「保育士としてキャリアアップしたい」と考えている方の中には、保育士の役職について詳しく知りたい方もいるかもしれません。
保育士の仕事は、一般企業と比較して役職が少ないイメージを持っている方もいるでしょう。
しかし、2017年に制定された『処遇改善等加算Ⅱ』により、新たに役職が増えました。
本記事では、保育士の役職について、種類や等級、転職時の役職欄の書き方など幅広くご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください!
目次
保育士の役職とは?
これまで保育園の役職は、多くの園が主任保育士、園長のみでした。
そのため、それ以外の保育士は、どんなに経験がある中堅保育士・ベテラン保育士でも役職はなく、保育士という肩書でした。
しかし役職が少ないと、経験が浅い保育士はキャリアアップしにくく、やりがいを感じられないため、途中で異業種へ転職してしまうケースも…。
そこで政府は、2017年、保育士不足の問題を改善するために『処遇改善等加算Ⅱ』をつくり、従来の役職に加えて新たな役職を増やしました。
保育士の役職の種類はどのようなものがある?
『処遇改善加算Ⅱ』によって新たに加わった役職も入れると、保育士の役職は全部で5つあります。
- 園長(施設長・副園長)
- 主任保育士
- 副主任保育士
- 専門リーダー
- 職務分野別リーダー
役職別にそれぞれの役割について見ていきましょう。
保育士の役職①【園長(施設長・副園長)】
保育園の園長は、園全体の代表として運営や経営を担う役職です。
自治体とのやりとりや、人材採用、クレーム対応、保育士の育成など、業務内容は多岐にわたります。
園長は園の総責任者になるため、保育士や他の役職と比べると責任が重いポジションです。
しかしその分、自分が理想とする保育を実現できたり、収入面が安定したりとやりがいが大きいのが魅力といえます。
ちなみに、園によっては、園長ではなく施設長という肩書きの場合もありますが、仕事内容などはどちらも違いはありません。
また、幼稚園や公立保育園、規模が大きい保育園では、副園長という役職をつくっている場合もあります。
副園長は、園長の補佐についたり、園長がいない場合は代理として対応をしたりするのが主な役割です。
保育士の役職②【主任保育士】
主任保育士は、保育現場のリーダー的ポジションです。
基本的には担当クラスをもたず、園長のサポートをおこなったり、保育士に対して保育指導をおこなったりします。
クラス担任をもった保育士とは違って、園を運営する側の役職になるため、シフト表を作成したり、年間行事の企画や運営をおこなったりするのも仕事です。
副園長の役職を作っていない園の場合は、園長不在時に園長の代理として対応をおこなう場合もあります。
保育士の役職③【副主任保育士】
副主任保育士は、2017年以降に新たに加わった役職の一つです。
副主任保育士は、一般的には「ライン職」と呼ばれるポジションで、保育現場を統括するポジションになります。
園長や主任保育士からあがってきた指示内容を、現場の保育士にしっかり伝えることが役割です。
つまり、現場と責任者をつなげるパイプ役といえるでしょう。
具体的な仕事内容は、主任保育士をサポートしたり、新人保育士の育成をおこなったり、園によってはクラスをもたないフリー保育士として現場をサポートします。
保育士の役職④【専門リーダー】
保育士の専門リーダーは、副主任保育士同様、2017年に新たに加わった役職です。
専門リーダーはその分野のプロとして、保育現場で働きながら他の保育士に対してアドバイスやサポートをおこないます。
現場で働く保育士の中でも、とくに高い専門性をもった中堅保育士という立場になります。
保育士の役職⑤【職務分野別リーダー】
職務分野別リーダーも、2017年から新たにつくられた役職です。
詳しくは後述しますが、職務分野別リーダーは、保育士がキャリアアップを目指す最初のステップになります。
専門リーダーの前段階にあたる役職です。
つまり、経験が浅い保育士でも若手リーダーとして、専門分野のスキルを活かして現場で活躍することができます。
経験年数や研修受講など、職務分野別リーダーになるためには、一定の条件がありますが、保育士からスキルアップしたい方は目指してみるとよいでしょう。
保育士の役職、等級とは?
一般企業では、従業員を能力・職務・役割によって区分して、処遇と結びつける『等級制度』を取り入れています。
そのため、「保育士に等級はあるの?」と気になっている方もいるのではないでしょうか?
保育園では、施設によって等級制度は異なります。
保育園ではこれまで役職が少なかったこともあり、中には具体的な等級制度を設けていない園もあります。
しかし、保育士の処遇改善制度ができ、役職が増えたことで、今後は等級制度にそって、キャリアアップを目指す仕組みに変わっていく可能性が高いでしょう。
保育士の等級表のイメージは、下記のとおりです。
等級 | 職層 | 役職等 |
7 | 経営職 | 理事長(代表) |
6 | 管理職 | 園長(施設長) |
5 | 監督職 | 主任保育士 |
4 | 指導職 | 副主任保育士 |
3 | 指導職 | 専門リーダー |
2 | 一般職 | 職務分野別リーダー |
1 | 一般職 | 新人保育士 |
上記はあくまで一例なので、園の規模によっては細かく等級が区分されている場合もあるでしょう。
保育士は営業職とは異なり、仕事の成果が数値化しづらい職業ともいえます。
そのため、役職が少なかった以前は、昇給の仕組みもあいまいで、「長く続けても給料が変わらない」、「いつになったら給料アップするのかイメージできない」という保育士も多かったかもしれません。
しかし、保育士の処遇改善制度により役職が増えたことで、キャリアアップの道筋が明確になり、働く上でのモチベーションアップにつながるでしょう。
保育士の役職による給料や年収の違いは?
保育士の給料(年収)は、保育施設の種類や役職によってさまざまです。
令和3年に、全国保育協議会がおこなった調査結果によると、保育士の役職別の平均賃金は下記のとおりです。
保育施設の役職別平均賃金
役職等 | 新任保育士 | 主任保育士 | 施設長 |
平均賃金(年額) | 304.5万円 | 509.8万円 | 648.5万円 |
※社会保険料や所得税等の控除前の額、賞与も含む
保育施設によっても、給料や年収は異なりますが、目安として参考にしてみてください。
また、このあと詳しく紹介しますが、2017年に処遇改善加算制度が制定されたことで、条件をクリアすれば、手当が支給される仕組みになりました。
それにより、保育士全体の給料が徐々に底上げされています。
参考サイト:全国保育協議会『全国保育協議会会員の実態調査2021報告書』
保育士の手当(処遇改善手当など)とは?
現在、保育士の処遇改善には下記3つの種類があります。
- 処遇改善等加算Ⅰ
- 処遇改善等加算Ⅱ
- 処遇改善等加算Ⅲ
それぞれ詳しく説明していきます。
保育士の手当 【処遇改善等加算Ⅰ】
「処遇改善等加算Ⅰ」は、職員の勤務年数に応じて加算率が上がる仕組みです。
加算率は、各施設の平均勤続年数に応じて、賃金に2~12%上乗せされます。
対象は、正社員だけでなく、パートや派遣保育士など非常勤も含まれます。
非常勤の場合は、1日6時間以上かつ月20日以上勤務していることが条件です。
すべての保育施設が該当するわけではなく、対象施設は「認可保育園」です。
個人へどれだけ手当が分配されるかは、保育施設によって変わります。
保育士の手当 【処遇改善等加算Ⅱ】
「処遇改善等加算Ⅱ」は、キャリアアップ研修を修了して、要件を満たすことで支給される手当です。
2017年から始まった仕組みで、下記の新たに加わった3つの役職に対して、賃金加算が受けられます。
処遇改善等加算Ⅱ①【副主任保育士】
対象者は、経験年数が概ね7年以上あり、職務務分野別リーダーを経験していること。
マネジメントに加え、その他の3つ以上の分野の専門研修を修了。
また、職場から副主任保育士としての発令を受ければ、月額4万円の手当を受け取れます。
処遇改善等加算Ⅱ②【専門リーダー】
対象者は、経験年数が概ね7年以上あり、職務務分野別リーダーを経験していること。
4つ以上の分野の専門研修を修了。
また、職場から専門リーダーとしての発令を受ければ、月額4万円の手当を受け取れます。
処遇改善等加算Ⅱ③【職務分野別リーダー】
対象者は、経験年数が概ね3年以上あり、全部で6分野のうち、担当する職務分野の研修を修了していること。
また、修了した研修分野の職務分野別リーダーとしての発令を職場から受けることで、月額5千円の手当を受け取れます。
ただし注意点は、対象者は保育園の園長や主任保育士をのぞいた職員のうち、目安として1/3もしくは、1/5と決められています。
そのため、要件を満たしていても、保育士の処遇改善手当を受け取れない可能性もあるため、注意しましょう。
参考サイト:厚生労働省『保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ』
保育士の手当 【処遇改善等加算Ⅲ】
「処遇改善等加算Ⅲ」は、保育現場や、幼児教育現場で働く職員に対して支給される処遇改善手当のこと。
対象はパートや派遣保育士、非常勤なども含まれ、収入を月額3%程度(月額9,000円)底上げする仕組みです。
期間は2022年2月から現在も継続中。(2023年12月時点)
個人にどれだけ手当が支給されるかは、保育施設によって異なります。
参考サイト:厚生労働省『保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ』
参考サイト:東京都福祉局『東京都保育従事職員等処遇改善事業について』
保育士の役職、職務分野別リーダーとは?
「保育士の処遇改善手当Ⅱ」で、新しく加わった職務分野別リーダーについて詳しく解説します。
保育士がキャリアアップを目指すうえで、一番最初の役職にあたり、保育士の専門性を上げる目的と、給料待遇を改善するために作られました。
職務分野別リーダーになるためには、保育士としての経験が目安として3年以上必要になります。
また、自分が担当する分野を、キャリアアップ研修で受講する必要があります。
職務分野別リーダーが、受講可能な分野は下記の6つです。
- 乳児保育
- 幼児保育
- 障害児保育
- 食育・アレルギー
- 保健衛生・安全対策
- 保護者支援・子育て支援
上記のうち、自分が担当する分野の研修を受講し、勤務先で発令を受ければ、職務分野別リーダーのポジションに就くことができます。
職務分野別リーダーになるメリット
職務分野別リーダーを目指すメリットは次のとおりです。
職務分野別リーダーのメリット①【保育士としてスキルアップを目指せる】
職務分野別リーダーを目指すためには、キャリアアップ研修を受ける必要があることは前述しました。
キャリアアップ研修は、1分野15時間以上受講する必要があるため、その分野についての専門知識をしっかり学ぶことができます。
専門知識を学べれば、保育士としてのスキルアップにつながりますし、保育現場でも活躍の場が増えるでしょう。
職務分野別リーダーのメリット②【経験が少ない新人保育士も収入アップを目指せる】
これまで保育士のキャリアパスは、主任保育士や園長しかありませんでした。
そのため、とくに経験が浅い新人保育士は、給料が上がる前に辞めてしまう可能性もあったかと思います。
しかし、職務分野別リーダーができたことで、経験が少ない新人保育士も収入アップを目指せるでしょう。
職務分野別リーダーのメリット③【一度取得すれば転職先でも活かせる】
キャリアアップ研修を受講して、職務分野別リーダーを経験できれば、転職先でも活かすことができます。
なぜなら、現行の制度では、研修を受けたときに手に入る修了証は有効期限がないため、それを持って他の園へ転職できるからです。
職務分野別リーダーの経験があれば、転職活動の際に有利になる可能性がありますよ。
参考サイト:厚生労働省『保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ』
保育士のキャリアパスは?キャリアアップの仕方や研修の種類は?
ここまで、保育士の役職について説明してきましたが、保育士としてキャリアアップを考えるなら、下記のステップで役職を目指すのがよいでしょう。
もし、保育士としてキャリアアップしたいと考えている方は、主任や園長にその旨を伝えてみると、研修に行く機会を与えてもらえる可能性があります。
とはいえ、職場によっては、上記のようにスムーズにキャリアアップできない場合もあるかもしれません。
その場合は、別の保育園へ転職を考えるのも選択肢の一つです。
キャリアアップ研修の分野(種類)について
職務分野別リーダーが受講する研修分野は、6つあります。
しかし、「副主任保育士」を目指す際に必要な、マネジメント研修などを含めると、キャリアアップ研修で受けられる分野は全部で8つあります。
それぞれ簡単にどのような研修内容なのかご紹介します。
- 乳児保育 : 0歳~3歳未満児の乳児保育に関する理解を深める
- 幼児保育 : 3歳以上児の保育内容を学ぶ
- 障害児保育 : 障害児保育に関する適切な助言や指導について学ぶ
- 食育・アレルギー : 食育やアレルギー対応に関する理解を深める
- 保健衛生・安全対策 : 保健衛生に関する知識や理解を深める
- 保護者支援・子育て支援 : 保護者支援・子育て支援に関する適切な支援を学ぶ
- マネジメント : ミドルリーダーとしての役割と知識を理解する
- 保育実践 : 環境構成や関わり方など保育を展開するための能力を身につける
参考サイト:厚生労働省『保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ』
保育士の役職、理事長と園長どちらが偉い?
保育士として働く方の中には、「理事長と園長どちらの役職が上なのか分からない」方もいるかもしれません。
結論から述べると、理事長の方が上の役職です。
社会福祉法人や学校法人が、保育園を経営している場合、その法人のトップは理事長になります。
ただし、理事長と園長を兼務されている法人もあります。
役職を整理すると、保育園の責任者は園長ですが、法人としての責任者は理事長になるので、最高責任者は理事長になります。
保育士の転職、履歴書・志望動機、職務経歴書の役職の書き方は?
保育士の転職活動において、履歴書や職務経歴書で役職について書く場合は、以下を参考にしてみてください。
保育士の転職【履歴書の書き方】
保育士の履歴書に、必ず役職を記載しなくてはならないという明確なルールはありません。
しかし、転職活動では自分のアピールポイントになるので、保育士の役職を記載するのがおすすめです。
履歴書で保育士の役職について書く場合は、職歴欄に記載するのがよいでしょう。
履歴書に保育士の役職を書く場合の例
年 | 月 | 職歴 |
平成●●年 | 4 | 社会福祉法人●● ●●保育園 入職 |
令和●年 | 4 | 副主任保育士から主任保育士に昇進 |
現在に至る |
保育士の履歴書(志望動機)の書き方
履歴書の志望動機では、保育士の役職として培ってきた経験やスキルを積極的に盛り込んでアピールするのがよいでしょう。
以下の例文を参考にしてみてください。
保育士の履歴書(志望動機)の書き方
「私は、前職では副主任保育士として5年間働いてまいりました。
現場と責任者をつなげるパイプ役として、保育現場をまとめさせていただき、時には主任保育士の代わりとして責任あるポジションを任せていただきました。
副主任保育士として働くうちに、保育現場と責任者との間に考え方のギャップがあることを感じました。
また、その溝は、職場の雰囲気も悪くしていると感じるようになりました。
それをきっかけに、保育現場に寄り添うことができる管理職を目指したいと思うようになりました。
今回、貴園では主任保育士を募集されていたので、応募させていただきました。
とくに貴園では、保育士の働き方改革に力を入れているということで、その考え方にとても共感しました。
貴園に入職後は、保育士さん一人ひとりの個性を活かせる職場つくりをお手伝いさせていただきたいです。
また、保育現場と役職者の間に溝ができないように、保育士さんを巻き込んで、風通しの良い環境を作っていきたいと思っております。」
保育士の転職【職務経歴書の書き方】
職務経歴書で保育士の役職について書く際は、下記のように記載してみましょう。
年 | 月 | 職歴 |
平成●●年 | 4 | 社会福祉法人●● ●●保育園 認可保育園 職員数:20名、園児数:30名 【雇用形態】正社員 【担任業務】副主任保育士としてフリーに入る 【職務内容】・全クラスの保育補助に入る ・保育現場のリーダーとして保育士指導 ・主任保育士不在時は園長のサポート ・マニュアルの作成や研修指導 ・保護者支援やクレーム ・トラブル対応 など |
保育士の役職について、どのような仕事やポジションを任されたのかなど、経験したことは積極的に記載して、自分の強みとしてアピールしましょう!
保育士の役職のまとめ
保育士の役職について、詳しくご紹介しました。
役職が少なく、キャリアアップが難しいと考えられていた保育士ですが、2017年に『処遇改善加算Ⅱ』ができてからは、役職が増えてキャリアアップを目指せるようになりました。
とはいえ、職場によっては、なかなか役職を目指せない環境の方もいるかもしれません。
そんな方は、新しい保育園へ転職してキャリアアップを目指すのもおすすめです。
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