することが必要です。

そもそも保育士の配置基準とは?

そもそも保育士の配置基準とは?【保育士人材バンク】
そもそも保育士の配置基準とは?【保育士人材バンク】

保育士の配置基準とは、保育士1人が何歳の子どもを何人まで保育できるか定めた人員配置の基準のことです。

ここでは、保育士の配置基準について、概要をご紹介します。

保育士の配置基準はいつ決まった?

保育士の配置基準は、子どもの安全と保育の質を担保するために、1948年、国によって設けられました

厚生労働省の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第(三十三条)」に国としての最低基準が定められており、さらに各自治体で独自の基準が設けられています。

保育士の配置基準が定められている法律は?

保育士の配置基準は国が決め、厚生労働省の管轄で法律として定められています

保育士の配置基準の準拠法は、「児童福祉法」です。

参考サイト:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準

保育士の配置基準が見直される理由

これまで、保育士の配置基準に無理があることは保育の現場から多数訴えられてきました。

多くの保育園は国による補助金で運営されるため、現状の配置基準・補助金では子どもを安全に保育できるだけの人員を確保することができず、また保育士不足により現場は疲弊していました。

実際に、5歳児では保育士1人で30人の子どもをみることが難しいとし、独自に保育士を追加配置している園も少なくありません。

こうした保育現場の声や、保育士不足の問題、不適切保育の事件などをうけ、今回の配置基準見直しに至ったと考えられます。

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【年齢別】の保育士の配置基準

次に、年齢ごとの保育士の配置基準をご紹介します。

【年齢別】の保育士の配置基準【保育士人材バンク】

※ここでは、認可保育園の基準でご紹介しますが、保育園にはさまざまな種別があり、施設ごとに配置基準が異なります。施設ごとの保育士の配置基準は次章でご紹介しています

保育士の配置基準「0歳児」:【3人】

保育士1人あたりがみる0歳児の人数は、3人が最低基準」です。

保育士の配置基準「1歳児」:【6人】

保育士1人あたりがみる1歳児の人数は、「6人が最低基準」です。

保育士の配置基準「2歳児」:【6人】

保育士1人あたりがみる2歳児の人数は、「6人が最低基準」です。

保育士の配置基準「3歳児」:【20人→15人へ変更】

保育士1人あたりがみる3歳児の人数は、20人が最低基準でした。

2024年度からは「15人」に変更となりました。

保育士の配置基準「4歳児」:【30人→25人へ変更】

保育士1人あたりがみる4歳児の人数は、30人が最低基準でした。

2024年度からは「25人」に変更となりました。

保育士の配置基準「5歳児」:【30人→25人へ変更】

保育士1人あたりがみる4歳児の人数は、30人が最低基準でした。

2024年度からは「25人」に変更となりました。

【施設別】保育士の配置基準

次に、施設の種類別に保育士の配置基準をご紹介します。

国により以下の配置基準が定められていますが、自治体ごとに独自の配置基準を設定している場合もありますので、詳しくは次章でもご紹介します。

保育士の配置基準①【認可保育園】

認可保育園の配置基準は、以下のとおりです。

保育士の配置基準①【認可保育園】【保育士人材バンク】

保育士の配置基準②【幼保連携型認定こども園】

幼保連携型認可こども園も、基本的には国の配置基準と同じです。

その他、保育教諭の配置などが独自の基準として設定されています。

保育士の配置基準②【幼保連携型認定こども園】【保育士人材バンク】

※満3歳以上の子どもに幼児教育を行う時間は、クラスを作ることおよび専任の保育教諭を置くことが必要

保育士の配置基準③【認可外保育施設】

認可外保育施設とは、国からの補助金を受け取っておらず、利用者からの保育料で運営される施設です。

※認可を受けるためには、保育園の面積・設備・職員数など、国の基準を満たす必要があります。認可外保育園には、国の基準を満たしていないものや、独自のサービス・保育を提供したいためにあえて認可をとらないものがあります

保育士の配置基準③【認可外保育施設】【保育士人材バンク】

※保育時間が11時間以内の場合は、認可保育園と同じ(上記)配置基準
※保育時間が11時間以上の場合は、保育中の子どもが1名の場合を除き、常時2名以上の配置が必要
※保育者の3分の1以上が、保育士または看護師資格を持っていることが必要

保育士の配置基準④【小規模保育事業】

2015年から国に認められた認可保育所のひとつで、地域密着型の小規模保育園です。

受け入れられる年齢は「0~2歳」と制限があり、定員数も6名~19名までとなっています。

さらに、定員によって、人数が多い順にA型・B型・C型に分類され、保育士の配置基準もそれぞれ異なります。

小規模保育事業A型(定員6名~19名)の保育士配置基準

事業所内保育所や小規模保育所の配置基準【保育士人材バンク】

※保育士資格を全員所持していることが必要
※保育所の配置基準(上記表)プラス1名が必要

小規模保育事業B型(定員6名~19名)の保育士配置基準

事業所内保育所や小規模保育所の配置基準【保育士人材バンク】

※保育士資格を半数所持していることが必要
※保育所の配置基準(上記表)プラス1名が必要
※看護師・准看護師・保健師を、保育士とみなす特例あり

小規模保育事業C型(定員6名~10名)の保育士配置基準

※子ども3名に対して保育士1名が必要(補助者がいる場合は、5名に対して2名)

※資格は家庭的保育者所持であれば可

保育士の配置基準⑤【家庭的保育事業】

家庭的保育事業とは、主に自宅で子どもを受け入れる事業のことで、「保育ママ」などと呼ばれます。

受け入れは0歳から2歳まで、定員数は5名以下となっています。

家庭的保育事業の配置基準【保育士人材バンク】

保育士の配置基準⑥【事業所内保育事業】

事業所内保育事業とは、主として企業で従業員の子どもを預かる保育施設です。

受け入れは0歳から2歳までとなっています。

事業所内保育所や小規模保育所の配置基準【保育士人材バンク】

※20名以上の場合、上記に加え1名以上の保育士の配置が必要

保育士の配置基準⑦【居宅訪問型】

居宅訪問型とは、ベビーシッターや保育士が自宅へ訪問し、1対1で保育を行なう事業です。

対象は0歳から2歳までとなっています。

保育士の配置基準を満たしていないとどうなる?

保育士の配置基準を満たさない場合、法令違反となり、保育園の運営ができなくなります

認可保育園では、年に一度、配置基準を満たしているかどうかの立ち入り調査が行なわれます。

その際に基準を満たしていない場合、以下のような段階を経て「改善指導」「閉鎖命令」へと進んでいきます。

※自治体によって基準や段階は異なる場合もあります。

保育士の配置基準を満たしていない「段階①」【指導監査】

認可保育園では、数年に1度、行政の監査が義務付けられています。

配置基準を満たしていないと指摘を受けると、「指導監査(特別監査)」が実施されます。

指摘を受けた場合は、改善計画書などを作成し提出する必要があります。

保育士の配置基準を満たしていない「段階②」【改善勧告】

監査後、1か月に文面での「改善指導」がなされます。

保育士の配置基準を満たしていない「段階③」【認可の取り消し/事業の停止命令】

意図的や長期にわたり改善されない場合などは、認可の取り消しなどペナルティが発生する場合があります。

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配置基準は見直しや緩和がされてきている

保育士の配置基準は、1948年に制定されてから76年間変わらずにきていました。

ただ、これまでにも見直しや緩和はされてきています。

2016年には、「保育所等における保育士配置に係る特例」によって、待機児童問題の解消のため、一時的に保育士の配置基準が緩和されました。

緩和の内容は、以下のような内容でした。

配置基準の緩和
  • 朝夕などの子どもが少ない時間には、保育士2名が必要だったところを1人に緩和
  • 幼稚園教諭や小学校教諭等の免許を持っている方を保育士としてカウントできる
  • 保育士2人のうち1人は研修を受けた子育て支援員でも代替可能など

2024年度(令和6年)の見直しでも、まだまだ現場の状況が改善されたとは言えないため、今後も見直しが続くと思われます。

保育士の配置基準の計算方法

保育士の配置基準の計算とは、保育園に必要な保育士の数を求めるものです。

保育士の配置人数を計算するときは、自治体で独自に基準を設けている場合、自治体の基準を参考にして、特に基準が設けられていない場合は国の基準を参考にしましょう。

計算は、以下の手順で行なわれます。

保育士の配置基準の計算方法①【年齢ごとに在園児の数を書き出す】

まず、0歳から5歳まで、現在、保育園に在園している子どもの人数を書き出します

認可保育園の在園児数の例

年齢在園児の人数
0歳児5人
1歳児15人
2歳児15人
3歳児25人
4歳児30人
5歳児30人

保育士の配置基準の計算方法②【在園児の数を配置基準で割る】

次に、年齢ごとに、在園児の数を配置基準の数で割り、合計を出します

以下の例だと、和が10.72になり、四捨五入して11人、この園には保育士の配置が必要ということになります。また、厳密な計算方法は自治体によっても違いがあり所属する地域の計算方法を確認することが大切です。

年齢在園児配置基準計算
0歳児5人3人5人÷3=1.66
1歳児15人6人15人÷6=2.5
2歳児15人6人15人÷6=2.5
3歳児25人15人25人÷15=1.66
4歳児30人25人30人÷25=1.2
5歳児30人25人30人÷25=1.2
園に必要な保育士の数11人(10.72)

※2024年度(令和6年度)からの配置基準で計算しています
※本情報は各年齢別に計算をして、小数点第2位は切り捨てで計算しています
※切り捨て方法など厳密な計算方法は各自治体などに確認をしてください

保育士の配置基準がおかしいのは本当?海外や世界はどうなの?

日本では保育士の配置基準がおかしいと長年いわれてきました。

設定された配置基準では子どもに十分に目が行き届かず、安全性に問題が生じたり、保育士の負担が大きすぎたりしたためです。

そもそも海外では、保育を教育に一元化する動きが主流で、保育から教育へと変わりつつあります。

OECD(経済協力開発機構)のデータによると、3歳以上の保育で保育士1人あたりがみる子どもの人数は18人なのに対し、保育所だと3歳児20人、4~5歳児30人と最多でした(参加19か国中)。

海外と比べても、かなり保育士の負担が多いことがわかります。

参考サイト:OECD国際幼児教育・保育従事者調査 (TALIS Starting Strong)

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配置基準はきつい?実際の保育士の不満

国が定めた保育士の配置基準(2023年度までの基準)では、明らかにきついという声が保育現場からも上がっています

4歳児・5歳児30人を、保育士1人で安全に見ることができるかというと、不可能に近い現実があります。

働く保育士は、背中にも目がないと無理だと言います。

実際、安全面から独自に人員を増やしている園も少なくありません

加えて、保育士の仕事は子どもの見守りだけではありません。

子ども30人を見守りながら、事務仕事や保育準備なども行なっている現状があります。

そうしたなか、保育士のサービス残業、労働環境、低賃金の問題が保育士不足の現実を生んでいるといえます。

現在の配置基準に不満がある場合の対処法

こうした保育士の現実を目のあたりにし、改善に取り組む園や自治体も少なくありません。

独自に保育士の負担が減るような配置基準を設定したり、給料面で待遇を改善しようとしたりする自治体もあります。

保育士は「どの自治体、どの園で働くか?」をよく考えてから就職や転職をすることで、今より働きやすくなる可能性はあるでしょう。

自治体や園が現在の配置基準をそのままにして、人員配置を決定している場合、働く保育士は不満を持ってしまっても仕方がない現実があります。

もし、現在の働き方や園の人員配置に不満がある場合は、転職を考えることもひとつの選択肢といえるでしょう。

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保育士の配置基準のまとめ

保育士の配置基準のまとめ【保育士人材バンク】
保育士の配置基準のまとめ【保育士人材バンク】

2024年度(令和6年度)から、保育士の配置基準が見直され、保育士1人あたりがみる子どもの人数が少しだけ軽減されました。

保育士の処遇改善は年々進められており、今後はさらに保育業界は働きやすい環境になっていくと考えられます。

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